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    少女:証明問題が一番苦手です。答を見ても、なんでこれで証明したことになるのか、全然ピンと来ないし。

    禁煙:確かに苦手な人が多いみたいね。

    少女:解く問題だったら、とにかく答を出すところまでたどり着けばいいと分かるんで努力もしようがあるけど、証明ってどこからはじめてどこへ向かえばいいのか、それさえよく分からないです。あと、当たり前の事をわざわざ証明して、余計難しくしてるんじゃないかって思うこともあります。

    禁煙:そうねえ。多分、前に話したことが関係してくるかしら。数学のことばと自然言語の話。


    問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers 問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

    少女:数学の言葉で書かれたものを、普通の言葉に翻訳しちゃうから、かえって分からなくなるっていうんですよね?

    禁煙:当たり前の事をなんで証明するんだ、っていうのだけれど、ひとつの理由は、数学のことばの内だけで決着をつけたい、というのがあるの。

    少女:それって、どういう?

    禁煙:言い換えれば、数学の言葉で書いてある内容を、自然言語に翻訳したり、日常生活で培った感覚に置き換えて「当たり前」って思えたとしても、それは数学の証明の代わりにはならないってことね。もちろん理解や発見の助けになることもあるから翻訳を否定するわけではないけれど、翻訳でわかったとしても、数学のことは数学で、って話なの。

    少女:ということは、私の数学語レベルが未熟だから証明が分からないってことですか?

    禁煙:深刻に取るとそうだけど、見方を変えるとね、証明の読み書きを練習するのが数学語をマスターする近道とも言えるわね。

    少女:うえ。

    禁煙:もうひとつ、証明が分かりにくいのは、省略が多いから。プロの論文はもちろん、これから勉強する人が学ぶ教科書に載ってる証明も、そうなの。簡潔を尊ぶ文化ってこともあるけど、(まず値段、そしてページ数を決めるところから始める出版企画のせいで)すべてを丁寧に書くには紙面に限りがあるって大人の事情もあるかも。

    少女:せめて教科書ぐらい、省略なく書いてくれてもいいじゃないですか?

    禁煙:じゃあ、それにつきあってもらおうかしら。ただ先に弁護をしておくと、証明というのは、地図というより、「3つ目の信号を左に曲がって2ブロック行って右へ曲がる」というような道順の説明なの。それは道を間違えないための最小限の情報であって、たとえば指示のないところは、「まっすぐ進む」(証明だと、自明の式変形を行う)だと自分で補って読まなきゃならない。目的地に着くのが第一だから、道の途中でどんな花が咲いているかとか詳しく語られても、みんながみんな喜ぶわけではないでしょう? あるいは「右足と左足を交互に前に出して進む」みたいに噛み砕いて詳しく説明できるけれど、そうすることで分かりやすくなるかといえば微妙だと思わない?

    少女:必要最小限の方がいいってことですか?

    禁煙:その途中にどんなものがあるか、周囲がどうなっているか、今どっち向きに進んでいるのか、何のためにそちらに向かっているのかといったことは、証明自体は、ほとんど何も語らない。それを知るにはまず、道順に従って自分で歩いてみなくてはね。そうやって足りない情報を自分で補いつつ読むというのが、トレーニング的意義も含めた、数学書を読むということなの。

    少女:分からないこともないですけど、それが敷居を高くしてるってこと、ないですか?

    禁煙:「やさしく書いた」と自賛する理工書は「(そのために)証明を省いた」と言ってはばからないけれど。ただ数学語にも、基本構文みたいなものがあって、それを知っておくと、証明の読み書きが楽になるかもね。

    少女:背理法とか数学的帰納法とかですか?

    禁煙:うん、それもあるけれど。

    少女:試行錯誤(法)とか、無しですよ。

    禁煙:ふふ。まずはS+V(主語+動詞)にあたるような、ほんとの基本からね。あまりに当然に(そして多くは無意識に)用いられるので、ほとんどの人がわざわざ名前をつけてみようと思わないほど当たり前なものだけれど。

    少女:名前はまだない?

    禁煙:一応「前進後退法 forward-backward method」ってつけた人がいるけれど。

    少女:その前進とか後退って何ですか?

    禁煙:数学の命題って「AならばB」みたいな形をしているでしょ?Aを仮定、Bを結論と呼ぶと、仮定から結論へ向かっていくのが、ここでいう「前進」ね。逆に、結論から仮定へさかのぼるのが「後退」。

    少女:「AならばB」を証明するんだから、仮定から結論へ向かって前進あるのみ、なんじゃ?

