少しでも文章を書いたことのある人なら誰でも、滑るように快調に書き進んでいた手がいつしか重くなり、そのうち行き詰まってしまった経験があるだろう。
     そして行き詰まったまま途中で放り出してしまった、未完結の文章がいくつもハードディスクの底に眠っている。
     まだ書き始めていない人が「何をどう書いたらいいのか分からない」というのは、まだ分かる。
     けれど、さっきまで散々書いていた人が、「何をどう書いたらいいのか分からない」状態に陥るのはどうしてか?

     初期の知覚研究が錯覚を研究対象にしたように、あるいは誤答の研究が問題解決の重要な部分を明らかにしたように、「書けない」ことの分析は「書くこと」の本質のようなものに光を当てるかもしれない。

     正解かどうか分からないが、答えの一つはこうだ。



    内なる仮想の読み手

     我々が何か書いているとき、話すときなどと違って、受け手がいま目の前にいる訳ではない。
     つまり話すことと違って、受け手(聞き手)からのリアルタイムの反応を受け取り、それによって何をどのように話すのかについて不断に調整する、といったことができない。
     フィードバックを受け取るために、書き手は、自分の中に仮想の読み手をつくり上げる。
     仮想の読み手は、書き手の内にいるが、機能的には書き手から一応独立している(仮想の読み手は、書き手の言いなりにならない)。
     書き手は、多くは無意識に、自分の内の仮想の読み手の反応を受け取って、何をどのように書くのかを、不断に調整していく。
     これが我々が執筆している間に生じていることである。

     仮想の読み手から得られるのは、多くはネガティブなフィードバックだ。
     「そっちじゃない」「それ、やりすぎ」「そんなのでほんとにいいの?」という否定的な反応があるからこそ、我々が書く文章は、そうひどくは道を踏み外さなくて済む。

     書き手自身の言いなりにならない仮想の読み手を構築するために、書き手は自分以外の言葉や思考や論理やルールや価値観、あるべき理想などを素材としてかき集める。
     仮想の読み手からのフィードバックのおかげで、書くことは真っ暗闇の中をデタラメに走り回るようにはならない。
     書いたものは支離滅裂でなく、完璧ではないにしてもいくらかのまとまりを持ったものになる。

    writeread in the brain

     仮想の読み手は、大げさに言えば、書き手の内側に仮構された社会だ

    あるいは、社会とは、内側に〈仮構された社会〉を持つ人たちによって/彼らのやりとりを通して、構築され維持されるのだと言ってもいい。

     そして、誰でもない仮想の読み手に読まれるように書くからこそ、そうして書かれた文章は不特定多数の読み手に対して開かれたものとなる。
     書き手以外の人にも、書き手がまだ知らない誰かにも、読むことができるものになる(可能性を持つ)。
     書いたものがただ物理的に存続するだけでは、書き言葉は集団や共同体や時代を越えて広がる可能性を持たなかっただろう。
     
     仮想の読み手が、書き手の言いなりにならないことは不可欠なことだが、しかし、良いことばかりではない。

     あなたの心の何処かから浮かび上がる、文章に対する自己否定的な思考や感情はもちろん、言いなりにならない仮想の読み手から生じてくる。
     「小学生向きの小説の書き方」で紹介した、書き手を苦しめ、その自由を奪い、最後には書けなくしてしまう「内なる編集者」もまた、この仮想の読み手の別名なのだ。





    書くことは何故苦しいのか?

     書くことは何故かくも苦しいのか?
     それは、書くことが半ば必然的に自己を分裂させるからだ。

     書く際に、前に進む力も、それを留める力も、我々の内側から生じてくる。
     一方向の情動ならば、我々を翻弄するにしても、我々をかくも激しく引き裂いたりはしない。
     互いに背き合う力が、書くことには必要だ。

     しかし、その力はしばしば、書くことに対して破壊的に作用する。
     書き手を苦しめ、書く手と心に鎖をかけ、すでに書き終えられたものすら廃棄させたりもする。

     事が書くことの本質に根ざすのであれば、回避することはできないのだろうか。
     イエス。
     しかし我々は何もできない訳ではない。


    ではどうすればいいか?

