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     最近では珍しく、一冊の本について書く。


    超記憶術―「ぜったい覚える・忘れない」生活のヒント超記憶術―「ぜったい覚える・忘れない」生活のヒント
    (1994/05)
    ダグラス・J・ ハーマン

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    Super Memory: A Quick-Action Program for Memory ImprovementSuper Memory: A Quick-Action Program for Memory Improvement
    (1991/01)
    Douglas J. Herrmann

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     「残念な翻訳書」という括りで、いつかまとめて書こうと思っていたうちの一冊である。

     ダグラス・J・ハーマンの邦訳は、トンデモのアロマ漂うこの一冊しかない。
     ブランスフォード、スタイン『頭の使い方がわかる本』(原題The Ideal Problem Solver: A Guide for Improving Thinking, Learning, and Creativity)みたいに心がすさむ邦題を無理やり付けられた訳ではなく、原題からして”Super Memory: A Quick-Action Program for Memory Improvement”なのだから、当人に責任の一端があるのだが(しかし「ぜったい覚える・忘れない」は明らかにミスリードだ)、本の中身はいたって地味だ。
     
     あなたの記憶力を劇的に高める方法なりトレーニングみたいなものはまったく出てこない

     それどころか「記憶力」といった概念自体に疑問を投げかけている。
     どんなものでも覚えられる一般的な「記憶力」があったり、そうした「記憶力を持っている」人がいたり訳ではない、と釘を刺している。
     何百種類のカクテルをつくれるバーテンダーは高い記憶力の持ち主ではない。ただカクテルの作り方をたくさん知っているだけだ。
     得意な分野、専門の分野について人は、門外漢からすると驚異的なまでに覚えていることがままあるが、記憶というのはそういうものなのだ。
     
     記憶研究では常識だが、記憶術の本には普通書いていない(理由はすぐにわかるだろう)次のような事項についても触れている。
     ほとんどの人は、本人が思っているよりは、詳しく細かく記憶している。
     なのに人は総じて、自分の記憶について自信がない。
     人は総じて、自分の記憶よりも、他人の記憶の方を信用する。
     心理学の実験よろしく、サクラを導入して「嘘の記憶」を主張させると、自分の記憶をそっちに合わせてねじ曲げる。
     
     この本が提案する記憶を改善させる方法は(どれもこの本にふさわしく地味でセコくかつリーズナブルなものだが)、すべて数え上げるとものすごい数になる(実は、伝統的なイメージを使った記憶術みたいなものも紹介していない訳ではない)。
     記憶力一般ではなく、何を記憶するかについてそれぞれに得意不得意がある人間の、覚えていなきゃいけないニーズそれぞれに応じて方法なりコツを提示するのだから、それもやむを得ない。
     むしろ「覚えていないこと」が問題となるシーンを特定して、それぞれに対して(注意attentionという有限の、というより希少な認知資源をうまく使って)問題解決を行おうというのが、この本の真骨頂である。
     
     それらのうちで最も広い人/状況に対応する方法は、次のものだろう。
     自分がどんなことをよく覚えていて、どんなことはあまり覚えていないのか、毎日記録を付けて確認すること!
     なんという地味な(記憶術の本を読む人間がまずやりそうにない)作業。
     しかし人は自分の物覚えについて過小評価することが普通であり、しかもその過小評価が記憶する際にマイナスに働いている以上、当然の処方である。
     
     なけなしの能力を使いこなすには、それを掛け値なしに知っておくことが必要だ。
     そういえばメタ認知の研究の端緒は、幼児が記憶方略を教示された直後には有効に実行するのに、自分からは使用しない現象をメタ記憶(記憶についての認知)の欠如と捉えたフレイヴェルらの研究だった(Flavell, J. H., Beach, D. R. & Chinsky, J. M., Spontaneous Verbal Rehearsal in a Memory Task as a Function of Age, Child Development, 37, 1966.)。
     
     この本の内容を手短にまとめておこう。
     記憶研究の膨大な知見のうち、日常生活で役に立ちそうなものを、一般書の形で提供したもの。

     なお、ハーマンの一般書でない編著にBasic and Applied Memory Research(ISBN:9780805821178)やMemory in Historical Perspective(ISBN:9783540967057)がある。


    Basic and Applied Memory Research: Volume 1: Theory in Context; Volume 2: Practical ApplicationsBasic and Applied Memory Research: Volume 1: Theory in Context; Volume 2: Practical Applications
    (1996/10/13)
    Douglas J. Herrmann、 他

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    Memory in Historical Perspective: The Literature Before Ebbinghaus (Recent Research in Psychology)Memory in Historical Perspective: The Literature Before Ebbinghaus (Recent Research in Psychology)
    (1988/08)
    Douglas J. Herrmann

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    Memory HacksMemory Hacks (O'Reilly Media)
    (2007/05/30)
    Douglas Herrmann

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    Improving Memory and Study Skills: Advances in Theory and PracticeImproving Memory and Study Skills: Advances in Theory and Practice
    (2002/07/15)
    Douglas Herrmann、Douglas Raybeck 他

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    It takes a strategy perspective (although it uses the term manipulation) and shows how many different ways can be used singularly or in combination to fit particular study and memory tasks.
    So there is nothing about mystical breathing techniques, yoga, the use of baroque music, the application of NLP, the increase of IQ or the use of pseudoscience to twist any issues.


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