    禁煙:完成品の証明はそうなってることが多いわね。でも「確かにそうすれば結論に至るけれど、なんでそんなこと思いつくの?」ということはない?

    少女:あります。

    禁煙:ひとつのヒントがこれね。結論から迎えに行ってあげた方が、簡単に証明できることって多いの。迷路でも、ゴールからスタートへ向けて辿った方が易しいことってない?

    少女:うーん、どうだろう?

    禁煙:仮定から結論に近づく(前進過程)のと、結論から仮定に近づく(後退過程)のを、両方やるから前進後退法ね。

    zenshin_koutai.png


    禁煙:山の両側からトンネルを掘るみたいだけれど、つながったら、仮定から結論へ一直線みたいに証明の完成品は書くの。もちろん〈道順〉みたいに簡略した形でね。



    少女:証明って書いてあるとおり、仮定から結論へ当然進んでるものだと思ってました。

    禁煙:文章だって冒頭から結末への順序で書くとは限らないでしょ?

    少女:ええっ、そうなんですか?

    禁煙:……数学の証明の場合、結論からさかのぼるように考えるメリットは、仮定よりも結論の方がシンプルでクリアなことね。証明に必要になる仮定の方は、たくさん必要だったり、すべて与えられず自分で探して来なくてはならなかったりするけど。

    少女:そりゃ何を証明するかぐらいはっきりしてないと困ります。

    禁煙:テスト問題だとまだ与えられる仮定が多いけど、それでも証明に使う定義や定理を自分で持ち込むことが多いわね。これが自分で見つけた定理を証明することになると、原理的にはだけど、これまで人類が証明したすべての定理を使ってもいいのだもの。もちろんどのあたりのことを使えばいいか、証明する人は見当をつけているけれどね。

    少女:証明問題って確かにどこから始めたらいいか分かりづらいです。じゃあ結論からさかのぼるとして、具体的にどうするんですか?

    禁煙:パターン・プラクティス(型稽古)しやすいようにフレーズ化しておくと「これを証明するためには、何が言えればよいか?」と自問自答するのを繰り返すことになるわ。

    少女:繰り返すんですか?

    禁煙:1ステップさかのぼるだけで、結論から仮定に至れれば言うことないけれど、そういうのって証明し甲斐がない問題じゃないかしら?

    少女:繰り返して、できるだけ仮定に近づけるんですね。

    禁煙:ええ、大抵は途中でそれ以上さかのぼるのが難しくなるけれど、その時点での到達点は、最初の結論よりは証明しやすくなっているはず。もちろん、そうなるように遡るのだけれどね。簡単な例でやってみましょうか?


    【問題】

    right_triangle.png

    直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがzである直角三角形XYZ の面積がz2/4 ならば,三角形XYZ は二等辺三角形であることを証明せよ。


    少女:ええと、結論からさかのぼるところから始めればいいんですよね?

    禁煙:まず、仮定と結論が何なのか、確かめましょう。

    少女:「AならばB」で、Aが仮定、Bが結論ですよね。「直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがzである直角三角形XYZ の面積がz2/4」が仮定で、「三角形XYZ は二等辺三角形である」が結論でいいですか?

    禁煙:ええ、そのとおり。では結論から遡りましょうか。

    少女:さっきのフレーズですね。ええと「これを証明するためには、何が言えればよいか?」。今の結論を当てはめると、“三角形XYZ は二等辺三角形である”を証明するためには、なにが言えればよいか?
    禁煙:なにが言えればいいのかしら?

    少女:んー、ベタですけど、二等辺三角形なんだから、二つの辺が等しいことが言えればいいんじゃ?

    禁煙:そうね。この問題で言うと?

    少女:ええと、斜辺以外の辺ですよね。

    禁煙:今だと直角の2辺の長さがx,yだから?

    少女:x=yですよね。

    禁煙:ええ、これで1ステップ進んだ訳。結論B「三角形XYZ は二等辺三角形である」を証明するためには、B1「x=y」が言えればいいわけね。

    少女:そのB1って何ですか?

    禁煙:結論をBにしちゃったから、そこから1ステップさかのぼった印をつけたの。さて続けましょうか?

