古い『参考書誌研究』だったと思うが、アメリカの研究者がしばしば「脇見」するのは、そうできるだけのツールが揃っているからだろう、と日本の中国研究者が書いていた。
     彼らは専門外の研究もよく活用するし、専門自体を途中で変える者も少なくない。
     日本の場合は、小さな研究室でトレーニングされて、小さな専門集団の中で一生を終えるのがほとんどなので、トレーニング中に何をどう読めばいいか叩き込まれれば、あとは〈仲間内〉の研究を見ていくだけで、改めて未知の分野に踏み入れ文献を探したりするツールのニーズがない。
     あっても少ないからツールの種類も少ないし改訂されるまでの周期も長いし、改訂されないままであることも多い。
     レファレンス・ツールに頼れないから、自然と頼らない研究生活の仕方が身に付いてしまう、と。
     もちろん、この自己受粉的なディシプリンの再生産は、学際的だったり総合的だったりする研究には不利である。

     何故こんなことを思い出したかと言うと、Green, S. W., Ernest, D., & Holler, F. L. (2005). Information sources of political science. Santa Barbara, Calif: ABC-CLIO. という本を見ていたら、このブログでも紹介した(さっき出したメルマガでもネタに使った)First Stopという百科事典を〈横断検索〉できる本が紹介されていていたからだ。

    Information Sources in Political ScienceInformation Sources in Political Science
    (2004/04)
    不明

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     政治研究系の文献(研究資源)案内書であるこの本の、最初から4番目にFirst Stopは登場する。
     本の構成としては、最初に汎用のレファレンス(General Reference Sources)を紹介する章が来るから、おかしくはない(ポリティカル・サイエンスあるいは社会科学のレファレンスから始めないところに注意すべきかもしれない)。
     では登場する順番に並べてみよう。


    1冊目 American Reference Books Annual.

    American Reference Books Annual 2011 (Arba and Index)American Reference Books Annual 2011 (Arba and Index)
    (2011/03/30)
    Shannon Hysell

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     ……その年に出た参考図書の解説目録。年刊。日本でいうと『年刊参考図書解説目録』。

    2冊目 Annotated Guide to Current National Bibliographies.

    An Annotated Guide to Current National Bibliographies (Ubcim Publications, New Ser., Vol. 18)An Annotated Guide to Current National Bibliographies (Ubcim Publications, New Ser., Vol. 18)
    (1999/06)
    Barbara L. Bell

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    ……世界各国の全国書誌(その国の書物すべてが載ってるもの)についての解説ガイド。日本でいうと『世界の全国書誌』。

    3冊目 ARBA Guide to Subject Encyclopedias and Dictionaries.

    Arba Guide to Subject Encyclopedias and DictionariesArba Guide to Subject Encyclopedias and Dictionaries
    (1997/04/15)
    Susan C. Awe

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    ……過去10年のAmerican Reference Books Annualからのより抜き参考図書の解題書誌。それ以上に古くて使えるものは載せてる。

    4冊目 First Stop: The Master Index to Subject Ecyclopedias.


    First Stop: The Master Index to Subject EncyclopediasFirst Stop: The Master Index to Subject Encyclopedias
    (1989/01)
    Joe Ryan

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    ……なんと、この位置! バリバリ現役だ。色モノっぽく書いて悪かった。さらに9冊目にはFirst Stopが出て以降の百科事典を対象にしたSubject Encyclopedias: User Guide, Review Citations, and Keyword Index.も入ってる。

    5冊目 Guide to Official Publications of Foreign Countries. 2ed ed.


    Guide to Official Publications of Foreign CountriesGuide to Official Publications of Foreign Countries
    (1990/08)
    Gloria Westfall

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    ……各国の政府刊行物のガイド。


    6冊目 Guide to Reference Books 11th ed.


    Guide to Reference BooksGuide to Reference Books
    (1996/02)
    Robert Balay、 他

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    ……定番のレファレンスブック・ガイド、「ベイリー」がこの位置。Guide to Reference Booksは,11版の改訂の間に5人の編者が交代しているので各版はその編者の名前で呼ばれ、それぞれ「クレーガー」「マッジ」「ウィンチェル」「シーヒー」「ベイリー」と通称される。日本でいうと『日本の参考図書』。

    (以下略)


     さて、政治研究者は、百科事典の横断検索書なんて何に使うのだろう?
     解説にこんなフレーズが出てくる。“seeking brief information on out-of-the-way topics”、つまり「脇見」をするために使えるのである。

     百科事典だけでなく専門事典やハンドブック、コンパニオンなどからも項目を集めてあるので、あるトピックがどの事典に載っているかを知ることは、そのトピックがどの分野のものか(どの分野で扱われているか)を知ることを含んでいる。
     つまり事項からはじめて参考図書をページ単位で探すことができるだけでなく、そのトピックを見る視点にはどのようなものがあるのか(どの分野とどの分野がそのトピックを扱っているか)といったことも探すことができる。
     単に複数の事典を横断検索ができるだけでなく、分類索引を使えば、ある分野にはどのようなトピックがあり、それぞれのトピックは他のどの事典(つまりどの分野)でも扱われているかを知ることができる。
     つまりこの横断検索書、コンピレーション・サイクロペディアは、マルチ・ディシプリンを渡り歩く者にとってのコンパスになるのだ。







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