読書猿ブログで2012年上半期(1~6月)に売れた書籍を紹介しながら、その時書かなかった(書き控えた)ことなどまじえて過去記事を回顧/紹介する。




    1位 ぎりぎり合格への論文マニュアル


    ぎりぎり合格への論文マニュアル (平凡社新書)ぎりぎり合格への論文マニュアル (平凡社新書)
    (2001/09)
    山内 志朗

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    こう言い換えろ→論文に死んでも書いてはいけない言葉30 読書猿Classic: between / beyond readers こう言い換えろ→論文に死んでも書いてはいけない言葉30 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。
     このブログでもっとも多くつぶやかれた記事。卒論の提出時期直前だったせいか、提出する側の人だけでなく、受け取る側の人のリツイートも多かった。
     だがこの本は、提出ぎりぎりに読むよりも、論文を書き始める前に読むのが望ましい。
     なにしろ「論文とは何か」あたりからはじめる類書と異なり、「テーマが決まらない→興味があることなんて特に無い」という論文執筆のはるか手前からはじめて、提出というゴール(あるいはコースアウト)すれすれのところまで取り扱っているのだ。
     テーマの煮詰め方、文献の掘り方、段取りの組み方はもとより、なぜニュースで取り上げられるようなホットな話題を取り上げてはいけないか(なぜ10年早いのか)、なぜ一般常識を注に書いてはならないのか、なぜこのタイトルは読む前からダメそうだと思わせるのか、なぜこの書き出しはどうせ一冊本を読んでまとめて終わりであろうことを予感させるのか、なぜ論文をすべてゴシック体で印刷して提出するのは問題外なのか:/〈〉《》[]“”!?*※☆・・・という記号はどこでどう使うのか(使わない方がいいのか)等々……まで詳解して、たったの200と数頁。





    2位 図書館に訊け!


    図書館に訊け! (ちくま新書)図書館に訊け! (ちくま新書)
    (2004/08/06)
    井上 真琴

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    4位 本を読む本


    本を読む本 (講談社学術文庫)本を読む本 (講談社学術文庫)
    (1997/10/09)
    J・モーティマー・アドラー、V・チャールズ・ドーレン 他

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    5位 外国語上達法


    外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)
    (1986/01/20)
    千野 栄一

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    6位 人はいかに学ぶか―日常的認知の世界


    人はいかに学ぶか―日常的認知の世界 (中公新書)人はいかに学ぶか―日常的認知の世界 (中公新書)
    (1989/01)
    稲垣 佳世子、波多野 誼余夫 他

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    よく学ぶための7冊/学習技術のシルバーリングス 読書猿Classic: between / beyond readers よく学ぶための7冊/学習技術のシルバーリングス 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    から4冊エントリー。

     『図書館に訊け! 』と『本を読む本』は他にも何度か登場している。元ネタになったり前提になっている記事は他にもあるほどの常連(繰り返しプッシュしてきた甲斐があった)。
     『本を読む本』は能動的読者に、『図書館に訊け! 』は能動的図書館ユーザーになるためのMUSTアイテム。
     今「よく読むためのn冊」というのを書いているけれど(書き上がるのはだいぶ先だと思う)、〈もう少し先のこと〉を書く予定なので、この2冊は出てこない。

     あと「図書館に訊け」というタイトルで思うだしたのは、実はこの写真。

    Ask Here-bw
    (クリックで拡大)

     このブログで時々「図書館となら、できること」というお話を書いている。書きながらいつも思っていることだけど、レファレンスワークとかレファレンスサービスとか、何をすることなのか、何をしてくれるのか、いい加減分かりにくい。メインキャラの司書のきまり文句「何かお探しですか?」は、その分かりにくさに対する自分なりの応答のつもりだったのだけど、この写真のレファレンスカウンターの表示はあっけらかんとして直裁だ。

     『人はいかに学ぶか』は、〈知識を学ぶこと〉と〈自分で考えること〉(そして〈知識を発展させていくこと〉)をバラバラに扱いたがる向きに対して、両者がどのように密接につながるのかを考える《適応的熟達化》の話とか、もっといろいろ書きたいけれど別の機会に。
     この本が面白かった人には、学習の認知科学本として『授業が変わる―認知心理学と教育実践が手を結ぶとき』『授業を変える―認知心理学のさらなる挑戦』それから『学習科学ハンドブック』を。