    少女:もう一度「これを証明するためには、何が言えればよいか?」ですね。今は、B1「x=y」を証明するためには、何が言えればよいか?・・・いきなり詰まりました。

    禁煙:他にやれることがないか探しましょうか。前進後退法なんだから、結論から遡る方が詰まったら
    少女:前進する・・・仮定から進む方ですか?

    禁煙:こちらもフレーズ化しておきましょうか? 「これが成り立つならば、どんなことが言えるか?」。実はこの問題の仮定A「直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがzである直角三角形XYZ の面積がz2/4」には、二つの主張が入っているわね。A1「三角形XYZが直角三角形」であることと、A2「三角形XYZの面積がz2/4」なこと。

    少女:あ、そうか。

    禁煙:A1とA2、それぞれについて「これが成り立つならば、どんなことが言えるか?」を自問自答してみましょうか。

    少女:えーと、A1「三角形XYZが直角三角形」が成り立つならば、どんなことが言えるか?・・・どんなことが言えますか?角Zが90度とか?

    禁煙:いろいろあるけれど、今私たちが目指しているのは、B1「x=y」だということを思い出して。これは辺の長さについての主張だから、そこに合流しようと思えば、仮定から進む(前進過程)でも、辺の長さについて何か言えることがないか探すべきよね。直角三角形で辺の長さについて何か言えないかしら?

    少女:・・・ピタゴラスの定理、ですか? あれって辺の長さの間の関係ですよね。

    禁煙:ええ。どうなるかしら。

    少女:「直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがz」ですよね。だったらx2+y2=z2じゃないですか。

    禁煙:A1から一歩進んだからこれをA11にしましょうか。A11「x2+y2=z2。これでB1とつながった?

    少女:いえ、まだです。

    禁煙:そうね。まだ使ってない仮定があるわ。

    少女:A2「三角形XYZの面積がz2/4」が成り立つならば、どんなことが言えるか?・・・で、辺の長さに関することですよね。

    禁煙:辺の長さをつかって、面積を表したらどうかしら?

    少女:あ、そうか。直角三角形だから、底辺も高さも辺の長さがそのまま使えますよね。底辺×高さ÷2で面積はxy/2?

    禁煙:そう、A2「三角形XYZの面積がz2/4」が成り立つとしているから?

    少女:xy/2とz2/4が等しいんですね?

    禁煙:そう。これをA21にしましょうか。今の段階でどこまで来ているかまとめてみると

    A11「x2+y2=z2
    A21「xy/2=z2/4」
    B1「x=y」


    少女:みんな式の形になってきましたね。ここからどうしましょう?

    禁煙:A11とA21からB1にたどり着きたいのよね? B1にはxとyが出てくるけどzは出てこないわね。

    少女:だったらA11とA21からzを消せばいいのかな?……もう両方合わせて使っていいですよね。まずA21の両辺を4倍して
    A22「2xy=z2
    これをA11に代入します。

    禁煙:結果はA3とラベルをつけておきましょう。

    少女:はい。

    A3「x2+y2=2xy」
    まで来ました。

    禁煙:x2+y2=2xyで2xyを移行してA31「x2+y2-2xy=0」。これを因数分解すると、A32「(x-y)2=0」よね。

    少女:ああ、だったらA33「x-y=0」になるから、ふう、やっとB1「x=y」にたどり着いた。結論側と仮定側から掘っていたトンネルがつながりました。……これで自分としては証明できた気がするんですけど、証明はもっと簡潔に書くべきなんですよね?道順だけ?

    禁煙:そうねえ。ラベルをつけたところを、今度は過程から結論の順に並べてみてはどうかしら?

    少女:えーと、こうですか?


    仮定A「直角の2辺の長さがx,yで斜辺の長さがzである直角三角形XYZ の面積がz2/4」
    A1「三角形XYZが直角三角形」
    A11「x2+y2=z2
    A2「三角形XYZの面積がz2/4」
    A21「xy/2=z2/4」
    A22「2xy=z2
    A3「x2+y2=2xy」 (A11とA22から)
    A31「x2+y2-2xy=0」
    A32「(x-y)2=0」
    A33「x-y=0」
    B1「x=y」

    結論B「三角形XYZ は二等辺三角形である」

    禁煙:今回はとても詳しく、普通は無意識でやってしまうところも、声に出してやってみたのだけれど。〈道順〉として落とせないのは「どこで曲がるか」よね? 逆に「まっすぐ進める」ところ、たとえば計算の途中過程なんかは省略していいと思うわ。

    少女:今ので言うと因数分解とかは省略できるのかな? A22からA33までごそっと削りましょうか?

