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     「文は人なり」などと言うが、正しくないばかりか実用的でもない。
     人が文章にできることは、考えていることのごく一部でしかない。
     まして人となりなどは、言葉にするには豊かすぎるし深すぎる。


    1.自己表現なら他でやれ

     書きたいことなど書くな。感想も書くな。オリジナリティなどくそくらえ。
     ただ書かなければならないことだけを書け。
     書いている間だけは、そういう「機械」になれ。
     これだけで書く速度も、読みやすさも3割増しになる。

     もともと人は、書き付けた言葉を前にして「こんなの私じゃない」という違和感を繰り返し受け入れることなしには、一言だって書くことはできない。

     あなたが書いた文章は、あなたではない。

     いいかげん目を覚ませ。
     このことが理解できない限り、誰のアドバイスも添削も、あなたは受け入れることができないだろう。
     そういう人は、つまるところ、他人に見せる文章を書く資格が無い。
     

    2.仮面をかぶれ


     かなり細かい構成ができている人さえも、文章を書いている間は、始終迷う。
     これもまた、そういうものとして受け入れるしかない。
     迷いに対して抵抗するエネルギーがもったいない。

     しかし迷いは時間を消耗させる。できればパスしたい。しかたなくても、さっさと切り上げたい。

     それには、自分を単純にしておくことだ。
     もとが複雑なのは仕方ないから、とても単純で平板な人格(キャラクター)をつくっておく。
     まるで自分がそういう単純バカであるかのように、言葉やアイデアを選び、いやそういうキャラに相応しくない言葉やアイデアを捨て捨て捨て、書いていくのだ。

     あーでもない、こーでもないと悩むよりは、「あーでもあるし、こーでもある」とまずは書き出す。
     それから、立てたキャラに相応しくないものを捨てるのだ。

     普通、論文では、序論あたりで著者のスタンスを表明しておく。
     慣れるとあれで十分だが、ビギナーはそれでも揺れるし、だいたい自分がしようとしている主張に対する確信が薄い。実に薄い。
     これでは迷うし揺れるに決まっている。
     本当は、確信している主張を軸に書くべきだが、確信できるまで待っていては人生がいくつあっても足りない。
     だから、とりあえず信じる振りをするのだ。そういうキャラクターの仮面をかぶるのだ。

     この仮面は、揺れに揺れ、油断するとすぐに四方八方に広がっていく思考について、あるものは通しそれ以外は通さない、いわば「整流器」の役割を果たす。
     この「整流器」を通していない文章は、実に読みにくい。
     文章の中に、あの「あーでもない、こーでもない」が、そのまま垂れ流しされているからだ。

     「整流」された文章は、揺れ動くあなたからすれば、ますます「私でない」ものになっているだろう。

     そういうものだ(So it goes.)。

     そして自分が書いたものとの隔たりを、再び言葉にすることで、人はかろうじて何事かを考えはじめる。
     だが、今はまず、書き終えることを考えよう。


    3.秘密はもっておけ

     今、「あるがままに、感じたままに、思った通りに、書きなさい」という作文教育と、正反対のことを言った。

     この「あるがまま作文」は、実に害毒だ。

     まともな文章が書けない人間、根拠にサポートされた立論ができない人間を量産するだけではない。
     自分の胸の奥に秘めておくべきことがあることを知らせず、それとは正反対のことを教え込む。

     いったい誰の陰謀だ?

     人は秘密を抱えることなしには、およそ書くに値することを、何一つ書くことができない。
     当たり前ではないか。
     
     何もかも書こうとするんじゃない。
     秘密は持っておけ。
     人に見せる文章から静かに削除しておけ。

     書いたものは、人を次の場所へと連れて行く。
     書かずにおいたものは、人を滋養し育てる。





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    ……「「あるがままに」書くことはやめよう」という章がある。

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    ……上の清水幾太郎を引いて、社会科学のリテラシー(読み書き)における意義を展開している項がある。


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