1.その本を読みたい人が何人か集まる。

    2.その本をいくつかの部分に分け、参加者にそれぞれ割り当てる。

    3.次回にとりあげる部分を割り当てられた人(担当者)は、その部分をなんとか全部読み、次回の集まりには要約(レジュメ)を作ってくる。分からなかったところや疑問点も、要約に入れておく。

    4.担当者でない他の人たちも、次回にとりあげられる同じ部分を読んでくる。分からなかったところや疑問点を、次の集まりに持ち寄る。

    5.集まりでは、担当者がじぶんがまとめた要約を参加者に配り、口頭でもその部分の概要を発表する。分からなかった部分や疑問点などについて各自の見解をぶつけ合う。指導者がいる場合は、議論された疑問点や、取り上げられなかった重要な点について、参加者の議論を補足する。

    6.本の最後まで、3~5の繰り返し。


     改めて言うまでもないが、「輪読」と呼ばれる方法である。

     「本の読み方」みたいなものは、基本的に個人向けに書かれているので、大変ポピュラーな方法だが、あまり触れられていない。

     大学・大学院では、今でも「普通」に行われている。大学以外でも、ある本を読むことを目的に人々が集まった「読書会」が、このやり方で行われることも少なくない。
     隣組的な集団圧力(一種の仲間=共同体意識と言いなおしても良いが)が、難解かつ分厚い本で起こりがちな、途中リタイアを食いとめるのに働くのである。
     分からない部分を表明して共有し合うことも、挫折を予防する。わからないのは自分だけではないのだから。

     難しい部分や重要な箇所を議論することは、理解と習得を促進する。
     前にも書いたが、脳はアウトプットしたものを、重要なものとしてランク付けする。
     群れる動物として、社会的な場でやりとりされたことについてのセンシビリティ(感度)も高い。議論したことは、議論した相手やその集団と共に深く記憶に刻まれる。

     一人が担当する部分は、一章分だとか、一節分といった、内容のまとまりがつく分量が、通常選ばれる。10個のパートに分けた場合、参加者が5人なら2周する訳である。

     一人が一回に担当するのが1冊全部という場合もある。教科書といったものが存在しない分野だと、基礎文献が50冊くらいある場合もある(ぶっちゃけ50冊くらい読んでおけば、その分野では「常識」であることについて、「知らなくてびっくり」「自分で思いついて大発見」「車輪を改めて発明」という目に合わなくて済む、といった程度の意味である。その分野を専門にする場合に読んでおくべき文献はもっと多い)。1年は52週あるので、毎週一回1冊で回すと1年間で素人から離陸できる、という訳である。

     ひとり20冊くらいを担当して丸一日か半日で、各自が担当する分の要約(レジュメ)をつくり、次の一日ないし半日で各人から要約を発表し合う、というものもある。どこかで隔離されてやった方が集中力が発揮されるので、これは合宿でやる。これだと2~3日で100冊くらいを「読んだことにする」ことができるが、これはむしろ各人の「要約」力を鍛える目的が大きい。ほんとは要約というより、キモの部分をさっさと見つけて引き抜いてくる力だと思うが、大量の参考文献を必要とするジャンルだと、こういう力もトレーニングしとかないと大変である(何百ページある本を読んでも、自分に必要なのは1行~数行というのが通常だから)。これは輪読の「集団圧力」を、「1冊を読み終える」ことでなく「一人では無理なスピードで読む」ことに振り向けているのである。

     「輪読」がさも「普通」の方法であるかのように扱ってきたが、この方法が可能になるには、対象となる書物が各人に入手可能であり、平均して一定以上の読解力を持っている参加者が、ある程度の数揃うことが条件となる。
     この条件を満たすのは、結構きびしい。
     「輪読」が最も見られるのが大学の正規コースであり、次に学生たちの自主的な勉強会で、主に見られるのは、こうした訳である。学習資源、とくに本を読むことに当てることのできる時間が、一年を通じて十分にあるというのは、それほど見られるものではない。