    禁煙:それでもいいけど、その中で何か一つだけ残すとしたら?

    少女:「曲がり角」を間違えなきゃいいんだから、A32があったら間違えなさそうです。

    禁煙:すると、こんな風になるかしら。


    (証明)
    仮定の(A1)三角形XYZが直角三角形から(A11)x2+y2=z2・・・(式1)
    同じく仮定の(A2)三角形XYZの面積がz2/4から(A21)xy/2=z2/4・・・(式2)
    式1に式2を代入して整理すると
    (A32)(x-y)2=0
    となり、これより(B1)x=yとなり、(B)三角形XYZ は二等辺三角形であることが証明できた。



    (A1)(A11)・・・(B1)(B)みたいなのは、私たちがわかりやすいようにつけたラベルだから証明には書かなくてもよいでしょうね。ラベルを消すかわりに、指し示したい式にだけ(式1)(式2)とつけたわ。

    少女:なんか証明っぽくなりましたね。

    禁煙:というより証明そのものよ。

    少女:自分だけでやってトンネルが貫通できるかどうか分かりませんけど、とりあえず何から手をつければいいかは分かった気がします。

    禁煙:簡単な問題だから、いちいち手順を踏むまでのことはないかもしれないけれど、証明をつくるときの舞台裏も知ってもらいたくて詳しくやってみたの。

    少女:毎回、こんなに丁寧にしなくちゃいけませんか?

    禁煙:証明を苦手に思う人は、簡単すぎるくらいの問題を、フォームを確認するつもりで、こんな風にしつこくステップを踏んでみるといいかも。何を考えるべきか、そして考えたことのうち、何を書いて何を省略するか、考えられるようになると、人が書いた省略の多い証明も、自分で補完しながら読めるようになるから。

    proof-process.jpg




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     以前「教科書は教えてくれないけれど知らないと教科書が読めない学習語リスト」という記事を書いた。
     
    教科書は教えてくれないけれど知らないと教科書が読めない学習語リスト 読書猿Classic: between / beyond readers 教科書は教えてくれないけれど知らないと教科書が読めない学習語リスト 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

     専門用語は、教科書の中で説明してあるし、専門辞書を引くこともできる。
     けれども、教科書や専門辞書の説明の中には、特に説明なく使われる言葉がある。
     前の記事では、これを〈学習語〉と呼んだ。
     〈学習語〉は、(とくに子どもたちが交わす)日常の話し言葉には登場しにくい抽象語などが含まれている。
     教科書や専門辞書の説明は、そうした〈学習語〉を知っていることが前提になっている。
     知っていないと、日々の学習でつまずき、後れを取ることになってしまう。
     
     今回取り上げるのは、〈学習語〉と似ているが、もう少しやっかいな言葉たちである。
     〈学習語〉は、そうはいっても一般語であって、国語辞典で意味を確認することができる。
     しかし例えば次のような言葉は、言葉としては一般語なので、専門辞典に載っていないが、その用法は国語辞典がカバーする範囲を超えている。

    置換を互換の積で表したとき、その互換の数の偶奇は一意的に決まる。

      → 置換を互換の積で表したとき、その互換の数の偶奇は、ただ一通りに決まる。
     
     国語辞典には「一意」は、

    (1)ひとつの考え。また同じ考え。
    (2)(副詞的に)一つの事に精神を集中するさま。ひたすら。

    とある。もちろんこれでは意味が通らない。
     実は、広辞苑には第4版以降、

    (3)(unique) ただ1通りに定められること。「一意的な解」

    という意味・用法が追加されている。他には

    任意
    (3)(「任意の」の形で) 論理学・数学などで無作為に選ばせること。「平面上の任意の一点」

    などが記載されている。

     実はこうした数学に現れる形容詞・副詞はまだ注意が払われている方だ。
     たとえば『数学ビギナーズ・マニュアル』は、第2章を当てて、こうした数学に独特の言い回しを取り上げ解説している。
     

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     しかし、やはりそれ自体は一般語なのだが、特別な意味・用例で用いられ、しかし改めて取り上げられることが少ない、次のような動詞がある。

