前回の記事で「誰が、どんな数学を、どのように使っているか」の表がクリックしても大きくならない、見えない、見たい、なんとかしろ、という話があったので、それを。

     Hal Saundersの書物When Are We Ever Gonna Have to Use This?にある


    When Are We Ever Gonna Have to Use This?When Are We Ever Gonna Have to Use This?
    (1996/01)
    Hal Saunders

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    「100の職業人に聞きました、あなたが仕事で使う数学はどんなん?」をまとめた表をそのままスキャンして貼り付けるのもどうかと思ったので、これを元に、より多くの数学のスキル/知識を使う職業から順にソートして並べてみた。
     
     Saundersは、職業人に使われている数学を60のトピックにまとめているが、これについても、より多くの職業で使われるものから順に並べた。
     
     
     job-math-table.jpg
    (クリックで拡大)


     元々この本は、教科書に頻出するあまりに非現実的な応用問題と、それにしらけている生徒と、それを見ないことにしている教師とに耐えかねた著者が、教室を飛び出し、働いている人が実際に使っている数学は何なのかを聞き出すべくインタビューを繰り返してつくったものである。
     この本のほとんどのページは、本のタイトルに掲げられた「こんなものいつ使うんだよ?」という、繰り返し生徒から湧き上がる質問への解答として、職業人のインタビューから抜粋された何百もの使用例(具体的な数値入り)で埋められている。
     
     この書の教育的目的は以上のとおり明らかだが、あらゆる道具が悪用可能なように(「人類が作ってきたものというのは全て武器なんですね。例えばアイロンで人を殺すこともできるわけです」(豊田有恒))、この表ももちろん、作られたのとは別の用途に用いることもできる。
     たとえば「ぼくはディスク・ジョッキーになるつもりだから、暗算とコンピュータだけでいいんだ」と方程式を勉強しない言い訳をこの表から調達することだってできる。
     
     しかしこの表は職業生活における数学の利用実態を示しているが、その職に就くために必要な数学を網羅してはいない。
     わかりやすい例で言うなら、医者(内科医)は毎日の医療行為に微分積分を必要としないが、医者になる過程で、たとえば入学試験をパスするために、微分積分の問題が解くことが必要になる。
     
     加えていえば、Saundersが注記するように、同じ職業でもそれに就く個人の数学のレベルは様々である。
     たとえば、もともと数学の得意な弁護士は、テクノロジー関連の仕事をより多く引き受けるかもしれず、そうなれば数学の苦手な弁護士よりも、仕事に使う数学に挙げられるものが多くなるだろう。
     こうして同じ職業でも、数学の利用の程度や必要の度合いは異ってくるだろうから、よく使う職業/よく使われる数学の順序は、参考程度というべきだろう。職業同士を比較して(銀行のCEOよりプロゴルファーが上だとか)上だ下だと一喜一憂するのは論外である。

     最後にもう一つ。
     この表はまた、実用一辺倒で数学を学ぶ必要を説得しようという目論見の射程の短さをも示している。
     見る人によっては「こんなにもたくさんの数学が必要なのか」と感じるかも知れないが、現代社会で役に立っている数学の広がりからすれば、この表に登場する数学はあまりにも狭く小さい。
     分業の結果、我々は互いに依存しあう関係を個人的には掌握できないまでに広げることで、信じられないほど多くの営為を知らない他人にやってもらっている。
     つまるところ、この程度の数学で飯が食えて、なおかつ文明が維持できるのは、たくさんの誰かが私の知らないところで、代わりに数学していてくれるからである。
     

     なお、Saundersのインタビューはこんな小さな本では十分盛り込めなかったらしく、実用例からの練習問題が全体の半分を占める数学の教科書(新しい版は860ページもある)を作っている。下の本がそれ。


    Mathematics for the Trades: A Guided ApproachMathematics for the Trades: A Guided Approach
    (2010/01/03)
    Robert A. Carman Emeritus、Hal M. Saunders 他

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