図書館となら、できること番外編/マイナー言語のBookishな学び方 読書猿Classic: between / beyond readers 図書館となら、できること番外編/マイナー言語のBookishな学び方 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加のつづきです)


    少女:読むために語学を勉強するって言ってたけど、読めない言葉もあるよね? まだ勉強できてないけど、今すぐ読みたいって時はどうするの?
    少年:翻訳エンジンを使う。
    少女:ちょっとがっかり。
    少年:いいけど。
    少女:翻訳エンジンなんて役に立つの?
    少年:高望みしなければね。
    少女:世の中の大抵のものはそうじゃないの?
    少年:……やってみせる。



    (翻訳エンジンと話すこと)

    少年:何か話してみて。
    少女:え、スマホ?
    少年:Google翻訳のアプリを入れてある。
    少女:Ich komme aus Kyoto.
    少年:なんでドイツ語?
    少女:あ、文字が出てる。
    少年:訳も出るよ。60言語くらいは聞き取るし、訳した上で発音もしてくれる。日本語はけっこう聞き取ってくれる。まあ訳はそこそこだけど。
    少女:え、なに?ソロモンの指輪?
    少年:そこは、ほんやくコンニャクでしょ?
    少女:しかも無料? こんなのあったら外国語会話学校なんて死滅するんじゃない? 文法やらないコミュニケーション志向の学校英語とか、シェイクスピアも知らないALT(外国語指導助手)とか。
    少年:飛ばしすぎ。お互い言葉が分からなくて筆談してたような相手だと、これ使っても付き合ってくれるだろうけど。


    Google翻訳




    (翻訳エンジンと読むこと)

    少女:肝心の読むのはどうなの?
    少年:日本語に訳さず、ヨーロッパの言葉を英語にする程度だったら、そこそこ使える。時々変なことをするけど。
    少女:変なこと?
    少年:たとえばGoogle翻訳とかBing Translatorみたいな統計的翻訳は、各言語と英語の間でしかシステムつくってないから、例えばドイツ語→フランス語でも、英語を介してドイツ語→英語→フランス語と二段階で訳してる。だから英語に無いような要素、たとえば二人称の親称と敬称の区別が消えたりする。
    少女:それ有名な話?だったら改善されないの?
    少年:従来のルールベースの機械翻訳だと、そういう情報落ちしない中間言語を人工的につくってと考えるけど、統計的機械翻訳は対訳データが大量にあるような自然言語同士のペアが基本だから。もちろんすべての言語の間で対訳データを揃えればいいのかもしれないけど、70言語相互翻訳だとすべて英語を介することにしとけば70ペアですむところ、70×70÷2=2450ペア必要になる。
    少女:当分、無理そうね。
    少年:だから原文と訳を対比できるようにしとかないと不安なんで、ただ読むだけなら、次のブックマークレットを使ってる。Bing Translatorの対訳表示にURLを投げてるだけだけど。


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    arabic.png
    (クリックで開く)


    少女:アラビア語全然分からないけど、何書いてあるかくらいは分かる気がする。
    少年:新しい言語を学びだしたら、その言語のウィキペディアの表紙を対訳表示して、ブックマークしといて毎日眺める。ニュース・サイトでもいいけど、表紙は「今日の注目記事」みたいな日替わりコンテンツでできてるし、毎日何かしら読むものがあるから。
    少女:ふーん。
    少年:最初のうちは「今日は何の日?」みたいな、ごく短いのが読みやすい。あと、ちょっと邪道だけど、英語みたいに単語と単語の間にスペースがあって分かち書きされている言語なら、スペースを改行に置き換えて単語をばらしてから、Google翻訳にコピペすれば、即席で単語帳ができる。訳語をクリックすると別の候補訳が出る。
    少女:文だったときは、まだましな訳だったのに、単語にばらすとおかしなところが出るね。
    少年:まとまりで考えないと意味が違う(通らない)ところだ。今は一つの単語ごとに改行してるから、意味を推測しながら、まとまりがつくように改行を消して、いくつかの単語の組を作っていく。
    少女:区切りを変えると、訳がかわるね。
    少年:Google翻訳でリアルタイム翻訳をオンにしてると、改行を消す度に翻訳し直すから、単語の組をつくるのに対してインタラクティブで訳が変化していく。適切なチャンクに区切ることができれば、単語・表現集としても改善されるし、作業してる人間もこれをやってるうちに文の構成がつかめる。ふりがな翻訳と比べると、少しだけど進化してる。働きがけにダイレクトに反応が返ってくるのは、人が周囲の環境を学習していく基本パターンだから、楽しいし頭に残りやすい。



    (翻訳エンジンと書くこと)

    少女:インタラクティブな単語帳かあ。飽きるかもしれないけど、おもしろいね。
    少年:あと書く方だけど。
    少女:さすがにそれは無理なんじゃ……。知らない言葉だよね?
    少年:合わせ技になるし、楽ではないけど。翻訳エンジンの出力をそのまま使うわけじゃないから、これは日本語→英語でもなんとかなる。分かりやすいから、これを例にしようか。
    少女:うん。
    少年:まず

