TopHatebarというブログランキングサイトを見たら、「資料」部門で一位になってました。昨日見たら2位になっていてびっくりしたのですが、1位ライブドアのディレクターさんたちのブログで、向こうはプロだし数人がかりだし、その差はでかいぜ、思っていたので、ちょっと驚きです。「1日天下」でしょうが、ちょうどいい、この機会に、お蔵入りするはずだったエントリーを書いてみます。

     ホットエントリーとなるには何が必要か? それをチェックする7つの質問を考えました。

    NEW? どこかに新しいところがあるか?
    ACTION? 行動を喚起する要素を持っているか?
    KNOW-HOW? 具体的なやり方を提供しているか?
    EASILY? 理解しやすく、また実行しやすいか?
    BENEFIT? 何か得になることが載っているか?
    FACT(not only idea)? アイデア(思い付き)の提示に留まらず、事実(ファクト)を含んでいるか?
    REPEAT? 読み返したくなるか?

     それぞれの項目について、説明します。

    (1)NEW? どこかに目新しいところがあるか?
     どれだけすばらしい内容のエントリーであっても、直前に似たようなエントリーが出てたりすると、「二番煎じ」のように見えてしまって魅力半減です。
     逆に書き手が「こんなのgoogleで一発で見つかるし、みんな知ってるだろう」と思っていても、意外に知られてなかったりすることもあります。
     また、個々には知られているサービスの紹介であっても、まとめてもらえるありがたさは確かにあって、情報の編集や見せ方が重要であることを教えてくれます。
     結局は、事後的にしか確認できないことではあるわけですが、それでも「新しく見える」ことは、かなり大きな要因でしょう。
     希少性(めったにないこと)もまた、「目新しい」ことに含まれます。

    (2)ACTION? 行動を喚起する要素を持っているか?
     プレゼンなどでよく言われる事ですが、相手が深い理解に達することと、相手が(いまいち理解が怪しくとも)とにかく行動してくれることとでは、目指すべきは後者であることは言を待ちません。
     それとは異なりますが、問いを投げ出しておいて「あとは読んだ人で考えてね」といったエントリー(最近のでいうと、たとえば「がんばらないぶんめいのはなし」なんかがそうですが)は、通にはウケが良いのですが、ブックマークには見事に反映しません。読んで考える/考えない、という段階で止まるのでなしに、読んだ、わかった、さあ何をすれば良いんだ?と言うわけです。
     「行動を喚起する」というのは、次の項目である「ノウハウ」ともダブってくる部分ですが、ノウハウと違うのは、たとえばブックリストを眺めると何故か本が読みたくなる訳で、どういう読み方をすべきか提示しなくても、人を「読む」という行動に向かわせる、行動のきっかけを与えることは可能なはずです。
     むしろあえて「このようにやれ」と言わないことが、かえって行動を促す事だってあります(でなければ、広告の多くが成立しないでしょう)。

    (3)KNOW-HOW? 具体的なやり方を提供しているか?
     新しいやり方があります、というだけでは、多くの場合、不十分です。何がどのように「新しい」のかを示すためにも、それが効果があるかどうか、その前にそもそも実現可能であるかどうかを読み手が確かめるためには、具体的なやり方が提示されていることが必要です。
     逆に具体的なやり方が提示されていれば、実はその方法はイマイチだとしても(効果は人によって様々だったり、実は欠けるコストに見合わぬものしか手に入らなかったりするかもしれません)、人はそれを一定期間試してみるために、そのエントリーをブックマークするでしょう。

    (4)EASY? 理解しやすく、また実行しやすいか?
     マスメディアで提供される情報は、だいたい14歳ぐらいの人が持つであろう平均的リテラシーで理解可能であるようになっていると、どこかで読んだことがあります。あるいは、そうあるべきだ、という話なのかもしれません。
     「14歳のリテラシー」という言葉が意味するところは曖昧ですが、ストライクゾーンは意外にも狭く、また低いことを、何か書くときには思い起こさせるフレーズです。
     実行しやすいかも重要です。「語学としての数学」というエントリーで、書き写す(その実態は書いて移すことにあるのですが)というやり方を紹介した時、「とても私には無理」という方が結構いらっしゃいました。「これならできそう」と思ってもらう方がブックマークがつくことは言うまでもありません(自分にとっては「この本は難しかったから、結局最後まで写したよ」なんて人がざらにいるので、紹介したのはまだ軽い方法だったりするのですが、今回の問いはすべて読み手から見てどうなのかを考える問いになっています)。