    (1)受け入れる

     一番手っ取り早く効果が高いのが(人気はイマイチだろうが)、仕方がないと受け入れることだ。

     実は、先程までの長い前口上は、そのために(何も失わないという意味で都合の良い解決策を断念するために)書かれている。

     書くことが要請する自我の分裂は〈仕様〉だと認めることは、あまりなぐさめにはならないが、皆が同じ状況にいることを気づかせてくれる助けにはなる
     そして、痛みに必要以上の関心を払うならば楽しむ機会をいくらか失ってしまうだろうということを、思い出させてもくれる。

    自分が本当に凡庸であると認めることは、思った以上に難しい。

     苦痛は決してゼロにはならない。
     が、それが何故かを知ることは、少しは苦痛を耐えられるものにする。
     本当に苦しいのは、苦痛そのものではなく、苦痛が無意味であることだから。

     加えて、ひとつ良い知らせがある。
     このブログでも繰り返し(こことかここで)書いてきたように、不安や恐怖などの悪感情は、回避すればするほど悪化増強する性質がある。
     苦痛を受け入れることは、その反対の結果を生む。すなわち、それ以上ひどくならないという効果が得られる。


     以下に続く、長くないリストの方法は、苦痛を回避するために常用すると逆効果であるという認識を、利用の前提とする。
     
     
    (2)象徴的に殺す

     前に小学生向きの小説入門を書いた時は、こうした書くことについてのダークサイドについては触れずに済ませた。
     過保護で気の利かない、悪い意味での大人的な気遣いだったと思う。
     代わりに内なる編集者を象徴的に殺す儀式を置いた。
     概して、子供は大人より「ごっこ遊び」が得意で、本気で打ち込める。

     これは科学というより呪術に属するアプローチだが、呪術の本質を理解すれば、その効果は予測できる。
     呪術が扱うのは、融通無碍で様々に定義し直せる《状況》という奴である。
     状況を定義し直すことで、事実それ自体は変わらなくても、事実の意味は変わる。

     再録しよう。

     君のなかの編集者を追いだそう

     君が書いたものに、下手だとか、クソだとか、いろいろ言ってくる奴がいるだろう?
     そう、君の心のなかにいる奴だ。

     そいつは男だろうか、女だろうか? 若い?年寄り? 何を着て、どんな顔をしてる?
     姿を想像して、下の箱の中になるべく詳しく描いてみよう。

    InnerEditor.png

     描けた?
     そしたら、切り抜いて4つに畳んで、タンスの奥か、洗濯かごの底か、机の下の引き出しに突っ込むか、なんなら君のペットの犬小屋に預けてしまおう。
     さあ、これでもう、君が書くのを邪魔する奴はいない。



     バカみたいだが、強すぎる「内なる編集者」の力を、一時的にだが弱める効果がある。
     書けなくなっている人が書き始めるには、それで十分なことも多い。
     ポイントは、クソ真面目に本気で取り組むこと。時間は数分もかからない。



    (3)速さで振り切る

     反省的思考は、認知的リソースを消耗するから、それほど素早くはない。
     
     以前、紹介した以下の方法は、内なる仮想の読み手を一時的にであれ置き去りにするアプローチである。



     ポイントは、制限時間を設けることである。

     これも再録しよう。



    (1)このワークに取り組む時間を決める

     1セット15分とか20分でやってみる。
     もっとやりたくなったら、もう1セット繰り返せばいい。

     
    (2)タイマーをセット

     紙(ノート)と筆記具、あるいはパソコンとテキストエディタなど書くために必要なものを準備する。それからタイマーを自分で決めた時間でセットする。


    (3)タイマーが鳴るまで書き続ける

     スタート。自分が決めた時間が過ぎるまで、何でもいいから、とにかく書き続ける。
     
     手を止めてはならない。読み返してはならない。消すなんてもってのほか。
     
     言うまでもないが、書き誤りや句読点や文法、改行や段落なんて気にしない。漢字が出てこないならひらがなでもカタカナでいい。レイアウトなんか犬に食わせてしまえ。

     しつこく言うが、文章を評価するあらゆる基準を無視すること。
     パクリ、月並み(クリシュ)でどこが悪い。
     筋道立てる必要だってない。さっき書いたことと、今加工としていることが、いやそれどころか主語と述語がチグハグだって、単語の繰り返しだって構わない。
     〈自己満足〉なんて僥倖(すごいラッキー)は期待するな。不満足のまま進め。
     っていうか考えるな。ひたすら言葉を吐き出すのだ。
     

