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    少女:小さい頃、図形の証明とか得意だったけど、数式がいっぱい出るようになって数学が嫌いになった、って人、結構いますよね?

    禁煙:ええ。

    少女:前に数式は、自然言語(ことば)より簡潔に表せる表現手段なんだ、

    問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers 問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

    って禁煙さん言ってたけど、それって数式で楽になるって話ですよね?

    禁煙:あまり楽になる感じがしない?

    少女:数学で楽できたことなんてないです。

    禁煙:そうかしら。でも確かに学校だと、大変な方のやり方を教えないものね。

    少女:大変な方?

    禁煙:比較の対象がないと、どれくらい楽になったのか分かりにくいでしょ?

    少女:それはそうかもしれないけど・・・。

    禁煙:じゃあ、方程式のことは一旦忘れて、それ以前のやり方でやってみましょう。

    少女:それって薪を割ってお風呂を沸かすみたいな?

    禁煙:古風だからって、そう捨てたものじゃないのよ。学校だと他にやることが多すぎて、こんなのは回り道だって嫌われちゃうけれど。学校の数学が、整備された観光地から観光地へと渡っていくバスツアーなのだとしたら、私たちはロバに乗ってぶらぶら進みましょう。

    少女:お尻が痛くなりそうです。……まさか、つるかめ算とか?

    禁煙:期待にはこたえてあげたいけど、もう少し使い出があるかもしれないわ。

    少女:って旅人算?

    禁煙:ニコル・オレーム(c.1325-1382)って人の図を使いましょう。

    270px-Oresme.jpg


    この人は、量の関係を2次元の図で表した最初の人だと言われているわ。横軸、オレームさんに言わせると「経度」に時間を、縦軸(オレームは「緯度」という)にその時々の量を、表すの。

    Oresme_Graph.png


    少女:それってグラフの元祖ですか?

    禁煙:ええ。温度の変化なんかもグラフに描いているのだけれど、特筆すべきは、縦(「緯度」)に速度、横(「経度」)に時間を表現して、面積で距離を表したことね。運動という動的(ダイナミック)なものを、静的(スタティック)なものの代表のように思われていた平面図形に結びつけたこと、そしてこの表現法を介して運動を量的な関係として把握したのが画期的だったの。

    少女:すみません。運動をグラフで表すのって当たり前すぎて、感動が共有できないです。

    禁煙:今も、あたり前に思ってもらえるならオレームさんだって満足だと思うわ。けれど、せっかくなのでお話でおしまいにせずに、実際に使ってみましょう。

    【問題1】

     太郎君は午前8時に、毎分60mで歩いて家から学校へ向かった。寝坊した次郎君は午前8時15分に毎分150mの自転車で家を出発した。次郎君は、太郎君を途中で追い越し、太郎君よりも9分早く学校へ着いた。
    (1)次郎君が太郎君に追いついたのは何時何分か?
    (2)家から学校までの距離は何kmか?



    禁煙:太郎が進んだ距離を水色の長方形の面積で、次郎が進んだ距離をピンクの長方形の面積で表すことにするわね。


    (1)次郎君が太郎君に追いついたのは何時何分か?

    禁煙:次郎君が太郎君に追いついた時、二人が進んだ距離は等しいから?

    少女:水色の長方形とピンクの長方形が距離を表すんだから、同じ面積になったらいいんですか?

    禁煙:ええ、そうね。次郎君は太郎君より15分後にスタートしたので、15分だけずらしてピンクの長方形を描いたわ。

    oituki0.png


    少女:重なってますね。

    禁煙:重なっている部分は同じ面積なのは当然よね? だから、重なっていない部分の面積が同じになればいいの。


    水色の重なっていない部分の面積は60×15=900
    ピンクの重なっていない部分の面積は(150−60)☓?分=90×?

    900÷90=10分

    15分と10分だから、

    答)8時25分に次郎君が太郎君に追いついた。


    (2)家から学校までの距離は何kmか?

    学校までの距離は等しいから、水色の長方形とピンクの長方形は同じ面積になるはず。
    次郎は15分後にスタートしたので、15分だけずらしてピンクの長方形を描いた。
    また次郎は太郎よりも9分早くついているから、水色の長方形は9分だけ横に長い。

    oituki1.png

    水色の長方形とピンクの長方形は同じ面積になるためには、重なっていない部分の面積が同じになればよいから、
    水色の重なっていない部分の面積60×15+60×9=1440
    ピンクの重なっていない部分の面積(150−60)☓?分=90×?
    1440÷90=16分。

    次郎は分速150mで16分走って学校に着いたのだから、学校までの距離は
    150×16=2400m
    答え)2.4km


    少女:いきなり旅人算! でもこれ、案外分かりやすいかも。

    禁煙:ちなみに今の問題を方程式で解いてみると


    (1)次郎君が太郎君に追いついたのは何時何分か?
    t分後の進んだ距離
    太郎 60t
    次郎 150(t-15)

    60t=150(t-15)
    t=25
    (答え)8時25分


    (2)家から学校までの距離は何kmか?
    次郎がx分走ってで学校についたとすると、学校までの距離は150x。
    同じ距離を太郎は15+x+9分かけて着いたから

