以前、一冊の本を読み通すことを助ける、読書の手すりと杖の話をした。






     今回は、複数の(それもたくさんの)文献に挑まなくてはならない人のためのもの。

     これまでに紹介した文献マトリクスは書物や文献の《内容》を一望するものだが、今回のは文献に対する《作業》を一望化するものである。

     取り組むべき文献の量と作業の進み具合を一目で分かるようにして、文献作業の工程を管理するのだ。


    1.文献に対して行う作業を標準化していくつかのパートに分ける

    (例)
    (1)文献を手に入れる
    (2)読んで線を引いたり印をつける
    (3)印をつけた箇所を抜書きする
    (4)抜書きしたものを対照表で整理する
    (5)論文のアウトラインに反映する

    manybook1.png
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    2.それぞれの文献に対して行った作業の成果を別ファイルとして残し、作業パートごとにつくったフォルダ(ディレクトリ)に保存する

    (例)
    ・入手した文献は、作業(1)に対応する「入手文献」フォルダに保存する
    ・入手文献に対して線を引いたり印をつけたファイルは、作業(2)に対応する「annote済」フォルダに保存する
    ・抜書きして作ったファイルは、作業(3)に対応する「抜書き」フォルダに保存する

    3.一日の終わりに各フォルダ内にあるファイル名を1列ずつコピペして、1枚の表にする。この表が現時点での作業進捗を表している。


     表の列は作業順(1)から(5)へ、左から右へ並んでいる。
     表の一行は一つの文献に割りあてられており、入手文献が増えると、表は下へ伸びていく。
     作業が進んだ文献、ほとんど手付かずな文献が一目瞭然である。
     
     
    manybook2.png
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     元々は自分用の進行管理ツールであるが、指導者と学生の間でやり取りすると進行管理のコミュニケーションにも使える。
     
     
     
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    FC2 Management
     「フェルミ推定」というと、なんだか就職面接向けの難問奇問パズルのような扱いだけれど、元々は手早く(もちろん楽に)大まかな結果を出す話だったのでは、という趣旨で、この記事を書く。

    ※Google人事部のシニア・バイス・プレジデントであるLaszlo Bockが、「雇う側からすると、brainteasers(パズルなどの難問奇問)は完全に時間のムダだった。飛行機にゴルフボールをいくつ詰め込むことができますか?マンハッタンにはガソリンスタンドはいくつありますか?完全に時間のムダ。候補者の能力を何も予測できない。もっぱら面接官を賢い気分にさせるのに役立っただけ。」といったことを、ニューヨーク・タイムスのインタビューで言っている。それで結局1970年代くらいから行われてる構造化行動面接に戻したらしい。がんばれ。
    http://www.nytimes.com/2013/06/20/business/in-head-hunting-big-data-may-not-be-such-a-big-deal.html
    "brainteasers"(脳をtease(じらす、からかう、悩ます)もの)という言い方が微苦笑を禁じ得ないが、今回の記事ではオーダー推定を、ゆるく楽して数量を扱うやり方として取り上げる。



     手間がかかる精確な計算は後回しに、大まかな計算に基づいて、モデルや推論を評価したり、議論をすすめたりすることは、科学者や技術者のコミュニティで古くから行われてきた(著名な最古の例はアルキメデスの『砂の計算者』にみられる)。例えば物理学には、そこらへんの紙切れに(例えば封筒の裏に)さっと走り書きして概算で問題を考えることを指す“Back-envelope physics(封筒裏の物理学)”というステキな言い回しがある。
     
     大雑把な計算は、その分手早くできるので、科学や工学の分野では、次のようなご利益がある。
     
    ・仮説やモデルからどんな結論が出てくるか、時間やコストをかけず大まかな予想を得ることができる
    ・精確な計算の結果について手早く検算することができる
    ・精確な答えを出すには情報が足りない場合でも、見当をつけることができる
    ・精密に測れないようなものについても、何らかの定量的な推測・評価を行うことができる
    ・未開拓の分野や問題について予測に使える理論が不整備な場合にも定量的な推測・評価を行うことができる
    ・代替案をつくる上で、どの範囲におさまっていればいいかという境界条件を導くのに使える

     では科学者でもなんでもない一般人には(頭の体操や時間つぶし以外に)どんなご利益があるだろうか。

     1.数を扱うスキルというか感覚を磨くことになる。特に億とか兆の付く数字、ナノやピコがつく数量がどの程度のものであるか、実際に扱うことで数覚とでもいうべきものが身につく。
     2.数量を含む主張や議論を自分でチェックできるようになる。またはチェックする習慣が身につく。
     3.意思決定を助ける。問題外の選択肢を詳しく検討する前に取り除いたり、ろくでもないアイデアをふるい落とすフィルターとして使える
     4.問題解決に必須のメタスキル、Divide and conquer (D&C)(分割して征服せよ)の手ごろな練習になる。問題を「重複なく・漏れなく」分割すること、分割して推定した結果を掛け算という簡易で誰でもできる方法で統合すること、最終的に一つの数値を結論として出すことなど、手続き・得られる成果ともに明快でわかりやすい。

     それでは、やり方を説明し、推定の例を示すことにしよう。
     

    (時間がない人のためのまとめ)

    1 桁数が推定できればOK
    2 問題を分割し(Divide and conquer の原則)、推定構造図をつくる
    3 分からない数値は上限と下限から考えて、幾何平均(相乗平均)を取る
    4 分割した推定を掛け合わせて答えを出す
    5 推定結果をチェックする(単位は合っているか、宇宙全体より大きくないか等)


    1 桁数を推定する

     今回取り上げる、大雑把に数量を求める方法をオーダー推定order-of-magnitude estimateという。
     
     日本語で「指標」というと、〈指=ゆび・さす〉と〈標=しるし〉、普通の意味では「(物事の見当をつけるための)めじるし」程度の意味だが、やや専門的な意味に「正数の常用対数を整数と正の小数の和として表したときの整数部分」というのがある。
     この意味でいう「指標」にあたる英語が“order of magnitude”であり、この“order of magnitude”を推定する(estimate)のがオーダー推定order-of-magnitude estimateである。
     
     単なる「おおよその数」を推定しようというのではなく、要するに桁数を当てるのである。
     ぶっちゃけ正解の1/10~10倍の範囲におさまればいい、という乱暴さだ。
     
     この「桁数が分かればいい」というのをわざわざ強調するのは、この大前提からオーダー推定の次のような方針・アプローチが導き出されるからである。

    ・精確な数にこだわらず、計算しやすいように細かい数字は捨てる。
    ・モデル化にも計算しやすい仮定をどんどん使う
    ・間の数字を決めるには幾何平均を使う


    ◯指数表記のご利益

     数字をm×10n(m掛ける10のn乗)の形で表すことを指数表記という。

     仮数部:mの部分で有効数字をあらわす、1以上10未満の数字
     指数部:nの部分で指数を表す→ぶっちゃけ桁数を表す
     mの部分を、1 ≦ m < 10となるようにする(正規化)