    (4)もうだめだ、書くことがない、となったら

    「もうだめだ、もう書くことがない」と書け。なんでこんなことしなきゃならないんだ、と思ったら、そう書け。とにかくタイマーが鳴るまで手を動かせ。


    (5)ヤバイところに突き当たったら

     怖い考えやヤバイ感情に突き当たったら(高い確率でそうなる)、「ようやくおいでなすった」と思って、まっすぐ飛びつけ。少なくとも書こうとせよ。
     おそらくは、それが書くことを邪魔してるメンタル・ブロック(か、それにつながるもの)である。
     同時にそれは、どこかで聞いてきたようなお行儀のいいコトバ以上(以外)を書くためのエネルギーの源泉になる。




    (4)思考を離れ感覚にもどる

     手の動きが止まり、指先から生まれる言葉より、頭の中をぐるぐる回る言葉が上回りだしたら、それをねじ伏せようと頭がヒートアップしてますます訳が分からなくなるなったら、スイッチを切り替えるために感覚に戻る手がある。
     
    ・涼やかな音がする小さな鐘を用意しておいて、その音に耳をすませる
    ・もふもふしたものを両手の中につつんで、もふもふする
    ・匂い袋を用意しておいて、匂いをかぐ

     そうして文章に戻る際にも、感覚器官が受け取った刺激を言葉に変換する一種の機械になったつもりで、言葉をしばらく出力していく(不要なら後で消せばいい)。
     自分の内側に言葉を探すのでなく、刺激を言葉に逐語変換するような感じで。

     慣れると、外部の刺激なしにも〈感覚器官モード〉に切り替えられるようになる。



    (5)アクターを増やす
     
     書き手としてのあなた v.s. 内なる仮想の読み手

    という1対1の関係が煮詰まる原因だとすれば、そしてどちらも取り除く事ができないのだとすれば、関係を変えるためにできるのは、減らすより増やすアプローチということになる。
     事態はよりややこしくなるので、書くために使える認知リソースが余分に消費される欠点があるが、しかし場合によってはデッドロックを回避する妙手になる可能性がある。
     

    (a)特定の読者を想定する
     ある意味、伝統的に活用されているアプローチである。
     不特定多数のまだ見ぬ読者を代替するのが〈内なる仮想の読み手〉だとすれば、ひとつの方法は、特定の読者を想定してその相手に向けて書くことである。特定の読者を味方につければ、〈内なる仮想の読み手〉からネガティブな反応が返ってきても「いや、こういうのが〈特定の読者〉は好きなんだ」「こういうのを求めてるのだ」と反論できる。
     利点はそのまま欠点にもなり、うまく扱えなければ、〈内なる仮想の読み手〉と〈特定の読者〉がタッグを組んで、書き手のあなたを責めさいなむこともあり得る。

    (b)架空の書き手を導入する
     読み手でなく書き手の方を増やすアプローチである。
     例えば誰か特定の人物のゴーストライターをやっているという想定で文章を書く。
     稚戯のようだが、本当のあなたなら書かない(〈内なる仮想の読み手〉が許さない)ようなことも書くことができるのに気付くだろう。
     これもまた文学では伝統的なやり口である。


    (参考文献)
     
    〈内なる仮想の読み手〉というアイデアは、岡本夏木『ことばと発達』やG.H.ミード『精神・自我・社会』を参考にした。

    ことばと発達 (岩波新書 黄版 289)ことばと発達 (岩波新書 黄版 289)
    岡本 夏木

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    精神・自我・社会 (デューイ=ミード著作集)精神・自我・社会 (デューイ=ミード著作集)
    G.H. ミード,Georgr Herbert Meed,河村 望

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    [日本]
    コトバンク https://kotobank.jp

