昨日はニューヨーク公共図書館の電話レファレンスの記事を書いた。

     昨日のエントリーへのはてブのコメントで、書物蔵(id:shomotsubugyo)さんから紹介いただいたように

    日本レファレンス史のミッシングリンク(完結篇) - 書物蔵 日本レファレンス史のミッシングリンク(完結篇) - 書物蔵 このエントリーをはてなブックマークに追加

    日本にもレファレンス・マインドを持った先人がいたのである(ご紹介いただいたエントリーは熟読に値するぞ)。

     そんな訳で、今日は日本の図書館のレファレンスについて書く。

     全国の図書館でのレファレンス事例(こんな問い合わせがあったので、こんな風に探して答えた)を集めたレファレンス協同データベースというものがある。
     今日は、2万件のレファレンス事例から選りすぐった過去のおすすめ事例の中から、さらに5つを厳選してみたので、紹介したい。

    Q1. 明治頃に出ていた「馬鹿の番付」を掲載している資料、本を教えてください。
    Q2. 食べられる菊の花「もってのほか」の事について知りたい。
    Q3. 大阪の飲食店「くいだおれ」のキャラクター「くいだおれ太郎」の弟「くいだおれ次郎」と従兄弟が現在どこに展示されているか知りたい。
    Q4. イギリスの客船の船長、あるいは軍艦の艦長が船が沈むとき船と運命を共にする習慣はいつごろどのように始まったのか。またその起源はイギリスか?
    Q5. ホタルの光の点滅は、関東と関西では周期が違うと聞いたが本当か


    Q1. 明治頃に出ていた「馬鹿の番付」を掲載している資料、本を教えてください。
    「二つの『馬鹿の番附』」(※1)によると、「馬鹿の番付(番附)」は『馬鹿の番附』と『新撰 馬鹿の番附』2種類あるとのことです。(それで全部だとは書いていません)
    当館所蔵資料では、『番付集成 下』(※2)、「二つの『馬鹿の番附』」、『社会経済論』(※3)、『明治文化全集別巻 明治事物起原』(※4)(※5)で見ることが出来ます。ただし、「二つの『馬鹿の番附』」のほうは印刷状態が悪く、読みにくいかと思います。
    また、当館には所蔵していませんが、『ビジュアル日本の歴史2004/11/30発売号 (第45号)』(※6)の目次には「~嗚呼、西洋かぶれランキング~馬鹿の番附」とあります。( http://www.fujisan.co.jp/Product/1281680519/b/73145/  )
    「二つの『馬鹿の番附』」の紙面では、その両方が写真で掲載されていますが、すでに書いたとおり、不鮮明です。
    一方、『番付集成 下』には、そのうちの一つ『新撰 馬鹿の番附』のみ掲載されていますが、内容は鮮明に読み取れます。
    『社会経済論』『明治文化全集別巻 明治事物起原』はともに『新撰 馬鹿の番附』のみ掲載ですが、『番付集成 下』と比べると鮮明度が落ちます。
    『ビジュアル日本の歴史』は所蔵しておりませんので、内容はわかりません。
    なお、『馬鹿の番附』と『新撰 馬鹿の番附』(あるいはその他の版)を見分けるため、東西大関のみ、「二つの『馬鹿の番附』」本文より引用いたします。(横綱はありません)

    『馬鹿の番附』
    東 外国人を婦に持通弁雇ひ入れの月給にて身代潰す洋学者
    西 夷人を女房に持男女同権と威張られて困って居る洋行生徒

    『新撰 馬鹿の番附』
    東 米穀を食ずしてパンを好む日本人
    西 国産の種油魚油を捨て舶来の石炭油を用いる人

    補足情報ですが、「二つの『馬鹿の番附』」によると、『馬鹿の番附』は「記名はないが明治初年の奇僧佐田介石が編集したものと云われている」とのことです。『明治文化全集別巻 明治事物起原』でも佐田介石の編とされています。
    「二つの『馬鹿の番附』」は『素人学者の古書探求』(※7)にも収録されていますが、こちらは『馬鹿の番附』の写真は掲載されていません。ただ、本文にある、内容についての若干の解説は読めます。(雑誌掲載のほうでも読めます)
    ※1~7は参考文献参照

    ■参考資料
    ※1「二つの『馬鹿の番附』」橋本万平著 掲載は『日本古書通信』昭和55年10月号(45巻10号) 日本古書通信社 <Z02305/8>
    ※2『番付集成 下』林英夫、芳賀登 共編 柏書房 1973年<031.5/8/2>
    ※3『社会経済論』明治文化叢書 佐田介石著 本庄栄治郎解題 日本評論社 1941 <331.3/38>
    ※4『明治文化全集別巻 明治事物起原』石井研堂著 日本評論社 1969年<081.6/23/29>
    ※5『増訂明治事物起源』石井研堂著 春陽堂 1926年 ほか、いくつかの版違いあり(当館未所蔵)
    (注)※4、※5の原と源は原文ママです
    ※6『ビジュアル日本の歴史2004/11/30発売号 (第45号)』デアゴスティーニ・ジャパン(当館未所蔵)
    ※7『素人学者の古書探求』橋本万平著 東京堂出版 1992年<020.4AA 158>