     定理1より定理2が従う

     国語辞典には「従う」について、(1)後について行く、(2)さからわない、(3)従事する、たずさわる、といった意味・用法が出ているが、これだけでは理解しがたい。

     全文検索できる日本語の数学辞典で検索すると、この「~より/~から/~ならば・・・が従う」なるフレーズは頻出する。『岩波数学辞典 第4版』では97箇所で使われていた。


     これは英語だと「follow from~」の直訳に由来する気がするが、接続詞化した「従って」が担う役割との関連も指摘される。つまり
     
     AよりBが従う。
     Aである。従ってBが成り立つ。

     

     (2)は(1)から直ちに従う。
     (1)である。従って、直ちに(2)が証明できる。

     

     つまり、「従う」は、数学では論理的導出関係を示すために用いられる。
     論理的導出関係を示す言葉には、(日本語でも英語でも)他にもあるため、日語ー欧語で対応付けがある訳ではない。
     たとえば
     
     The Dirichlet's theorem follows from our next theorem.

    は、「ディリクレの定理は、次の定理より従う」とも「ディリクレの定理は、次の定理から導かれる」とも「ディリクレの定理は、次の定理から得られる」とも訳すことができる。
     多くの場合、数学の文献に現れる「従う」を「導かれる」「得られる」に取り替えても(場合によっては取り替えた方が)意味が分かるだろう。

     そんな訳で、以下では同種の表現をグループ分けして示すことにした。


     方言学では、「本をなおす」(しまう、片付ける)、「手袋を着る」(はめる)など、共通語 と形が同じでありながら意味・用法に地域的な違いが見られるものを〈気付かない方言〉と呼ぶ。

     以下、改めて説明されることが少なく、数学の文献や教科書/辞書などで、当然のように用いられるが、日常的・一般的な意味・用法と異なる、数学における〈気付かない方言〉を取り上げた。
     なんとなく意味が取れるか、あるいは分からなくてもなんとかなるものが多いが、「特徴づける」のように、頻繁に使われるが(『岩波数学辞典 第4版』には282箇所あった)、慣れないと意味が取りづらいものもある。

     網羅的なものでは全くないが、数学の本を読む一助になれば幸いである。



    (論理的導出関係)

    *従う

     命題 3.1.2 から(Pm:Sm)の有限性が従う

      → 命題 3.1.2 から、(Pm:Sm)の有限性が、論理的に導き出される


    *得る

      q(x)に同じ議論を適用することにより、次の定理を得る

      → 既述の方法を q(x)に適用すれば次の定理が論証される


    *与える

     Yの元に対して、1≦|N(a)|が成り立つ。これは|a| ≧ c1-nt与える

      → 第 1 の不等式1≦|N(a)|から、第 2 の不等式|a| ≧ c1-nt妥当性が導かれる


    *導く

     ~からn+1の場合が導かれる

      →(このままで解るが、あえて言い直すなら)
        結論として(論理的に)引き出される、論理的帰結として結論される


    *出る

     (1)より(2)の完全性がでる

      →(1)より(2)の完全性が証明される
     


    (大小関係)

    *おさえる

    X は 3 で上から押さえられる

     → X < 3


     { an }n∈N の挙動を上下から押える

      → anがどのような値をとって変化するか、その変化の範囲を不等号でしめす。たとえばL < an < G。


    *評価する

      X は G で上から評価される

      → X  < G

     この式の第 3 項はηα ≦ (M1 + M2)Tr(B1) と押えられ、結局Tr(B1) ≦ M1 + C Tr(B2)のように評価される

      → この式の第 3 項はηα ≦ (M1 + M2)Tr(B1) と不等式で示され、結局Tr(B1) ≦ M1 + C Tr(B2)のように不等式で示される





    (設定・定義づけなど)

