少女:それ何語?
    少年:チェコ語。
    少女:なんでそんなの知ってるの?
    少年:知ってるってほどじゃないけど。ウィキペディアで10万記事以上ある言葉は、辞書くらいは引けるようにしてる。でないと読めないだろ?
    少女:……そりゃそうだけど。どうやって勉強したの?
    少年:普通の本を読むのと変わらない。まずは百科事典を引く。
    少女:百科事典?なんで?
    少年:予備調査。まるっきり知らないよりさわりだけでも知ってた方がいろいろ効率がいい。
    少女:よく分からないけど。
    少年:たとえば、これからチェコ語を勉強したいとすると、最初は百科事典で「チェコ語」を引く。
    少女:それ、スマホ? 意外。ケータイなんて持たない人だと思ってた。
    少年:ほとんど携帯辞書になってるけど。EPWING版の百科事典と辞典をいくつか入れてある。紙の本棚だと、これだけでも何メートル分になるけど、スマホだと、ほとんどの本より軽いし小さいし、図書館のどこにいてもその場で複数の事典が引けるから便利だ。


    iDict+


    少女:立ち話しながら事典引くのね。
    少年:チェコ語の項目は、ブリタニカにも、世界大百科にも、大日本百科全書にも、ウィキペディアにもある。
    少女:言語の特長とかどの言語と似てるとか、どこで何人ぐらいの人が使っているか分かるね。
    少年:まだある。教材がなかなか見つからないマイナー言語だと、誰がその項目を執筆してるかも貴重な情報。チェコ語だと、世界大百科だと千野栄一、日本大百科は山本富啓が書いてる。
    少女:そうか。図書館の検索で千野栄一さんが書いてる本を探すのね。
    少年:あと『邦語文献に対する参考調査便覧』で調べるとを、チェコ語のところは、

    889 チェコ語
    【1】チェコ語の辞書 千野栄一→私の辞書 丸善1973
    【3】チェコ語のしくみ 金指久美子 白水社2007
    【3・7】チェコ語大辞典 ローマ字付 菊池正雄編 武田書店1999
    【7】チェコ語=日本語辞典 京都産業大学出版会1995 ◆現代チェコ語日本語辞典 小林正成編 大学書林2001

    となってる。チェコ語の辞書紹介を千野栄一がやってるのが分かる。さっき執筆者の名前をチェックしておいたから目にとまるでしょ?
    少女:うん。
    少年:あと『チェコ語のしくみ』(これは入門書)や『チェコ語大辞典』には、巻末に参考文献リストがあるのも分かる。こういうのを見て、どんな本があるかを拾っていく。
    少女:この『私の辞書』って何?
    少年:丸善のPR誌に『学鐙』というのがあるんだけど、そこでの連載で、各国語の専門家が辞典や語学参考書を紹介するシリーズが元になってできた本。マイナー言語だと他に情報がないことも多いから、辞書だけじゃなくて語学書一般を紹介してあって便利。あんまり知られてないからAmazonで200円くらいで売ってる。


    私の辞書 (1973年)私の辞書 (1973年)
    (1973)
    小林 英夫

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    少年:あと、連載すべてが本になったわけじゃないので、『学鐙』のバックナンバーがあればそれも見るといい。たとえばヘブライ語だと、長谷川真が書いた「イスラエル・ヘブライ語の辞書」が書籍『私の辞書』にあるけど、『学鐙』には他に前田護郎が書いた「ヘブライ語への招き」「学鐙」66(7)(1969)って記事がある。
    少女:予備調査して、どんな本があるかを拾って、文献リストをつくるの?
    少年:この場合は学習資源リストかな。
    少女:ものすごい数になるんじゃない? 全部見るの?
    少年:全部は見切れないけど、テキストを決める前に一通りのリストは作る。誰がいつどんな語学書を書いてるか知るだけでも意味があると思う。その分野のキーパーソンが分かるし,古くても良い本は、調べているうちに何度も名前を見ることになるから、自然と馴染みになるし。繰り返し登場して忘れられてく本のパターンも分かる。それに英語ならともかく、マイナーな言語だと、そこまで長いリストにならないよ。
    少女:その次に、どの本で勉強するか決めるのね?どうやって選ぶの?
    少年:手に入るうちで、できるだけ薄い本にする。できれば200ページ以下。でも、手に入りそうなテキストはなるべく手に入れておく。ある本でよくわからなくても、別の本の説明で疑問が氷解するのは、よくあるから。
    少女:テキストはどうやってやるの?
    少年:やり方も普通の本を読むのと、あまり変わらない。目次や序文を読んで本の章立てやページ配分を頭に入れて、それからまずは一通りできるだけ速く最後まで見る。
    少女:そんなので頭に入るの?
    少年:当然入らない。最初はどこに何が書いてあるか、ざっと分かればいい。目次だけ見てても内容が想像できないと頭に残らないから、目次を熟読するのと全体を最後まで流し読みするのは一対なんだ。
    少女:その次は?
    少年:流し読みの範囲を狭めながら繰り返す。最初は本全体を流し読みしたけど、2回目は大きなくくり全体,その次はこれから読む章全体、次は節全体…って感じ。
    少女:繰り返し読むのね。
    少年:その日メインでやる部分は書き写す。ほんとはいつもやったほうがいいけど、実際やれてるのは文字が難しい言葉のときだけかな。前はノートに書いてたけど、今はiphoneのFastFingaって手書きアプリで書いて、Evernoteに放り込んでる。かさばらないし、すきま時間に復習しやすいから。


    FastFinga



    Evernote



    少女:文字が難しくない言葉って? あ、普通のアルファベットを使うもの?
    少年:そう。そっちはi暗記っていうアプリに、その日やった箇所に出てくる例文とか単語を放り込んでる。これもすきま時間の復習用。一度入力しておけば、復習のタイミングはおまかせにできる。正誤率を反映して、スペースド・リハーサルになるようなタイミングで繰り返し復習できるので。


    i暗記


    少年:あとは出てくる例文の音読。やってるのはこれくらいかな。こうして薄い入門書が終わると、基本的な文法と頻出語1000語くらいが頭に入ることになる。
    少女:うーん。
    少年:薄くても一冊やっておくと、厚手の文法書をやっても知らないことは半分くらいになってる。最初の一冊もそうだけど、まず知ってる部分をわずかでも作って、そこを拠点に知らないことを知ってることに結び付けていくと効率的。最初の薄い一冊も、厚手の文法書の中に自分の知ってる拠点をつくるため。うろおぼえだと薄氷の上に踏ん張ってるみたいになる。ぐらぐらして、そっちに認知資源を消費するから、量は少なくても反射的に出るくらいまで、最初の一冊の内容は固めとくと、あとが速い。
    少年:厚手の文法書も、同じように繰り返し読んで、出てくる単語と例文はみんなi暗記に入れて進む。
    2冊くらい終わると、辞書を使えば、その言葉で書かれたウィキペディアが読めるようになってる。自分の語学は調べもの用だから、百科事典を使えるレベルが最初の折り返し点。



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