     例)
     6.2×103 = 6200
     3×108 = 300000000
     6.77×10-11 = 0.0000000000667

     これは科学的記数法scientífic notátion とも呼ばれて、科学・工学ではお馴染みの数値の表し方だ。
     なんとなれば、科学・工学で取り扱うとても大きな数値や小さな数値を扱うのに便利な表し方だからである。

     たとえば「300000000」の「3」を「4」と間違えてもせいぜい1.33倍ぐらいの誤差だが、0をひとつ付けそこなうと10倍の違いになってしまう。そして「3」を「4」に書き間違える人はあまりいないが、「0」が一つ多かったり少なかったりすることはとても生じやすい。
     「300000000」を「3×108」を書くことにすれば(「8」を「7」や「9」と間違うことはそうない)こうしたミスは起こりにくくなる。
     
     今の話は、オーダー推定の根っこにあるものでもある。
     指数表記(m×10n:m掛ける10のn乗で表す)した場合、mの仮数部が違っていても大きな違いはない(最大でも1/10~10倍の違い)が、nの指数部が違っているなら最低でも1/10~10倍、まさにケタ違いの差になる。
     なので、mの仮数部の数値が違っているのは許容するとして、せめてnの指数部の数値については当てたい、というのがオーダー推定である。


    ◯指数表記で掛け算が楽になる 

     オーダー推定では後述のように、問題を分解して推定し結果を掛け合わせて統合するから、掛け算が必須である。指数表記すると、この掛け算が簡単になる。
     
     am × an = a(m+n)
    という指数法則を思い出しておこう。

     指数表記では数はすべてm×10nという形にしているから、掛け算といっても、重要な指数部を求めるには、足し算で済む。
     加えて、nの指数部の数値がわかればいいオーダー推定ならば、最低限、mの仮数部は1桁に四捨五入して丸めても構わない(つまり最上位の1桁だけわかればいい)。これなら暗算でもいける。

    例)6870×213= 1463310 =1.46331×106
    例)6.9×103 × 2.1×102 = 14.28 × 10(3+2) = 1.4 × 106
    例)7×103 × 2×102 = (7×2)×10(3+2) =14 × 105 = 1.4×106

    「6870×213」が暗算で苦しい人でも、「7×2」なら大丈夫だろう。
    あとは指数部の「3」と「2」を加えて「5」とすれば、14 × 105 と答えが出る。上の例で比べて分かるようにちゃんと計算した結果と、あまり変わらない。



    ◯幾何平均(相乗平均)で中を取る

     オーダー推定では桁数を重要なので、二つの値の中間を求めたい時は、足して2で割る算術平均ではなく、掛けて平方根を求める幾何平均(相乗平均)を使う。
     これは必要だ分からない数値について、上限と下限を考えてその中間を求めるアプローチで頻用する。
     また複数のアプローチで導いた異なる推定値から、平均を求める場合にも用いる。

     
     つまり下限1~上限100の間の数字を得るとき、算術平均(1+100)/2= 50.5ではなく幾何平均 √(1×100) = 10 (√(100×102) =101)を使うということだ。
     
     ルートを計算するのが面倒、せっかくなので電卓など使わずできるように、さらに簡略な方法を述べると
    ・桁が二桁異なっているなら、ただその間の桁数にすればいい。1(=100)と100(=102)なら10(=101)ということだ。
    ・桁が一桁異なっているなら、下の桁を採用して3を掛ける。たとえば10と100なら30になる。本当は10=3.16227766だから、√(10×100) = √(101×102) =√(10)×101=31.62…くらいになるのだが、最上位の一桁だけわかればいいという方針だから30でいい。

     三桁以上異なっている場合も上記に準ずる。つまり、
     偶数桁の異なる場合は「二桁異なる場合」と同様、桁数の算術平均をとる。10(=101)と100000(=105)なら、(1+5)/2=3桁となり、1000(=103)となる。
     奇数桁異なる場合は「一桁異なる場合」を参考に、10(=101)と10000(=104)だと、(1+4)/2=2.5だから、低い方の2桁を採用して、3を掛ける、つまり300(=3×102)となる。



    2 問題を分割する

     いわゆるDivide and conquer (D&C)(分割して征服せよ)の原則が用いられる。
     取り付く島のない問題も、分割していくことで取り扱うことができるようになる。
     
     手順として書き出せば、
    (1)問題に関係ありそうな事実を書き出す
    (2)一つかできればそれ以上の推定の方針をつくる
    (3)問題を分割して推定の階層構造をつくる
    (4)知らなければならない質問をリストアップする
    という感じになる。

     みんなが大好きな問題「シカゴにピアノの調律師は何人いるか?」を例にして、各ステップを説明しよう。


    (1)問題に関係ありそうな事実を書き出す

     関係ありそう、というかど真ん中にある事実はまず「ピアノの調律師はピアノを調律する」ことである。当たり前だ。
     さらに「ピアノ」には所有者がいる。家庭にあるものもあれば、学校や(シカゴなら)教会にあるものも有るだろう。これらがピアノの所有者になりそうな人(組織)だ。
     今回は、どれもシカゴという大都市にいる/ある「ピアノの調律師」「ピアノ」「家庭」「学校」「教会」について考えればいい。

    cichago.png



    (2)一つかできればそれ以上の推定の方針をつくる

     「ピアノの調律師の人数」と「ピアノの台数」を結びつけることはできるだろうか?
    →ピアノの調律師が一人でどれくらいのピアノを調律するか分かれば、結び付けられそうだ。

     「ピアノの台数」はどうすれば分かるだろうか?
     「家庭の数」と「ピアノの台数」を結びつけることはできるだろうか?
     「学校の数」と「ピアノの台数」を結びつけることはできるだろうか?
     「教会の数」と「ピアノの台数」を結びつけることはできるだろうか?
    →これらを全部足すとシカゴに有る「ピアノの台数」がわかりそうだ。

     何からシカゴの「家庭の数」は分かるだろうか?→1世帯平均の人数が分かれば何とかなりそう。
     何からシカゴの「学校の数」は分かるだろうか?→子供の数と1校あたりの平均的な生徒数が分かれば。
     何からシカゴの「教会の数」は分かるだろうか?→よく分からない。今回は無視して計算しよう。

     上記は「ピアノ台数」と「調律に必要な時間」から考えるアプローチだが、他にも、シカゴ全体で調律に支払われる代金総額からそれで食っていける調律師の数を割り出すなど、いくらもアプローチがあり得る。



    (3)問題を分割して推定の階層構造をつくる

     (2)でうだうだ考えたことを樹形図にまとめてみるとこんなふうになる。

    piano-tuner-outline.png
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     実際の作業は、(2)の段階を今回はアウトラインプロセッサーの上に問いと答えを順不同で書き出してから、(3)の作業として、並べ替えたり階層付けしたりして、上位下位関係を整理していった。

     上の図は、「Tree」という通常のアウトライン表示とツリー(樹形樹)表示を切り替えられる、Mac用アウトラインプロセッサで整理したものを〈ツリー表示〉して作成した。



    (4)知らなければならない質問

     知らなくてはならないのは、推定階層図の先っぽ、葉に当たる部分の数値である。
     これを埋めるために「3 分かる数値・知識をつかう」や「4 分からない数値は上限と下限を考える」へ進む。

     

