「どんでんがえし」を待つための、退屈で今時ミステリーでしか見られない
    舞台設定、退屈で今時ミステリーでしか見られない人間関係、退屈で今時ミス
    テリーでしか見られない心理描写、退屈で今時ミステリーでしか見られない陳
    腐なディテール、退屈×退屈なオマケに陳腐なトリック解説、を何ページも読
    まなくちゃならない(しかもちゃんと乗ってやらないといけない)「本格派」
    とはまるで似ていないこの小説が今では「探偵小説」と呼ばれたりするらしい。

     手前勝手に「別世界」を想定しておいて、そこにあらかじめ用意された寓意
    やら隠喩やらを、これまた作者自らが発見して悦に入るといった類の「幻想」
    モノのオナニズムが、あるいは魅力のかけらもない(もっともその筋の人々の
    アニマであったりはするのだろう)登場人物の長セリフでもって、どこかで聞
    いたようなスローガンを涙ながらに訴えるというのが作者や作品の「思想」だ
    と言い張る「煮詰まったおとぎ話」、とはまるで似ていないこの小説が、「幻
    想文学」と呼ばれたりもするのだそうだ。

     何か自分の弛緩しきった思い込みや慣習が裏切られた時には「パロディ」と
    言っておけばいいと思ってる連中によれば、「探偵小説」や「幻想文学」のパ
    ロディであるらしいこの小説の、最もどうしようもなく愛すべきシーンは、そ
    のクライマックス、霧のロンドンをアナーキストがゾウに乗って逃げ回る荒唐
    無稽な場面で、絶対映像化したくないが故に映像化不可能なのだ。四回読んだ
    が、二度と読まない。「誰にも読んで欲しくない」なんてぬかすガキは死んだ
    方がましだが、誰かに勧めてみようとは思わない。

     だいたい、「本を読め」なんて言う人間は眉唾ものだ。ほとんどクズと言って
    もいい。

     訳はあの吉田健一。いい訳。

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