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     何故だかこんな時期に新入生向けのブックリストのリクエストがあったので作ってみた。
     前半は助走と底上げのために大学生なら必須の思考技術・読書技術・表現技術について、後半は自分を広げる意味で自然・人文・社会の学問領域から、それぞれ3冊ずつ選ぶことにした。
     はじめてでも楽しめるビギナー向けの選書を心がけたが、各カテゴリーの内では易しい順に3冊を並べてある。
     


    1.思考技術

    子どものための論理トレーニング・プリント子どものための論理トレーニング・プリント
    三森ゆりか

    PHP研究所
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     このブログでは、次の『知的複眼思考法』を読み書きを含めた思考リテラシー本の最初の一冊として推薦してきたけれど、難しすぎるという声がいくつか届いていた。
     この手前に置くことができるものを探していたけれど、小学生でも使えるこの本を挙げることにした。
     (子どもなら普通にやりそうな)話し方/書き方からはじめて、それをロジカルな言葉に作り変えていくワークブックなのだが、これ一冊で、論理的な考え方・物語の組み立て方・説明のやり方・描写のやり方・報告のしかた・視点を変えて考える練習・絵の分析が学べる。
     読んだり書いたり考えたり説明したりが苦手過ぎて苦しんでいる人に効く。馬鹿にせずにやり切ること。


    知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)
    苅谷 剛彦

    講談社
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     このブログでは再三取り上げているけれど、ここでも最低限の紹介はしておきたい。
     「自分で考えろ」とお題目を唱えながら自分の偏見を垂れ流す言い訳にしか使っていない本は多いけれど、「自分の頭で考える」という作業をひとつひとつ丁寧に説明し、読者が自分で実行できるようにしてくれる本は、ほとんどない。
     思い込むのは一瞬で済むし、日常に沸き起こる出来事は即座に判断することを要求する。こうした素早い思考は、大抵はそうひどく間違う訳ではないからこそ維持されてきたのだが、一方でその弱点は知られており、我々を詐術に落としこんだり偏見に押しやったりするものでもある。
     「自分の頭で考える」ことは、そうした自然な頭の働きに流されず、省み、うまく付き合いながら、思考を進めていくことなのだ。
     「自分の頭で考える」は、手も目も頭脳も(時には足も)全部使って一歩ずつ進める、面倒ではあるが誰にもできる作業である。だからこそ、時代も地域も異なる人たちの思考と、時空を超えて我々を結びつけるのである。自分で考えることでできるようになればなるだけ、他の人の思考を理解することができるようになる。
     
     
     

    哲学の道具箱哲学の道具箱
    ジュリアン・バッジーニ,ピーター・フォスル,廣瀬 覚,長滝 祥司

    共立出版
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     この本も、以前に紹介済であるが、取り上げたい。
     その名の通り「道具箱」を企図した書物だが、紹介されるツールたちは、元々は哲学を出自とするが、今では多くの分野で知的営為の共有財産となっているものたちである。
     哲学者たちは、定義の明確さや論証の堅実さに意を用いてきたけれど、これらはすべての知的作業に要求されることだし、また日常的な思考や直感がつまずき窮地に陥るような状況や制約は、哲学の主戦場の一つだったから、そこから抜け出したり切り抜けたりするのに利用できる武器を調達することもできる。
     欠点としては、哲学に由来するために「正しく考えること」を主眼としていて、「(正しくないかも知れないが)新しい/効果的な考えを生み出すこと」までは、この本はカバーしていない。この本だけでなく、実のところ、そうした書物が欠けている(それでフレームワークものやアイデア本なんかがその空隙を埋めている)。

     今、ここのところを埋める、もう少しマシな本を書いているので、できたらこのリストに追加することにしたい。

    (追記)
     上で触れている本が刊行したので、追加する。

    アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツールアイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール
    読書猿

    フォレスト出版
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    2.読書技術

    本を読む本 (講談社学術文庫)本を読む本 (講談社学術文庫)
    J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山 滋比古,槇 未知子

    講談社
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     大学生は読まなければ、どうしようもない。それも、誰かに教えられた一冊を追いかける〈点の読書〉では仕方がない。自分で文献を見つけ、文献の間に結ばれた参照をたどり、手に入れたいくつもの文献を突き合わせることができて、ようやくスタートラインに立てる。
     この本は、そんな読書についての基本的な課題を明示し、手ほどきしてくれる基本書。


