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     クライエントが引いてるのに、いつまでも「良き例外」を引き出そうとしてミラクル・クエスチョンをやめないセラピストの振る舞いを、本来のSFA(Solution Focused Approach:解決志向アプローチ)を転じて、Solution Forced Approach(解決を強いるアプローチ)などと揶揄することがあります。

     これに倣って、EBM(Evidence Based Medicine;根拠に基づく医療」に対して、
    「RCT とメタアナリシス以外にエビデンスなし」
    「エビデンスに基づく治療ガイドラインは絶対」
    「どんな経験にも耳を貸すことなく、ただエビデンスだけに従うべし」
    といった医療を、Evidence Forced Medicine(EFM;エビデンスを強いる医療)と呼ぶことができるかもしれません。

     EFMは、いくつかの理由から、不合理なものです。

     まず、エビデンスを絶対視しようとしても、医療行為(治療だけでなく診断や予後の予測を含む)の中で、明らかなエビデンスがあるものは全体の2割ほどしかありません。
     あくまでエビデンスにこだわるなら、医療行為の大半どころか、約8割が行えなくなります。

     同様にRCT(ランダム化比較研究)だけがエビデンスだというのも誤りです。
     治療法の優越を比較する際にRCTはよく用いられますが、一方で副作用についてのRTCはほとんどなく(ほぼ実施不可能と言っていいでしょう)、この場合、コーホート研究などの観察研究が上位に来ます。
     症例が少ない場合もRTCの実施が難しいことから、こうした場合ケース・スタディが貴重なエビデンスとなります。

     それではCommon Diseases(よくある病気)については、研究の蓄積が比較的多く、エビデンスに基づいた治療ガイドラインがつくられているかもしれません。
     しかし、人体の生理反応や治療の効果・副作用には再現性は不十分であり、同じ治療でも患者によって結果は異なります。
     標準的なガイドラインの治療が当てはまる患者は、6割程度とされており、ここでもガイドラインを絶対視することはできません。

     またエビデンスは、科学的方法によって得られた知見ですが、科学的知見である以上、同じく科学的方法による研究によって反証されることがあり得ます。
     ただ原理的にそうであるだけでなく、昨今の医学研究の速さは、「100件のエビデンスのうち23件が2年以内に覆され、そのうち7件は当の研究が出版された時点で既に覆されていた」というほどです。
     常に最新の研究を検索することが求められるだけでなく、批判的検討をパスした研究であっても、常に誰かによって(事によると自分の臨床によって)反証される可能性があることを忘れることはできません。
    (出典)Shojania KG, Sampson M, Ansari MT, Ji J, Doucette S, Moher D. "How Quickly Do Systematic Reviews Go Out of Date? A Survival Analysis." Ann Intern Med. 2007 Jul 16 PMID 17638714

     EBMは、

    第1段階 患者の問題の定式化
    第2段階 定式化した問題を解決する情報の検索
    第3段階 検索して得られた情報の批判的吟味
    第4段階 批判的吟味した情報の患者への適用
    第5段階 上記1~4の手順の評価

    といった段階を踏んで行われますが、「第2段階 定式化した問題を解決する情報の検索」においては、臨床的問いに基づいて情報検索がなされます。
     検索を行うためには、問いをつくることが出来なければならず、それには臨床家の経験に基づく診断と治療法に関する知識、そして患者当人の価値観(何をもって治療の目標とするのか)が不可欠です(「第1段階 患者の問題の定式化」)。
     治療者の経験と患者の価値観は、「第4段階の批判的吟味した情報の患者への適用」においては、なおさら大きな役割を果たします。
     下記のような誤解を生み出してきたのは、EBMの第1段階から第3段階まで(だけ)が強調されてきたことに一因があるように思えます。
    (出典)Clinicians for the Restoration of Autonomous Practice (CRAP) Writing Group. "EBM: unmasking the ugly truth". BMJ 2002 Dec 21;325(7378):1496-8. PMID 12493681

     たとえば「良い臨床研究を見つけて医療をマニュアル化することがEBMである」なる誤解は、単に誤解であるだけでなく、実際の医療行為をこの誤解に引きずり込む自己成就的予言として機能するため、批判されなければなりません。

     エビデンスに基づいた(ガイドラインに従った)治療に対してのみ、健康保険会社が保険金を支払うといったことも、エビデンスを強いる医療を促してきたと言えるかもしれません。






     
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