     朝日新聞、朝日新聞出版、講談社、小学館などの辞書から、用語を一度に検索できるサービス。
     百科事典では『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』『百科事典マイペディア』『世界大百科事典』『日本大百科全書』、他に人名辞典(デジタル版 日本人名大辞典+Plus|講談社、朝日日本歴史人物事典|(株)朝日新聞出版など)や現代用語(知恵蔵|(株)朝日新聞出版)などを横断検索できる。


    ●《和漢三才図会》(1715)
     医師であった寺島良安が、明の王圻の『三才図会』の形式により全体を96類に分類した図説。伝説を信ぜず、合理的、実証的で、異説も注記しており、現代にも通用する。
    (引ける訳ではないが、「九州大学デジタルライブラリー」で見ることはできる。http://record.museum.kyushu-u.ac.jp/wakan/

    ●《古事類苑》(1896‐1914)
    中国や日本の先行の類書の体裁にならった日本の百科全書。日本の歴史上,1867年(慶応3)までの制度・文物および社会全般の事項について,古今の書籍・文書などから関係する史料を原文のまま引用し編まれたもの。事項は天部,歳時部,地部,神祇部,帝王部以下,動物部,植物部,金石部まで30部に分けられ、一つ一つの事項には編者の説明はないが,各部の初めに総説,各編の初めには解題が,編者によって付けられている。
    古事類苑全文データベース http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/
    国文学研究資料館・古事類苑データベース http://www.nijl.ac.jp/contents/d_library/
    国際日本文化研究センター・古事類苑ページ検索システム http://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/


    ●《世界大百科事典(平凡社)》
     日本初の電子百科事典《世界大百科事典 CD‐ROM 版》(1992)のオンライン版。で,総項目数9万,索引語42万語,モノクロ図版4200点,表1000点を多様な検索方式で自在に引き出せるようにしたことは画期的だった。
     ネットで百科@Home http://www.mypaedia.jp/netencyhome/で提供していたが、2013年6月30日サービス終了。
     
     現在は、コトバンク https://kotobank.jpで検索できる(→辞書紹介)。全文ではないが各項目の前から200文字程度が表示される。


    ●《日本大百科全書(小学館)》
     日本初の参考図書の付記と全カラー印刷で出版された『大日本百科事典』19巻(1967~72)を引き継ぐ。25巻(1985~89)。
     Yahoo!百科事典 http://100.yahoo.co.jpで検索できたが、2013年12月03日サービス終了。

     現在は、コトバンク https://kotobank.jpで検索できる。こちらは事典項目の全文と図を見ることができる。


    ●《ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典(ブリタニカ・ジャパン株式会社)》

     ブリタニカ百科事典で大項目事典〈マクロペディア〉と対をなす小項目事典〈マイクロペディア〉であり、数百字程度に簡潔に説明された15万項目を提供する。
     コトバンク https://kotobank.jpで検索できる。全文ではないが各項目の一部が表示される。


    ●《百科事典マイペディア(平凡社)》

     平凡社が編集した6万項目を搭載する一冊もの百科事典。電子化されたものが、CD-ROM化や電子辞書化、PDA用メモリーカード化など様々な媒体で提供されている。
     コトバンク https://kotobank.jpで検索できる。事典項目の全文を見ることができる。




    [アメリカ]
    encyclopedia.com http://www.encyclopedia.com

     100以上の百科事典、専門事典、辞書を横断検索できる(英語)。



    ●《アメリカーナ百科事典 The Encyclopedia Americana》―《ブリタニカ》と並ぶアメリカの代表的百科事典。初版(1829‐33)は《ブロックハウス》第7版をベースにしたものであったが,20世紀に入って抜本的に改訂され,1918‐20年に30巻となり,36年以降毎年度版を刊行。合衆国とアメリカ諸国に詳しい。 
    1851 edition of Encyclopaedia Americana http://www.agepedia.org/

    ●《コロンビア百科事典 The Columbia Encyclopedia》―アメリカの1巻本百科事典の代表。コロンビア大学のスタッフが中心になって執筆。初版1935年。
    The Columbia Encyclopedia (Sixth Edition) http://www.encyclopedia.com/