    ◯推定階層図(樹形図)のメリット

     正直、ピアノの調律師の数を計算する程度のシンプルな問題だと、わざわざ推定階層図を書くのは面倒くさい。
     「5分で答えろ」といった就職面接のシーンだと書いていられないというのもある。

     しかしせっかく就職面接用brainteasersという悪用から解放されたのだから、すこし丁寧にやってみたい。
     
     推定階層図を書くと、まずどんな具合に推定を組み合わせたか、自分にも他人にも分かりやすい。
     どこが根拠が弱い・根拠を欠いた推定かも、すぐ分かる。
     いい加減に問題を分割した場合や、乱暴な決め付けで済ませた部分も明確に残る。
     時間をおいて推定を見直した場合も、何をやっていたか分かりやすい。
     時間をおくと弱点(乱暴な決め付けなど)にも気付きやすい。
     思考の跡が残るということは、経験が蓄積しやすい・上達しやすいということでもある。

     そして複雑な問題になっても、何をどこまで分解したか、常に把握しながら進められる。
     試行錯誤しても、その過程が無駄にならない。
     ワーキング・メモリを余計なところで消耗することを防ぎ、問題解決そのものに認知リソースを回しやすい。
     とくに複数のアプローチをとる場合は、それだけ推定構造は大規模化・複雑化するから、推定階層図が助けになる。





    3 分かる数値・知識をつかう

     推定階層図が(ちゃんと書き出すか、頭の中だけでやるかは別にして)できれば、あとは推定階層図の先っぽ、葉に当たる部分の数値を埋めていけば、最終的な答え(推定)は出るはずである。
     数値が分からないところは、さらに問題を分割して、推定階層図の枝を広げていくべきかもしれない。

     後で触れることだが、この宇宙を量的に把握しようとすれば、宇宙の諸相をあらわす様々な数量は互いに連関していることが分かる。
     このおかげで、ある数量(たとえば原子の大きさが概ね10-10mであること)が分かれば、それに関連する様々な数量を推定することができるようになる。
     多くの物理定数は、そうした数量間の関連の結束点であると見なすことができる。

     しかし、もし手がかりになる数量を知らなければ、資料など外部リソースがなければ、どれだけ分割しても分かる数値に行きつけない場合も多い。
     そういう場合はもう手がないのだろうか? いろんな数値をあらかじめ知っておかなくては結局、推定なんてできないのだろうか?

     たとえば「シカゴの人口」が分からないと、先の「ピアノの調律師の数」を推定する問題は解けないのだろうか?
     否、否、三たび否。



    4 分からない数値は上限と下限を考える

     そのものずばりの数値は分からなくても「さすがに多すぎる」「いくらなんでも少なすぎる」と分かることは多い。
     
     今の「シカゴの人口」だと、確かに何人かは分からないが、しかしシカゴはどこかの寒村ではなく、結構な大都市であることは、何となく分かる。
     こうした場合、我々がおぼろげながら知っていることを、間違ってはいない程度に正しい数量に落とし込む方法がある。
     分かる範囲でその上限と下限を考えてみるのである。
     我々が知りたいのは、つまるところ桁数であったことを思い出そう。

     「シカゴの人口」の例を続けよう。
     まず下限を考える。シカゴの人口が、何十万人(=105)というのは、どうにも少なすぎる。というのも、何十万人では、いくらもある普通の地方都市レベルだからだ。
     次に上限を考える。桁違いな数字を考えて、何千万人(=107人)ではどうか? いや、これは多すぎる。これだと世界にいくつかしかない屈指の都市レベルになってしまう。
     そこで下限と上限を設定し、シカゴの人口は100万人~1000万人の間にある、と仮定しよう。
     我々は桁数に関心があるから、100万と1000万の間をとるのに幾何平均を使う。
     √(106×107)を計算するわけだが、先ほど触れた簡易法をつかってざっくり300万人だとしても、我々が求める精度では問題ない。
     これでシカゴの人口が、極めて大雑把にだが見積もれた。

     この方法は、桁数が分かればいい、という割り切りから導き出されるものだが、とても活用範囲が広い。
     基本となる数値がわからないときは、多くの場合、この方法で切り抜けられる。
     そして、分からない数量をエイヤッとダイレクトにあてずっぽうするよりも、慎重かつシステマティックであり、実際もましな概数値が得られることが多い。

     さらに「シカゴのピアノ調律師」の例をつづけると、たとえば1世帯あたりの平均人数が分からないとする。
     今の方法を用いるなら、
     下限:1人(単身者世帯ってある。それもけっこうある)
     上限:10人(何十人って家族はいまどきは珍しい。都市だともっと珍しい)
     1と10の幾何平均をとって3人を平均世帯数として採用する。 (√(1×10)≈3)。

      

    5 分割した推定を掛け合わせて答えを出す

     こうして推定階層図に数値を入れていくと、次のようになる。

    piano-tuner.png
    (クリックで拡大)




     結局、シカゴには200人のピアノの調律師がいると推定した。

     学校の数を500校と推測したが、学校にあるピアノの台数(1500台=3台/校×500校)は、今回、家庭が持っている台数に比べて、我々が知りたい精度でいうと、無視できるくらい少なかった。最初からピアノを持っているのは家庭だけと考えるアプローチも今回のような目的なら十分あり得るといえる。
     もちろん家庭が持っている数がずっと少ないと、学校や教会が持っているピアノの台数も無視できなくなってくる。

     当初の推定階層図から変更したのは、1日8時間労働として、全ての調律師が切れ間なく調律し続けるってのはどうだろうと思ったので(調律してない時間って結構あるんじゃないだろうか)、そこのところを追加した。
     結局、8時間労働の内、忙しい人も暇な人も合わせて平均すると4時間ぐらいだろうとしたが、もしフルタイム可動だと推定は100人になる(推定階層図があるので、変更してどうなるかもすぐ分かる)。
     1~2×102人だから、オーダー推定的には大した差ではない。

     


    6 推定をチェックする

     推定結果は、最後にチェックしておきたい。

    (1)単位のチェック
     単位付きで計算しておくと計算過程でもミスしにくい(ミスしても気づきやすい)が、それだけでなく、最後に求めたかった単位が出てくるかどうかで、推定の階層構造がおかしくないか最低限のチェックができる。

    (2)上限下限のチェック
     たとえば、今回の場合だと、最後に出てくる調律師の人数が、シカゴ全体の人口を超えていたりすると、どう考えてもおかしい。
     そこまで行かなくても、ピアノ台数より調律師の数が多くなったりすれば、調律師は1年に1台の調律で食っていく訳で、その料金は年収レベルになるか調律師はみな他の商売で食っているかになるから、これもおかしいことになる。
     先に触れた「調律料金~養える調律師の数」を考えるアプローチも合わせて行っていれば、こうした別アプローチが推定の妥当性のチェックの役割も担ってくれる。
     複数アプローチをお勧めするのは、こうした理由からである。


     最後に実際の数字を紹介しておこう。
     シカゴの人口271万人、公立学校数は638校、ピアノ調律師は分からなかったが、すこし広げてmusical instrument repaires and tuners だと290人だった。
     オーダー推定的には1/10~10倍の誤差は許容範囲だが、今回はちょっと出来過ぎた結果となった。