    (5)BENEFIT? 何か得になるか?
     いくら理解しやすく実行しやすいものであっても、そのエントリーが喚起する行動が、結局何ももたらさない(と感じられる)ならば、人はブックマークをしようとはしないでしょう。年収が10倍になるエントリーが毎日書けるはずもありませんが(それどころか自分には一つだって無理そうです)、物質的利益につながらなくても、何かを知る・何かがわかるという利得がなければ、人はたとえ読んでみても、エントリーとのつながりはその瞬間に限られ、読みっぱなしで通り過ぎていくでしょう。

    (6)FACT(not only idea)? アイデア(思い付き)の提示に留まらず、事実(ファクト)を含んでいるか?
     これはちょっと異質な問いかもしれません。学術論文なら当たり前のことですが(分野にもよりますが)、ほぼ毎日書かれ更新されるブログで、毎回オリジナルなデータを作っていると時間がバカになりません。データ自体はネットにいくらでもあるのですから、誰もがアクセスできるデータに対して、オリジナルな「観点」や「切り口」を提供できれば、それで十分な気もします。人のブログから、そうした「観点」「切り口」で処理された「データのなれの果て」をコピペして来るだけ、といったブログも珍しくないのですから、 

    (7)REPEAT? 読み返したくなるか?
     一度読んでおしまいのエントリーをブックマークする人は多いでしょうか? 現実に読み返すかどうかは別にして、」後で読む」ため、というのはブックマークの動機になります。


     さて、しかし、これだけだと、まさに「思い付き」の域を出ません。それぞれの項目同士は、いくらかずつ重なっていたり、強く関係しあっているものもあります。どちらか片方が入っていればそれで十分ということもあるかもしれません。

     そこで、このサイトの(はてなブックマークで少なくとも1userのブクマがある)エントリーについて、7つの質問をやってみて、その結果を独立変数とし、user数を従属変数として、重回帰分析をやってみます。
     そうして項目ごとの寄与率、たとえば“「新しいところがある」よりも「具体的なやり方を提供している」ことの方が、はてブのuser数を獲得するには2.5倍の効果がある”、なんてことを導き出そうという訳です。すべての条件を満たすエントリーは大変ですから、少数のしかし効果的な条件に注力しよう、というあらすじです。まあ、はてブを稼ぐためにブログを書いている人もいないでしょうが、仮にいるとすると、その人たちにとってこのエントリーはBENEFITを、なにか得になることを与えるものになるでしょう。

     一番最後につけた表が、user数でソートしたこのブログのエントリーと、それぞれの質問についての採点をまとめたものです。
    これくらいだとエクセルでもできます。あれの出す統計結果は怪しいことがあるらしいのですが(くわしくは青木先生のページをどうぞ)、オープンソースの統計パッケージRが何故だか見つからず、エクセルの分析ツールの中にある回帰分析というのを使いました(これについては、斉藤経史さんの「Excelにおける回帰分析」http://keijisaito.info/econ/jp/excel_ols/が、詳しい上に分かりやすくてお勧めです)。
     
     で、その結果です。



    kaiki1.jpg


     「重回帰分析の結果」の一番上にある3つ、「重相関 R」「重決定 R2」「補正 R2」は、いずれも重回帰分析がどの程度当てはまっているかを示す指標です。このうち一番下の補正R2(自由度修正決定係数)が、説明変数の数を考慮した当てはまりの指標です(「重相関 R」「重決定 R2」は、説明変数の数が増えると、当てはまりが変わらなくても増えてしまうのです)。後で余計な説明変数を削るということをしますが、説明変数の数が減った場合はここを比べます。

