読めないとはこういうこと→勉強できない子をあぶりだす5つの質問 読書猿Classic: between / beyond readers 読めないとはこういうこと→勉強できない子をあぶりだす5つの質問 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加
    の続きというか、補遺。



     英単語を覚えるのに努力や工夫をする人は多い。


     しかし外国語の能力はいくら努力しても、その人の母語の能力を超えることはない。
     日本語が貧しい日本人の、英語は、フランス語は、貧しいままである。


     ここまではいい。


     しかし英語の能力を高めると称する、教材その他は一産業をなすほどあり、メソッドやストラテジー、果てはブログ記事は腐るほどあるというのに、日本語のそれははるかに少ない。
     通学時間帯の電車で、英単語本を開く学生のいない車両に乗り合わせたことはないが、老若男女をあわせても日本語の単語を覚えている人を公共の場で見たことがない。


     ちょっとなめすぎじゃないか、日本語を。


     ある言語の上級者と初級者を比べると、当然そのボキャブラリーには質・量ともに大きなった差がある。
     それは言語の運用能力を、かなりの程度、反映している。
     単語を覚えただけではその言語を上手く使えるようになるわけではないが、単語を知らない人がある言語を上手く使えるはずがない。



    あなたの日本語のボキャブラリーはどれだけか?


     一般論はこのぐらいにして、具体的にやろう。

     まずはあなたの、日本語のボキャブラリー・サイズを計ろう。
     
     ネットでやるならここ ↓
    「語彙数推定テスト」( NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
    http://www.kecl.ntt.co.jp/icl/lirg/resources/goitokusei/goi-test.html



     ネットやパソコンを使わず、辞書だけでやるには
    (A)辞書を用いて語彙数を求める方法で最も単純な方法は、辞書中の全単語を1つ1つ知っているかどうかをテストする


    しかし、この方法ではあまりにも時間も労力もかかりすぎる(へとへとになる)ので、


    (B)辞書からランダムに単語を選び、選ばれた少数の単語について、1つ1つ知っているかどうかをテストする。
     そして知っていると答えた単語のセット中における比率を求め、その比率を辞書の単語数にかけ算して語彙数を推定する。


     細かい注意点としては、
    (B-1) 古語などを含まない辞書をつかう。なお上のリンクの「語彙数推定テスト」には新明解国語辞典が使われている。
    (B-2) どうやって単語をランダムに選ぶか。乱数表を使ったり、電子化された辞書データがあるならパソコンを再び持ちだしてもいいが、簡単なやり方としては、たとえば10ページごとに最初の見出し語を選んだりする。
    (B-3) ランダムに選んだ単語が100あり、そのうち20の単語をテストの結果「わかった」としたら、その辞書の総語数の20%が推定されるボキャブラリー・サイズということになる。
     たとえば新明解国語辞典は約7万語の総語数だから、ランダム抽出された100語のうち20語分かれば、7万×(20÷100)=14000語レベルのボキャブラリーということになる。


     この間の記事で紹介した岸本裕史の本では、おそらく計算を簡単にするために、最初から国語辞典の収録語数の1000分の1だけ単語をランダムに選ぶやり方をしている。
     つまり約7万語の総語数の国語辞典なら70語。そして70語のうち分かった単語数にそのまま1000をかければ、そのままボキャブラリー・サイズが推計される、というわけだ。


     もちろん、この方法は日本語/日本語辞典に限らず使える(もともと英語などで用いられてきた方法である)。




     上の語彙数推定テストでは、だいたいの目安として、宮島達夫他 編『図説日本語 : グラフで見ることばの姿』(角川書店, 1982)から次の表を引いている。

    小学生レベル: 5千~2万語
    中学生レベル: 2万~4万語
    高校生レベル: 4万~4万5千語
    大学生レベル: 4万5千~5万語



    図説日本語―グラフで見ることばの姿 (角川小辞典)図説日本語―グラフで見ることばの姿 (角川小辞典)
    (1982/02)
    宮島 達夫、 他

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     どうやらこれも『広辞林』の見出し語75000語からサンプリングした阪本一郎の1938年の調査が元になっているようで


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     横軸は年齢で6歳から20歳(満年月、半年刻み)、タテ軸はその年齢時の平均の理解語数、ひげは標準偏差である。
     語彙量の差は、年齢が進み語彙が増えるほど広がっていく。
     20歳では、男子の最小が15,800語、最大が86,600語、女子の最小が19,700語、最大が71,300語だった。




    どうやってボキャブラリーを増やしているか?