    馬鹿の番付け

    Q2. 食べられる菊の花「もってのほか」の事について知りたい。

     山形県は食用菊の生産量では全国一位を占めています。植物分類では観賞用の花と全く同じですが、苦味が少なく香りが良く、ほのかな甘さのあるものをと選抜されてきたのが食用菊です。
     その代表的なものが「もってのほか」と独特の名で呼ばれてる正式には延命楽という品種です。
     「もってのほか」という愛称で呼ばれている由来は、「天皇の御紋である菊の花を食べるとはもってのほかだ」とか「思いがけず、ことのほかうまい」といったところから言われてきたようです。
     専ら料理される花は花弁を抜き取り、酢を入れたお湯でさっと色よく茹で、おひたしや和え物、酢の物にきゅうりと一緒に漬物や甘酢漬け、塩漬けなどの素材としても好まれています。

    「もってのほか」の味覚は、花は八重で花びらが筒状に丸まった管弁なので茹でても崩れにくく、しゃきしゃきとした歯ざわりと、ほのかな香り、ほろ苦くふっと甘い、独特のうまさと評価されている。
    「もってのほか」は食用菊の中で最も晩成で、10月下旬頃から花摘みされる。

    ■参考資料
    山形のうまいもの/山形県農産物マーケティング推進協議会/編
    花の山形山形県生涯学習人材育成機構/偏
    植物ことわざ事典/足田輝一/編 東京堂出版/1995.7 P206-208


    Q3. 大阪の飲食店「くいだおれ」のキャラクター「くいだおれ太郎」の弟「くいだおれ次郎」と従兄弟が現在どこに展示されているか知りたい。

    (株)くいだおれ総務部に問い合わせると、下記のような回答を得た。
    社史には「次郎」、「楽太郎」の記載はない。「次郎」は、国民的なお祝い事、または大阪にとってのお祝い事があるときに限り登場し、普段は外へ出ていない。「楽太郎」は、くいだおれ裏側の「ウラ・くいだおれ」に不定期に登場する。

    ■回答プロセス
    (1)聞蔵、日経テレコンを「くいだおれ」と「人形」で検索すると、それぞれ101件、46件ヒットする。「次郎」と従兄弟に関連する記事はない。父親に該当する初代「くいだおれ太郎」については下記の記事を参照。
    ・「わてが父親や 初代復活、なにわ名物くいだおれ人形」朝日朝刊1999年6月9日
    (2)Wikipediaでは「くいだおれ」で検索すると、「くいだおれ太郎」の記事があるが、弟と従兄弟についての記載はない。社史は下記の資料である。本学に所蔵しない。
    『ばかたれ、しっかりせ:くいだおれ会長山田六郎伝』/柿木央久著 ISBN:4062083000406
    (3)Googleで「くいだおれ太郎」を検索すると、exciteニュースで下記の記事を見つける。
    「くいだおれ一族」の謎に迫る。この記事で従兄弟の名前は「くいだおれ楽太郎」であると判明。
    (4)(株)くいだおれ 総務部に問い合わせ。


    Q4. イギリスの客船の船長、あるいは軍艦の艦長が船が沈むとき船と運命を共にする習慣はいつごろどのように始まったのか。またその起源はイギリスか?

    起源についての資料はなかった。
    (1)(2)の中に、船員法第12条「船長の最後退船の義務」が船長を船と運命を共にさせることになったと述べられている。また、同法は改正され、船長も緊急避難に関する刑法37条の通用を受けるようになったとある。日本海事史学会のアドバイスにより、この法律の根拠をさかのぼってみたが不明。また、海難審判の歴史からもアプローチできるのではないかということで、日本海法会、日本海難防止協会を紹介。
    (1)の中に、船と運命をともにした日本船の事例があり、船員法第12条「船長最後退船義務」への批判の声を日本船長協会があげていたとあったので、改正にむけての、船長の退船の事例調査を同協会が行った可能性を考え、あわせて紹介した。

    ■参考文献
    (1)「生きるための海 -海のサバイバル」(558.8/N94)
    (2)「船長の職責」(558/Ta84)
    (3)「内航近海官庁団体リスト」(RM.06/N28/'96)


    Q5. ホタルの光の点滅は、関東と関西では周期が違うと聞いたが本当か

    ゲンジボタルの場合、明滅の周期は関東が約4秒、関西が約2秒(但し、気温、時間等で相違があり一概にはいえない)

    当館所蔵のホタル関係資料のうち、東京ゲンジボタル研究所/編『ホタル百科』(丸善)2004年刊のP20及び、大場信義/著『ゲンジボタル』(文一総合出版)1988年刊のP61より



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