    *置く

     c=2-1(a+b)とおけば

      → c=2-1(a+b)と設定すれば


     e=min(b,(b2-a)/3δ)とおけば

      →e=min(b,(b2-a)/3δ)と定義すれば



     方程式(2)は,u=t{u( · , t),ut( · , t)} と置けば、次のようにかける

      →方程式(2)は,u=t{u( · , t),ut( · , t)} と定義すれば、次のようにかける



    *取る

     いま任意のx<bを取れば

      → いま任意のx<bを選べば

     両辺の実部を取れば

      →両辺の実部を取り出せば



    *特徴づける

     性質Pは、Aを特徴づける

      → Pという性質を持つものはAに限られる。
       

     数ある順序体の中で実数体を特徴づけるものが連続の公理である。

      → 連続の公理を満たす順序体は、数ある順序体の中でも実数体だけである。


     1がAの上限であるとは次の(a)(b)で特徴づけられる

      →1が上限であるための必要十分条件は(a)(b)である。



    (その他)
    *言う

     ~が言えれば、fは微分可能である。

      →~が証明できれば、fは微分可能である。



    *閉じる
     全ての自然数のなす集合Nは足し算について閉じている

      → 自然数同士の足し算の結果は必ず自然数になる。




    (参考文献)
    ・佐藤文広(1994)『これだけは知っておきたい数学ビギナーズマニュアル』(日本評論社)
    ・片野 善一郎 (2003) 『数学用語と記号ものがたり』(裳華房)


    数学用語と記号ものがたり数学用語と記号ものがたり
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    片野 善一郎

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    ・佐藤宏孝 (2005) 「数学における専門日本語語彙の分類--留学生への数学教育の立場から」専門日本語教育研究 (7), 13-20.
    ・佐藤宏孝 , 花薗悟 (2009). 「数学における動詞「従う」の意味・用法--「気づかない」専門日本語語彙の研究に向けて」東京外国語大学留学生日本語教育センタ-論集 (35), 17-29.
    ・佐藤宏孝 , 花薗悟 (2010).「数学における動詞「おく」の意味・用法:「気づかない」専門日本語語彙(2)」東京外国語大学留学生日本語教育センター論集 (36), 45-55.
    ・佐藤宏孝 , 花薗悟 (2011).「数学における動詞「得る」の意味・用法:「気づかない」専門日本語語彙(3)」東京外国語大学留学生日本語教育センター論集 (37), 1-13.
    ・佐藤宏孝 , 花薗悟 (2012).「数学における動詞「おさえる」の意味・用法:「気づかない」専門日本語語彙(4)」東京外国語大学留学生日本語教育センター論集 (38), 57-72.

    先日の記事
    誰もがどこかでつまずいた→小学校の算数から大学数学まで126の難所を16種類に分類した 読書猿Classic: between / beyond readers 誰もがどこかでつまずいた→小学校の算数から大学数学まで126の難所を16種類に分類した 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加
    を読んだ人から「やりなおし魂に火をつけるだけつけて放置するのは無責任だ、何をやればいいのか教えろ」という問い合わせがあった。

    小学校の算数レベルから微積分など高校+αまで、ついている予備テストをやれば、どの章は飛ばしていいか、どこの章のどの問題を勉強すればよいかを教えてくれる往年の名著(が復刻してた)


    科学を志す人のための基礎数学科学を志す人のための基礎数学
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    クルグラーク、ムーア 他

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    を紹介しようと思ったが(科学を志さない人にも勧められる)、買い損なった場合と人のために、web上の教材をリストにして、先の記事の補いとする。

    mathmathmath.png



    小学校の算数


    算数・数学の思考過程をイメージする動画素材集
    http://www.dainippon-tosho.co.jp/mext/nhk/index.html
    大日本図書が作成した、小学校の算数から中学校の数学まで不可欠な公式や定理を、約30秒の動画で視覚的に表現・解説。合計60クリップ。文部科学省教育コンテンツ事業として制作されたもの。
    http://www.dainippon-tosho.co.jp/sho/sansuu/anime/index.html
    には、他にもJavaやFlashを用いた、計算の仕組みの理解を助ける動画や計算練習のできるゲームなどがある。

    Flashの部屋
    http://www.mowmowmow.com/math/flash/index.htm
    flashで作成した学年別、テーマ別の100を超える算数・数学用学習教材。

    無料の幼児ゲームと小学生学習ゲーム
    http://www.kids-study.net/
    算数や他の教科の無料でできる学習ゲームを学年別・科目別にまとめたもの。

    さんすうちからだめし
    http://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/tanosiku/13scd/html/index.html
    学年別(小1〜小6)の膨大な数の練習プリント(pdf)。基本問題と発展問題あり。

    岐阜県小学校用コンテンツ Web版 算数
    http://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/e_sansu.html
    岐阜県教育用コンテンツ開発協議会・開発部会の成果を活用した算数ドリルから「生活の中の算数」「算数の道具箱」(画像集)、「高木貞治博士の生涯」「日本の数学の歴史」まで。

