いろいろ図書館やレファレンスについて書いてきたが、基本となる、手元に置くべき辞書の話はして来なかった。
     そこで新入生にかこつけて、言うまでもないような(当然の前提となっていて口の端にも上らないような)、基本の基本の辞書をあげてみる。



    語学辞典

     以下の外国語辞書は、語学学習のためというより読むための辞書である。


    ・英語

    リーダーズ英和辞典第2版+プラス DDv3付き アカデミックリーダーズ英和辞典第2版+プラス DDv3付き アカデミック
    (2007/12/14)
    Windows

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     何を専攻するにしても必携。
     読んでいて胸の奥がぽかぽかしてくる類いの辞書ではないが、お役立ちの度合いはすごぶる高い。定型句、俗語、流行語、専門用語、人名・地名、商品・組織名……と収録語彙の広さと多さもさることながら、それぞれにつけられた訳語の豊富さは群を抜く(他の英和大辞典と比較してみるといい)。
     リーダーズプラスとセットのEPWING版を買ってパソコンで使う。
     教室に持ち込みたいから電子辞書、という向きもあるが、
    ・好きな辞書が選べて、しかも一括で引ける
    ・多様な検索機能がある。とくに全文検索が使えるかどうかは雲泥の差である。
    ・携帯端末にインストールすれば携帯できる
    などの理由でEPWING版+パソコンを勧める。



    ・ドイツ語


    独和大辞典独和大辞典
    (1999/11)
    国松 孝二

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     最大の内容を誇る「独和大辞典第2版」をそのまま縮刷して値段も安くしたもの。
     ドイツ語読みは、これで足りる。



    ・フランス語

    ロワイヤル仏和中辞典ロワイヤル仏和中辞典
    (2005/02)
    田村 毅、 他

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     語彙9万語。付属の辞書CD-ROMの中身はHTML。



    ・中国語


    中日大辞典 第3版中日大辞典 第3版
    (2010/03)
    愛知大学中日大辞典編纂所

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     古典から現在までカバーしている唯一の中日辞典の最新版が満を持して登場。


    ・アラビア語

    現代アラビア語小辞典現代アラビア語小辞典
    (1981/01)
    不明

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     小辞典の名を裏切る充実ぶり。
     ゆくゆくはHans WherのArabic English Dictionary of Modern Written Arabicが必要になるだろうが、それまで十分に役立つ。なお、初学者にはパスポート 初級アラビア語辞典がある。



    ・古代ギリシア語、ラテン語
     これ以上はないという最高のセットが、Creative Commons NonCommercial ShareAlikeのライセンスで公開され、さらに大久保克彦氏によってEPWING版されている。

    * Lewis and Short, A Latin Dictionary (LS)

    * Liddell and Scott, A Greek-English Lexicon (1940年版LSJ)




    百科事典

    世界大百科事典 第2版&百科事典マイペディア デジタル地図帳付き世界大百科事典 第2版&百科事典マイペディア デジタル地図帳付き
    (2009/01/19)
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    世界大百科事典 第2版 &マイペディア世界大百科事典 第2版 &マイペディア

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    スーパー・ニッポニカProfessional W版[DVD-スーパー・ニッポニカProfessional W版[DVD-
    (2005/03)


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    日本大百科全書+国語大辞典―スーパー・ニッポニカ CD-ROM Windows版日本大百科全書+国語大辞典―スーパー・ニッポニカ CD-ROM Windows版
    (1998/11)
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    現代用語の基礎知識 1991~2010 20年分特別パック現代用語の基礎知識 1991~2010 20年分特別パック
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     とりあえず上の3つをパソコンで使えるようにしておけば、大抵の用は間に合う。
     世界大百科事典3分間無料で試用あり)とスーパーニッポニカ (無料版のYahoo!百科事典)はネットでも使えるので、そちらを選んでもいい。

    ネットで引ける世界の百科事典 読書猿Classic: between / beyond readers ネットで引ける世界の百科事典 読書猿Classic: between / beyond readers

     百科事典は、本当は、ものすごく使える。
     私見では、ものを知れば知った分だけ、その威力は高まる。
     そこんところを昔の自分に教えてやりたい、同じ事典を使っているはずなのに、どうだろうこの違いは、と思うことが実に多い。