    図書館に訊け! (ちくま新書)図書館に訊け! (ちくま新書)
    井上 真琴

    筑摩書房
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     いくつもの文献を突き合わせる読み方を実行するためには、どうしても図書館が要る。
     つまり大学(大学生)には、図書館は必須である。
     この本は、このブログではもはや定番だけど、現役の大学図書館員が書いた大学図書館の取扱説明書である。
     図書館に何がどこまでできるか、そのためには何をどうすればいいか、具体的なノウハウをいくつも提供してくれる。


    論文作法─調査・研究・執筆の技術と手順─ (教養諸学シリーズ)論文作法─調査・研究・執筆の技術と手順─ (教養諸学シリーズ)
    ウンベルト エーコ,谷口 勇

    而立書房
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     タイトルからして論文の書き方の本なのだが、エーコは徹底して具体的にその土台作りからやってみせる。どの土台作りが、図書館使いには実に参考になる。
     具体的な著者名や書名、それどころか図書館名まで出して、どこで何を探し、何を見つけ、どこをどのように読み、どんなメモをつくるのか、いちいち詳細に実況中継してくれる。
     これを読み、その手技を自分でもたどれば、もはや図書館が無料貸本屋であるなどという勘違いは払拭されるだろう。
     図書館は、自ら考える人にとって、知の原石を砕き溶かして精製する工房なのだ。
      


    3.表現技術

    「分かりやすい表現」の技術―意図を正しく伝えるための16のルール (ブルーバックス)「分かりやすい表現」の技術―意図を正しく伝えるための16のルール (ブルーバックス)
    藤沢 晃治

    講談社
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     大学にいるあなたは、生まれ育った街を離れ身内でも友人でもない人の間で暮らしていく、旅の途上にいる。
     身内でも友人でもない人に、何かを説明し理解してもらわなくてはならない場面に、いくらも遭遇するだろう。
     説明し理解を得て、自らの場所をつくり、道を切り開かなくてはならない。
     大学でも、身内でも友人でもない人に説明しなければならないのは同様だが、少なくとも理解させろと求めてはくれる。説明の場を設けてくれる。それは口頭発表であったり、レポートや論文のような文章によるものだったりする。
     言葉を話すことは、人の仕様かもしれないが、分かりやすく説明することは、そうではない。トレーニングしなければ、できなくて当然だ。
     この書は、説明し理解を得るための技術の入門書であり、いつまでも使えるチェックリストである。なるべく早い時期に手元に置くことをお勧めする。


    これから論文を書く若者のために 究極の大改訂版これから論文を書く若者のために 究極の大改訂版
    酒井 聡樹

    共立出版
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     大学で頻繁に求められるのは書くことだ。
     あらゆる知的営為は、最終的には書き言葉で表現することを要求される。
     どれだけ読もうと考えようと、どれだけ素晴らしい発見をなそうと発明をしようと、書かなければ存在しないのと同じである。
     何度も改訂を重ねるこの本は、まだ一度も書いたことがない人が、論文を書けるようになるために必要なほとんどすべてを盛り込んだマニュアル兼トレーニング本である。
     手に入れるか否かで、その後の大学生活がまったく別物になることを保証する。


    できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)
    ポール.J・シルヴィア,高橋 さきの

    講談社
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     『これから論文を書く若者のために』で最初の論文は書ける。
     しかし次がある。書き続けることだ。
     短期間には書け上げることができない長文や、次の論文を書くためには、続けるしかない。
     そしてそれが、それだけが、書くことの技術を高め、もっとましなものを書くために必要なすべてである。
     では、どうすれば書き続けることができるのか。書くことを躊躇させ、先送りさせることどもを踏み越えていくことができるのか。
     この書は心理学者が書き続けるとそれを邪魔するものに挑み、そのスキルを研究者向けにまとめたものである。時間を確保し習慣にすること、インスピレーションや技術の不足を言い訳にしないこと、やったことを記録し、目標を管理すること。
     すなわち、この場で片付けることのできない、少し大きめな仕事を完成させるために必要なスキルとノウハウがこの書には網羅されている。