    [イギリス]
    ●《百科事典 Cyclopaedia》2巻(1728)
    現代的百科事典の嚆矢。イギリス人チェンバーズが1728年ロンドンで出版。アルファベット順を採用し、版を重ねた。他国語にも訳され、ディドロらの『百科全書』等、その後の百科事典に影響を与えた。
    Cyclopaedia, or, An universal dictionary of arts and sciences http://digicoll.library.wisc.edu/HistSciTech/subcollections/CyclopaediaAbout.html

    ●《ブリタニカ百科事典 Encyclopaedia Britannica》
    初版は全3巻、1768年から71年にかけて刊行。従来の百科事典の方針を〈科学を個々の術語に分解し,アルファベット順に並べて説明しようとする愚行〉として、大項目主義を導入した。
     第9版(25巻,1875‐89)と第11版(29巻,1910‐11)は、各国の学者・作家に執筆を依頼し、Scholar's Edition(学者版)と言われ、その水準の高さで世界的に有名になった。
    1911 Encyclopedia Britannica - Free Online
    Online 1911 Encyclopedia Britannica
    Free, public-domain sources for 1911 Encyclopædia Britannica text


    ●《チェンバーズ百科事典 Chambers's encyclopædia: a dictionary of universal knowledge》
     初版1868年。Cyclopaedia, or, An universal dictionary of arts and sciencesのチェンバーズとは無関係。《ブリタニカ》がアメリカに買収(1920)されて以後,イギリスを代表する百科事典となっている。
    初版がGoogle Bookで全文表示できる。


    [フランス]

    Encyclopædia Universalis http://www.universalis.fr

     フランス語の百科事典を横断検索できる。


    ●《百科全書 Encyclopédie, ou Dictionnaire raisonné des sciences, des arts et des métiers》
    ディドロとダランベールを編集責任者とし,264人の執筆者の協力によって成立したフランス18世紀の大百科事典。正式表題『一群の文筆家によって執筆された百科全書,あるいは科学・技芸・手工業の解説辞典(Encyclopédie, ou Dictionnaire raisonné des sciences, des arts et des métiers, par une société de gens de lettres)』。アルファベット順によりつつも、ベーコンの学問分類をもとに知識全体を体系的に記述しようとする。ボルテール、モンテスキュー、ビュフォン、ケネー、ルソー、コンディヤックといった時の進歩的知識人の寄稿を得たこの事典は、思想史上も重要な位置を占める。
    http://diderot.alembert.free.fr/


    ●《19世紀ラルース大百科辞典  Grand dictionnaire universel du XIXe siècle》15巻(1866‐76。
    教師であったラルースは,みずからの経験を生かして,あらゆる疑問に答えるような読みやすい辞典として企画。言葉の歴史的用法よりも、19世紀後半における用法と事物の説明に力を置き、それまでの辞典が扱わなかった技術用語なども大幅に取り上げ、加えて文学的アリュージョンや百科事典的記述、さらに印象的な挿話を載せたことから人気を博し、現在においても19世紀のフランス語とフランス文化についての貴重な情報源となっている。
    http://gallica.bnf.fr/Search?q=Grand+Dictionnaire+universel+du+XIXe+si%C3%A8cle&p=1&lang=en&ArianeWireRechercheHaut=palette


    ●《ユニベルサリス百科事典 Encyclopaedia Universalis》
     ディドロらの《百科全書》の精神を現代に生かそうと企図されたもの。大項目主義をとり,初版1968年20巻(シソーラス(索引事典)3巻とオルガヌム(体系的展望1巻を含む)から改訂を重ね、2008年に全30巻(本巻24巻+索引5巻+「フォーラム」1巻)となった。下記のURLはオンライン版。ただし、無料で利用できるのは検索結果の抜粋が表示されるところまでで、本文全体を読むには登録が必要。
    http://www.universalis.fr/



    [ドイツ]