    (おまけ)オーダー推定の例

     ピアノ調律師やマンホールの数ばかり考えても仕方がないから(脈絡なく鉄球の落下速度を計算させられる授業がつまらないように)、趣向の違った例題を見てみよう。

     科学や工学の分野で取り組まれてきた方法だから、ほんの少し科学や工学の知識を使うだけで、取り組める問題の幅は一気に広がる(逆に言うと、面接試験のはこの辺を削ぎ落とすから、空虚な数当てゲームに限定されてしまうともいえる)。

     科学教育の分野で用いられるのは、そうした例が多い。
     たとえば物理定数や公式など、暗記してもらおうとしても埒が明かないが、それらを使ってちょっとした問題を解いてもらうと忘れられなくなる。
     科学は世界を量と量の関係として捉えることで発展した。科学が扱う様々な数量は互いに連関しあっていて、他の量と無関係に変動したりしない。だからこそ、数量の間の連関を辿って、我々は定量的に予測したり評価したりすることができる。
     オーダー推定は、大股歩きではあるが、そうした量の相互関連をたどっていく体験である。



    ◯人の細胞中にDNAをつなげると何メートルになるか?

     我々より小さな大きさで、知っておくと適用範囲が広がる数量が登場する例を取り上げよう(一度やっておくと原子の大きさや細胞の大きさを忘れなくなるので)。

     原子の直径は、1~5×10-10 mである(注)。オーダーで言えば、10-10 mである。

     
    (注)こういうことを調べるにはもってこいのサイトThe Physics Factbookから、「Diameter of an Atom」のページを見た。


     これを元にして、人の細胞の中にあるDNAをつなげるとどれくらいになるかを推定したい。

    (1)問題に関係ありそうな事実を書き出す

     あなたがDNAについて知っていることは、それほど多くない。しかし何も知らないわけではない。
     以下のような事実を知っている(前提にできる)としよう。

    ・人の体は細胞が集まって出来ている
    ・細胞はその中に核をもっている
    ・DNAは核の中に収められている
    ・DNAは塩基対が集まって出来ている
    ・塩基対は、原子が集まって出来ている

    まとめて書くと「人間>細胞>核>DNA>塩基対>原子」という感じである。

    (2)一つかできればそれ以上の推定の方針をつくる

     何とかわかりそうなのは、大きい方と小さい方、すなわち人間の大きさ(体積)と原子の大きさである。
     なので、トンネルを両側から掘るように、最大のものと最小のものの両側から挟み込むようにアプローチする。

    (3)問題を分割して推定の階層構造をつくる
    (4)知らなければならない質問をリストアップする

    をやった結果、わからないところは上限・下限を考えて幾何平均で推定して、数値まで入れたのが次の推定構造図である。

    DNAの長さ推定
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     鍵となるのは、推定構造図の枝の先にあたる「細胞の大きさ」と「塩基対を構成する原子の数」である。

     「細胞の大きさ」は、目には見えないこと(0.1mm(=10-4m、細い髪の毛の太さ)くらいなら何とか見えるからそれより小さい)、しかし最初期の顕微鏡(倍率はよくて100倍程度)では見えたことから小さくても10-4×10-2=10-6mくらいだと考え、これを下限と上限に幾何平均をとった。

     結果、人の細胞中にDNAをつなげると約1メートルになることが推定される。


     ほんとに便利なサイト、The Physics Factbookで「Length of a Human DNA Molecule」というページを見ると、人の細胞中にDNAをつなげると1.5〜3メートルとある。



    ◯タバコ1本あたりどれだけ寿命が短くなるか?

     ちゃんと答えるには大規模な疫学調査が必要な問題も、大雑把になら見当をつけることができる。

    tabaco.png
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     「タバコの毒で直接死ぬというより肺がんなど病気にかかりやすくするのが、喫煙が命を縮める主たる理由だろう」というぼんやりした考えを元にして、「中年以降に死亡原因となる病気にかかりやすくなるだろう」というぼんやりした予想から、
    ・上限「ワーストケースとして40歳で肺がんになり死ぬとして、ベストケースで本当は80歳まで生きることができたはずだったとすると」
    ・下限「1年未満しか寿命が縮まないような軽微な影響だとすると、盛んに禁煙を勧めたり禁止したりする理由が立たないので」
    として幾何平均をとり、タバコによる寿命短縮をざっくり√(1*40) ≒ 6年としたのが、この推定の中心である。


     British Medical Journalに掲載された、そのままズバリの論文によれば、喫煙者と非喫煙者の平均余命の差は6.5年とされている。

    ※Shaw, M., Mitchell, R., & Dorling, D. (2000). Time for a smoke? One cigarette reduces your life by 11 minutes. British Medical Journal, 320(7226), 53-53. (リンク




    ◯1万人規模のイベントで仮設トイレは何個必要か?

     ほんのり実用的(?)な問題もとりあげてみよう。

     この問題を考えるには、待ち行列理論を使うにしても
    ・利用者はどれだけの頻度でトイレにやってくるか?
    ・一人当りどれだけの時間トイレを使用するか?
    ・待ち時間が出るとして、どれくらいの時間なら許容できるか?
    などのデータが必要だが、これらを調べることなしに大雑把にでも推定することは可能だろうか?

     ここでは2つの強力な(強引な)仮定をおいて、推定を可能にしている。
     ひとつは【平均人の仮定】である。これは、「私(推定者)がある行動をする頻度は平均的である」というものである。
     例えば、もし私が一日に平均10分間トイレを利用しているならば、十分に大きな人数について調べれば(10分以上の人も以下の人ももちろんいるだろうが)そのトイレの平均利用時間はやはり10分になる、と考えるのである。
     もうひとつの仮定は【一様分布の仮定】である。これは、「人がある行為をする確率はある期間では一定である」という仮定である。
     例えば、十分に大きな人数について調べれば、トイレは行くタイミングは均等にバラけており、特別に混雑する時間や閑散とする時間はない、と考えるのである。
     これらの強力な仮定を置くことで、私(推定者)がトイレにいく頻度が分かれば、それをそのまま十分に大きな集団に適用できることになる。
     
     私がトイレにいる平均時間がはっきりしないが、ここでは
    ・下限5分間:1回最低1分としても5回くらいは行く
    ・上限100分間:1日1時間半もトイレにはいない
    として幾何平均をとり、私が1日のうちトイレにいる時間20分(起きている時間16時間≈1440分のうちの1/72)とした。

     ここから必要なトイレの個数を1万人×1/70(70人につき1個)≈130個とした。

    toillet.png
    (クリックで拡大)



     この推定の問題点は、休憩時間が決まっていて、その時間に利用者が集中するコンサートやスポーツのようなイベントは想定していないことである。

     「仮設トイレの設置数はイベントの内容で条件が大きく変わるため必要数の算定方法がない」(出典:信濃毎日新聞 1996年6月27日)ようだが、災害用の仮設トイレ設置の基準だと、次のようになっている。

    災害用トイレ設置基準

     なお、利用者数に応じたトイレの利用者数の想定においては、日本だと、社団法人空気調和衛生工学会(HASS)による適正な衛生器具数の算定法が広く用いられるが、休憩時間に利用が集中すると考えられるホール・劇場について、トイレの適正器具数の算定法について、リンク先(pdfファイル)を参照。

    ※空気調和衛生工学会規格(SHASE-S206)にて算定方法(技術要領「衛生器具の設置個数」)が示されている。








    (参考文献)

    ○Swartz, C. E. (1972). Used math for the first two years of college science. Englewood Cliffs, N.J: Prentice-Hall.