     『外国語上達法』は少しずついろんなところに出てくるけれど、一冊をとりあげたのはこの記事が初。実は岩波新書の外国語ものでは、もひとつ古い渡辺照宏『外国語の学び方』 (岩波新書 青版 462)の方が、自分にとっては馴染み深い。
     これもネタの宝庫だけれど、例えばこんなくだり。

     「外国語の勉強でいちばん大切なことはなんといっても慣れです。言葉というものはもともと生命がある活動的なものですから、その生命の流れに乗り、自然の動きに従うことが肝要です。できるだけたくさん聞き、話し、読み、書く、ということによってそういう流れや動きを身につけることができます。しかし短い期間のうちに効果をあげる方法がひとつあります。それは暗記です。
     暗記といっても単語や熟語などをひとつずつ暗記することも大切ですし、中には大きな辞典を1ページずつ暗記する人もいます。しかし誰にでもすぐできることで、目に見えて効果が上がるのは、まとまった文章を暗記することです。」
     「ヨーロッパの学校では今でも暗記をよくやらせるように聞いています。東洋人でも時刻の古典の長い文章をすらすら言える人になんにんも会いました。スタンダールの小説『赤と黒』の主人公ジュリアン・ソレルが旧新約聖書のラテン語版のどこでもすらすら言えるように暗記していたことはレナール夫人との出会いの最初の場面に出てきますが、古典を1冊そっくり暗記している人は今でもあまり珍しくないと思います。」
     「本を暗記するなんて面倒くさい、廻り道だ、そんな閑はない、とあなたは言うかも知れません。ところが、事実はその逆で、これほど手っ取り早い方法はほかにありません。短い期間のうちに効果をあげるにはこれに限ります。
     私自身の経験でも、さびついた語学を急場の用に立てるために、短編小説なり短い論文なりを丸暗記することにしています。かなり前のことですがしばらくご無沙汰していたフランス語に用があったので、手許にあったドーテの『風車小屋だより』の中から「アルルの女」をえらんで暗記にかかりました。ぜんぶで10ページたらずですが、最初の日はせいぜい10行ぐらいでとめておきました。第2日に前日の分を復習してみると、もう忘れかけたところがある。それを補習して得心がいってからその日の分として新しく5行先を覚える。第3日にはその15行を確かめてから新しく5行先を覚える。こうやって4~5日かかって丸1ページ分楽に言えるようになるともうしめたものです。それでも先を急がずに復習をていねいにやる。こうしているうちに加速度が出てますます早く楽に覚えられるようになる。こうして短篇ひとつを丸暗記できる頃には語学の力も大分ついて、他の本も楽に読めるようになります。書物の暗記ということは、経験のない人が想像するほど面倒なものでもなく厭なものでもありません。ただ始めに取りつくまでがおっくうなだけです。」




    3位 自省録

    この自伝がすごい/よく生きるためのリベラルアーツ書10冊 読書猿Classic: between / beyond readers この自伝がすごい/よく生きるためのリベラルアーツ書10冊 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。
     自伝をプッシュした記事で、選んだ書物はどれも自信があるが、記事のクオリティが追いついてなかった残念な回。とくにマキノ雅弘には謝りたい。あとレヴィ・ストロース『悲しき熱帯』は、宮本常一『家郷の訓』(岩波文庫 青 164-2)に差し替えたい。


    家郷の訓 (岩波文庫 青 164-2)家郷の訓 (岩波文庫 青 164-2)
    (1984/07/16)
    宮本 常一

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     「ストア派は認知療法の思想的源泉である」について追記。
     アーロン・ベック以来、認知療法家がその基本コンセプトを説明するのにストア派の哲学者(元奴隷)エピクテトスの「提要」(マルクス・アウレーリウス(現役皇帝)も愛読してた)にみえる「人を悩ませるのは、事柄そのものではなくて、事柄に関する考えである」がよく引用される。






    7位 American Accent Training


    American Accent Training (American Accent Traning)American Accent Training (American Accent Traning)
    (2000/09)
    Ann Cook

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    リスニング、あと何が足りないか? 読書猿Classic: between / beyond readers リスニング、あと何が足りないか? 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    読書猿Classic 叫ぶ英会話!音読が想像以上に凄い6つの理由 Read Aloud!! 読書猿Classic  叫ぶ英会話!音読が想像以上に凄い6つの理由 Read Aloud!! このエントリーをはてなブックマークに追加 
    などに登場。
     発音に関する最終兵器だが、武器は他にもいろいろある→リスニング、あと何が足りないか?


