以前には「成人病」※と言われたものが、現在は「生活習慣病」と言い直されてる。あたかも、本人の「生活習慣」にすべての原因があるかのように。
     
     「成人病」も「生活習慣病」も日本独自の言い回しで、多くの国では慢性疾患(英語だとCHRONIC DISEASE)と言われる。

     もちろん、成人病(生活習慣病)にも、遺伝素因が大きく働けば、その生活習慣も個人にままならぬことだって多い(過労死したくてする人はいないだろう)。
     つまりは、同じ生活習慣であっても、成人病(生活習慣病)になりやすい人もいればなりにくい人もいるし、望ましい生活習慣が何かわかっていても、それが実行できるかどうかは個人だけの話で済まない。

     わりと最近まで、すべての交通事故の原因は「運転者の不注意」とされたこの国では、「わるいこと」はたいてい「個人の責任」にされることが少なくない。
     「自己責任」の合唱は、だれかの無責任に端を発している。しかもご当人たちは(それこそ無自覚/無責任にも)そのことを失念している。


    「1990年代半ば以降ほぼ10年間の長きにわたり悪化の一途をたどった若年雇用問題の咎を、労働需要側や日本の若年労働市場の特殊性にではなく若者自身とその家族に負わせ、若者に対する治療・矯正に問題解決の道を求めている。
     「ニート」は、忌むべき存在、醜く堕落した存在、病んだ弱い存在として丹念に描き出される。
     「ニート」は、可能な限り水増しされ、互いに異質な存在をすべて放り込んだ形でその人口規模が推計される。
     「ニート」は、若者全般に対する違和感や不安をおどろおどろしく煽り立てるための、格好の言葉として用いられる。
     「ニート」はやがて、本来の定義を離れてあらゆる「駄目なもの」を象徴する言葉として社会に蔓延する。」(「まえがき」本田由紀)
      

    ※成人病:「加齢に伴って」発症する疾患(病気)の総称。
     代表的な成人病には、ガン、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、心筋梗塞や脳血管障害などの動脈硬化性疾患が含まれる。
     ガン、脳血管障害、心臓病の「三大成人病」だけで、日本の死因の6割程度を占める。


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