    Used Math for the First Two Years of College ScienceUsed Math for the First Two Years of College Science
    Swartz

    Amer Assn of Physics Teachers

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     オーダー推定やBack-of-the-Envelope (BotE) Reasoningに関する文献をたどっていくと、Clifford Swartzのこの書物に行き着く。
     シュワルツは高校・大学の物理教員向けの専門誌The Physics Teacherの編集長を30年近くつとめ、この後も"A search for order in the physical universe"(1974)や"Back-of-the-Envelope Physics"(2003)という書物を著している。
     "Back-of-the-Envelope Physics"はブルーバックスから以下の翻訳が出ている。

    物理がわかる実例計算101選 (ブルーバックス)物理がわかる実例計算101選 (ブルーバックス)
    クリフォード・スワルツ,園田 英徳

    講談社
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    ○Harte, J. (1988). Considere a spherical cow: A course in environmental problem solving. Mill Valley, Calif: University Science Books.

    Consider a Spherical CowConsider a Spherical Cow
    John Harte

    W.Kaufmann,U.S.
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     物質循環(生物地球化学サイクル)を中心とした環境科学について、Back-of-the-Envelopeで考える教科書。
     原著タイトルを直訳するなら「牛(の形)が球であると仮定しよう」。
     アメリカの大学関係者の間に伝わる次のようなフォークロアが元になっている。

    牛乳の生産性が低かった酪農家が地域の大学に支援を得られるよう手紙を書いた。
    早速、教授たちからなる学際的なサポートチームが結成され、二週間に渡る徹底的な現地調査が行われた。
    データでいっぱいになったノートを持って学者たちは大学に戻り、最後に報告書作成の任務がチームリーダーの理論物理学者に委ねられた。
    しばらくして酪農家は、大学から報告書を受け取った。
    報告書は、酪農家にとって命の次に大切な牛について次のような記述で始まっていた。
    「Considere a spherical cow.(牛(の形)が球であると仮定しよう)・・・」



     報告書を受け取った、酪農家のなんとも言えない顔が思い浮かぶ。
     この口伝を伝えた人はおそらく「理論(家)は実社会の役にたたない」という教訓を込めたと思われる。
     しかしハートは、これを逆手にとり、問題解決のためには本質を変えることなく不要な詳細をうまく捨てて問題を単純化する必要があることを示す、モットーにした。
     この書にはHarte, J. (2001). Consider a cylindrical cow: More adventures in environmental problem solving. Sausalito, Calif: University Science Books.(牛を円筒であると仮定しよう)という続編があり、この2冊はそれぞれCow-1、Cow-2という略称で呼ばれている。
     Cow-1については(チャーミングなタイトルが見る影もなくなっているのが残念だが)、以下の邦訳がある。

    環境問題の数理科学入門環境問題の数理科学入門
    J. ハート,小沼 通二,蛯名 邦禎

    丸善出版
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    Weinstein, L., & Adam, J. A. (2008). Guesstimation: Solving the world's problems on the back of a cocktail napkin. Princeton, N.J: Princeton University Press.

    Guesstimation: Solving the World's Problems on the Back of a Cocktail NapkinGuesstimation: Solving the World's Problems on the Back of a Cocktail Napkin
    Lawrence Weinstein,John A. Adam

    Princeton University Press

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     タイトルのGuesstimation(Guesstimate)は、1934~35年ぐらいにつくられた、guess(推測する)とestimate(見積もる)のかばん語(混成語)。
     オールドドミニオン大学でPhysics on the Back of an Envelopeのコースを担当していたワインシュタインは、収集した膨大な推定問題をネットでも公開していた(そのアーカイブ)。問題収集の協力者の一人、同僚で数学者のジョン・アダムスと共著で書いたのがこの書。
     日常の問題からはじめて、科学的な問題に入っていく。幾何平均を使うテクニックも紹介している。

     これにもWeinstein, L. (2012). Guesstimation 2.0: Solving today's problems on the back of a napkin. Princeton, N.J: Princeton University Press.という続編がある。

     Guesstimationの方には、次の邦訳がある。

     
    サイエンス脳のための フェルミ推定力養成ドリルサイエンス脳のための フェルミ推定力養成ドリル
    ローレンス・ワインシュタイン,ジョン・A・アダム,山下 優子,生田 りえ子

    日経BP社
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    (参考サイト)

    A View from the Back of the Envelope http://www.vendian.org/envelope/

     Back-of-the-Envelope (BotE) Reasoningを含む、approximation(近似法)を扱った、最も浩瀚なサイト。
     「Scaling the universe to your desktop」や「How Big Are Things?」は予備知識無しに楽しむことができるだろう。
     ネット上のリソースから書籍、論文から絵本まで、大抵のものはこのサイトからたどることができる。


    Science Plympics - Fermi Questions

     274のフェルミ問題のリスト


    Wolfram Alpha

     言わずと知れたウルフラム・リサーチ開発の質問応答システム。
     いわゆるフェルミ問題をそのまま投げても(英語なら)、次のような感じでガチな答えを返してくれるので、自分でやってみた後の〈答え合わせ〉に使える。

    How many golf balls

     それもただの答えでなく、[show detail]をクリックすると、概数を出した考え方まで表示してくれる。すげえ。

    How many golf balls2



     



     
    時間がない人のための要約

    ・長い文章を書くにはアウトラインプロセッサが便利

    ・アウトラインプロセッサは、
    (a)文章の論理構造
    (b)(執筆中に直面する)文章の複雑さ・長さ
    の両方を、書き手が随時コントロールしながら執筆するための道具


    ・アウトラインプロセッサを使うと〈今できるところから〉書くスタイルがとりやすい

    ・《発想》《構成》《剪定》の作業を分けると効率が良い




    まず、

    ・何故この世界にアウトラインプロセッサなんてものが存在するのか

    そして

    ・アウトラインプロセッサが何をもたらすのか

    について解説し、その後、

    ・アウトラインプロセッサを使って書く実際の作業プロセス

    の一方法について説明する。



    アウトラインプロセッサとは?