    8位 これからレポート・卒論を書く若者のために


    これからレポート・卒論を書く若者のためにこれからレポート・卒論を書く若者のために
    (2007/05/09)
    酒井 聡樹

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    11位 日本語の作文技術


    日本語の作文技術 (朝日文庫)日本語の作文技術 (朝日文庫)
    (1982/01)
    本多 勝一

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    驚くほど違う→あなたの文章を最適化するたった4つのルール 読書猿Classic: between / beyond readers 驚くほど違う→あなたの文章を最適化するたった4つのルール 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。





    9位 計算がらくになる実用数学


    計算がらくになる実用数学計算がらくになる実用数学
    (1963/10)
    波多 朝

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    10位  速算術入門


    速算術入門速算術入門
    (1974/06)
    波多 朝

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    10秒で覚えられて計算がバツグンにくなる方法 読書猿Classic: between / beyond readers 10秒で覚えられて計算がバツグンにくなる方法 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    「足して9になる数字」が四則演算すべての検算を驚くほど加する理由 読書猿Classic: between / beyond readers 「足して9になる数字」が四則演算すべての検算を驚くほど加する理由 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。
     この手のリストには必ず上位に上がってくる、このブログ1,2のロングセラー。
     だが、あえて今回は
    計算ミスと計算時間を40%減らす掛け算のやり方 読書猿Classic: between / beyond readers 計算ミスと計算時間を40%減らす掛け算のやり方 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加
    に登場した


    大学入試・センター突破計算力トレーニング 上 新訂版大学入試・センター突破計算力トレーニング 上 新訂版
    (2010/12)
    山崎 亘

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    大学入試・センター突破計算力トレーニング 下 新訂版大学入試・センター突破計算力トレーニング 下 新訂版
    (2011/10)
    山崎 亘

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    の方をプッシュする。
     こちらは本当に計算の苦手な人が苦手な人のために書いた、計算中の作動記憶の消費を抑え計算プロセスに割くことのできる認知資源を確保する基本技を揃えた計算本。速いだけでなく、楽できるのがミソ。






    12位 創造の方法学


    創造の方法学 (講談社現代新書 553)創造の方法学 (講談社現代新書 553)
    (1979/09/18)
    高根 正昭

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    読書猿が中学生に本気で本を薦めてみた 読書猿Classic: between / beyond readers 読書猿が中学生に本気で本を薦めてみた 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。


    13位 知的複眼思考法


    知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)
    (2002/05/20)
    苅谷 剛彦

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    上の『創造の方法学』と併せて、
    比較三原則/たちどころに「ものがみえる」ようになるメソッド 読書猿Classic: between / beyond readers 比較三原則/たちどころに「ものがみえる」ようになるメソッド 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加
    「頭の良くなる本を教えて下さい!」「ごめんなさい」 読書猿Classic: between / beyond readers 「頭の良くなる本を教えて下さい!」「ごめんなさい」 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加
    に登場。

     
     『創造の方法学』と『知的複眼思考法』は、社会についての〈素朴概念〉を脱ぎ捨てる準備運動に最適。
     これをやっとかないと、社会科学の本を読んでも、トンデモ神話や宿命論のネタを仕込むだけに終わってしまう。
     そういえば『知的複眼思考法』は巻末で『創造の方法学』を推薦書に上げているけれど、推薦書には『
    パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』やロラン・バルト『神話作用』なども並んでいた。

     リストに一冊追加するなら、

     
    脱常識の社会学―社会の読み方入門脱常識の社会学―社会の読み方入門
    (1992/03/13)
    ランドル コリンズ

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    14位 理科系のためのかならず書ける英語論文


    理科系のためのかならず書ける英語論文―論文作成用ヘルプ・シート付き理科系のためのかならず書ける英語論文―論文作成用ヘルプ・シート付き
    (2006/03)
    藤野 輝雄

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    論文に何を書くべきか→これだけは埋めろ→論文作成穴埋めシート 読書猿Classic: between / beyond readers 論文に何を書くべきか→これだけは埋めろ→論文作成穴埋めシート 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。
     この記事のキモは「穴埋めシート」ではなく、この図の方。

    proof3.jpg
    (クリックで拡大)