    ENZYKLO.DE - Online Deutschsprachiges Wörterbuch http://www.enzyklo.de

     ドイツ語の百科事典・辞典を横断検索できる。


    ●《ツェードラー学術・芸術世界大百科事典 GROSSES VOLLSTÄNDIGES UNIVERSALLEXIKON
    ALLER WISSENSCHAFTEN UND KÜNSTE》68巻(1732-1754)
     書籍商ツェードラーの名を不朽のものとした、全68巻68000ページにわたって75万項目を誇る18世紀最大の百科事典(ディドロらの『百科全書』(1751~72)が全28巻18000ページ7万項目だったことと比較せよ)。買うと全巻定価で\3,658,950するのだが、バイエルン国立図書館がDFGの資金で1999~2000年にデジタル化し、2004年から同館とヴォルフェンビュッテル・アウグスト公図書館の共同で索引化まで行われ、ウェブで公開されている。
    http://www.zedler-lexikon.de

    ●《ブロックハウス百科事典》6巻(1796‐1808)
    1796年,ライプチヒの学者レーベルGotthelf Renatus Löbel(1767‐99)は,教養人が「有益な会話に加わり,価値ある書物を利用する」のに役だつ《会話辞典Conversations lexikon》,別名《婦人百科事典》を,友人 C. W. フランケ(?‐1831)と共に編集し刊行を始めたが、完結前に没した。アムステルダムで出版業を営んでいたブロックハウス Friedrich Arnold Brockhaus(1772‐1823)は1808年,この辞典の権利を買い取って6巻で完結させ,これに補遺2巻を加えて増刷した(1809‐11)。学者たちが大項目で長い論文を執筆していた19世紀にあって,利用しやすいようにアルファベット順に小項目をたてて、人名・地名が多く収録し好評であった。この小項目主義は、『ウィンクラー‐プリンス百科事典』Grote Winkler Prins(1870)、イギリスの『チェンバーズ百科事典』など多くの百科事典に採用されることとなる。またこの辞典自体を翻訳・改作した事典も多く出版された。
    http://de.wikisource.org/wiki/Brockhaus_Enzyklop%C3%A4die

    ●《マイヤー会話大辞典 Meyers Großes Taschenlexikon》46巻(1840‐52)
    ゴータで出版業を営んでいたマイヤー Joseph Meyer(1796‐1856)は1826年ビブリオグラフィッシェス・インスティトゥート Bibliographisches Institut を設立,2年後ヒルトブルクハウゼンに移り,40年から52年にかけて《会話大辞典 Das grosse Konversations‐Lexikon》(全46巻)を刊行,続いて6巻の補遺を出した(1853‐55)。これによって百科事典出版の基礎が固まった。第3版(15巻,1874‐78)は《マイヤー会話辞典 Meyers Konversations‐Lexikon》と題を改め,以後の版はすべて書名に〈マイヤー〉を冠するようになった。
    Meyers Lexikon online ("Meyers Großes Taschenlexikon in 24 Bänden".) http://www.iicm.tugraz.at/meyers



    [ロシア・旧ソ連]
    ●《ブロックハウス・エフロン百科事典Entsiklopedicheskii Slovar’》(1890‐1907)82巻。
     エフロンI. A. Ephronがブロックハウスと共同して出版。出版者名を冠してこう呼ばれる。革命前のロシアを知るうえで重要な事典である。
    http://www.vehi.net/brokgauz/index.html

    ●《ソビエト大百科事典 Большая Советская Энциклопедия(Bol'shaya Sovetskaya Entsiklopediya)》(1926‐47)
    ソビエト政府は革命の成功後、国内はもとより国際的にも、ソ連の政治、経済、文化などを「正しく理解させるために」百科事典の出版を決定。コム・アカデミー自然科学部長オットー・ユリエビチ・シュミットが編集長となり、1926年から発行。
    http://slovari.yandex.ru/~%D0%BA%D0%BD%D0%B8%D0%B3%D0%B8/%D0%91%D0%A1%D0%AD/


    [イタリア]

