ハワード・S. ベッカーの『論文の技法』(講談社学術文庫)は、論文執筆マニュアルというよりも、論文を書くのに苦しんでいる人のところへ行って「参与観察」したエスノグラフィのようなもので、マニュアルによくあるような、きちんと整っていて人を安心させる〈決まった手順〉などは書いていない。

    論文の技法 (講談社学術文庫)論文の技法 (講談社学術文庫)
    (1996/09)
    ハワード・S. ベッカー、パメラ リチャーズ 他

    商品詳細を見る

     そんな中から提案になっていそうなものを拾ってみると、何でもいいからとにかく書けるだけ殴り書いて、それから切ったり貼ったりで構成を考えようじゃないかという、とてもフォーマルでないやり方になる。
     もっとも書き物が手順どおりに進むなら誰も苦労はしない訳で(確かに手順があればしなくていい苦労というのもあるのだが)、最終的に不格好でもやり遂げなければならない場合には、なりふり構わず、いつしかベッカー流になっていたりする。

     どうかもう少しだけ、おおまかに〈手続き化〉したものが、今回紹介するアウトライナー・ストーミングである。
     もともとアウトライン・プロセッサーを使う時にやってた手順なのだが、テキストエディタでも同じようにしている。

     正直言うと、誰もがこんなふうにして書いているのだろう、と思っている。
     しかし、自分が思い描く〈当たり前〉ほど当てにならないものはないと、思い返す程度の経験はある。
     世の中には、方解石を割るかのごとくアウトラインを細分化していくだけで、平仄の整った文章を指定字数通りに書ける人もいる。
     また、自分の思いつきにそこかしこで魅了されて、脱線に脱線を重ねたあげく、どこにも行き着けぬまま力尽きるのを常とする人もいる。
     自分の場合、そうした両極端の間にいて(随分と後者寄りなのだが)、結局、構成から細部へという流れと、細部から構成へという流れの両方を、行ったり来たりするしかない。
     その往復の範囲を限定することで、いくらかでも時間を稼ごうという目論みだ。
     不器用だが仕方がない。

     具体的には、次のようなステップを踏む。詳しくは後述しよう。

    1.構成・あらすじを書けるだけ書く
     ・粗いところは粗いままでいい。
     ・細かく書けるところはできるだけ書く。

    2.構成・あらすじから一項目を選んで、その項目に関して何でもいいから書く
     ・数をかせぐ。要はトピックを限定したブレイン・ストーミングである。
      ・順不同、カテゴリーの大小、その他にはこだわらず。
      ・素材、連想、データ、引用、きめゼリフ、その他何でもいいから書き出す。
     ・自分の場合は、その時点で一番粗いところから取りかかることにしている。
     
    (構成・あらすじのあちこちで、2.の作業を繰り返して、それなりのボリュームが出てきたら)
    3.これも好きなところから、並び替えして整理する
     ・コツとしては「くずかご」という項目を作って、不要に思える項目を放り込む。
      ・削除するかわりに、見える形で〈片付ける〉ことで代用する。
      ・削除となると、後悔の前払いとも言うべき躊躇する気持ちが作業を滞らせる


     おおまかにはこんな具合で、これだけで十分(というかお腹いっぱい)な気もするが、もう少しだけ実例を示して説明しよう。


    1.構成・あらすじを書けるだけ書く。


    (タイトル)
     ・調査オンチが知らない3つの「考え方」
     ・レトリックで検索する、考える
     ・グーグルで使えるレトリック技法
    ……
    (構成)
     ・シネクドキで探す
     ・メトニミーで探す
     ・メタファーで探す
     ・まとめ


    なんと、これだけだ。息継ぎができない人の水泳のように短い。


    2.好きなところを選んで、とにかく何でも書き加える。


    (タイトル)
     ・調査オンチが知らない3つの「考え方」
     ・レトリックで検索する、考える
     ・グーグルで使えるレトリック技法
    ……
    (構成)
     ・シネクドキで探す
      ・〈花見〉と行って〈桜を見る〉
      ・花⊃桜
      ・下位カテゴリーから上位へ
       ・〈ヘミングウェイ〉でダメなら〈アメリカの作家〉で探す
      ・上位カテゴリーから下位へ
       ・〈大統領の誕生日〉で見つからないなら、〈ケネディ/ニクソン/レーガンの誕生日〉で探す
       ・※〈大統領の誕生日〉で探すと2月の第3月曜日がヒットする。これはアメリカ合衆国の法定祝日で 公式名称はワシントンの誕生日 (Washington's Birthday)。←どうでもいい

     ・メトニミーで探す
     ・メタファーで探す
     ・まとめ




    ある程度の量になったら
    3.好きなところを選んで、整理。不要なものは消さずに〈くずかご〉へ



    (タイトル)
     ・グーグルで使えるレトリック技法
     ・(くずかご)
      ・調査オンチが知らない3つの「考え方」
      ・レトリックで検索する、考える
    ……
    (構成)
     ・シネクドキで探す
      ・〈花見〉と行って〈桜を見る〉
      ・花⊃桜
      ・下位カテゴリーから上位へ
       ・〈ヘミングウェイ〉でダメなら〈アメリカの作家〉で探す
      ・上位カテゴリーから下位へ
       ・〈大統領の誕生日〉で見つからないなら、〈ケネディ/ニクソン/レーガンの誕生日〉で探す
      ・(くずかご)
       ・※〈大統領の誕生日〉で探すと2月の第3月曜日がヒットする。これはアメリカ合衆国の法定祝日で 公式名称はワシントンの誕生日 (Washington's Birthday)。←どうでもいい

     ・メトニミーで探す
      ・〈赤ずきん〉で、それをかぶった少女を指す
      ・〈馬を射よ〉的隣接性
      ・地元の名店を見つける検索=(キーワード)+"教えたくない" "お店"
      ・医療情報を検索するのに素人サイトを除く→「鑑別」(英語ならdifferential)を検索語に加える
       ・(例)「low back pain.」と「differential low back pain」
       ・(例)「腰痛」と「鑑別 腰痛」

     ・メタファーで探す
      ・「白雪姫」
      ・類似性=シネクドキの往復
       ・白い肌→(アップ)→白いもの(カテゴリー)→(ダウン)→雪
      ・look like検索
       ・"remind me of" +(キーワード)
       ・"similar to" +(キーワード)
       ・"sounds like" +(キーワード)
       ・google より 人気” /“google より 優れた”

     ・まとめ






    関連記事
    スポンサーサイト
    Secret

    TrackBackURL
    →http://readingmonkey.blog45.fc2.com/tb.php/456-c2ade657