文献探索をはじめとして、「調べもの/探しもの」のアプローチは、大きく分けて、次の「4つの型」に分類できる。

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     これらの「型」は、ひとつの調査/探索のなかで連続して、あるいは組み合わせて、用いられる。

     いまやってる調査/探索のステップが、どの「型」に該当するか把握しておくと、行き詰まったとき、どういうアプローチに切り替えれば先に進めるか、思い付きやすい。

     いままで使ったことのないアプローチも、どの「型」にあてはまるか考えてみると理解しやすい。また従来のアプローチとどう組み合わせて使えばいいかも考えつきやすいだろう。


    ●絞る

     調査/探索は、最終的には少数の(時にひとつの)対象に絞り込むところで終わる。
     だから「絞る」型は、どのような調査/探索でも必ず登場する。

     最もシンプルかつベーシックな調査/探索のアプローチは、広い範囲を調査対象にして、次第に調査範囲を絞っていくものである。
     調査範囲を俯瞰的に把握しながら、そのどこに目指すものがあるのか探っていく、従来の探索方法もこの一種である。

    (例)
    ・参考図書から文献リストを見つけ、文献リストから必要な文献をみつける 
    ・「承久の乱」を調べるのに、「鎌倉時代」の文献や事典項目に当たってみる。


    ●広げる

     だが、このベーシックなやり方も、行き詰まることがある。
     もっともありそうなのは、絞り込んだ結果、目指しているものが「見つからない」場合である。
     こうした場合、「広げる」型が最もよく用いられる。これは、現状の狭い調査範囲を、一旦広げてみるアプローチである。
     このアプローチが付け加わるだけで、多くの調査の行き詰まりが解消することも多い。
     「絞る」調査プロセスに、柔軟に「広げる」を取り入れられるかどうかが、調査に不慣れな人と慣れた人とを分つ最初のポイントだと言っていい。

    (例)
    ・時代や場所を特定し検索して見つからない場合は、時代や場所の限定を一旦取り払って、探して直してみる。
    ・検索キーワードをより一般的な言葉に取り替えて再検索。


     調査に慣れた人は、この「絞る」型と「広げる」型を繰り返し用いながら、探索を行う。
     調査に慣れた人は、行き詰まらないのではない。行き詰まりを起点としてすぐさま折り返し、絞る」型と「広げる」型を往復しながら、探索を進めているのだ。


    ●射抜く

     今日、何か「わからないこと」が生じた場合、人はとりあえずググる。

     探索法など考えず、googleなどの検索エンジンに「わからないこと」を入力するだけで、けっこう高い確率で、満足のいく結果を得ることができるからだ。
     おかげで、「射抜く」型の調査/探索が、今では最も「一般的」なやり方になってしまった。

     「射抜く」型の調査/探索とは、必要な情報を「キーワード検索」などによって、(検索対象を絞り込む、あるいはブラウスするといったプロセス抜きに)ダイレクトに探すことをいう。

    (例)
    ・「着付けの仕方」と入力してgoogleで検索


     データベースや検索エンジンの普及によって、検索対象をブラウズしなくても、ダイレクトに「探していたもの」を探し当てることができるようになった。
     従来ならインデクスにある言葉でしか、ダイレクトに該当箇所を参照することはできなかったが、データベースや検索エンジンは、検索対象の「全文」をサーチしてくれる。人がやるとしたら、かなり時間がかかる作業を、コンピュータが一瞬でやってくれる。

     「便利になったかわりに、2、3度、google検索で見つからなかったら、もう世の中にそんなものは存在しない、みたいな返事をよこす」と『近頃の若者は』みたいなことを言っても仕方が無い。
     強力な「射抜く」型探索が、かくも簡単にできるようになったことは、やはり寿ぐべきことだ。

     探し物に慣れた人は、もちろん「2、3度、google検索で見つからない」場合でも、そこでやめたりしない。
     「射抜く」型に、「絞る」型や「広げる」型(それにこの後説明する「たどる」型)を組み合わせて、欠点を補完し、「射抜く」型のポテンシャルを引き出していく。

    (例)
    ・検索エンジンで、最初のキーワードではヒット数が多すぎる場合、キーワードの数を増やしたり条件を付け加えて、検索結果を絞って込んでいく。[「射抜く」→「絞る」]
    ・図書館検索でみつけた(しかし目指しているものとは違った)本を起点に、本棚でその「周辺」の本を見てみる。[「射抜く」型→「広げる」型]
    ・検索でみつけた文献の著者を起点に、その著者が書いた論文が引用している(また引用されている)文献にあたる(さらにそれを繰り返す)[「射抜く」型→「たどる」型]

    ●たどる

     「たどる」型の探索は、我々の知識が(そしてその媒体である文献が)、それ以前の知識(文献)から影響を受ける状態で結び合っていることに根ざした探索アプローチである。
     学術文献では、その参照関係を明示することがルール化されており、ほとんどの場合文献の末尾につけられた「参考文献リスト」がその役割を果たしている。
     したがって、ある文献を起点として、その参照関係を「たどっていく」ことが、学術文献探索の一つの軸となる。

     ひとつの文献は、それ以前に書かれた文献しか参照することができない。したがって参照関係を「たどる」ことは、文献の連鎖を「過去」へ向かって進むことになる。
     しかし、我々が知りたいのは、最新の知見であり、それが書かれた文献であって、文献の連鎖をむしろ「未来」へ向けてたどりたい。その目的から、主たる学会誌に発表された論文の参照関係だけを取り出し整理したインデクスが作られることになった。このインデクスを使うと、ある文献が、他のどんな文献から「引用されている」かを知ることができる。つまり「被引用」関係、被参照関係をたどって、より古い文献からより新しい文献へと「たどる」ことが可能になる。
     こうした引用-被引用関係のインデクスは、紙ベースの時代に実現していたが、現在では、文献データベースに取り込まれ、特定のキーワードを含む文献を「射抜く」+その文献を起点にした引用-被引用関係を「たどる」ことが、シームレスに行えるようになっている。
     学術情報の探索の中心は、かつての主題から主題書誌を介して特定の論文へと絞り込んでいく「しぼる」型から、この「射抜く」型→「たどる」型へと移行している。

    (例)
    Google Scholarで「citation index」を検索(「射抜く」型)。→リストアップされたなかからE. Garfield, R.K. Merton(1979),Citation indexing: Its theory and application in science, technology, and humanities.を選び、「引用元 1061(件)」をクリックすることで、この文献を引用している1000件以上の文献をリストアップできる。このなかから5495の文献から引用されている K. Krippendorff(2004),Content analysis: An introduction to its methodology.を選ぶ。




    上記の分類と図表化は、以下の文献に収録された、浅野高史「調査の流れと組み立て方」(初出:『現代の図書館』Vol.41 No.3 2003年9月)を参考にした。

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