     次の「分散分析表」では、「切片以外の全ての説明変数は無効」という仮説を検定しています。見ていただきたいのは、〈分散分析表〉の〈有意F〉です。有意Fは『切片以外の全ての説明変数の効果が0である』という帰無仮説のもとで、偶然によって標本が観測されてしまう確率の上限を示します。
     普通は0.01や0.05という確率と比較して、『切片以外の全ての説明変数の効果が0である』なんてことは、滅多に(100回に1回/100回に5回というよりも小さい確率でしか)起こらない、だから『切片以外の全ての説明変数の効果が0である』という仮説は捨てよう→説明変数の効果はあるよ、という判断をします。
     今は〈有意F〉の値は、3.61423E-07(3.61423×10のマイナス7乗)という0.01と比べてもはるかに小さな値ですから、説明変数の効果はないことはない、と判断します。ここまでいいのですが。

     次の表は、推定した係数についての指標が出ているのですが、まず係数のところ、ここは「説明変数1単位の増加⇒被説明変数への効果」の推定値を示しています。例えばnewのところの係数は239.5372313となってますが、これは「目新しいところがある」ならば、「ない」場合よりも、ブックマークするuser数は約240人多い、ということを意味します。
     これでみていくと、最もブックマークuser数を左右するのはaction(行動を喚起するか)で、「行動を喚起する要素を持っている」ならば、おおよそ380人、user数は多くなるだろうと推測されます。
     が、問題のある変数があります。下線を引きましたがbenefitの-216.797965というところです。「何か得になることが載っている」と、なんとブックマークuser数が200人以上減ってしまうのです。なんだか変です。
     変数それぞれについて、『この説明変数の効果は0である』という仮説を検定しているのが、P-値のところです。ここをみると。P>0.05である変数が2つ(benefitとfact)
    、さらに条件を厳しくしてP>0.01である変数をみると3つ(knowhowとbenefitとfact)が、『この説明変数の効果は0である』という仮説を捨てられない、つまり『効果がないかもしれない』可能性をぬぐい去れない訳で、これら変数の採用は考え直した方がよいことを示しています。


     そこでこの3つの変数を捨てて、重回帰分析を行ったのが次の3つの表です。

    kaiki2.jpg

     まず、マイナスの係数をもつ変数はなくなりました。P>0.05である変数もありません。そして最初に述べた補正R2(自由度修正決定係数)を見ると、変数を減らす前が0.600797244、変数を減らした後が0.574885808です。少し減りましたが4つの説明変数で、被説明変数の6割弱を説明しているということですから、いいことにしましょう。有意Fの値も、7.33079E-08で、十分小さいです。

     結果、
    NEW? どこかに新しいところがあるか?
    ACTION? 行動を喚起する要素を持っているか?
    EASILY? 理解しやすく、また実行しやすいか?
    REPEAT? 読み返したくなるか?

    という4つの質問が残りました。
     そもそも重回帰分析は、説明変数の間に相関関係がないことを前提としています(変数の間に関係があると、悪さをして変な結果が出たりします)。先に述べましたが、最初にあげた7つの質問は重なる部分があったり、強い関連性があったりしました。これら4つはそうした相関関係があるもののうち1つだけを残せば十分ということで、残った変数だと言えます。



    という訳で、エントリーを書く際に、4つのチェックポイントを確認し、すべての要素を兼ね備えるならば、
    new    216.4582539
    action  349.1595671
    easy   177.1050577
    repeat  287.0655986
    の係数をすべて加えた約1030usersのブックマークを獲得することも夢ではありません、と大風呂敷を広げたまま、この長い長いエントリーを終わろうと思います。

     えっ?このエントリー?
     うーん、新しいところはないし(強いて言えば重回帰分析なんか持ち出したことくらい)、易しくもなければ、繰り返し読むのなんてまっぴら。行動を喚起する? はてブ狙って、ブログを書く人なんて(そんなに)いないって。
     というわけで足切りの3users以下に沈むかな……。



    (その後のはてなブックマーク数の推移)


    (分析対象としたエントリーとその採点)

    投稿日トウコウビ タイトル はてブusersスウ new action knowhow easy benefit fact repeat
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