時々忘れてしまいそうになるが、アイデアは生では食えない。
     つまり、「そのままでは使えない」のがデフォルトである。

     時々、宝石のようなアイデアにめぐり合うこともあるが、そんな僥倖は待つものではない。
     宝石にしても、磨いてカットすること、評価しディスプレイすることが必要になる。

     料理を例にとろう。
     サバ、サンマ、ハマチと「青身の魚」ばかりあつめても、献立が立たない。
     アイデアは食材だ。
     現実のものとするには、何か違う種類のものと組み合わせて、加工することが当然、予定に入ってなくてはいけない。

     小量のアイデアを後生大事に抱えていることは愚かしい。
     時に愚かであることが必要だとしてもだ。

     湯水のごとくアイデアを扱おう。そのためには、まずは数がなければ始まらない。


     アイデアを無理やりひねり出す方法はいろいろあるが、話ベタな日本人(へたな癖にやたらと話したがる輩を含む)には、ブレイン・ライティングが向いている。
     狭い部屋で同じように頭を絞ってそれぞれに独立した作業を行ない、そのことでやる気に火が着くところや、時間に縛られるところも、パンクチュアルな日本人向きだ。


     普通、紹介される方法は、6行3列のマス目を書いた紙を使う。

    bw-sheet.png


    (普通のやり方)

     デフォルトの設定は6人が参加して、1ターンは5分。
     それぞれに6×3のマス目が配られ、各自は5分以内に1行(3つのマス目)分を、なんらかのアイデアで埋める。
     5分経つと、各自がとなりに紙を渡し、各自は5分以内に次の1行(3つのマス目)分を、なんらかのアイデアで埋める。
     5分経つと……(以下くりかえし)。
     紙が一周したら5分×6人=30分が過ぎ、6×3×6人分=108個のアイデアが出た、という訳である。
     
    bw-process.png



     この標準的なやり方には、問題がある。
     アイデアの数が増えると、アイデアをハンドリングする工夫をしないと、整理がつかず、カオスに陥る。

     冒頭に、アイデアは作りっぱなしにできない理由を述べた。アイデアは整理されたり、組み合わせられたり、せねばならない。
     だから少しやり方を変える。




    (工夫したやり方) 

     参加者の人数だけ、大きめの台紙を用意する。

    (1)ポストイットをくばり、1行に3枚づつ、各自で貼ってもらう。これで準備完了。

    bw.png

     A4の紙だと、75mm四方のポストイットは、無理して4行×3列と12枚しか貼れない。もう少し大きな台紙を用意するか、何枚のポストイットを貼るかは、使える時間と参加者数に応じて、現場で調整する。

    (2)各自は5分以内に1行(ポストイット3枚分)を、なんらかのアイデアで埋める。

    (3)5分経つと、各自がとなりに紙を渡し、各自は5分以内に次の1行(3つのマス目)分を、なんらかのアイデアで埋める。

     5分経つと……(以下くりかえし)。



    (アイデアが出た後の処理)

     ポストイット方式のブレイン・ライティングのメリットは、アイデアのハンドリングが向上することである。
     人数が居るうちに、その手を使えば、貼りかえも整理もはやい。
     時間を使えるなら、模造紙の上に、ポストイットを貼りながら、KJ法もどきで整理する。
     ホワイトボードをコピーできる装置は、この巨大な整理用台紙を手持ちサイズにしてくれ、お持ち帰りを可能にしてくれる。


    (KJ法についてのメモ)

     KJ法は、本来、素材の「分類」を良しとしない。
     料理のたとえに帰れば、魚ばかり、あるいは、根菜類ばかりあつめても「料理」しようがない。
     「ナントカずくし」をやるにも、「脇役」や「だし」が必要だ。


     「分類」を避け、アイデアの整理と組み合わせを行なうには、「ストーリーができそうな組み合わせ」を探すとよい。

     たとえば、謎かけ。「○○とかけて、××と解く、そのこころは~~」である。無理なこじつけこそ歓迎すべきだ。

     主人公-対象・目的、送り手(対象の出発点)-受け手(対象の到着点)、そして援助-妨害(この3対は理想とその実現、時間の流れ、空間の移動の3軸でもある)でできたグレマスの図式も役に立つ場合がある。
     すべての項目を埋める必要はない、主役と目標と障害だけでも、立派に「一皿」できる。もちろん、主役と目標と援助者でもかまわない。


     最下位のレベルで「かたまり」ができたら「かたまり」に名前をつけ、かたまり同士を組み合わせて、ひとつ上のレベルで「ストーリー」をつくるような組み合わせを探す。
     足りない素材は、無論、追加していい。
     むしろ、このステップでは、追加されるアイデアに期待している。

     かたまりづくりとより上位への以降をくりかえして、すべてのポストイットの「処遇」が決まったら、スナップショットを撮ろう。
     できればコピーして、みんなに配る。
     ひとつひとつは凡庸なアイデアが、仲間と居場所を得て、輝き出しているだろうか?

     途中でアイデアをまとめるストーリーは「使い捨て」しても構わない。
     むしろ、とりあえず配置が決まった後、全体の絵を無理やりストーリーに読み取る作業(KJ法B型)が肝である。

     箇条書きでなく、ひとつながりの文章としてアウトプットした方が良い。
     ここでも追加は歓迎される。




    最上のミーティングは「話し合わない」こと/素人こそ使える3つのノウハウ 読書猿Classic: between / beyond readers 最上のミーティングは「話し合わない」こと/素人こそ使える3つのノウハウ 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加




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