    楽学考房 算数道場
    http://www.rakugakukobo.com/ 
    基礎学力の向上のためのコツとツボ(足し算の筆算〜旅人算)

    小学生高学年の「算数攻略」講座
    http://www1.mahoroba.ne.jp/~matumoto/sanf.html
    文章題の算数問題が多く小学生高学年向けの「算数攻略」講座。

    あとまあく数学の演習
    http://www5a.biglobe.ne.jp/~atmark2/testguide3.htm
    小4〜中3。web上で入力、採点できる初級から中級レベルの代表的な自習用演習問題。

    TOSSランド 算数・数学
    http://www.tos-land.net/?action_paging=mathematics
    小1〜高校まで、トピックごとにまとめられた膨大な数の教材・授業案など。

    中学受験の玉手箱
    http://tamatebako.net/ 
    算数解法 (ノウハウ)から5000問をこえる受験算数の問題解説。




    中学校の数学

    中学数学の基本問題
    http://www.geisya.or.jp/~mwm48961/math/index_m.htm
    中学校数学の全トピックについて基本問題を練習できる。
    難易度と正答率による理解度によってメニューの色が変わる便利さ。

    数学が苦手な中学生応援します!
    http://sakura.canvas.ne.jp/spr/ynaka/
    市販の問題集ではちょっとキツイ人のためのやさしい問題プリント、トピック別多数。

    数学得意な中学生応援します!
    http://www.geocities.jp/ynaka23/
    数学が得意な中学生のために,最新の入試問題の中から発展問題・難問題をあつめた問題プリント、トピック別多数。

    岐阜県中学校用コンテンツ Web版 数学
    http://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/j_suugaku.html
    岐阜県教育用コンテンツ開発協議会・開発部会の成果を活用した、自動作成型計算プリントから「方程式の解き方」「つまずき解消プログラム」「数学鑑賞館」(画像集)まで。

    楽しく学ぶ数学
    http://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/tanosiku/14tcd/index.htm
    中学1〜3年生用のプリント練習問題。

    できる数学自習室
    http://sakura1.higo.ed.jp/ws/kcmathws/dekiru/zibun2.html
    Flashをつかった学年別・トピック別のweb教材。熊本県中学校数学教育研究会提供。

    中学数学の達人
    http://www.juniorhighschool-math.net/
    学年別トピック別の中学数学解説サイト

    数学のたまご
    http://contest.thinkquest.jp/tqj2002/50027/index.html
    中学校の数学の基本を学年別トピック別に解説。別に用語集が用意されている。

    中学校数学学習サイト
    http://math.005net.com/index.htm
    各単元のまとめから練習問題、解説、勉強法、おすすめ問題集の紹介など。

    初等数学入門 (旧「こなみせんせの数学教室」)
    http://www.math-konami.com/
    全24章+補講全22講の中学および高校数学の基礎から発展的内容まで解説。

    受験の鉄人 中学数学
    http://juken.ironmannet.com/math/juniorhigh/index.htm
    無料・登録不要でできる自学自習Eラーニングサイト内の中学数学カテゴリー(一部有料)




    高校数学

    基礎からの高校数学 [参考書・問題集データベース]
    http://navy.ap.teacup.com/chief/
    高校数学勉強方法の紹介、数学参考書の使い方の紹介、高校数学参考書・問題集の特徴の紹介

    図説「数学教育」
    http://m-ac.jp/me/index_j.phtml?pg=y
    元々は学校教員養成コース学生・現職教員対象のサイトだが(なので授業設計や指導法の資料も多い)、分野別トピックごとにまとめられたオンラインブック(pdf)が分かりやすい。左上の「数と量」から「方程式」までの囲みの中の「主題」のところからたどっていける。

    数学の散歩道
    http://web.archive.org/web/20080113001928/http://www.suzu.or.jp/pub/imai/japanese/start.htm
    高校数学の内容をトピックごとに詳説。併せて小中学校の算数・数学の内容についても説明している。元サイトを見失ったのでwebアーカイブから。

    『高校数学+α 』
    http://www.h6.dion.ne.jp/~hsbook_a/
    高校の数学と大学の数学の橋渡しとして書かれた『高校数学+α :基礎と論理の物語』の著者ページ。『高校数学+α :基礎と論理の物語』の全文(pdf)+訂正の他に、姉妹編『出版高校数学+α:なっとくの線形代数』 ( なか身!かなり拝見 + 訂正表<(_ _)> )や執筆 準備?メモ of 高校数学+α:なっとくの微積・解析(ブログ)も。