     おおざっぱに用途をまとめると、とりあえず3つ。

     一つ目は、初動調査、調べもののはじめの一歩に用いる。調べたいことがどの分野に属するのか分からなくても、百科事典なら引き方は同じである。
     いろんな専門事典を揃えることになっていくだろうけれど、それまでの間、結構使える。一応、それなりの第一人者が書いている。
     また大項目主義を採れる専門事典は少ないので(項目数の多さを売り物にするからだが)、実は百科事典の方が詳しく書いてある場合が結構ある。

     二つ目は、蔵書の補完に用いる。
     どれほどの博学者であれ、蔵書は偏る。でなければ、そもそも役に立たない。
     しかしアタマと書棚にある現有知識だけで、すべてを済ませることはできない。できるとしたら、世界はあまりに退屈なものになる。
     すべての書を収蔵する図書館は存在しないが、それでも真っ当な図書館はすべての人に開かれているが故に、死角を作らないようあらゆる領域の書物を受け入れる構えはある。
     百科事典もこの構えを引き継いでいて、なんでも載っている訳では決してないが、なるだけ死角を作らぬよう網羅性を志している。
     エンサイクロペディアEncyclopediaの語源になったエンサイクロスは「円をなす」を意味する。西周がEncyclopediaに「百學連環」なる訳語を与えようとことが思い出される。

     三つ目は、何を探しているかはっきりしない探し物に用いる。
    先日、サラダの話をしたので、それを例にすると、アスパラガスをつかったサラダのレシピが欲しいなら「アスパラガス サラダ レシピ」とでも入力してググればよい。しかしレシピを欲する人がしばしば直面する困難な「新ネタ」を求めるところに生ずる。自分が知っている/普段作っているサラダ以外の何かが知りたい。しかし検索エンジンのみならず、世の中の探し物ツールは、求めている対象が明確ならば役に立つのだが、しかしそれに先立ってはっきりしないものを捕まえるステップがなければ、そもそも探しようがない。ではどうするか。
     一つの方法は、「サラダ」と入力して、電子版の百科事典相手に全文検索をかけるのである。素材でない項目もいくつかヒットするが、多くは本文中に「サラダに使う」などと書いてある野菜その他の素材である。100種類くらい軽くリストアップできる。それぞれの項目を見れば、調理法まで解説してある。たとえば「うど」は生のままでいける、「切ったものを酢水に漬け、水にさらしてから利用するとよい」と分かる。「うど」が出てくれば、あとは「うど サラダ レシピ」でネットで検索しても良い。
     この方法は、自分が知らないものを引き出したい場合に応用できる。同じことは検索エンジンでもできるのだが、百科事典を相手にした方が効率はよい。情報の総量がずっと少ないことと、編集が入っているせいで情報の質が揃っているのが効いている。




    日本語辞典

     英英辞典には、A.英語を母語とする人たちが使う国語辞典、B.英語を外国語として学ぶ人たちが使う英語辞典の2種類ある。
     Bのタイプの辞書は、定義につかう単語は制限されていて、ごく基本的な単語で語義も例文もできている。例文はフルセンテンスで、英語を書くときにも参考になりそうだし、語の用法がよく分かるようになっている。語の意味も、単に他の単語で言い換えるだけでなく、その基本的な単語を使って噛み砕いて説明してくれる。他にもネイティブ・スピーカーには当たり前で書くまでもないことまで親切に書いてあって、とてもいい。
     Aのタイプの辞書は逆に、ネイティブ・スピーカーにとって当たり前のことをくどくど言うよりも、語彙数と情報量を詰め込んで、ネイティブでも知らないような単語を調べる方向に向いている。例文はほとんどないか、あっても素っ気なく、語の意味も言い換えですませている場合も少なくない。
     日本語を母語にしている人たちの辞書は、ほとんどがAのタイプの辞書ばかりだ。分かったことにしている日本語のあれこれを、一から丁寧に、それこそ外国人にもわかるように説明してくれるBのタイプの辞書があればどうだろう? 特に日本語を書かなくてはならない場面では、Aのタイプの辞書より役に立ってくれるのでは?
     実はBのタイプの辞書は古くから存在する。
     文化庁が作った、その名も

    外国人のための基本語用例辞典外国人のための基本語用例辞典
    (1971/08)
    文化庁

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    がそれだ。しかし知る人ぞ知るという奴で、古書でも結構な値段であったりして入手しにくい。

     しかし、これまた安くはないのだが、新刊書で手に入る

    基礎日本語辞典基礎日本語辞典
    (1989/06)
    森田 良行

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    があり、その志を発展的に継承している(ボリュームは10倍になった)。翻訳家と国語教師、御用達。


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