     現在の日本の子どもの90%以上が、小学校に入る前に、基本的な平仮名 (清濁音) をすべて読むことができるようになる。

     英語話者についていえば、彼らもまた就学時前に1〜2万語の語彙を習得しているという。



     では学校に通う年齢の子どもは、その後どうやって語彙を習得していくのか。



     当然学校で学ぶことによってだろうと考えたくなるが、学校で直接習う言葉の量は、平均的大人のボキャブラリーサイズとの差を日割り計算して算出される、子供たちが1日あたりに獲得しているはずの新語の数からすると、あまりに少ない。

     学校の重要さは、量とは別のところにある。

     

     では学校でないとすれば、どこか?



     日常会話やテレビなどのメディアを通じて、浴びることばのシャワーが次に目が向くところである。

     しかし、これは英語圏での研究だが、大卒の大人が友人や家族といった気のおけない相手と交わす会話で用いている語彙の難易度は、幼児向けの本と同程度のものでしかないことが分かっている。

     テレビ番組もまた、ゴールデンタイムのショー番組で使われている語彙は、大人向けの番組も子ども向けの番組も、 ともに子ども向けの本よりも容易なものに限られる。

     日常会話もやテレビも、言語刺激としては量的に巨大だが、ことにボキャブラリーを増加させるような、新たな語彙に子どもが接する機会としては、あまり期待できないことが分かる。



     そこで考えられるのは、子どもが自発的に本や雑誌など読んで、新たな語彙を獲得している可能性である。

     これも英語についての研究だが、Nagyらの推計(Nagy&Herman 1987)では、1日25分の読書、1分あたり200語のスピードで年間200日読むと仮定すれば、子どもは年間で約100万語に接していることになる。

    Nagy, W.E., Herman, P. Breadth and depth of vocabulary knowledge: Implications for acquisition and instruction. in McKeown, M.G., Curtis, M.E. The nature of vocabulary acquisition. Hillsdale, NJ,Lawrence Erlbaum Associates.

     こうして読まれるテキストの中に1.5%から3%の新奇な語が含まれているとすれば、子ども達は年に15000〜30000語の新しい語に接することになる。

     Swanborn, de Glopper (1999) らが既存研究をメタ分析した推計では、未知語が現れる割合が3%以下の場合に(苦労なく推測できる)、テキストから未知語を習得する割合が最大になり、その場合に出会った未知語の15%を獲得することができる。

    Swanborn, M.S.L., de Glopper, K. (1999). Incidental word learning while reading: A meta-analysis. Review of Educational Research, 69,261-285.


     子供たちが年間15000〜30000語の新しい語に接しているのなら、最大で年に2250〜4500語、1日になおすと6〜12語/日を、自由な読書から習得することになる。

     もっともこの試算は、すべてを高く見積もったものである。8〜28週に渡りアメリカの5年生について放課後の活動を調べたAnderson,Wilson, Fielding (1988)は、1日に20分以上本を読む者は全体の10%に過ぎなかったと報告している。

    Anderson, R.C., Wilson, P.T., Fielding, L.G. (1988). Growth in reading and how children spend their time outside of school. Reading Research Quarterly,3, 285-303.




     ここで日本語での事例として、先に触れた岸本裕史の調査を紹介しよう。

     岸本は、小学1年生と6年生に、先に述べた国語辞典を使った簡易なボキャブラリー・サイズ・テストを行い、あわせて読書量や読書スピードを調べた。

     ある年齢の人々が平均してどれくらいのボキャブラリーを持っているか、といった文献はあるが、能力別に層化してボキャブラリー・サイズの大きさを比較したものは、他ではあまり見ないので貴重である。

     結果が次の表だが、成績レベルの最上位グループは1年につき5000語を習得した計算となる。

    shougaku-goi1.jpg


    shougaku-goi2.jpg


     語彙数と読書量の相関もさることながら、小学1年の時には2000語から7000語であった語彙数の差が、6年時には8000語から37000語と大きく開いている。



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