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     ホッブズは『リヴァイアサン』という本の中で、国家(やその権力や社会秩序)がどこから生まれるかという謎にひとつの答えを出した。
     それも「神様のような人間以上のものがうまく設計したのだ」というご都合主義ではないやり方でだ。
     
     原子論が「自然は運動する原子の集まりだ」と考えるように、ホッブスは社会を人間のあつまりだと考えた。
     そして人間の性質からはじめて、人間の集まりで何が起こるか、人間と人間が関わりあうことから何が生まれるかを考えた。

     どんな人間にもあてはまる性質は、「死にたくない」という欲望と、「おれが、おれの方が」という欲望を持っていることだ。

     「おれが、おれの方が」という欲望は、死ぬまで無くならない。
     だから、このままだと、いろんなものを取り合って、人間は死ぬまで争い、どんどん死んでいくことになるだろう。
     
     だが人間には「死にたくない」という欲もあり、そして多少はものがわかる能力もある。
     ここから最低限のルールが生まれる。
     というより「死にたくない」という欲望が能力を働かせて、死にものぐるいで最低限のルールを「発見」することになる。
     〈約束は守る〉とか〈自分がされたくないことは人にもしない〉とか、そういうのだ。

     こうした最低限のルールが生まれて、ようやく〈契約〉ができるようになる。
     そうして、互いに死ぬまで争わぬために、ある特別の〈契約〉をする。

     元になるのは〈代理〉という契約だ。

     〈代理〉というのは、本当なら自分がすることを、誰かに代わってやってもらうことだ。
     この契約を結ぶと〈代理人〉がやったことは、自分がやったことになる。
     
     さて、「おれが、おれの方が」という欲望は、他人を支配しようという欲望になる。
     そして誰もがこの欲望を持っているので、支配されたくないという欲望もある。
     誰もが支配したいし、支配されたくない。ある人がこの欲望を満たすと、他の人はその欲望を満たすことができない。
     つまりこの欲望は、全員が満たす訳にはいかない。
     一度、負けたものも、またこの欲望を満たすために争いを起こすだろう。
     世の中の大多数はこの欲望が満たされないままなので、争いの火種は絶えることがないだろう。

     では、どうするか?
     ある一人の者を、社会の全員が〈代理人〉に指名して、他人を支配することを代わってやってもらうのだ。
     
     この〈代理人〉は社会全員の代理であり、社会全員を支配する。
     
     〈代理人〉がやったことは自分がやったことになる、というのを思い出そう。
     このリクツでいけば誰もが〈代理人〉を通して、全員を支配するという欲望を満たすことになる。
     だが実際は、全員が支配されている。
     国家とその権力とは、こうしたヘンテコな契約によって成立する。
     
     もちろん契約なのだから破棄することだってできる。
     人々がそうしないのは、破棄した途端、あの死ぬまでの続く争いに逆戻りするからだ。

     そして今や国家が成立している。

     国家ができる以前ならせいぜい、人間は他の人間と争うだけだった。
     今や契約を破棄すれば(全員が一斉に契約を破棄しない限り)、破棄した者は国家と争う羽目になる。
     あるいは国家越しに、束になった自分以外の社会全員と争うことになる。
     もう勝ち目はない。
     
     この呪いのような契約のせいで、まともに計算できる者は契約を破棄しないとの予測が立ち、その予測にたってみんなが契約を続けることで、予測した通りのことが実現し続ける。
     際限のない人間同士の争いは、国家というみんなが参加する〈契約〉がある限り、止められる。

     こうして国家は存続していく。

     もちろん、こうしたホッブズのリクツは、いろいろ飛躍があるし欠陥もある。
     しかし重要なのは、人間の性質を前提条件にして、国家がどうやって成立するか、そのメカニズムを考えたところだ。



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