我々は直接に過去を知ることはできない。

     人間の行動や思考が残したさまざまな痕跡を手がかりに、過去を再構成する以外にそれを知る術を持たない。

     そのようにして再構成された過去を歴史といい、再編成の手がかりとした痕跡を史料という。

     もとより人が残した痕跡は〈書かれたもの〉に限らないが、古文書、古記録をはじめとする文献史料は、長きにわたって史料のなかでとくに優越した地位を占めてきた。

     以前は限られた人しか見ることができなかった文献史料が、一部ではあるが歴史資料集として編纂され、刊行物として活字化されることを経て、多くの人が見ることができるようになった。
     加えて近年、そうした刊行物はインターネット上で誰でも検索/参照できるようになっている。

     以下では、自宅で誰でも(基本的に)無料でアクセス可能な歴史史料を紹介する。


     ここで紹介する歴史資料集は、大きく2つに分けることができる。
    A.ひとつは各文書・記録から記述を抜き出し、ばらして歴史順に編纂し直したもの(例:『大日本史料』)、
    B.もうひとつは、それぞれ独自のタイトルのついた史料をまるごと集め、そのままに収めた叢書(例:『群書類従』)である。


    A.編年による史料集

    ◯『大日本史料』 東京大学史料編纂所編

     年代順による日本歴史についての最大の基礎史料。東京大学史料編纂所で編纂,現在も刊行中。
     律令政府の修史事業の六国史のあとをうけて,宇多天皇の仁和3 (887) 年8月から明治維新直前の慶応3 (1867) 年までの 980年間について、政治,経済をはじめ,各方面の事件に関する史料を年月日を追って配列し,漏れなく掲載したもの。
     史料を裸で載せているのではなく、出来事ごとに綱文を立てて一項目としているのが特長。
     綱文とは出来事の内容をいつ誰が何をしたという5W1Hで簡潔に述べたもの。
     綱文の後に引用史料名と史料からの引用が続く。
     古文書のような短いものであれば全体を引用するが、歴史書などの長いものは一部のみ切り取って引用している。
     
     東京大学史料編纂所 公開用データベース http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/
    の「大日本史料総合データベース」で後述の『史料綜覧』、『大日本史料』の手書きの草稿である「史料稿本」と合わせて検索表示可能。


    ◯『史料綜覧』全17巻 東京大学史料編纂所編

     『大日本史料』の見出しである「綱文」とそこに引用する予定の史料名だけをまとめた史料集。 
     『大日本史料』は現在も刊行中であり、すでに刊行されているのは江戸時代初期までであることから、それ以降の未刊部分について調査するツールとして出されたもの。
     史料からの引用はないので、史料の内容を見るためには、典拠史料を当たる必要がある。典拠史料を当たるためには、所蔵機関を当たらなければならないが、『史料綜覧』に採録されている史料は東大史料編纂所の史料採訪によって収集されたものなので、少なくとも史料編纂所を訪ねればその写しは所蔵している。これは東京大学史料編纂所 公開用データベースにある所蔵史料目録データベースで調べることができる。
     
     東京大学史料編纂所 公開用データベース http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/db.htm
    の「大日本史料総合データベース」で、前述の『大日本史料』、『大日本史料』の手書きの草稿である「史料稿本」と合わせて検索表示可能。


    大日本史料総合データベース 検索例
    (1)上記URLに接続し、データベース選択で、「大日本史料総合データベース」を選ぶ。

    (2)キーワードに「安倍晴明」と入力、検索対象「綱文」にチェックを入れて検索ボタンを押す。

    (3)検索すると、13件の文書がヒットする。

    (4)「寛弘1年9月25日」の文書を選んで「詳細」をクリックすると、詳細表示が出る。


    綱文詳細画面


    (5)綱文には、「(第二条)道長、陰陽師安倍晴明をして、多武峯鳴動のことを卜はしむ」とあり、藤原道長が陰陽師の安倍晴明に、多武峰(明日香村との境に近い桜井市の南端にある山。七世紀後半に藤原鎌足の廟所となっている)の鳴動(地震のときに起る地面の振動と音)について占わしたことが分かる。
     出典は、藤原道長の日記である『御堂関白記』。

