かつて「心ある人」たちの間で、映画製作でできた村上龍の借金を、なんとかカート・ヴォネガットに肩代わりさせられないか、という企みがあったという。

     その目的は誰にも明らかなとおり、村上龍を(借金返済のための)駄作の量産から救いだし、ヴォネガットをもういちど貧乏にさせて再びSFを書かせる、ことであった。

     「計画」がどうなったのか、それはその後ふたりがどんなものを書いたか見るしかないが、そんなことを確かめるために本屋へ繰り出す必要はない。

     だって、そんなつまらないことよりも数万倍心傷めるべきことがあるではないか。それは、どうやって永川玲二にもっと文章を書かせるかである。「同時代ライブラリー」のために新たに書かれたあとがきを読んで、改めてそう思った人は山盛りいるはずである。丸谷才一なんかと『ユリシーズ』を訳しているからといって、色眼鏡で見てはいけない(いそいでつけ加えるが、あれだって立派な仕事じゃないか)。

     一度、岩波書店に本気で提案したいのは、あのどうしようもない「同時代ライブラリー」をなんとかするために、すべての表紙を『ことばの政治学』にすることである。

     そんなサギまがいは「岩波の良心」に反するというなら、表紙の方はそのままにして中身をすべて『ことばの政治学』にしてはどうか。これなら誰も文句は言うまい。




    ことばの政治学 (同時代ライブラリー)ことばの政治学 (同時代ライブラリー)
    (1995/03)
    永川 玲二

    商品詳細を見る
    関連記事
    Secret

    TrackBackURL
    →http://readingmonkey.blog45.fc2.com/tb.php/45-87ef9926