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    あなたの地位と人脈は《スモールトーク》が決めている/ダンバー『ことばの起源』応用篇のサプリメントとして)

     どんな対人スキルもそうだが、理屈が完璧に分かっても、やり方を一人で100回繰り返しても、人に対して実際に使ってみないことには、結局ものにならない。
     この段階で「引き返し」を続けるなら、情報をいくらクリップしつづけても、アイデアを何度と無く並べ替えても、あなたのライフ・ハックと人生は、デスク周りの領域に終始することになるだろう。
     
    A:引っ込み思案や対人恐怖や社会不安は、対人スキルを使う機会を、そして身に付ける機会を奪う。
    B:それどころか対人スキルを使う場面を回避することことが、さらに引っ込み思案や対人恐怖や社会不安を増悪させる。

     AとBは、察しがつくように、悪循環を構成する。小さな不安から始まった回避は、やがて多くの生活時間を回避のために奪い、不安を手が付けられないほどに大きくするかもしれない。


     失敗を恐れるのは当たり前の感情だが、失敗を恐れるからやらないとなると、話は別だ。そういう人には、むしろ失敗することが『処方』される。わざと失敗するよう指示される。

     わざと失敗することは、「失敗すること」についての恐怖心を小さくする。先に「失敗すること」を回避すればするほど、その恐怖は大きくなる、と言ったが、その逆だ。意図的に失敗に触れることで、そしてその不安や恐怖を味わいつくすことで、ついには不安や恐怖は信じられないほど小さくなる。

     指示通りに「失敗」できれば指示されたとおりやれた点において成功だし、うまくいってしまえば(「失敗」することに失敗した訳だが)、それはもちろん悪くない結果だ。「わざと失敗しろ」という指示は、守ろうと守るまいと、いずれにしろ「うまくいく」しかない。こういうのを、治療的ダブル・バインドと言ったりする。
     よく知られたダブル・バインドは相反する二つの指示を出されたようなときに、いずれにしろ「うまくいかない」ようなものだが、ほとんど同じ構成で、正反対の機能を持つものがつくれるのだ。

     実際にやってみて、最初はうまくいかないことが多いだろうが、実際のところ100回も失敗することは、かえって難しい。


     論理療法の創始者、アルバート・エリスは、結婚カウンセラーからそのキャリアをはじめたほど、女性と交際することに高い関心を抱いていた。しかし(というか、だから、というべきか)、まったくの非モテだった。女性に声をかけたことすらなかった。

     彼は、都市公園に出かけ、これはと思う女性に声をかけ、隣に座る許可を得ておしゃべりを交わし、別れる時にデートの約束をする、という苦行をはじめた。そして結果がどうあれ、100人の女性に声をかけるまでは決して止めないと心に誓った。

     彼は週末のたびに公園で女性に声をかけつづけた。結果は散々なものだった。エリスがデートの約束にこぎつけたのは、100人のうち、たった一人だった。その彼女も、大方の予想通り、約束の時間約束の場所に現れなかった。

     この結果をエリスはこう総括する。半分以上の女性が、はなっからエリスの言葉に耳を貸さなかったが、エリスが恐れていたこと---たとえば、女性がエリスが声をかける前に、チビでぶさいくな彼の姿を見て胃の内容物を地面にぶちまける、といったことは、何一つ起こらなかった。それどころか、数人の女性がエリスにベンチをすすめ、話を最後まで聞いてくれた。そして何よりも、エリスは女性に声をかける行動を妨げていた恐怖心を完全に払拭していた。


     この苦行ができそうにないと思う人にも、方法はないではない。しかし、いずれにしろ、実行しないと何の効果もないことは言うまでもない。


     ある人は、おかしな格好をして、2時間、大勢の人とすれ違うにぎやかな街を歩く、という「苦行」をつづけた。彼は、帽子をかぶる、という他人には何が「おかしい」のか分からないところからはじめて、チャレンジのたびに「おかしさ」を徐々に上げていった(かぶりものには、さまざまな「おかしさ」のものがあるので利用できる、たとえばニット帽子から野球用の帽子に、そこから野球のヘルメットに、さらにフルフェイスのヘルメットに、さらには覆面に、といった具合に)。
     ある段階からは、「おかしな格好」のまま、他人に話しかけることにもチャレンジした。最初は時刻を尋ね、その次は今日の日付を、さらにその次は「今何年ですか?」と尋ねるようにした。尋ねる人数も一人から、段階的に増やしていった。
     彼の感想も、エリスのそれと似ている。無視されることもあったが、思った以上の数の人が怪訝な顔もせず(そういう顔をした人ももちろんいたが)、親切に応対してくれた、と。


     引っ込み思案や対人恐怖や社会不安を小さくし、対人スキルを使う機会を増やす方法は、つまるところ、恐怖や不安に直面してしかも逃げない(むしろ全身で味わう)ことである。心理療法では、エクスポージャと呼ばれるものだ。工夫はいろいろあるが、これらは逃げにくくするための細部のアレンジでしかない。


     あなたが対人スキルの実践にためらっているなら、すぐにでもはじめられることがたくさんある。たとえば、明日は、左右の足に色の違った靴下をわざと履いて出かけるという「恐怖」を体験してはどうだろう? いや、やるなら、今日、たった今から、が良いに決まってる。



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