図書館となら、できること/レポートの時間 読書猿Classic: between / beyond readers 図書館となら、できること/レポートの時間 読書猿Classic: between / beyond readersのつづき


    学生:あの、GiNiiで「燃料電池」を検索したら、何百件とか何千件もあるんですけど……。全部、読むんですか?

    GiNii.png

    少年:いや、あの……ほんというと、文献を探すのって最低でも2回必要なんです。1回目はテーマを絞って固めるのに、2回目は決まったテーマに関係あるものを集めるのに。2回目のときは関係ありそうなものなら何でも集めた方がいいですけど。でも、こっちは探してるものが明確だから、周りも助けやすいんです。
    学生:今は……。
    少年:まだテーマが固まらないんで1回目です。2回目は関係ありそうなことはとにかく集めるから、最初にテーマは絞れるだけ絞った方がいいです。「○○について論じよ」みたいなのに、よく出てくるテーマをそのまま入れたら、大抵は何百件とか何千件ヒットすると思います。
    学生:……はい。
    少年:テーマに関することがいくらかでも知ってないと、ほんとは絞りようがないんですけど……。あ、リサーチ・ナビを見ましたよね。
    学生:えーと、はい、ブックマークしてあります。
    少年:下のほうに図が出てたと思うんですけど。あ、これです(クリックで拡大)。


    燃料電池テーマグラフ


    少年:テーマグラフといって、リサーチ・ナビで検索する度に自動でこれを作ってくれるんです。いまだと「燃料電池」っていうテーマを中心に、関連するキーワードが広がるように伸びてるんですけど。
    学生:木の枝みたい。
    少年:ええ。「枝」がそれぞれどういう切り口があるかに対応してるというか(クリックで拡大)。


    themegraph_comment.png
    出典:清田陽司(2009)「リサーチ・ナビとは リサーチ・ナビ検索システムの技術」『参考書誌研究』 (71), 33-53. http://rnavi.ndl.go.jp/bibliography/tmp/71-04.pdf



    学生:この後、どうするんですか?
    少年:テーマを絞るのに、切り口を、テーマグラフの〈枝〉を選ぶんです。それから選んだ〈枝〉を伸ばして、また選んで、というのを繰り返して……
    学生:???
    少年:実際やってみます。まず(1)今のテーマグラフ全体を見て、どの切り口にするか〈枝〉を選びます。(2)選んだ枝に沿って調べて行きます。具体的には「燃料電池」のテーマグラフで、たとえば〈環境問題〉の枝を選んだら、それを検索語に加えるんです。そうして(3)検索結果をまた、新しいテーマグラフにまとめます。
    学生:えーと、今の話だと、「燃料電池 環境問題」で検索するんですね? ……ずっと少なくなりました(CiNii: 28件、WebcatPlus: 28件、KAKEN: 33件、NII-DBR: 13件、JAIRO: 0件)。あの、これをどうやって?
    少年:テーマグラフにするかというと……検索結果から良さそうなのを選んで、タイトルに使われている言葉を抜き出すんです。あとは、それを適当に並べ直して……。
    学生:……。
    少年:……「良さそう」とか「適当」って、かえって難しいですね。
    学生:……はい。
    少年:論文でも書籍でも、タイトルは内容を表してます。結論まで分からないこともあるけど、最低でも何について書かれたものかぐらいは分かる。だからタイトルを見ていって、今だと「燃料電池」以外の単語を拾うんです。全部やると大変だから、1文献につき1語とか、検索結果が多いときは一つ飛ばしとか二つ飛ばしとか……。