     辞書的に言えば、アウトラインプロセッサとは、文章の構成(アウトライン)の組立てや章・節の構成・変更を容易にする機能を備えた文書作成支援ソフトウェアである。
     英語ではoutlinerという呼称が一般的である。

     以下ではまず、アウトラインプロセッサならば必ず登載されている基本機能について説明しよう。

    ※以下の説明はアウトラインプロセッサ機能を持ったテキストエディタやワープロソフトにも当てはまる
     

     
    章や節や段落などを階層化されたブロックとして扱える


     アウトラインプロセッサでは、インデント(字下げ)を使って、文章の部分部分をひとかたまりのブロックとして扱い、ブロック同士を階層化できる。
     例えば、章タイトルのブロックに下位項目としていくつかの節タイトルを従属させたり、節タイトルに下位項目としていくつかの段落を従属させることができる。

     下の3つの例で囲まれているものは皆ブロックである。

    block3.png


     下の例で「構成を考えることから文章書きに着手するのに便利」という項目には、

    ・元々、アウトラインプロセッサはこのためのもの
    ・(ある程度以上の長さの文章だと)最初から最後まで止まらず迷わず書き抜ける人はあまりいない
    ・既存の構成(フォーマット)を選択し採用することも含めて
    ・構成(アウトライン)は、文章(文)レベルでなく、単語レベルで作成可能
    ・書きたいことと書くべきことのバランス

    という5つの下位項目が従属している。

    block2.png


    下の例で、「アウトラインプロセッサを使うメリット」という項目には、
    ・構成を考えることから文章書きに着手するのに便利
    ・発想と構成の作業を分離できる
    ・(総じて)常に〈今できるところ〉から文章書きの作業に着手/再開できるよう支援するソフトウェア

    という3つの下位項目と、それらに従属する更に下位レベルの項目が、従属している。

    block1.png


     こうして文章の階層構造を持ったブロックの集まりとして扱うことが、アウトラインプロセッサとこれを用いた文章作成の中核である。
     
     そのため、アウトラインプロセッサでは、インデント(字下げ)で階層構造化したブロックごとに以下のような操作ができる。

    ブロックごとに表示したり隠したりできる

     このご利益は、文章の構造(アウトライン)だけをみたり、細部を表示したりできること

     例)各章の見出しだけを表示して、全体構造を見る

       outline-toplevel.png


     例)ある節だけ細部まで展開して、現在検討中の範囲(だけ)を表示する
     
       outline-detail.png

     

     この機能によって、長く複雑な文章のうち、必要に応じて現在検討中の範囲やレベル(だけ)を表示し編集することができる。
     言い換えれば、複雑で長い文章を書く際、執筆者が取り扱える限度に、常に複雑さや長さをコントロールできる訳である。



    ブロック単位での編集が容易


     普通のテキストエディタやワープロの文書編集機能に加えて、ブロック単位でのコピー・移動・階層移動が行える。

     ブロック単位で階層レベルを上下に変更

    例)章を節に格下げ、節を章に格上げ

     ブロック単位で位置(前後)を入れ替え、移動

    例)1章の中にある節を、その中にある段落ごと、別の章に移動する

     ブロック単位でのコピー

    例)ある章を、その中にある節・段落ごとコピーする



    アウトラインプロセッサを使うメリット


     では、こうしたアウトラインプロセッサの機能は文章作成に何をもたらすだろうか?


    構成(アウトライン)先行の文章作成

     その名が予告しているとおり、アウトラインプロセッサは、構成(アウトライン)を考えることからはじめる文章作成をサポートするものである。
     
     ある程度以上の長さの文章だと、最初から最後まで止まらず迷わず書き抜ける人はそう多くない。
     行き当たりばったりの文章作成は書きなれた人にとっても危険が多い。
     何を書いていいのか分からなくなって行き詰まり、何を書いているのか分からなくなって踏み迷う。
     加えて必要に迫られての文章作成は、制限事項や必要事項がほぼ必ず着いてまわり、おまけに締切りが追ってくる。
     
     制限事項を守り、必要事項を盛り込み、締切りに間に合うよう速く、しかも少しでも楽に書くためには、既存の構成(フォーマット)を選択し採用することも含めて、まず文章のまず構成(アウトライン)を考えた方がよい。
     構成づくり自体は、最初から完成形の文章を書き始めることに比べれば、はるかに時間も労力も少なくて済む。
     というのも、構成(アウトライン)づくり自体は、文章(や文)を書かなくても、単語・フレーズのレベルで可能である。
     むしろ短い言葉で書いた方が、入替えや並べ替えがしやすく、ああでもないこうでもないと構成をいじりやすい。
     短く言葉でコンパクトに書くことで全体を一目で見る(一望する)ことが容易になる(アウトラインプロセッサのブロック単位の表示・隠し機能もこの一望性に貢献する)。
     また単語レベルで構成を考えると、つなぎ言葉など前後の文脈を規定する言葉は除かれ、位置・階層レベルを変えるだけで各項目の関係を組み直せる。
     文章作成の他の作業から構成づくりを取り出すことで、構成の作成・変更の作業を軽くし、文章作成全体の作業を軽減することになる。


    文章構成の一望化
     
     アウトラインプロセッサを使うことは、単に構成づくりの作業の分離を促すだけではない。
     文章作成の全過程で、文章の構成を念頭において作業することが容易になる。
     ブロック単位での表示・隠し機能を使うことで、全体の構成を俯瞰したり、細部に集中したりといった切替えが自在にできる(文章のズームアウト/クローズアップ)ので、《過度の複雑さのために構成》の作業が混乱・停滞する危険を減らす。
     またインデントにより構造化しつつ書くことになるので、常に何が文章の幹であり何が枝であるかが明確であり、また明確化することを求められる。すなわち文章の論理構造を自覚的に取り扱うことになり、そのトレーニングにもなる(俗っぽく言えばアタマが良くなる)。

     アウトラインプロセッサを使うことで、構成づくりの作業のはじめからおしまいまで、論旨の迷走や構成の破綻が起こりにくくし、起こった場合にも修正ができるだけ容易にできるように支援する。
     

    発想と構成の分離

     文章作成の他の作業から構成づくりを取り出したように、アウトラインプロセッサの使用は、発想と構成の作業を分離することを助ける。
     この二つを分離すべき理由は次の通りである。
     発想(思いつき)を促進するためには、できるだけ制約条件を外し、判断すること・結論を出すことを控えるべきである。
     構成はこれとは逆に、たとえば章・節・段落・文の包括(上下)関係や前後関係などを制約条件として、考慮に入れておこなわざるを得ない。文章の各部分は互いに依存し合い制約し合うから、このことは必然である。
     正反対の志向を持つ2種類の作業は、できれば分離して行った方が互いに邪魔し合う弊害が減じる。
     アウトラインプロセッサによる文章作成では、順序や階層レベルの変更を簡単にブロック単位でできることから、まず思いつくだけ書き出す(発想の作業)、しかる後、並べかえる(構成の作業)ことに専念する、といった作業の分離が行いやすい。
     後で見るように、本記事でも、そうした使い方を推奨する。
     

    〈今できるところ〉から着手する

     さらにもう一つ、アウトラインプロセッサは、人を最初から順番に書くことから解放し、〈今できるところ〉から文章書きの作業に着手/再開することを支援する。
     最初に全体の構成を考えて書くこと自体、文章を順番に書くことからの逸脱だったが※、文章を構成する部分を発想することも、それを並べ替えて構成をつくることも、粗い構成を細分化していくことも、それらを最終的に文章化することも、どれも文章の順序どおりに行う必要はない。

    ※建物を建てる際、北西角の一角を完成させてから他の部分を建て始める、といったことはしない。基礎全体を作り、土台を敷き、柱などの建方へと作業は進んでいく。構成を考えてから文章作成をはじめることは、これに比較できる。
     