    石黒の大学受験数学入門
    http://members3.jcom.home.ne.jp/2132222501/
    整式の計算・因数分解から、教科書の例・例題・章末レベルの問題、さらに大学入試問題の標準レベルに到るまでスモールステップで学べるFlash教材群。

    高校数学の自習室
    http://lykeion.info/suugaku/
    高校数学や大学受験数学のレベルまでヒントや解法、学習法について解説。

    高校数学教材ーikemath
    http://www.geocities.jp/ikemath/index.html
    教科別補充プリントや大学別入試問題、公式集の他にフリーの関数グラフソフト『GRAPES』のページや動画集まで。

    青空学園数学科書庫
    http://aozoragakuen.sakura.ne.jp/index.html
    高校数学の考え方を系統的にまとめた「高校数学の方法第7版」や高校数学とその地続きな周辺を探索し,大学初年級のあたりまで足を運ぶ「数学対話 第4期」、入学試験問題の良問を紹介した「問題研究」別解を考えることで問題の理解も解決の力も飛躍させる「別解研究」、高校数学の土台部分を掘りさげ教育数学を準備する「数論初歩」「解析基礎」など、良質かつ膨大なコンテンツを提供する。

    KIT数学ナビゲーション
    http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/
    金沢工業大学が、 新入生に数学の基礎学力を復習させるために開設。カテゴリ分類や公式集、解法のヒント、高校生向けコンテンツなど。

    大学入試 数学 電子図書館
    http://www.densu.jp/
    15年間の数学過去問解説文書などをおさめたフリーでオープンなライブラリー

    manavee | だれでも無料で受験勉強できるサイト
    http://manavee.com/
    「数学I−方程式と不等式」から「東大数学」まで提供


    高校数学総覧@受験の月
    http://examoonist.web.fc2.com/mathematics.html
    「学校では教えてくれない受験のための数学・化学」をまとめたサイト「受験の月」内の高校数学の全パターンの網羅と裏ワザ紹介のコンテンツ。


    NHK高校講座
    http://www.nhk.or.jp/kokokoza/
    HPで動画を無料で見ることができる




    大学数学基礎

    高知工科大学 基礎数学ワークブック
    http://www.core.kochi-tech.ac.jp/m_inoue/work/workbook.php
    数式の書き方や四則演算の約束といった基礎中の基礎から始まり、微分積分を経て大学の基礎数学をカバーするコンテンツ。

    Yotaka Lab 数理情報研究室 数学学習教材
    http://next1.msi.sk.shibaura-it.ac.jp/math.html
    「微分積分学入門」「線形代数学入門」「応用数学入門」「ベクトル解析入門」「統計学入門」「確率論入門」「複素関数論入門」のテキスト、演習書、演習問題を提供。

    理系インデックス
    http://homepage3.nifty.com/rikei-index01/index.html
    大学で学ぶ自然科学に関する標準的な内容をまとめたもの。数学については、数理論理学、集合・位相、代数学、解析学(微分積分)、複素解析、常微分方程式、、線形代数、ベクトル解析、多様体、微分幾何学、位相幾何学、ルベーグ積分・関数解析、確率・統計学、確率論、フーリエ解析、偏微分方程式について、トピックごとにコンパクトに整理されている。

    ときわ台学
    http://www.f-denshi.com/index.html
    理系研究者&学生お助けサイト。数学については、実数解析入門、代数学入門 (群・環・体)、線形代数学入門、ベクトル解析、複素関数論入門、確率・統計入門、微分方程式・特殊関数・波動、ルベーグ積分入門、固有値論入門についてのコンテンツ有。

    オンライン数学テキスト
    http://homepage2.nifty.com/masema/
    大学教養課程レベルの数学全般をトピックごとに簡潔にまとめたサイト。

    数学についてのwebノート
    http://www.ne.jp/asahi/search-center/internationalrelation/mathWeb/index.htm
    すべての項目に参考文献を明記してある。
    算術、論理、集合(集合と数のあいだ、順序集合・代数系)、数、解析学((0)位相・距離、関数、(1)極限[数列点列/関数]、 (2)連続、(3)微分[1変数/2変数/多変数関数、1変数ベクトル値関数/、多変数ベクトル値関数]、(4)積分)、線形代数。
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