    60(15+x+9)=150x
    x=16
    学校までの距離は150×16=2400
    (答え)2.4km


    少女:うーん。確かに方程式で解くほうがコンパクトですけど。でも、方程式の何が分かりにくいかって、何をxと置くかを自分で決めないといけないじゃないですか。旅人算とか○○算って、どのパターンかが分かれば、どの数とどの数を掛けたり割ったりすればいいか、やることが全部決まるのがいいんです。

    禁煙:方程式の方が汎用性は高いけれど、その分ユーザーが考えなくてはならない部分も多いってことかしら。

    少女:こんなこと言うと、暗記算数の弊害とかって怒られそうだけど。

    禁煙:いつもどんな感じなの?

    少女:文章題の中で分からなそうなのが出てきたらx、y、z・・・と全部未知数としておいてしまって、文字が多すぎて困ったりとか。仕方なくあとから、変数の間の関係をつかって文字を減らすんですけど。

    禁煙:今の太郎次郎の問題だと、

       速度   追いついたとき      学校に着いたとき
    ================================================================
    太郎 90m/分  それまでに進んだ距離? それまでに進んだ距離?
            かかった時間?     かかった時間?
    次郎 150m/分  それまでに進んだ距離? それまでに進んだ距離?
            かかった時間?     かかった時間?

    分からないことって全部で8つあるけど、どれをxと置けばいいか分からなくて困る、全部を文字式で置こうとして困るって感じ?

    少女:そうです。さすがに8つ全部を置こうとはしませんけど。オレーム図は、分からないのがどれかに関係なく、縦軸は速度、横軸は時間って決まってるから分かりやすく思えるのかも。

    禁煙:そうね。オレーム図は、距離や速度や時間なんかの、変数の間の関係を整理してつかまえるためのツールなの。言葉だけで関係を追いかけるよりは、ずっとマシなやり方ね。つまりこれも、自然言語(ことば)より簡潔に表せる表現手段なの。方程式より自由度は低いけど、その分何をすればいいかが分かりやすいかもしれない。

    少女:うーん。

    禁煙:捕まえた後は、どの長方形と長方形が同じかを確認して、その関係を使って分からない変数を求めていくの。

    少女:じゃあ、オレーム図で整理した後、方程式を立てればいいんですか?

    禁煙:ええ、それもいいわね。方程式を立てるコツは、イコールの左右では別のものを配置できるようにすることね。いつもイコールという訳ではないけれど、イコールになる場合だってある。そして方程式を解くことは、イコールが成立するのはどんな場合なのかを見つけること。今の問題だと、(1)は、t秒後に太郎君の進んだ距離と、同じくt秒後に次郎君が進んだ距離という、二つの別のものをイコールの左右に配置したわね。t秒後に太郎君の進んだ距離と、同じくt秒後に次郎君が進んだ距離は、大抵は違うけれど、太郎君に次郎君が追いついた瞬間にはイコール。これがどんな場合かと言えば、太郎君が出発して24分後、というのが、その答えね。

    少女:えーと(2)だと、太郎君が学校まで進んだ距離と、次郎君が学校まで進んだ距離は、同じだってことですね。

    禁煙:何をxにするかをいきなり考えるというより、何と何をイコールで結ぶかからスタートして、遡って何がxになるかを考える方がやりやすいかもしれないわね。

    少女:何と何をイコールで結ぶかを考えるのに、オレーム図は使えるんだ。

    禁煙:では、もうひとつ問題。


    【問題2】
     ある牧場では、300頭の牛を放牧すると10日で草がなくなり、600頭だと4日で草がなくなります。では、500頭の牛なら何日放牧できるでしょう。ただし、牛はみな1日に食べる草の量は同じで、草は毎日、一定の割合でのびるとします。
     
     
    少女:まさかのニュートン算!? えーと、牛一頭が一日に食べる草の量をxとして、草が一日に伸びる量をyとすると、あー放牧はじめた日の草の量も分からないからzとおくと、300頭の牛を放牧すると10日で草がなくなるんだから

    (300×10)x=z+10y・・・(1)

    600頭だと4日で草がなくなるんだから

    (600×4)x=z+4y・・・(2)

    あと500頭で食べつくす日数が分からないからwとおくと

    500wx=z+wy・・・(3)

    式が3本なのに分からない変数が4つもあります。どうしよう?

    禁煙:いつも、どういうことになって困っているのか、よく分かったわ(x=1と代入するか、xを残したまま解いてwを求めてもいいのだけど)。せっかくなのでオレーム図を使うことにして、これを追いつき旅人算として解いてみましょうか。草が伸びていくかわりに、草君がスタートしてゆっくり歩いてる。それを牛300頭が追いかけていくの。

    少女:恐ろしい光景です。

    禁煙:横軸は日数でいいわね。問題は縦軸だけど、今回は草が減る(増える)速度なので、縦軸に牛の頭数を書きましょう。

    少女:300頭×10日(青色の四角)と、600頭×4日(赤色の四角)の長方形を描くんですね。

    禁煙:ええ。

    少女:これ、ダメです。300頭×10日=3000と、600×4=2400で長方形の大きさが違うから、さっきみたいなこと、できません。

    newton-p1.png



    禁煙:日数が経過した分、草が伸びている(草君が先へ進んでいる)のだからおかしくないわ。

    少女:だったら、どことどこの長方形が等しいとしたらいいんでしょう?