     アウトラインプロセッサを使った文章作成では、文章の構成要素を階層化されたブロックとして扱うといったが、その階層はいつでも並べ替え・組替えが可能であり、また容易である。あとでいくらでも順番を変えることができるものして文章を書いていくのだから、「最初から順番に書く」ことに拘泥するのは無意味である。
     また、最初に全体構造を組み立てることから始めたが、アウトラインプロセッサを使っていれば、どれだけ書き進んでも最上位の章立てレベル以外を隠して、全体構造が一望できたところにいつでも何度でも戻ることできる。
     自分が書き出した込み入った文章に言葉のジャングルか迷路のように迷いだしたら、いつでも上空から迷路全体を俯瞰することだってできる。
     つまるところ、すでに大まかな構成はできているのだから(そして大まかな構成をやり直すことだっていつでもできるのだから)、好きなところ書きやすいところから書いていっても、どこにも行き着かず迷走することはない。
     
     
     以上が、何故この世界にアウトラインプロセッサなんてものが存在するのか、そしてアウトラインプロセッサが何をもたらすのかについて述べた一般論である。
     以下では、実際はどんな風にアウトラインプロセッサを使っているかを紹介するが、あくまで一個人の使い方なのでクセや偏りがあるはずなので、補完するために上記の一般論を先に置いた。




    アウトラインプロセッサを使った文章作成のプロセス


     アウトラインプロセッサを使ったは、次の三つのパートに分かれる。
     1.アウトラインづくり、2.アウトラインの剪定、3.文章化

     実際は、この3つを行ったり来たりすることになる(長い文章ほど往復する回数は多くなる。今回の文章程度だと2往復くらい)。
     


    1.アウトラインづくり


     アウトラインづくりは、基本的にトップダウンの作業となる。
     まず全体の構成をつくり、それを細分化・詳細化していくことで、アウトラインを成長させていく。
     
    (1)最上位レベル


    (a)既存のフォーマットの選択・採用


     最上位レベルの構成は、文章のジャンルや分野にある既存のフォーマットを使うことが多い。
     理由には、書き手側の利益だけでなく、読み手の利益も含まれる。すなわち、

    ・すぐ取り掛かれる(何から書き始めるのか迷わなくて済む)

    ・安定した効果を期待できる

    ・読み手の想定を裏切らず読みやすい


     逆に言えば、読み手の想定を裏切る必要のある文章を書く場合は、その限りでないことになる。
     しかし実際は、物語のようなものでも、最上位レベルに関しては、既存のフォーマットにしたがっていることが多い。
     
     先に述べたように、アウトラインはいつでも、どんなレベルでも変更可能だから、後で変えることになったとしても、最初は既存のフォーマットからスタートする手もある。
     
     過去記事で、文章の種類やジャンルごとに既存フォーマットについて述べたものは、以下の通りである。参考にされたし。


    ・実用文のフォーマット




    ・論文のフォーマット




    ・手紙文のフォーマット




    ・読書感想文のフォーマット




    ・物語のフォーマット
     




    (b)書きたいことと書くべきことを箇条書きする


     しかし既存のフォーマットは汎用であるために中身がない。
     様々なことに用いることができるよう、わざと空白にしてある。
     
     したがって、既存のフォーマットを使うにしろ使わないにしろ、何を書こうとするのか、書き手であるあなたが決めなくてはならない。
     そして、○○について書こうと決めたら、今度はそのためにどんなことを書かなくてはならないかについても考えなくてはならない。
     書きたいこと(want to write:WTW)と書くべきこと(need to write:NTW)は、アウトラインの必須項目である。
     既存のフォーマットは文章のおおまかな順序や構造を与えてくれるだけでなく、空白を書き手に差し出すことで、書きたいこと(WTW)と書くべきこと(NTW)を呼び出す呼び水となるものである。
     
     《発想》と《構成》の作業を分けて行う基本ルールに従って、まずは書きたいこと(WTW)と書くべきこと(NTW)を、思いつく限り書き出してみよう。
     長い文で書いてしまうと取り回しが悪い。
     この段階では、やや言葉足らずでかまわないから、単語かフレーズの形で思いつきを書き並べていく。もちろん順序は問わない。

     書きたいこと(WTW)と書くべきこと(NTW)以外に浮かんできたものも、とにかく書き出そう。
     現時点で不明なこと、書くに当たっての懸念、その他、書くべきでないことや、とくに書く必要でないことも出てくるに違いない。
     にごった井戸を澄んだ水が出てくるまで汲み上げるようなもので、無駄に思えるものを外に出した後に、採用すべき思いつきが出てくることも少なくない。
     
     書き出せるだけだしたら、軽く分類するなり、既存のフォーマットに当てはめるなりすれば、スタート地点としての最上位レベルのアウトラインは、とりあえずできたことになる。
     
     なお、不要にみえる項目も削除せず、(ゴミ箱)という項目をつくってその下位項目として移動しておくことをお勧めする。
     最終稿の中に生かされなくても(そして一見まぬけに見えても)、こうしたジャンク項目はひそかに書き手の知性と動機付けの水位を上げてくれているのだ。
     
     
     では、次の細分化の作業に入っていこう。


    (2)細分化の作業


     ここまで着たら、大まかな項目が箇条書きとして並んでいるはずである。
     これ以降、それぞれの項目を細分化・詳細化していくことで、アウトラインを成長させていく。
     
     大原則は〈今できるところから〉行うである。
     詳細化は、項目によって難易の差が大きい。向こう見ずに最難関から突破しようとせず、最も取り組みやすそうなところから手をつけることを勧める。
     
     細分化・詳細化には、今の時点では抽象的に、あるいはぼんやりとしか分かっていない/考えていない事項について、より詳しく何であるのか(あるべきか)を突き止め、議論を詳細化し深めていく必要がある。
     
     具体的には、それぞれの項目について、自問自答を行っていくことになる。
     つまり、いま詳細化しようとしている項目を「問い」として捉えて、その答えを、下位項目として追加していくのである。
     そうしてでてきた下位項目についても問答を行い、さらに下位項目を追加していく。
     この繰り返しでアウトラインの細分化を行っていく。
     
     どのような問答を行うべきかは、書いている文章やアウトラインの段階によって様々だが、よく使われる問いを並べてみると以下のようになる。

     ・「~とは何か?」-本質:定義を導く
     ・「言い換えると?」-説明・言い換えを導く
     ・「具体的には?」-説明・事例を導く
     ・「どんな例があるか?」-例示を導く
     ・「何故そう言えるのか?」-根拠を導く
     ・「その後は?」ー帰結・結果を導く

     作業の進め方は、最上位レベルでやったのと同様、《発想》と《構成》の作業をを分けて行うのがいい。

     まず《発想》の作業では、ここでも思いつく限りとにかく書き出していく。
     導きの問いを参考に、今のアウトラインの各項目に問いを投げかけ、あるいは問いの形にして、答えらしきものが浮かぶ限り書き出す。
     先に言ったとおり、無関係くさいものも、同考えてもハズレな答えも、とにかく書き出してしまった方がいい。
     うまい答えが出ないからと止まってしまうと、自分の中の検閲官に追いつかれてしまい、効率は落ちてしまう。
     そうした自己検閲をなるべく避けるために、《発想》と《構成》の作業を分けるのである。
     