    4.自然の知

    目で見る物理―力・運動・光・色・原子・質量…目で見る物理―力・運動・光・色・原子・質量…
    リチャード ハモンド,Richard Hammond,鈴木 将

    さえら書房
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    目で見るシリーズ(さえら書房)

     王立協会科学図書賞を受賞したCan You Feel the Force?を含む、DK(Dorling Kindersley)社の科学図解絵本Big Questionsシリーズの翻訳シリーズ。
     Can You Feel the Force?は『目で見る物理』という邦題で翻訳されているが、他に『目で見る化学―111種の元素をさぐる』『目で見る数学―美しい数・形の世界』『続・目で見る数学―数と単位で広がる世界』『目で見る進化―ダーウィンからDNAまで』『目で見る栄養―食べ物が作るわたしたちの体』などがラインナップされている。
     図解のDKらしく、実に工夫されたフルカラーの図解がこれでもかというくらいに繰り出されて、読む者の理解をぐいぐい進めていく。大人が読んでも楽しめるだけでなく、専門に進む人でも〈分かってもらえる説明の仕方〉を学ぶこともできる。
     もともと9〜12歳向けなので、原書の英文の難易度・分量ともに控えめ。大学生なら原書で読むのもいい。値段も安いし。


    アイザック・アシモフの科学と発見の年表アイザック・アシモフの科学と発見の年表
    アイザック アシモフ,Isaac Asimov,小山 慶太,輪湖 博

    丸善
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     科学の様々な分野をカバーして、大部だが個々の項目はコンパクトで読みやすい一冊本にナイジェル・コールダー『オックスフォード・サイエンス・ガイド』があるが、手元に置くには少々値がはる(図書館へ行こう)。
     次善の策として、科学・技術の歴史を縦断する、アシモフの読める科学年表がある。
     化学の学位とボストン大学の終身在職権を持つアシモフは、大学院時代から初期の代表作であるロボット工学三原則物やファウンデーションシリーズを発表し、化学者とSF作家の二足のわらじを続けていたが、ボストン大学での教科書執筆をきっかけに一般向けの科学ノンフィクションを書き始めた。1958年にボストン大学を辞して専業作家となった後は、ノンフィクションの執筆に集中し、科学解説者として広く知られるようになっていく。
     原著Asimov's Chronology of Science and Discoveryは、晩年にあたる1989年に発表されたアシモフの科学ノンフィクションの集大成。


    物理の散歩道 新装版物理の散歩道 新装版
    ロゲルギスト

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    新 物理の散歩道〈第1集〉 (ちくま学芸文庫)新 物理の散歩道〈第1集〉 (ちくま学芸文庫)
    ロゲルギスト

    筑摩書房
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    ロゲルギスト『物理の散歩道』『新 物理の散歩道』

     選書は概ね趣味や好みでやるものだが、これは義務(というか大きなお世話)のようなものを感じて選んだ。
     10年ほど前の話だが、自然科学を研究する学部に進んだ若い友人から、同級生にロゲルギストを知る者がいないと聞いたことがある。
     もったいない、いや、うらやましい。
     この辺りの科学随筆は、10代の頃こじらせるように読み込んで、科学の誘惑にどっぷりハマるものだと思うのだが、いくらか学んでから読んでみるのも悪くない。
     素材は我々が日常目にしていたり出会ったりする物事たち、それを物理のメガネで見たら何が見えるか気付けるか。
     何より、半世紀以上前に、この水準の科学随筆を書く人たちがいたということは、我々に勇気を与えてくれる。


    5.人文の知

    美学への招待 (中公新書)美学への招待 (中公新書)
    佐々木 健一

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     趣味だとか感覚だとか感性という言葉で流されてしまう物事について、立ち止まってあれこれ考える学問がある。
     というと、理屈っぽくすぎて敬遠したくなるかもしれないが、いやいや、これが面白い上に、いろんなところに効いてくるのだ。
     そういう美学の快楽と効用を知ることができて読みやすい本といえば、佐々木 健一の著作を何か一つ挙げたい。
     少し考えて、中公新書にある、そのものズバリのタイトルを持つこの本を選ぶことにした。


    ナボコフの文学講義 上 (河出文庫)ナボコフの文学講義 上 (河出文庫)
    ウラジーミル ナボコフ,野島 秀勝

    河出書房新社
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    ナボコフのロシア文学講義 上 (河出文庫)ナボコフのロシア文学講義 上 (河出文庫)
    ウラジーミル・ナボコフ,小笠原 豊樹