    15位 いかにして問題をとくか


    いかにして問題をとくかいかにして問題をとくか
    (1975/04/01)
    G. ポリア

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    ポリアの名著『いかにして問題をとくか』のチートシートをつくってみた 読書猿Classic: between / beyond readers ポリアの名著『いかにして問題をとくか』のチートシートをつくってみた 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    ポリアだけじゃない問題解決の考え方/勘どころを教える数学の11冊 読書猿Classic: between / beyond readers ポリアだけじゃない問題解決の考え方/勘どころを教える数学の11冊 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。


    16位 「達人」の英語学習法


    「達人」の英語学習法―データが語る効果的な外国語習得法とは「達人」の英語学習法―データが語る効果的な外国語習得法とは
    (2007/11/23)
    竹内 理

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    97冊から選りすぐり→外国語学習の成功者たちがやったことまとめ 読書猿Classic: between / beyond readers 97冊から選りすぐり→外国語学習の成功者たちがやったことまとめ 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。
     この記事で取り上げたのは、同じ著者の『より良い外国語学習法を求めて―外国語学習成功者の研究』だったのだけれど、「上の本の内容を、英語に絞り、読みやすくしたもの」とコメントをつけた『「達人」の英語学習法』がランクイン。



    17位 小・中・高の計算がまるごとできる―足し算・引き算から微分・積分まで


    小・中・高の計算がまるごとできる―足し算・引き算から微分・積分まで小・中・高の計算がまるごとできる―足し算・引き算から微分・積分まで
    (2005/12)
    間地 秀三

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    読書猿Classic 数学にはネイティブはいない:「語学としての数学」完全攻略=風景+写経アプローチ 読書猿Classic  数学にはネイティブはいない:「語学としての数学」完全攻略=風景+写経アプローチ このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。
     随分昔の記事だけど、
    凡人が数学を語学として学ぶ具体的な手続きを説明する/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers 凡人が数学を語学として学ぶ具体的な手続きを説明する/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加
    に引きずられて参照者が増えた。

     名著に走らず、バカにできるくらい簡単な〈解ける本〉を一冊やった方が、結局は名著の方もさっさと読めるようになる。




    18位 薬袋式英単語暗記法―かならず覚えられる


    薬袋式英単語暗記法―かならず覚えられる薬袋式英単語暗記法―かならず覚えられる
    (2004/11)
    薬袋 善郎

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    1年の計はこれでいく→記憶の定着度を4倍にする〈記憶工程表〉の作り方 読書猿Classic: between / beyond readers 1年の計はこれでいく→記憶の定着度を4倍にする〈記憶工程表〉の作り方 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。

     〈かならず覚えられる〉というのは、すごい記憶技法を使っているのではなく、記憶のメンテナンスをちゃんとやることが大事、という話。






    19位 Cambridge Latin Course


    Cambridge Latin Course Unit 1 Student's Text North American edition (North American Cambridge Latin Course)Cambridge Latin Course Unit 1 Student's Text North American edition (North American Cambridge Latin Course)
    (2001/02/05)
    North American Cambridge Classics Project

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    言葉は静かに街に眠る/世界一素敵なラテン語の授業 読書猿Classic: between / beyond readers 言葉は静かに街に眠る/世界一素敵なラテン語の授業 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。
     この本の方は、世界一(いろんな意味で)楽しいラテン語教科書。
     邦訳は、今はなき泰流社から『ケンブリッジラテン語講座』というタイトルで、原書は5冊あるのを1冊にまとめた邦訳が出ていた。


    ケンブリッジラテン語講座ケンブリッジラテン語講座
    (1981/02)
    関野 清二

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     古代ローマのレアリアねたも盛り沢山というのもあるが、例文が(いろんな意味で)ひどいところが大きい。
     ずっと以前にメルマガの読書猿で紹介したのをコピペする。

     よい本だが高い。高いだけじゃなくて、思わず例文にのめり込んでしまうひ
    どさである。三年次までは作った例文が主体で、四年、五年次になると古典文
    が登場するのだが、その作った例文が。
     日本で言えば、中学校の英語の教科書を思い出せばだいたい内容は想像でき
    ると思う。父はカエキリウス(両替商)、母はメテルラ、息子はクゥイーント
    ゥスである。奴隷がクレーメーンスで、料理人はグルミオー、犬がケルベルス
    である。