    1.原文を翻訳エンジンにコピペして機械試訳をつくる。

    短いフレーズに区切って翻訳する方が、後で都合がいい。長い文章は適当なところで改行を入れて区切っておけば、丸ごとコピペして翻訳させても、Google翻訳だと区切って訳してくれる。
    少女:ちょっとへんな訳じゃない?
    少年:うん。でも翻訳エンジンから成果品を得るつもりじゃないから、次へ進む手がかりが得られればいいんだ。
    少女:次の手がかりって?
    少年:翻訳結果を使って、今度は、

    2.検索エンジンで検索して使えそうな例文を採集する。

    要は、実際に使われてる外国語の文を探して借りる。
    少女:それで、翻訳エンジンの出力を使わないって言ったのね。
    少年:実際の作業は、翻訳エンジンの訳文欄で、機械の訳文を選択して右クリックで検索する。言語によっては、それぞれの国・地域版のGoogleで検索した方がいいかも。インターネット上の表現なんて信用できないって人はGoogle booksで検索すればいい。専門的な分野ならGoogle Scholarを使ってもいい。
    少女:うまく見つからないわ。
    少年:そういう時はその表現が使われてない/使用されることが少ないせいかもしれない。
    少女:こういう時はどうするの?知らない言語で、よく使われてる表現が分からないから翻訳エンジンを使ったんだよ。
    少年:検索エンジンに渡す単語数が多いほどヒットしにくくなるから、まずは検索につかう単語を減らして再度検索する。今時の検索エンジンは、類義語やら表現のゆれにも対処してくれるから、翻訳エンジンの結果をそのまま流し込んでも、以前よりずっとヒントになりそうなものを見つけてくれるようになったんだけど。
    少女:いくらやっても検索エンジンの訳じゃ見つからなくて、手がかりにすらならない場合は?
    少年:そういう時は検索の基本に戻る。
    少女:基本って?
    少年:検索結果を予想する。今までのは「どんな形で現れそうか」についての予想≒翻訳エンジンの結果と考えて使ってたんだけど、他には例えばどんな場所にならありそうかとか、たとえばそのテーマについての専門書になら書いてありそうだ、とか、できれば専門事典だったらその項目の分量は専門書よりもずっと短いだろうとか。そこまで思いつけば分野を絞り込むキーワードを考えて(このヒントを得るには日本語の専門書や論文が使える)、Google ScholarやGoogle booksの出番になる。キーワード2~3個といっしょに「encyclopedia」とか「dictionary」とか「handobook」というキーワードも入れてGoogle booksで検索すれば、知りたいことが事典の項目として載っている本を見つけることができるかもしれない。Google Booksは出版年代を指定できるのも便利だ。
    少女:うん。
    少年:逆に最初に辞書を引いた場合も、辞書の記載や例文を手がかりに検索した方がいい。
    少女:なんで?
    少年:辞書はキホン間違ってる。というのは言い過ぎかな?
    少女:うん、言い過ぎ。
    少年:じゃあ言い直す。あれだけの量の情報を扱ってまとめようとしたら、ミスが混ざることは当然ある。これでいい? で、例文がある程度たまったら、

    3.検索で拾った表現を組み合わせて人間試訳をつくる。

    それから、

    4.人間試訳を、翻訳エンジンで逆方向に翻訳して確認+検索エンジンで検索して、もう一度確認する。

    実際には、3.と4.の間を(時には2.まで戻って)何度も往復することになるけど。
    少女:けっこう大変だね。
    少年:うん。素材として吟味しつついろんなものを読まなくちゃならないし、文法や語彙の情報もかき集めつつ、書いたり直したりを繰り返すから、結果的には相当なハード・トレーニングになる。
    少女:猟師さんが子どもをいきなり水に叩き込んで泳ぎを覚えさせるみたいなやり方ね。
    少年:今のは日本語を英語にする例だったけど、読めない外国語を相手にするの場合は、翻訳エンジンの出力や検索エンジンが見つけてきたりした文章・表現を自分でぱっと評価できないから、さっき読みのところでつかったインタラクティブな対訳表をつくるメソッドなんかも動員して、単語の意味を押さえつつ、文の構成ルールを帰納的に抽出していく。
    少女:そんなこと、どうやってやるの?
    少年:研究室科学でいう予備実験みたいなことをする。英語は読めるとして、知らないロシア語を書こうとしてるとするよ。一番楽なのは、Google翻訳のリアルタイム翻訳をシミュレーターに見立てるやり方。ロシア語→英語にセットして、ロシア語の欄に、見つけてきたロシア語例文を入れて、単語をひとつずつ足したり消したり入れ替えたりして、英訳がどう変化していくのか観察して仮説を立てる。
    少女:うわあ。
    少年:文法学者になりたい訳じゃないから、あらゆる場合にどうなるかを試す訳じゃないよ。もちろん文法書や辞書も使いまくって、検討する選択肢の数はなるべく減らす。こんなに文法書(の索引)や辞書のありがたみが分かることって他にない。でもラテン語に冠詞がないことや、第二次子音推移があって英語のtがドイツ語のzにあたることくらいは百科事典でもわかる。もっと詳しい情報が必要なら『ヨーロッパの言語 (言語学大辞典セレクション)』や『世界言語概説』を見る。すべての言語の文法書を手元におくのは非現実的だし。
    少女:それはそうね。
    少年:仮説がある程度固まってきたら、そういう用例があるかを検索して、検証に回す。ヘトヘトになるけど、調べたことと自分の思考プロセスをきちんと記録に残していくと、短期間でもかなりの実力がつくと思う。



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