     問答の答えを書き出し終えたら、《構成》の作業として、新たに書き並んだ下位項目をしかるべき順に並べ替え、不要な項目を削除せずゴミ箱項目に移し、作業中に他にも必要な項目が思い浮かべば追加していく。

     
     細分化は、今述べたように、何重にも繰り返す必要がある。
     一通りやり終えた後に、最初に手をつけた項目を見直すと、さらに細分化を続ける必要に気付くことがある。
     詳細化する過程で、書き手の理解が進み思考が深まったのである。
     
     言うまでもなく、この細分化の作業が、アウトラインづくりの中心であり、最も時間がかかるところである。
     


    2.アウトラインの剪定


    (1)アウトラインづくりは必ず行き詰る


     アウトラインづくりは、基本的にトップダウン、全体構成から細部へ進む作業になるが、そうそう一直線に下っていけば完成するものではない。
     
     大抵の場合、アウトラインが詳細になっていくと、どこかで行き詰ってしまい先に進まなくなる。
     たとえばいくつもの筋や要素が入り組んで見通しが極めて悪くなったり、本筋が何であるかが見えにくくなる。
     
     また手がける文章が長ければ長いほど、細部が出来上がってくると、最初に決めた全体構成のところどころに不整合や改善点が見えてくる事が多い。
     全体構成を決めたときには、文章を構成する細かい要素の隅々まで念頭において考えられた訳ではない。アウトラインを細分化する中で素材や構成と格闘しているうちに、そうした細部が持つ意味が見えてきたり、他の要素とのつながりが発見できることは少なくない。
     最初は必須に思えた要素がそれほど重要ではなくなくなったり、繰り返しが過ぎてうるさく感じるようになったり、不要部分や重複部分も目に付いてくる。
     もちろんすべての重複部分や不要部分を取り除けば済む訳ではない。冗長性のない文章は、踊り場のない階段のようなもので、読みづらく、かえって伝えるべきものを伝えにくくなる。
     
     重要なのは、この行き詰まりは、最初の目論見が甘かったことだけから生じているのではないことだ。
     今のあなたは、かつてのあなたと同じではない。あなたの知力は、このアウトラインに取っ組み合うわずかの間に、いくらか成長したのだ。だからこそ弱点に目が行き、改善すべき点に意識が向く。

     書くことは気付きを生む。
     人は理解したことを書くばかりでなく、理解するためにも書く。
     あるいは最初の理解を乗り越えるために書くのだとも言える。
     そうでなければ、今も書かれている多くの見返りのない文章は書かれぬままだっただろう。
     だから、これは良い徴候だ。つまり、ようやく本当に頭で考えることができる段階に来たということだから。
     
     細分化を進めてアウトラインが育ち切ったら(そしてアウトラインの繁茂が道をふさぎ出したら)、全体を見直す機会である。
     
     
    (2)剪定の作業


     樹木の剪定とは異なり、アウトラインの剪定は、取り除くだけではなく増補する必要も同じくらいある(アウトラインは樹木とは違い自力では成長しない)。
     それでもあえて剪定の比喩を使うのは、木の枝葉に近づきハサミを使った後、木から離れて全体像を見ることで成果を確認する、という作業が、ここでのアウトラインを整える作業に似ているからである。
     削除したり増補したりした後、その成果を評価するには、より広い範囲を見ながら行わなければならない。
     つまりアウトラインを整理する作業は、より上位の項目のレベルや全体構成のレベルにまで、繰り返し戻って確かめることが必要になる。
     
     上位レベルを参照しながら、次のようなことを確認する。
    論理的に破綻してないか?

    前後関係に問題はないか(まだ出てこない事項を参照したり前提にしていないか)?

    重複した部分はないか?→あればどれを生かすべきか?一方を「何章を参照せよ」にするか?複数生かすなら表現を変えるか?

    不要な部分はないか?→省略できないか?本文ではなく注記に回すか?


     こうしたことを確認しながら、アウトラインに対して移動と除去と追加を行っていく。

     
    (3)大きな変更が必要な場合


     部分的な手直しでは足りず、章立ての順序を入れ替えたり、一つの章を分割したり、また複数の章を合体したり、と大きく構成を変える必要が出てくるかもしれない。
     書かれている内容が同じでも、構成が変わると(順序の変更のようなものですらも)、文章はまるで異なったものになる。
     今まで手を掛けて育ててきたアウトラインほど、下手に手を入れたら台無しになりはしないか、と手を出しづらくなる。
     
     対策はいろいろあるが、一番簡易なのは、先のバージョンのアウトラインはまるごと残しておくことだ。
     こうしておけば、安心していくらでもいじり回すことができる。
     いじり倒してうまく行かなかったら、うまくいかなかったバージョンとして、それも残しておく。
     
     最終的にボツになるアウトラインにも、後で役立つヒントが含まれることがある。
     失敗をもたらした大胆な改造は、少なくともその時点では、少なくとも意図においては、採用すべきものがあったはずである。それを消してしまっては、心理的に、その良き意図ごと捨ててしまうことになる。
     失敗バージョンを残しておいた方が、あとでその意図をもっとうまく実現する成功バージョンが生まれやすい。
     
     
    (4)煮詰まったら違うフォーマットに変換してみる


     アウトラインプロセッサは、基本的にコンピュータの上で文書作成が完結するように作られたツールである。
     しかしユーザーはそれに縛られる必要はない。
     作業途中の文章がコンピュータの中にあるとつい忘れがちだが、ひどく行き詰ったら、あるいはいろいろ改変を試みてもうまくいかなかったら、手をつかって紙に構成を書き出してみるだけでも、思わぬ展望が開けたりする。
     箇条書きでもいいし、項目同士を線で結んでチャート化してもいい。表にまとめてみるのもいい。
     あるいは音声言語を使って誰かに概要を説明してみるのもよい。
     
     

    3.文章化の作業


     細分化と剪定を経て、アウトラインが十分に熟したら、単語レベルから完全な文・文章のレベルへ移行する段階である(実際は締切りが迫るとか外的な要因に促されて、文章化に進むことが多いが)。
     
     
     ここでも〈今できるところから〉着手する原則に従う。
     つまりアウトラインの文章化もまた、取り組みやすそうなところから、どんどん作業をしていい。最初からでなくてもかまわない。
     
     いきなり最終稿を作ろうとするより、ドラフト(下書き)のそのまたドラフト(下書き)を書くぐらいの感じで進めた方がスムーズに進み、手直しも案外少なくて済む。
     
     詳細化の作業がそうだったように、文章化してみることで、改めてアウトラインの過不足や順序の問題に気付くことも多い。
     つまり文章化を進めるうちに構成を変える必要はどうしても出てくる。
     丁寧にやるなら、1.アウトラインづくり や 2.アウトラインの剪定の段階にまで戻ってやり直すべきである。つまり《発想》《構成》《剪定》の作業をもう一度行うことになる。この章の最初に述べた「この3つを行ったり来たりすることになる」とは、このことである。
     大規模に変更する場合は特に、やり直した方が結局速く済む。