    河出書房新社
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     このブログではもはや定番だが、面白さでは随一であり、楽しんで読み進めるうちに、読み手の言語技術を2段階くらい高めることは間違いない(この本がキツい人は、読書技術に挙げた本を先にどうぞ)。
     ナボコフ自身、特筆すべき作家なのだが、誰もが知るような著名な小説作品をナボコフとともに読み進めるうちに、読む行為自体にひりひりするような興奮と快楽があることが分かる。




    鎖国と開国 (岩波現代文庫)鎖国と開国 (岩波現代文庫)
    山口 啓二

    岩波書店
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     何か一冊、本物の歴史研究者が書いた本を挙げたいと思った。
     初心者向けなら、我々の社会の陸続きの過去を扱う日本史で、なるべく近い時代を扱い、高い水準を維持しつつ入門書として読めるもの。もちろん面白くなくてはならない。
     となると、江戸時代を扱ったこの書が真っ先に思い浮かぶ。
     このわずかなページ数に、話し言葉という当たりは柔らかいが冗長な文体を採用して、なおこの情報量と密度。そして驚きと納得の連続。


    6.社会の知

    その科学が成功を決める (文春文庫)その科学が成功を決める (文春文庫)
    リチャード ワイズマン,Richard Wiseman,木村 博江

    文藝春秋
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     自己啓発本などに出てくるあれこれを実験で検証した心理学研究をたくさん紹介する本。心理学(さらにいうと学問)が何の役に立つのか、という人におすすめする。
     但し、ノウハウ系一般書の体裁をとるせいか、説明はいろいろ台無しなところも。興味を持つトピックについては、文献注にある参考文献にあたることを勧める。


    脱常識の社会学 第二版――社会の読み方入門 (岩波現代文庫)脱常識の社会学 第二版――社会の読み方入門 (岩波現代文庫)
    ランドル・コリンズ,井上 俊,磯部 卓三

    岩波書店
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     アタリマエのことを無理に難しく語っているだけ、という社会学についての悪評に対して、正面切って対抗してみせる入門書。
     つまり当たり前じゃない(脱常識)なことを分かりやすく説明してみせよう、というスタンス。
     フリーライダーと連帯、神と宗教、権力、犯罪、愛と家族、と取り上げるトピックは実に王道路線だが、トピックを打ち返す説明の方は、ある意味スキャンダラスで、良識ある人達の心波立たせるもの。繰り出す事例も興味深くて、社会学のヤバさと楽しさを濃縮したような小さな一冊。


    資本主義が嫌いな人のための経済学資本主義が嫌いな人のための経済学
    ジョセフ・ヒース,栗原 百代

    エヌティティ出版
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     哲学者が書いた、少し出自の変わった経済学入門。
     内容は、第1部で、「インセンティブは重要」「国際競争力が重要」「自己責任」「増税が経済活力を削ぐ」などと唱えて既成権力の走狗となってる右派(保守、リバタリアン)をボコボコに叩きのめし、第2部で「フェア・トレード」「同一職種・同一賃金」「平等がいちばん重要」と主張して善意の人の時間と労力を浪費してる左派(リベラル、ラディカルズ)をコテンパンに論破する。
     俎上に載せられるのは、自分の足を撃ってることも気づかない右派や、理想をこじらせて敗北の言い訳ばかりしている左派ばかりではない。政治家や経済評論家や社会運動家なんかが口にして、それなりに広まってしまう社会や経済の見方は、〈素朴経済学〉ともいうべき我々の臆見に根ざしている。
     この書の著者は、そこを撃つ。
     経済学者には、確かに(クルーグマンがリベラルに見えるくらいに)アレな人も多いけれど、もっといい世界を望むなら、みんなが好む〈簡単な解決〉がどれほど不愉快な結果をもたらすかについて、過去何世代もの間蓄積されてきた知的努力を無視すべきではない。経済学は、その知的努力の重要な一つなのだ。
     つまりこの書は、経済学が嫌いな人のための経済学なのである。著者は哲学者、経済学を擁護するつもりはなくて、クールな距離感を持って、その蓄積を我々に示してくれる。



     
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