    (6)この文書の全文が読みたいと思ったら、「刊本」ボタンをクリックすると、画像ビューワ ー画面に切り替わり、以下のページが表示される。
    御堂関白記0129





    ◯『平安遺文』全15巻 竹内理三編

     天応元(781)年から元暦2(1185)年までの平安時代の文書を編年順に配列した史料集。古文書編・金石文編・題跋編・索引編からなる。索引編には、「寺社名索引」「件名索引」が収められている。
     
     東京大学史料編纂所 公開用データベース http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/db.htm
    の平安遺文フルテキストデータベースで、全文検索可能。



    ◯『鎌倉遺文』全42巻 竹内理三編

     鎌倉時代の古文書を網羅し、編年順に集成した史料集。索引編には「地名索引」「人名索引」が収められてる。
     
      東京大学史料編纂所 公開用データベース http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/db.htm
    の鎌倉遺文フルテキストデータベース、全文検索可能。



    B.叢書

    ◯『大日本古文書』 東京大学史料編纂所編

     古代から近世にわたる古文書が収められている。
     大宝2(702)年から宝亀10(770)年までの古文書を編年順に集めた「編年」と、正倉院・高野山・伊達家などといった、所蔵者別に編纂された「家分け文書」、嘉永元(1848)年の「米国使節ノ渡来」以降の「幕末外国関係文書」を収めた巻と、その付録との三部制となる。
     
     東京大学史料編纂所 公開用データベース http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/db.htm
    の奈良時代古文書フルテキストデータベースで「編年」が、同じく古文書フルテキストデータベースで「家分け文書」が、検索可能。



    ◯『大日本古記録』 東京大学史料編纂所編

     古代から中世までの主要な日記を収載。
     各巻の冒頭に、所載史料の写真が数葉収められています。また、各史料の末巻に内容索引と、その史料の解題、著者年譜、略系図が収められており、とても便利です。

    東京大学史料編纂所 公開用データベース http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/db.htm
    の古記録フルテキストデータベースで古記録(漢文日記)の本文が検索可能。



    ◯『群書類従』全30冊 、『続群書類従』全86冊 塙保己一

     塙保己一の創始になる日本の古書を収録、翻刻した大叢書。
     江戸時代初期以前の文献をジャンル別に25部に分けて収録(神祇・帝王・補任・系譜・伝・官職・律令・公事・装束・文筆・消息・和歌・連歌・物語・日記・紀行・管弦・蹴鞠・鷹・遊戯・飲食・合戦・武家・釈家・雑の25部)。
     古代・中世文献が中心に収録史料は多様であり、当初の編集方針により小冊子が中心に集められたこともあり貴重な資料集。

     刊行を担っていた続群書類従完成会が2006年、事実上倒産し、google ブックの協賛事業者である八木書店がその事業を引き継いだため、一部について(今見れるのはこれくらい)Google ブックhttp://books.google.co.jp/で検索可能。

     

    ◯『続々群書類従』全17冊 国書刊行会編

     『群書類従』『続群書類従』にならい、明治に入ってから刊行された史料集です。江戸時代に作成された文献を網羅的に収録。

     刊行を担っていた続群書類従完成会が2006年、事実上倒産し、google ブックの協賛事業者である八木書店がその事業を引き継いだため、一部について(今見れるのはこれくらい)Google ブックhttp://books.google.co.jp/で検索可能。


    ◯『史料纂集』 続群書類従完成会

     古代から近世までの各時代の特に、重要なものでありながら当時未刊であった史料、また既刊であるが再校訂が学術的見地より要請されるものを厳密に翻刻し、昭和42年度より逐次刊行。大日本古記録や大日本古文書に匹敵し且つその欠を補う基本史料の一大叢書。

     刊行を担っていた続群書類従完成会が2006年、事実上倒産し、google ブックの協賛事業者である八木書店がその事業を引き継いだため、一部について(今見れるのはこれくらい)Google ブックhttp://books.google.co.jp/で検索可能。