     参加者が同じところで働くもの同士だと、職場での勉強会は見られなくもないが(知識の更新が必要な、広い意味での技術者など)、異なる仕事をする人たちだと、そもそも定期的に集まることも容易ではないし、各人が読書に振り向けられる時間も一定しない。同じ本を読みたいという者を、周囲に数人見つけることも簡単ではなくなる。

     そんなわけもあってか、ネットの上では「ひとりで輪読」している人たちが、結構いる。
     ひとりなら、誰かに合わせなくてもいい。空いた時間や都合のついた時間を好きなように使えばいい。ペースも調整できるし、事情により中断してもペナルティはない。再開も思うがままだ。
     要約(レジュメ)をつくる担当はすべて自分だが(ここをサボると効果は薄い/口頭で補うわけには行かないので、箇条書きレジュメよりは詳しい、読んで流れがわかるものを書くことになるが、これが理解を助け深める)、ネットに公開すると、世に知られた本なら、ときどきコメントがついたりする。集団の圧力が、挫折をささえるのが「輪読」だが、公開というプレッシャーがそのかわりになると言うわけだ。

     挫折の大きな原因である「自分ひとりでは理解できない箇所」は、どう処理すればいいか? 分からない箇所を引用して明示し、「ここがわからない」として、それも含めて公開(晒)して先に進むのが、唯一にして最善の方法である。運が良ければ、誰かがアドバイスをくれるかも知れない。
     調べに調べて、考えに考えて分からない箇所は、複数人+指導者付きの輪読でも、議論しても決着がつかない場所かもしれない。そういうところは、そもそも「分からない箇所」である可能性が高い。教科書なら誤植だったり、原典のたぐいなら長年論争になっているところかもしれない。
     いずれでなくても、「何がわからないか」はっきりさせたら、先に進むのをお勧めする。案外、先に行けばわかること場合もあるし、でなくても再読すれば分かる場合も多い(その際、自分の理解の記録として、自分で書いた要約(レジュメ)はとても役立つ)。また、小さな不明点のために、全体を捨てるのはもったいない。

     なにか1冊、大きくて難しそうだが、その後の人生の基盤になるような本があるなら、やってみる価値はある。なにより自分が学んだ痕跡が、他の人にも役に立ち、再利用(リユース)される。

     おそらくネットをし出してから抱いた感想だと思うが、同じ本を(自分と近い関心から)読んでいる人は、どうした訳か遠くにいる(あるいは異国の地ですれちがったりする)。印刷術がもたらしたもので、以前からもそうだったのだろうが、インターネットはそのことに(以前にも増して)気付かせてくれた。朋友(とも)、遠方に在り。それもまた喜ばしからずや。



    「一人輪読」の実戦(?)あるいは読書会関係のリンク

    ■みちもとあつしさん
    「マクロ経済学/マンキューも読むのでR!」
    http://hakase-jyuku.com/mankiw/archives.html
    「組織の経済学・マレニヨム」
    http://hakase-jyuku.com/mare/
    「経験経済学エクスペ1)エンス・エコノミー」
    http://hakase-jyuku.com/experience/
    『国際開発経済学をガッと読む』
    http://www.asahi-net.or.jp/~GA2A-MYZK/econo_d/

    ■郡上経済学研究所
    「マンキューの経済学原理(第2版)及び(第3版)」
    http://homepage1.nifty.com/gujyo-economic-res/mankiw/two-e.htm
    「マンキュ-のマクロ経済学(第4版)」
    http://homepage1.nifty.com/gujyo-economic-res/mankiw/mankiw00.htm
    「ローマーの経済学」
    http://homepage1.nifty.com/gujyo-economic-res/romer/romer00.htm
    「ケインズー般理論を読む」
    http://www.melma.com/backnumber_175722_4166804/


    ■きったんの頭ん中
    微積分学Calculus (Gilbert Strang) [XHTML]
    http://kittttttan.web.fc2.com/math/calculus/index.html

    ■(DxD)∞
    オライリー・ジャパンのJavaScript第5版を読んでいきます
    http://dxd8.com/archives/36/


    ■白水社:読書会ノススメ
    http://www.hakusuisha.co.jp/topics/dokusyokaimain.php

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