『広辞苑』という国語辞典が、今ではちょっと信じられないほど「権威」を持っていた頃、日本人は岩波書店の辞書編纂室に電話して、自分じゃちょっと答えが見つかりそうにない質問を尋ねたりしたのだそうだ。
     
     そんな時、アメリカ人なら図書館に電話する。
     過去形ではない。
     この検索エンジンの時代に、だ。

     君が誰でも、何歳でも、どこからでも、そしてどんな質問でもいい、何かわからない事があったら、この番号に電話して尋ねてみるといい(もちろん国際通話料その他のコストは君もちだ)。
     国際アクセス番号(たとえば010)+アメリカの国番号(1)+ニューヨークの地域番号(212)、あとは340-0849。
     ニューヨーク公共図書館(New York Public Library)電話リファレンスサービス、通称"TelRef"につながるはずだ。

     さっきは南アフリカから、レーニン像って世界中にいったいいくつあったんだ?という電話があった。
     ある作家は、独立戦争時にジョージ・ワシントンが率いたシンシナティ協会の(無論、当時の)住所を問い合わせて来た。
     それからコニーアイランドで休日を過ごす約束をしていた少年が、手のひらをかえしたパパをやり込めるために電話をかけて来た。
    「コニーアイランドのなるだけ近くにある文化施設を教えて」
    「どうしたの?」
    「パパがまず勉強になるところへ行ってからだ、っていうんだ」。

     日本の司書なら「私たちは何でも知ってる訳じゃないです。自分が知っていることを説明するのではなく、利用者が必要としている回答が載っている資料を探し出し、それを紹介するのが司書としての仕事です」と答えるだろう。

     "TelRef"のスタッフの一人は言う。
    「みんなが想像するより、ずっと知ってると思うわ」

     どんな質問がかかってくるか、それに"TelRef"はどう答えるのか、長い間、チーフを勤めたBarbara Berlinerが本を書いている。その名も、
    The book of answers : the New York Public Library Telephone Reference Service's most unusual and entertaining questions.(ニューヨーク公共図書館の電話リファレンスが受けたとびきり変で楽しい質問)。
     キャロル・ボルトの単なる抜き書き本と一緒にしないでもらいたい。
     質問と答えは、ご想像の通り「トリビア」のかたまりのようなものだが、言えばアメリカ人(に限らないのだが)の好奇心とそれに答えるアメリカのプロ司書の応酬として読んで欲しい。

     さて、"TelRef"のスタッフはどんな質問にも、5分以内に回答する。
     図書館の内規で、5分以内に答えなくてはならない、というルールがあるからだ。

     でも何故?

     "TelRef"のチーフはこう説明する。

    「じゃないと、うちのスタッフはみんな、答えを見つけるまで絶対に探すのを止めないから」



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