     
    C.その他有用なデータベース

    ◯古事類苑

     『古事類苑』は明治12年(1879)に文部省が編纂を開始し、後に神宮司庁がその事業を引き継ぎ、35年をかけて完成した日本最大の百科史料事典。歴代の制度・文物・社会百般の事項を30部門に分類し、各事項についてその起源・内容・変遷を、平安時代初期の六国史から明治維新までの基本的な文献から、当該箇所を原文のまま採取して列挙している。和装本で1,000巻、洋装本で51巻、総頁数は洋装本にして67,000頁余、五十音索引の見出語は64,246項目、総目録の見出語は40,354項目にもおよぶ。

    国際日本文化研究センターの古事類苑ページ検索システム
    http://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/menu.html で検索できる。



    ◯六国史 http://www013.upp.so-net.ne.jp/wata/rikkokusi/index.html

     六国史(奈良・平安時代に編纂された6つの勅撰国史書、「日本書紀」「続日本紀」「日本後紀」「続日本後紀」「日本文徳天皇実録(文徳実録)」「日本三代実録」)が全文検索できる。



    ◯歴史物語(栄花物語、大鏡、今鏡、水鏡、増鏡)全文検索
    ◯吾妻鏡 全文検索


    国文学研究資料館 古典選集本文データベース http://base1.nijl.ac.jp/~anthologyfulltext/から検索できる。




    ◯《史料情報共有化データベース》

     全国各地に伝来する史料について、史料群単位の所在とその概要情報を提供するもの。
     情報源は、文書館をはじめとする史料保存利用機関、図書館、博物館、自治体史編 纂室、大学研究室や研究者、個人などが公刊した史料目録類とのこと。キーワードのほか、 旧国名、郡・市町村名で検索ができる。

    簡易版について、国文学研究資料館 電子資料館 http://www.nijl.ac.jp/pages/database/で誰でも無料で検索できる。


    ◯《史料所在情報検索システム》

     各地の原史料の所在を収録するデータベース。
     キーワードを入れることで関連する史料群の所在について検索できる。
     史料情報共有化データベースとともに利用すべきもの。
     
    国文学研究資料館 電子資料館 http://www.nijl.ac.jp/pages/database/で検索可能。


    ◯《日本古典籍総合目録データベース》

     国初から慶応3年(1867年)までの間に日本人により著述・編纂・翻訳された現存するすべての書籍について、所蔵先から翻刻刊本の有無まで掲載した『国書総目録』、その続編である『古典資料総合目録』を統合・発展させたもので、約100万件のデータを検索できる。古典籍の書誌及び所在についての網羅的な情報を、著作及び著者についての情報(典拠情報)翻刻複製についての情報(写本、版本、活字・複製・謄写本の情報)を併せて表示する。

    国文学研究資料館 電子資料館 http://www.nijl.ac.jp/pages/database/で検索可能。


    ◯《日本古典資料調査データベース》

    国文研の資料調査事業部がおこなってきた、全国の研究機関等に眠る未整理の 古典資料の整理作業の成果を検索できるもの。日本古典籍総合目録データベースに未収録のものを補完する。

    国文学研究資料館 電子資料館 http://www.nijl.ac.jp/pages/database/で検索可能。


    ◯《日本古典文学本文データベース》

    『日本古典文学大系』(旧版、岩波書店刊)の全作品(100巻580作品)本文(テキスト)データベース。古典文学の全集だが『日本書記』や『愚管抄」といった歴史史料や、『太平記』『平家物語』を含む。

    国文学研究資料館 電子資料館 http://www.nijl.ac.jp/pages/database/で、登録が必要だが無料で検索可能。


    D.その他

    国立歴史民俗博物館「データベースれきはく」
    http://www.rekihaku.ac.jp/doc/t-db-index.html
     所蔵資料を中心に日本の歴史・文化に関する様々なデータベースが公開されている。



    国立公文書館デジタルアーカイブ 
    http://www.digital.archives.go.jp/gallery/view/category/categoryArchives/0100000000/default/
     所蔵資料の目録データベースの他に、一部の資料についてはデジタル画像の検索閲覧ができる。


    国立国会図書館 近代デジタルライブラリー http://kindai.ndl.go.jp/
     国立国会図書館が所蔵する明治・大正・昭和前期刊行図書のデジタル画像を収録。
     近代以前の史料関係では、『国史大系』『続国史大系』の初版(田口卯吉編集、黒板勝美校訂)等が閲覧可能。