    禁煙:牛君たちが食べる草は、元々生えていた分と、食べ始めてから伸びた分があるわね。牛君たちが食べ始めてから伸びた分をあらわすもうひとつ長方形を重ねて書きましょう。

    少女:どうやって?

    禁煙:牛君がちょうどx頭いたら食べきれるペースで草が伸びると考えるの。300頭でも10日あれば食べきれたのだから、そのペースは200頭から100頭か50頭かわからないけれど、300頭よりは少ないわね。

    少女:じゃあ、300頭の長方形よりも低い長方形(縁なしのグリーンの長方形)を書きます。


    newton-p2.png



    禁煙:こうしておけば、食べ始めてから伸びた分はおいておいて、元々生えていた草の分だけを比べれば、300頭で10日かかった分と600頭で4日かかった分は同じはずよね?

    少女:え?え?

    禁煙:つまり縁なしのグリーンの長方形よりも、上の部分で、水色の長方形とピンクの長方形の面積が等しいの。もちろん水色とピンクが重なっている部分は、さっきと同じで、省いてもいいわね。

    水色の長方形の重なってない部分の面積=(300ーx)×(10−4)
    ピンクの長方形の重なってない部分の面積=(600−300)×4

    (600−300)×4=(300ーx)×(10−4)
    1200=6(300−x)
    1200=1800−600x
     600x=600
        x=100

    少女:結局、簡単な方程式が残りましたね。この100って、草君でしたっけ?

    禁煙:うん。草は、牛100頭がいたらちょうど食べきれるくらいのペースで生えていくのね。最後に牛500頭いたら、何日で食べつくすかを知りたいから?

    少女:さっきと同じようなオレーム図を書けばいいんですか? 500頭でy日で食べつくすとしてパープルの長方形を書きました。これも重なってないところが等しいでいいんですよね。


    newton-p3.png



    (500-300)× y=(300-100)×(10-y)
    200y=200(10-y)
    200y=2000-200y
    400y=2000
    y=5

    (答)5日

    少女:5日です。

    禁煙:ええ。そのとおり。

    少女:オレームさんの図は他にも使えるんですか?

    禁煙:もちろん。たとえば横軸に今みたいに匹数、縦軸に足の本数を取れば、つるかめ算だって解けるわ。

    turukame.png


    亀の足の合計を表す長方形(黄色の四角)に、鶴の足の合計を表す長方形(青の四角)をくっつけて書く。
    「つるとかめが合わせて9ひきいます。足の数は合わせて26本です。つるとかめはそれぞれ何びきいますか。」だと、
    点線で書いた大きな四角は4本×9匹で36本。問題の数は26本だから、欠けている部分が36−26=10本。これの縦は2だから、2×5=10で、鶴が5匹、亀が4匹。




    少女:いや、それはいいです。

    禁煙:大人の都合を少しだけ漏らせば、横軸に今みたいに匹数、縦軸に1匹増えるたびに何本足が増えるか(足の増加率)をとると考えれば、オレーム図を介して、悪名高きつるかめ算も、ニュートンの流率・流量に、つまるところ微分積分につながる訳。

    少女:それはどっちからも怒りを買う気がします。

    禁煙:更に言えば、さっきの旅人算は、ずっと同じ速度で進む問題だったけれど、オレームさんの図は速度が変わる問題も扱えるの。実際、オレームは落下する物体の運動なんかをこの図であつかってるわ。

    少女:どうするんですか?

    禁煙:一定の割合で速度が高くなるから、グラフは斜めになるわね。ここでも面積が進んだ距離に該当するから、今度は三角形や台形の面積が分かればいいわけ。最初止まっていた(速度ゼロ)物体が、3秒後地面に落ちたとき速度は秒速29.4mだったなら、進んだ距離は次のような三角形の面積で表せるから、29.4×3÷2=44.1mということになる。

    oresme2.png


    少女:あ、三角形か。そうか。

    禁煙:面積を求める求積法は、今までは図形や土地みたいな止まったものを測るだけだけだったのが、オレーム図という表現を介して、運動を量的に把握するのに使えるツールになっていく。この後、ガリレオやデカルトの登場まで200年近く捨て置かれるアイデアだけれど。アルキメデスの取り付し法の近代バージョンを開いたケプラーやカバリエリはもちろん偉いけれど、オレームのこのアイデアがないと、求積法はきっとニュートンにつながらなかった。だから、微分方程式のルーツをたどるなら、多分、ここが水源のその先の、雨雲ひとつかも。せっかくだから、このまま微分や積分の話をしましょうか? それとも1次方程式を図形で解いたから、次は2次方程式?

    少女:いや、今日はもう、お腹いっぱいです。







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