Pairシステム Linkシステム Lociシステム Pegシステム Phoneticシステム
    創案者ソウアンシャ 不詳フショウ 不詳フショウ 不詳フショウ(シモニデス?) Henry Herdson (mid-1600s)  Winckelman (1648)
    Francis Fauvel-Gouraud (1844)
    イメージ ○ー○

    ○ー○
    ○→○→○→…… ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    ■-■-■……
    ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    □→□→□…… 
    ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    □-□-□……
    ↑ ↑ ↑
    1 2 3…… 
    概要 一対イッツイのものをイメージでムスびつける。 A、B、C、D……ならば、AとB、BとC、CとD……という具合グアイにイメージでムスびつける。 現実ゲンジツまたは仮想カソウ場所バショに、オボえたいものをイメージでムスびつける。 順序ジュンジョ明確メイカクなもの(peg;かけくぎ)を記憶キオクしておいて、それにオボえたいものをイメージでムスびつける。 数字スウジ対応タイオウするキーワードを生成セイセイし、それに覚えたいものをイメージで結びつける。



     Linkシステムは、覚えたいものを数珠つなぎにする方法だ。
     A、B、C、D、……を覚えようとしているとしよう。AをBに結びつけ、BをCに結びつけ、CをDに結びつけ……、これを最後の項目まで行う。


    ■Linkシステムの長所
    (1)簡単である(やることはPairシステムとほとんど変わらない)
    (2)事前準備(覚えたいものを結びつける「かけくぎ」などの準備)が不要である
    (3)(Pairシステムと違って)複数の覚えたいものをひとまとめにできる

     簡単なので、短いインストラクションを受ければすぐにできる。
     このため実験をやりやすいので研究も多い。

     あと、記憶術のデモンストレーションにも向いている。
     互いにつながりのない項目を10個覚えるのもなかなか難しいが、Linkシステムの説明を受けてからやってみると、20個ぐらいならすぐ覚えられる(慣れるとこの数は増えていく)。

     他に、「イメージで結びつける」という作業を繰り返し行うことになるので、他のシステムでも用いられる、この記憶術の基礎スキルを磨いていくのにも使える。
     様々な意味で、記憶術の入門となっている。



    ■Linkシステムの短所
    (a)数珠つなぎにした順番に思い出す必要があること
     →ランダムアクセス、たとえば4番目の項目だけを抜き出して思い出す、という用途には向かない。一緒に覚える項目の数が少ないなら、あまり問題にならないが。
    (b)(a)のため、途中でつながりを忘れると、その先につながっていた項目を思い出せないこと
    ……これらの欠点はPegシステム等で克服される(今度は事前準備が必要になるのだが)。


    ■Linkシステムの実際
     「雑誌、自動車、医者、薔薇、ボール」を覚える。

    たとえば、こんなイメージを作っていく(インタラクションと動きがあることがポイント)。
    (雑誌と自動車)「雑誌の上で自動車がスピンし、表紙にタイヤマークがつく」
    (自動車と医者)「止まった自動車のタイヤをよくみると、4輪とも膝を抱えて丸くなった白衣の医者である」
    (医者と薔薇)「医者の頭につけた反射鏡(「額帯鏡」(がくたいきょう)という)のところに大輪の薔薇が咲いて、医者は重みで前に倒れる」
    (薔薇とボール)「薔薇の茎がするする伸びると、棘という棘に野球の硬球が刺さってる」

    ※コツ
    (1)各イメージは、一度にひとつずつ思い浮かべる。
    (2)ひとつのイメージに多めの時間(最初のうちは8秒以上)をかけ、先へ急がない。
    (3)後戻りしない(覚えたかどうか不安になると後戻りしがち。そうならないためにも、最初はひとつずつのイメージにしっかり時間をかける)。

    ■Linkシステムの用途
    (1)リスト
     一部分を抜き出すことは不要で、思い出すときは全体を想起すればよいものは、Linkシステム向きである。
     リスト(たとえば買い物リストやToDoリスト)は、そのひとつ。
     メモ程度で足りるものは、大抵の場合リストとして扱うことができ、Linkシステムが使える。