    list.jpg

    学生:いい加減でいいんですか?
    少年:今はテーマを絞ってる段階だから、自分の好みとか関心と折り合いがつけば大雑把でいいんです。2回目の文献集めは、ちゃんとやった方がいいけど。もちろん機械的に飛ばすより、自分の気に入ったのとか気になるものだけを拾う方がいいと思いますけど。
    学生:はい。
    少年:2、30個、言葉を拾えたら……慣れないうちは少なめの方がいいと思います……紙切れとかポストイットに1語ずつ書き出して、あーでもないこーでもないと並べ直します。こうでなきゃいけないというのはないんですけど、似てるものをまとめたり、関係ありそうなのをつなげたり……。どんなテーママップを作るかよりも、拾った言葉になじむというか親しむ方が大切というか……。
    学生:知らない言葉も出てきますよね。
    少年:その言葉がタイトルに出てきた文献を読むのが一番いいんですけど、事典で調べてもいいし、分からない言葉は最初から拾わない手もあります。でも、知らないことを調べた方が「このテーマで行こう」と決まりやすいし、思ってもなかった拾い物をするのはそういう時なんです。1回目の文献集めの目的は、絞る/決めるためのインプットですから。

    making_map.png

    学生:新しいテーマグラフが書けたら、また〈枝〉を選ぶんですね。
    少年:そしてまた検索して、検索結果からテーマグラフを描きます。繰り返すって言いましたけど、2~3回もやればテーマがまとまってきます。というか、検索語を増やしていくと、そのうち検索結果が0件になりますよね。
    学生:あ、そうか。
    少年:最後に加えた検索語、つまりそれを加えることで検索結果が0件になってしまったキーワードを、マージナル・キー(ワード)って勝手に言ってるんですけど。自分の興味や関心が、既存の文献の海から少しだけ飛び出たんです。マージナル・キーを加える一歩前までは参考になる文献がある。そこから自分の関心から選んだ1語=1歩を踏み出したところは、まだ誰も手をつけていない領域です。これが多分、取り組むべきテーマなんです。もちろん一歩踏み出さずに、今ある文献の範囲内でまとめてもレポートは書けるけど。……ちょっと面倒くさいですね。
    学生:い、いいえ。
    少年:テーマグラフを作る手間を省いておなじようなことをするには、たとえばWebcat Plus http://webcatplus.nii.ac.jpとか ふわっとCiNii関連検索 http://fuwat.to/cinii とかに(a)とりあえず思いつくこと、心にあることを短文で入力して、(b)検索結果を見て、適当な言葉を拾って検索する言葉に追加する、ただしまた短文を作ること、あとは(a)と(b)を繰り返して行けば、似たようなことになります。ある程度知ってるテーマについて書くなら、これでも十分だと思いますよ。
    学生:短文をつくるんですか?
    少年:単語をひとつだけ入力して検索すると、検索結果が広過ぎて多過ぎるんです。あと、言葉を拾って短文にまとめるのが、テーマについてアタマを強制的に働かせるところでもあるんです。検索結果からただコピペするだけだと、アタマを素通りしかねないんで。


    ==== ○ ○ ○ ====



    司書:うまくいきましたか?
    少年:……つかれました。これだったら自分で書いた方が楽です。
    司書:おやおや。それでは司書(ライブラリアン)どころか、あらゆる支援職が路頭に迷います。
    少年:……司書は、学校のレポートを手伝うためにいるんじゃないと思います。ほんとは学校の宿題の質問とか受けちゃいけないはずですよ。
    司書:その人の課題を取り上げて代わりにやってしまうことは、支援する者の職分を越えることです。ですが、何を探しているか分かっている人だけを助けるのだとすれば、レファレンス・ライブラリアンは存在理由を失います。
    少年:……
    司書:どれほど聡明であっても、調べる人は、多かれ少なかれ自信を欠いており不安を抱いています。また、そうした感情をもたらすものに挑まなければ、人は本当には知ることがないでしょう。そして、まだその人自身にもはっきりしていない「探しもの」に興味を持つことができた時だけ、我々は助力することができるのです。でなければ、「これは探すに値しないものだ」と相手に印象付けることになり、別のやり方であれ、相手の手から課題を取り上げることになるでしょう。……繰り言が過ぎたようです。しかし、私の口からあなたの努力を労うには及ばないでしょう。3日もあけずに彼女はまたやってくると思います。今度は完成したレポートか、あるいは長い文献リストを持って。……ココアが入ったようです。少し遅くなりましたが、お茶にしませんか?






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