http://www.nagaokaut.ac.jp/j/gakubu/bgmokuji.html

     大学の先生が推薦図書をあげるというと、妙に「人文系」してしまって、本人達は「古典」みたいなのを並べたつもりでいるのだけれど、3位に『ゲーデル、エッシャー、バッハ』みたいなクズ本が混じったり、生物系ではブラック・リストに載せるべきスティーブン・グールドまで10位に入ったり、それどころか1位が『カラマーゾフの兄弟』だったりして「文学年齢」が10代で止まってる連中のそれはそれは多いことを表立たせて、なんともやり切れない気分になるが、今回紹介するものは、ちょっと違う。

     話は少し迂回する。
     まだ無線通信が知られない1873年、フェルディナント・ブラウンという科学者(電位計やオシログラフ、そしてブラウン管などを発明してる)が鉱石の単偏導性を発見した。
     さまざまな天然・人工の金属硫化物や鉱物の結晶で、電流の方向や大きさ、流した時間によって、抵抗値が大幅に変動する場合があることを知ったのだ。
     そうした半導体的な挙動によって整流・検波作用がもたらされる(のだが、その原理は、現在でも解明されたとは言えない)。
     また、鉱石には光や熱を受けて微小な電位差を生じる性質があるが、この起電効果も検波に一役買っている(らしい)。

     鉱石と針とが、点で結ばれた、シンプルで複雑な世界。

     ブラウンは1897年に鉱石検波理論を発表し、1901年には実際に検波器を製作した。
     かくて鉱石ラジオの時代が始まり、やがて性能のよい真空管やゲルマニウム・ダイオードが量産化されるまでの四半世紀、ラジオといえば鉱石ラジオのことだった

     といったようなことを頭におくと、上記のブックガイドで木村宗弘氏が「技術立国を支えるラジオ少年」という題で、『実用電子回路ハンドブック』( CQ 出版社)を推薦しているところなど、感慨深いものがある。
     木村氏が言っているように、「初版が35年前に出ている古い本であるが、電子回路がもっとも生き生きとしていた時代の本」なのだ。

     また「結局は、原典に学ぶ必要がある」 というタイトルで武井由智氏があげる本は(古典でなく原典というところに注目である)、B.W. カーニハン、D.M. リッチー著『プログラミング言語C 第2版』 (共立出版)なのだ。
     コンピュータ・サイエンスは、原典が直接参照される、あらまほしき領域なのである。
     物理学徒がニュートンを、生物学徒がダーウィンを参照するかどうか想像してみるといい。

     あと田中泰司氏の「天才は本を選ばない」も、アンチ・ブックリストしていて面白い。
    “クラスメートには速読術に長けた者が数人いた。彼らはどんなに難解な本であっても、一語一句の全てを記憶に焼き付けることで、驚異的な速度で学習していく。およそ500頁にわたり、数式が羅列されているような本でも1時間を要せずに読破する。簡単なものであれば(それでも一般的には難解な書籍だと思うが)10分ほどでマスターできるらしい。なるほど、本当の天才というのは本を選ぶ必要がないのだな、というのが私の感想である”。

     じゃあ、あんたは何を選ぶんだ、と出して来るのが、チモシェンコ『材料力学(上)』である。初版が1930年、日本語訳は1957年 、以来75年もの間、多くの国で工学系の学生や技術者に愛読されている。これなども古典などではなく、単に名著である。


    実用電子回路ハンドブック (1)実用電子回路ハンドブック (1)
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    トランジスタ技術編集部

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    プログラミング言語C 第2版 ANSI規格準拠プログラミング言語C 第2版 ANSI規格準拠
    (1989/06/15)
    B.W. カーニハンD.M. リッチー

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    材料力学 上巻材料力学 上巻
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    チモシェンコ

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