     買い物リストは、覚えるべきものが具体物でイメージしやすく、Linkシステムの練習材料にぴったりである。

     ToDo(やるべきこと)リストでは、覚えるべきものが「行動」になるので、具体的イメージをつくるのに、いくらか「置き換え」が必要な場合が出てくる。

     たとえば、次の5つを覚えるとする。
    ・雑誌の定期購読を申し込む
    ・車を車検に出す
    ・かかりつけの医者を受診する
    ・薔薇の花束を贈る
    ・野球の試合のチケットをとる

     先に「Linkシステムの実際」で例にした「雑誌、自動車、医者、薔薇、ボール」が、これら「行動」を置き換えてLinkシステムを使う例にもなっている。


    (2)スピーチ、演説
     記憶術は弁論術(レトリカ)の一部門であった。
     その意味では、スピーチや演説の記憶は、記憶術の第一の実践例である。
     
     作家マーク・トウェインは、アメリカのみならず世界中で数多くの講演を行ったが、古典古代以来のLociシステムよりも、Linkシステムに近いやり方で、自分の講演を記憶していた。何十年も前にやった講演でも、忘れることはなかったらしい。

     中世ヨーロッパの著述家たちは、弁論原稿を一字一句覚えるよりも、アウトラインを覚えることの方を推奨している。
     一字一句間違えぬように話そうとすると、張りつめた気持ちでいどむことになり、帰って間違いが生じやすく、また些細な間違いでも気が動転してしまい、つまずく危険が大きいというのが、その理由である。
     アウトラインだけを覚えて、それを元に話した方が、気持ちに余裕がうまれ、アクシデントにも柔軟に対応できる。また何よりも、生き生きとした話し方は、原稿に縛り付けられていては難しい。

     具体的には、話す内容を箇条書きにまとめ、それぞれをさらにキーワードに圧縮して、これを数珠つなぎにして記憶する。
     必要に応じて、キーワードはイメージしやすいものに置き換えることも必要かもしれない。
     また箇条書きにする際に、抽象的な表現ではなく、その段で話すべき主題(テーマ)を引き出すのに典型的な事例や人物のエピソード等、具体的なイメージを覚えるべきキーワードにする方法もある。
     話に引き込まれる熟達した講演者は、聴衆にとってもイメージを喚起できる話をいくつもストックしている。講演者にとってよりよく記憶できる講演は、聴衆にとっても記憶に残りやすい。
     元々の意味でレトリカルなものは、記憶術にとっても、聴衆にとっても、最適化されているのである。

    (3)分割した項目の再結合
     記憶したいものが、そのままではイメージしにくく覚え難い場合、元のものを分割してそれぞれのパーツを置き換える方法を前回書いたが、分割したものを順番に結びつける際にLinkシステムが使われる。
     この場合の分割は、せいぜい数個に分かれることがほとんどであるが、それぞれを覚えやすく変換したせいで、互いに無関係なものになるケースがある。こうした場合に、Linkシステムで記憶することで、順所関係が保存され、記憶も保持されやすくなる。
     分割と再結合は、記憶術のどのシステムでも使われる。


    (4)他の記憶術の容量を倍増させる
     次回から、記憶すべきものを結びつける「場所」や「かけくぎ」を準備するシステムへと話は移っていくが、Linkシステムをそれらと組み合わせることで、「記憶容量」が倍増する。
     10個のものを覚えるのに、10個の「場所」や「かけくぎ」を事前準備することになるが、覚えるべきものの個数と同じだけのものを事前準備するのは、いささか不経済である。
     ランダムアクセスしたい単位ごとに束ねて、それぞれの束の中についてはLinkシステムで覚えるのである。こうすれば、Linkシステムで10個のものを覚えるとすると、記憶容量は、事前に準備した「場所」や「かけくぎ」の10倍になる。
     たとえば本を一冊覚えるには、各章のタイトルや大見出しを「場所」や「かけくぎ」に結びつけて覚え、それぞれのタイトル/見出しを結びつけた「場所」や「かけくぎ」を出発点にして、Linkシステムでその章や節に含まれる小見出しや図表名を付け加えていく。

     他にも、すでに覚えたものを出発点に、そこから派生するもの/関連するものをLinkシステムでつなげていけば、既存の知識を元に、10倍以上の量のものを記憶できる。
     たとえば基本文型を覚え、それぞれの派生/関連例文をLinkシステムで付け加えていく。




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