    >グルミオー:私は料理人である。私は食物を料理する。
    >カエキリウス:私は両替商である。私はお金を持っている。
    >パンタガトゥス:私は理髪師である。私は髭を剃る。
    >シュパークス:私は奴隷商人である。私は奴隷を売る。
    >詩人:私は詩人である。私は詩を朗詠する。
    >クゥイーントゥス:あなたは何を料理していますか
    >グルミオー:私は食物を料理しています。
    >クゥイーントゥス:あなたは何を持っていますか。
    >カエキリウス:私はお金を持っています。
    >クゥイーントゥス:あなたは何を剃っていますか。
    >パンタガトゥス:私は髭を剃っている。
    >クゥイーントゥス:あなたは何を売りますか。
    >シュパークス:私は奴隷を売ります。

     奴隷のクレーメーンスは勇敢で、主人一家を助けたりして、とうとう解放さ
    れて自由民になったりするが、同じく奴隷のコックであるグルミオーはどう
    か。

     料理を運んだグルミー。主人のカエキリウスと客人は女奴隷の歌を鑑賞しな
    がらその料理を食べて、やがて寝てしまう。
     
    >グルミオーが食堂に入ってきて、そして、あたりを見回す。
    >料理人は食物が食卓の上にあるのを見る。
    >グルミオーは食物を食べ、ブドウ酒を飲む!
    >カエキリウスはグルミオーを見ていない。
    >料理人は、食堂で、堂々と食べている。
    >料理人は女奴隷を見つめる。
    >女奴隷はグルミオーを喜ばす。
    >グルミオーは女奴隷を喜ばす。
    >グルミオーはこの上なく幸せである。

     しょうがないコックである。

     カエキリウスが床屋にやってくると、床屋は老人の髭を剃っている。そこに
    詩人がやってきて詩を朗読する。

    >カエキリウスは笑うが、理髪師は笑わない。
    >詩は稚拙なものである。
    >理髪師は怒る。
    >「悪党め!悪党め!」とパンタガトゥスは叫ぶ。
    >老人はおびえている。
    >理髪師は髭を剃らない。
    >理髪師は老人を切る。
    >おびただしい血が流れる。

     しょうがない床屋である。

    >ローマ人は言う。「われわれはローマ人は建築家である。われわれは道路や橋
    >を建てる。」
    >「われわれはローマ人は農夫である。われわれは最良の農地をもっている。」
    >ギリシャ人は言う。「われわれギリシャ人は彫刻家である。われわれは美しい
    >立像を造る。」
    >「われわれギリシャ人は画家である。われわれは絵を描く。」
    >ローマ人は言う。「お前たちギリシャ人は怠惰だ。お前たちはいつも役者を見
    >ている。」
    >ギリシャ人は言う。「お前たちローマ人は野蛮だ。お前たちはいつも戦ってい
    >る。」
    >ローマ人は言う。「われわれは賢い。われわれは役立つものを作る。」
    >ギリシャ人は言う。「われわれはお前たちより賢い。われわれギリシャ人は
    >ローマ人を教えている。」

     しょうがない連中である。

     写していると止まらないが、因に、舞台はポンペイで、例の火山の噴火で、最後にはみんな死ぬ。






    20位 私の辞書


    watashi_no_jisho.jpg私の辞書 (1973年)
    (1973)
    小林 英夫

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    図書館となら、できること番外編/マイナー言語のBookishな学び方 読書猿Classic: between / beyond readers 図書館となら、できること番外編/マイナー言語のBookishな学び方 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 
    に登場。

     丸善のPR誌で『学鐙』というのがある。
     古くからあって、それこそ最初の頃は漱石が書いてたりするのだが、そこでの連載で、各国語の専門家が自分の辞書自慢をするという連載が、いつのまにか辞典や語学参考書を紹介する有意義なものに変化した。
     マイナー言語だと他に情報がないことも多いから、辞書だけじゃなくて語学書一般を紹介してあって便利。
     もともと辞書自慢なので、バルザックの『パリ看板小辞典』だとか、露伴の『当世人名事典』(「三助」「やど六」「おかめ」といった、普通名詞化した人名の語源由来を探るというもの)を紹介する回や、なぜ蝶をbutterfly(バターのハエ?)というのか語源辞典を使って追跡し、とうとう「魔女は蝶に姿を変えて、ミルクやバターを盗み食いする」という東欧の古潭にまで行き着く回もある(何だ、やっぱり〈牛乳魔女〉なんじゃないか)。

    (参考)
    オランダや低地ドイツでは、魔女と言えば牛乳魔女のことだった/アーレント=シュルテ『魔女にされた女性たち』 読書猿Classic: between / beyond readers オランダや低地ドイツでは、魔女と言えば牛乳魔女のことだった/アーレント=シュルテ『魔女にされた女性たち』 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加


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