    『国史大系』全17冊
    [第1冊]第1巻 日本書紀
    [第2冊]第2巻 続日本紀
    [第3冊]第3巻 日本後紀 続日本後紀 日本文徳天皇実録
    [第4冊]第4巻 日本三代実録
    [第5冊]第5巻 日本紀略
    [第6冊]第6巻 日本逸史 扶桑略記
    [第7冊]第7巻 古事記 旧事本紀 神道五部書 釈日本紀
    [第8冊]第8巻 本朝世紀
    [第9冊]第9巻 公卿補任前編
    [第10冊]第10巻 公卿補任中編
    [第11冊]第11巻 公卿補任 後編
    [第12冊]第12巻 令義解 類聚三代格 類聚符宣抄,続左丞抄
    [第13冊]第13巻 延暦交替式 貞観交替式 延喜交替式 延喜式
    [第14冊]第14巻 百錬抄 愚管抄 元亨釈書
    [第15冊]第15巻 古事談 古今著聞集 十訓抄 栄華物語
    [第16冊]第16巻 今昔物語
    [第17冊]第17巻 宇治拾遺物語,水鏡,大鏡,今鏡,増鏡

    『続国史大系』全15冊
    [第1冊]第1巻 続史愚抄 第巻1-28
    [第2冊]第2巻 続史愚抄 巻第29-54
    [第3冊]第3巻 続史愚抄 巻55-81
    [第4冊]第4巻 吾妻鏡  明治35
    [第5冊]第5巻 吾妻鏡
    [第6冊]第6巻 後鑑 明治35 尊氏将軍記,義詮将軍記,義満将軍記
    [第7冊]第7巻 後鑑 明治36 義持将軍記,義量将軍記,義持将軍後記,義教将軍記,義勝将軍記,義政将軍記
    [第8冊]第8巻 後鑑 明治37 義尚将軍記,義政将軍後記,義植将軍記,義澄将軍記,義植将軍後記,義晴将軍記,義輝将軍記,義栄将軍記,義昭将軍記,附録
    [第9冊]第9巻 徳川実紀 第1編 明治35 東照宮御実紀,東照宮御実紀附録,台徳院殿御実紀,台徳院殿御実紀附録
    [第10冊]第10巻 徳川実紀 第2編 明治35 大猷院殿御実紀,大猶院殿御実紀附録
    [第11冊]第11巻 徳川実紀 第3編 明治35 厳有院殿実紀,厳有院殿御実紀附録
    [第12冊]第12巻 徳川実紀 第4編 明治36 常憲院殿御実紀,常憲院殿御実紀附録
    [第13冊]第13巻 徳川実紀 第5編 明治37 文昭院殿御実紀,文昭院殿御実紀附録,有章院殿御実紀,有章院殿御実紀附録,有徳院殿御実紀・上
    [第14冊]第14巻 徳川実紀 第6編 明治36 有徳院殿御実紀・下,有徳院殿御実紀附録,惇信院殿御実紀,惇信院殿御実紀附録
    [第15冊]第15巻 徳川実紀 第7編 明治37 浚明院殿御実紀,浚明院殿御実紀附録,幕府要職年表





    奈良文化財研究所 木簡字典(木簡画像データベース)
    http://jiten.nabunken.go.jp/
    古代史研究で重要な出土史料のひとつ木簡について、奈良文化財研究所が調査した5万点にせまるの木簡の釈文の検索、表示できる。



    E.(おまけ)有料だが自宅で引けるデータベース

    『国史大辞典』 国史大辞典編集員会編集 吉川弘文館
    日本歴史地名大系  平凡社
    誰でも読める 日本史年表 吉川弘文館
    江戸名所図会 ゆまに書房
    新編 日本古典文学全集 小学館
    日本国語大辞典第二版 小学館
    東洋文庫 平凡社 など

    有料だがジャパンナレッジhttp://www.jkn21.com/で検索可能。


    (関連記事)
    自宅でできるやり方で論文をさがす・あつめる・手に入れる 読書猿Classic: between / beyond readers 自宅でできるやり方で論文をさがす・あつめる・手に入れる 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加



    関連記事
    スポンサーサイト
    Secret

    TrackBackURL
    →http://readingmonkey.blog45.fc2.com/tb.php/529-45a8f20d