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     なぜ「おっぱい」なんてものがあるのだろう?

     哺乳類だから、というのは理由にならない。
     多くの哺乳類には、たとえばイヌとかブタとかには、乳房などなく、乳首がおなかにならんでるだけである。

     ヒトの発達した乳房は、(a)ホモ・サピエンスが直立歩行することと(b)言語コミュニケーションをとることになった両方が原因であるとの仮説がある。


    (a)ホモ・サピエンスが直立歩行すること

     四足歩行する哺乳類のメスの生殖器は、後ろに回ることで容易に観察できる。
     しかしヒトは直立歩行するようになったことで、この観察が不可能になった。
     かわりに類人猿のメスは、頭を下げ腰を高く上げたり、臀部を膨らましたり赤く充血させることで、性交が可能であることを示す。
     動物行動学では、これをプレゼンテーションという。


    (b)言語コミュニケーションをとること

     類人猿の日常的コミュニケーションは、交替で相手に背を向けて毛づくろいをすることである。
     類人猿は毛づくろいによって、群れをつくること、集団生活を維持している。
     群れをつくることは、外敵に注意を払うコストをみんなで分担でき、そもそも襲われにくくなるなど、様々なメリットがある。
     コストを分担せずに群れに居るだけで安心を享受しよう、フリーライダーになろうと誰かがはじめれば、誰もがフリーライダーになった方が得だということになり、結局誰も外敵に注意を払うものがいなくなって集団防衛体制は崩壊する。
     群れを維持するには、こうしたフリーライディングを監視し、フリーライダーに対して制裁を加える事が必要だが、そのためのコストは群れの大きさが増加するほど、大きくなる。
     50匹いれば、各自が50匹を互いに監視しなくなければならない、という早晩、限界が来る。監視活動に多くを費やせば、食料を得たりなど他の活動時間が減ってしまう。
     そこで、群れの規模が拡大しても、コストの増大をできるだけ抑えるためには、フリーライダー対策を減点方式じゃなく加点方式でやるやり方がある。
     つまり身近なところから、少なくともこいつは裏切らないだろうという「仲間」をつくり少しずつ増やしていく。
     毛づくろいは、この仲間関係の維持・更新手続きである。猿はお互い、誰に毛づくろいしてもらったか覚えてる。「毛づくろい」し合う関係が、類人猿社会の紐帯である。
     いろんな猿を調べていくと、その種のつくる群れの大きさと大脳皮質が脳に閉める割合は比例関係にあることがわかった。これを人間の大脳皮質の割合に当てはめると、人間がつくる最大の「群れの大きさ」は約150人となる。
     問題は、この規模の集団で、どうやって仲間関係を維持・更新するかだ。
     毛づくろいは一対一で、しかもお返しも要れると、さっきも要った通りかなりの時間が必要になる。 
     これも150人という集団サイズに当てはめると、人間は起きている時間の40%を「毛づくろい」に費やさなければならない。これはもう限界を越えている。
     そこで結局、採用されたコミュニケーション方法が、音声を使うもの、つまりおしゃべりである。
     親密なおしゃべりが可能な人数は4人程度という限界があるが、それでも1対1の毛づくろいよりは、3倍効率がよい。
     こうして、ホモ・サピエンスの日常的コミュニケーションは音声言語を用いるものになった。

    (b’)対面的言語コミュニケーションをとること

     しかし、フリーライダーの危険性は去った訳ではない。
     複雑な社会関係を処理する脳を持った結果、最初は親しく語り合っておいて、関係を作ってから、フリーライドする「詐欺」をする能力をもヒトは持ってしまったからだ。
     そこで、音声言語によるコミュニケーションは、より意識的コントロールの難しい《顔の表情》を参照することで、その信頼性を高めることができるようになった。
     つまり音声言語のコミュニケーションは、通常は互いに対面して行われるようになった。


     しかし音声言語コミュニケーションの対面化は、自らの遺伝情報を次世代へ再生産するための行為の様式に変化をもたらすことになった。

     対面的コミュニケーションが通常のコミュニケーションとして卓越化すると、類人猿が用いる(先ほど述べた)臀部によるプレゼンテーションがやりにくくなる。
     これまで向かい合って喋っていたのに、お互いにおしりを向け合うか、相手の後ろに回り込むか、しなければならないからだ。

     そこで、対面的音声コミュニケーションから性行為へのシームレスな移行のため、臀部にかわる前半身によるプレゼンテーション・メディアとして、乳房の発達が進化したと考えられる。

     この仮説の傍証としては、

    (1)臀部と乳房の脂肪の増減が、他の脂肪とは別の内分泌系によってコントロールされていること

    (2)オーガズムに近づくにしたがって類人猿の臀部にある性皮が膨張することと、ホモ・サピエンスの乳房が大きくなることの類似性

    などが指摘されている。


     結論を短くまとめて終わろう。
     つまり、ヒトのおっぱいは、サルのおしりの代替物。



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    ……〈乳房は尻の自己擬態〉説のソース




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