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     100冊読む時間があったら論文を100本「解剖」した方が良い 読書猿Classic: between / beyond readers 100冊読む時間があったら論文を100本「解剖」した方が良い 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加で、「いきなり論文読んでもベースが無いから、まず古典から」というコメントがあった。

     ちょっと待ってくれ。
     いきなり読めて、ベースになる「古典」ってどんなのだ?

     古典を勧めるすべての大人が無責任だとは思わないが(きっと見えたり見えなかったりするフォローをいろいろ入れてくれるのだろう)、手放しで「古典」を読め、というのは無責任だと思う。

     若い奴らは徒手空拳で「古典」という壁に体ごとぶつかれ/頭をぶつけろ、とでも言うのだろうか。
     
     10~20歳代の「濫読」(という名のつまみ読み)が、何か「教養」のようなものと関係あるように思うのも、甚だしい勘違いだ。

     そんなので残るのは「いろいろ読んだな」というぼんやりとした思い出だけである。


     「古典」はだいたい、一人で読むようにはできていない。

     書かれた時代も、背景も、書いた人間と読むであろう人間が共有していたであろう前提も、現在の我々からは遠いものだ。
     ついでにいうと、「帝大教授は高い給料なんだから、翻訳料は安くてもいいでしょ」というコバンザメ的ビジネスモデルで作られた岩波文庫の訳文は(わりと最近になるまで)、読める日本語からほど遠いものだった(もちろんうまい訳も沢山ある。ファーブルなんか本物より面白い。ラブレーもそう。訳者がうますぎて過大評価されている)。
     「古典」と現代の間のギャップは、埋められてしかるべきものだ。それがどうだろう、未だに漢文の素読の影響が残ってでもいるのか、余計な予備知識なしにまずは飛び込め、体当たりしろ、という。
     「どうだ、おまえらも分からないだろ」と言いたいだけじゃないのか?

     そんなに「古典」がいいなら、自分は「時間がないから読めないけど」と言い訳が立つと思ってる、いい歳こいた大人がまず読んでみせて手本を示せばいい。
     だいたい不朽の「古典」なら、ン十年前に読んだ本だろうが古びてないはずだし、加えて何年かけて読んでもいいはずだし、年くってからの方が味わえることだって多いだろう。
     自分にできないことを、他人に、それも自分より若い人に、押し付けるな。適切な手引きも注釈書も挙げられない連中の「古典のススメ」なんて、スノッブな悪趣味でしかないからスルーしよう。


     もうひとつ、今度はポジティブな提案だ。

     「古典」は、一人で読むのは、本当はもったいない。

     かしこい人になるための、ほとんど唯一の方法は、かしこい人と付き合う(継続的に交流を持つ)ことだが、これには、2つの難所がある。(1)かしこいヒトがどこにいるかわからない。(2)(なんとか見つけた)かしこいヒトがつきあってくれるかわからない。
     自分だけでは分からない「古典」を何人かで読む(輪読)することは、ふたつの難所をクリアーする助けになる。あと、その人が本当にかしこいかどうかは、一緒に本を読めば、だいたい分かる。

     さらに、これはおまけのようなものだが、何冊か本を紹介しよう。

     とりあえず世界名著大事典』全8巻(平凡社)という本を覚えておくといい。
     「古典」と言われる本ならだいたい載っていて、概説が読めるだけじゃなく、後世に与えた影響なども解説してある。つまり何故それが「名著」なのか説明してある。
     この点は、その辺の「古典推奨オヤジ」との大きな違いだ。彼らは何故それが「古典」であるのか、説明できない。というか、こんな本があることを知らない振りをしているか、本当に知らないこともある(古典を読めとぬかすオヤジが出現したら、この本を知っているか尋ねてみると良い)。
     大きな図書館なら必ずある本だ。1987年の新版は古書店でもそこそこするが(某天牛書店で120,000円というのがあった)、1960年のオリジナルの方は8巻揃いで1万円くらいで手に入ることもある。専門以外のことにも通じたPolyhistorianになろうというなら安い投資だろう。

     各分野ごとでは、弘文堂の『○○学文献事典』。
     これは原則として、著者自身か訳者自身が解説を書くという方針で作られた事典。その分野の基本文献の解題が読める。基本文献を2頁見開き、重要文献は2分の1頁、というのも、短くてよい。
    ・『宗教学文献事典』
    ・『文化人類学文献事典』
    ・『社会学文献事典』
    ・『日本史文献事典』
    ・『精神医学文献事典』
    などがある。
     値段はそこそこ張るが、それより問題は品切れだったり入手困難なものがあること。出会ったら入手しておいた方が良い。

     その他、解題ものでいうと、自由国民社の『総解説』シリーズが、各種揃っていて(クオリティはそこそこ)、安く手に入る。SFやミステリー、海洋文学なんてのもある。

     文学作品なら、近年類書がいろいろ出たが、その嚆矢のひとつ『日本文学鑑賞辞典 近代編』『日本文学鑑賞辞典 古典編』そして『世界文学鑑賞辞典 1 イギリス・アメリカ編』『世界文学鑑賞事典 2 フランス・南欧・古典』『世界文学鑑賞辞典 3 ドイツ・北欧・中欧編』『世界文学鑑賞辞典 4 ロシア・ソヴィエト編』がコンパクトで、内容は最近のものよりずっとまし。1960年代に出ているので、取り扱う作品も新しいものは入ってないが(日本文学だと第3の新人くらいまで?)、そこがいい。とも言える。


     最後に。
     世の中には確かに、一人で勘違いに勘違いを重ねながら読み進める、といったやり方でしか読めない本もある。
     だが、そんな本に時間を費やすかどうかは、本人が自分の残り時間と、その本と(他の読みたい本たちと)「話をつけて」決める類いのことだ。
     必読書なんかじゃまったくない。

     というより、必読の書など存在しない。

     ある集団に入るのには、そこの儀礼に従う必要があるような形でなら、「読め」と要求される書物はあるだろう。
     そこに入る入らないは、これまた本人が、自分の残り時間とやりたいこととの間で「話をつけて」決めるのである。





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