    Treccani, il portale del sapere http://www.treccani.it

     イタリア語の百科事典・辞典を横断検索できる。


    ●《イタリアーナ百科事典 Enciclopedia Italiana di scienze, lettere ed arti》(1929-39)
     ムッソリーニの時代、ファシズムを強調するために文部大臣の主唱で編集された百科事典。1929年から39年までに36巻で完結。その後の世界的な変動は補遺によって補っている。補遺版は1938~62年までに7巻ある。国内外の大家に執筆させ、自由に評論させたので、文化史上で評価は高い。ミケランジェロやダ・ビンチなどの項目解説はそのまま単行本としても出版されたほど。都市の歴史も数十ページを費やしたものが多い。第二次世界大戦後も、イタリアにはこれに勝る文化的百科事典は出ていない。
    http://www.treccani.it/portale/opencms/Portale/homePage.html

    [スペイン]
    ●《ヨーロッパ・アメリカ絵入り世界百科事典 Enciclopedia universal ilustradaeuropeo‐americana》(1905‐33)、70巻。
    スペインの代表的な百科事典。版元名を冠して《エスパーサ Espasa 百科事典》と略称。イベリア半島,ラテン・アメリカの項目が充実し,またスペインには特別の1巻を充てる。世界で最も巻数の多い百科。
    http://www.filosofia.org/enc/eui/index.htm

    [デンマーク]
    ●《サルモンセン百科事典 Salmonsens Konversationsleksikon》―第2版1915‐30年,26巻。デンマークを代表する百科事典で,刊行は古いが水準は高い。初版は1893‐1911年刊行。
    http://runeberg.org/salmonsen/2/


    [スウェーデン]
    ●《スウェーデン百科事典 SvenskUppslagsbok》―スウェーデンの代表的な百科事典の第2版1947‐55年,32巻をネットで。初版は1929‐37年。北欧諸国について詳しい。
    http://svenskuppslagsbok.se/


    [チェコスロバキア]
    ●《オットー百科事典 Ottův slovník nučný. Illustrovaná encyklopædie obecných vědomostí》―1888‐1909年,27巻。
    http://www.archive.org/search.php?query=ottuv


    (追加)
    [ラテン語]
    ●大プリニウス《博物誌 Naturalis historia》全37巻 (紀元77)
    http://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Pliny_the_Elder/home.html

    ●イシドルス《語源録または事物の起源 Etymologiae sive origines》全20巻 (7世紀)
    http://www.hs-augsburg.de/~harsch/Chronologia/Lspost07/Isidorus/isi_et00.html

    ●ラバヌス・マウルス《事物の本性 De rerum naturis》全22巻 (9世紀)
    http://www.mun.ca/rabanus/text.html

     以前、一冊の本を読み通すことを助ける、読書の手すりと杖の話をした。






     今回は、複数の(それもたくさんの)文献に挑まなくてはならない人のためのもの。

     これまでに紹介した文献マトリクスは書物や文献の《内容》を一望するものだが、今回のは文献に対する《作業》を一望化するものである。

     取り組むべき文献の量と作業の進み具合を一目で分かるようにして、文献作業の工程を管理するのだ。


    1.文献に対して行う作業を標準化していくつかのパートに分ける

    (例)
    (1)文献を手に入れる
    (2)読んで線を引いたり印をつける
    (3)印をつけた箇所を抜書きする
    (4)抜書きしたものを対照表で整理する
    (5)論文のアウトラインに反映する

    manybook1.png
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    2.それぞれの文献に対して行った作業の成果を別ファイルとして残し、作業パートごとにつくったフォルダ(ディレクトリ)に保存する

    (例)
    ・入手した文献は、作業(1)に対応する「入手文献」フォルダに保存する
    ・入手文献に対して線を引いたり印をつけたファイルは、作業(2)に対応する「annote済」フォルダに保存する
    ・抜書きして作ったファイルは、作業(3)に対応する「抜書き」フォルダに保存する

    3.一日の終わりに各フォルダ内にあるファイル名を1列ずつコピペして、1枚の表にする。この表が現時点での作業進捗を表している。


     表の列は作業順(1)から(5)へ、左から右へ並んでいる。
     表の一行は一つの文献に割りあてられており、入手文献が増えると、表は下へ伸びていく。
     作業が進んだ文献、ほとんど手付かずな文献が一目瞭然である。
     
     
    manybook2.png
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     元々は自分用の進行管理ツールであるが、指導者と学生の間でやり取りすると進行管理のコミュニケーションにも使える。
     
     
     
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