先日Google Scholarの被引用数表示機能を使って名著リストをつくってみたが、

    何を読もうか迷った時のために→Googleが選ぶ世界の名著120冊(2012年版) 読書猿Classic: between / beyond readers 何を読もうか迷った時のために→Googleが選ぶ世界の名著120冊(2012年版) 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

    これもまたGoogle以前にも同じ試みがなされているので紹介したい。
     それもやったのは、Googleから見て理論上の祖父に当たるような人物である※。

    ※ こことかこことかこことかここを参照。

    eugene-garfield.jpg Eugene "Gene" Garfield

    BornSeptember 16, 1925
    New York City, New York, United States

    EducationPh. D., University of Pennsylvania (1961)

    Known for - One of the founders of bibliometrics and scientometrics
    - Science Citation Index
    - Institute for Scientific Information



    科学を計る―ガーフィールドとインパクト・ファクター科学を計る―ガーフィールドとインパクト・ファクター
    (1996/10)
    窪田 輝蔵

    商品詳細を見る


     ユージン・ガーフィールドと聞いて心当たりがなくとも、"Current Contents"(主要学術雑誌の目次総覧)、"Citation Index"(論文の引用・被引用の相互関係を示す索引誌)、そして"Impact Factor"(学術雑誌の影響度の指標のはずなのに、大学,学会や研究機関において業績評価への転用による誤用・悪用されている)をつくった男といえば、お分かりだろう。

     学術文献の引用関係という、文献の内容が〈主〉とすれば〈従〉にすぎなかったものに光をあて(“The citation becomes the subject!”)、それを大量に収集・蓄積して再編集する、という実に単純な方法論は、やがて複雑に込み入り誰も見渡せなくなった知の世界の有り様を、たとえばその分野の研究の中心(最前線)とそのキーマンを、明晰に描き出すことになるのだが、最初から広く受け入れられた訳ではなかった。
     その手法が単純すぎる故に世の人が理解しがたいと見るや、ガーフィールドは、ISI(The Institute for Scientific Information)社を立ち上げ(社屋は元鶏小屋だった丸太小屋だった)、世界の主要科学ジャーナルを集めて、目次と引用・被引用関係のデータベースを作り上げ(しばらくはコピー機とハサミとノリが商売道具だった)、文献の参照ネットワークを自在に泳げるツールとして提供することで、学術研究では知らぬ者のいない科学技術情報データベース企業にまで成長させていく。
     そしてインパクトファクターも元々、ISI 社が増え続ける学術雑 誌の中からいかに重要な雑誌を選択して、 Current Contents や Citation Index に収載するかを決めるにあたり、出版論文数や創刊年数に左右されない 選択基準の指標を必要としていたために考案されたものである。

     さて、ガーフィールドは紙だった時代の"Current Contents"誌で、Current Commentsという連載をもっていた。そこでは毎回、引用データを駆使して、学術分野の様相をいろんな切り口で切り取っている。

     こんな人なので、「世界で最も引用された論文は何か?」みたいな記事も書いているのだが、今回は別のものを。

    ※ 「で、世界で最も引用された論文って何なのさ?」と気になって眠れない人のために、小声で付け加えると、ローリー法(タンパク質の定量法の一つ)の原論文であるOliver H. Lowry. (1951), "Protein measurement with the Folin phenol reagent", The Journal of Biological Chemistry. (→PDF) がそれらしい。被引用回数は1945年~1988年の 44 年間で27万回以上、Google Scholarでも23万弱の被引用数というもの)。



     今回の元ネタはその一つである、次の記事である。


    Great-Books List-Title
    (クリックで原論文へ)



     中身はタイトルのとおりに、人文科学分野をカバーする索引誌 Arts & Humanities Citation Indexのデータ(1976年~1983年分)を元に、最も数多く引用されている文献のうち、20世紀に書かれた書籍を抜き出したものである。
     またしてもクーン『科学革命の構造』が1位、どんだけパラダイム好きなんだ、と思うところだが、4半世紀前のリストにしては(被引用数だって桁違いなのに)、前の記事のリストと驚くほど重複が多い。

     もちろん違うところもある。
     社会科学分野が入ってないせいもあって(そっちはSocial Sciences Citation Indexの担当なので)、小説・詩もジョイス(しかもいくつも)やT.S.エリオットやエズラ・パウンドが入ってきてるし、ノースロップ・フライ(ちょっと上位過ぎだろ)やバルトの『S/Z』やジョナサン・カラーの未訳の主著"Structuralist Poetics"が、クルティウスやジュネットやアウエルバッハやバフチンやゴンブリッチまで入っている。『教養が国をつくる―アメリカ建て直し教育論』(原題:"Cultural Literacy: What Every American Needs to Know")、『アメリカ教養辞典 普及版 - 神話から科学技術まで』(原題:"The New Dictionary of Cultural Literacy: What Every American Needs to Know ")みたいな邦訳しかないE. D. ハーシュの"Validity in Interpretation"も登場する。

     インパクトファクターをつくった人のリストなのに(元の記事はリスト作りの楽しさにあふれていて、彼のことが好きになったよ)、いままでで最も人文系なリストになった。



    (Googleが選ぶ世界の名著120冊(2012年版)と重複する書には「*」マークをつけた)
    順位被引用数訳書名(邦訳が無い場合は原題)発表年著者
    1855科学革命の構造 *1962トーマス・クーン
    2710ユリシーズ1922ジェイムズ・ジョイス
    3699批評の解剖1957ノースロップ・フライ
    4668哲学探究 *1953ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン
    5640文法理論の諸相 *1965ノーム・チョムスキー
    6488言葉と物 *1966ミシェル・フーコー
    7475グラマトロジーについて *1967ジャック・デリダ
    8454S/Z―バルザック『サラジーヌ』の構造分析1970ロラン・バルト
    9450存在と時間 *1927マルティン・ハイデッガー
    10434ヨーロッパ文学とラテン中世1948エルンスト・R・クルティウス
    11426真理と方法 *1960ハンス・ゲオルク・ガダマ
    12418正義論 *1971ジョン・ロールズ
    13416フィネガンズ・ウェイク1939ジェイムズ・ジョイス
    14415言語行為 *1969ジョン・サール
    15411Structuralist Poetics1975ジョナサン・カラー
    16400フィギュール1966ジェラール・ジュネット
    17399 The Sound Pattern of English 1968ノーム・チョムスキー、モリス・ハレ
    18378荒地1922T・S・エリオット
    19378言語と行為 *1962ジョン・L.オースティン
    20370ことばと対象 *1960ウィラード・クワイン
    21366失われた時を求めて1914マルセル・プルースト
    22346論理哲学論考1922ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン
    23345若い芸術家の肖像1916ジェイムズ・ジョイス
    24336フィクションの修辞学1961ウェイン・C.ブース
    25335構造人類学 *1958クロード・レヴィ=ストロース
    26331夢解釈1900ジークムント・フロイト
    27319昔話の形態学1928ウラジーミル・プロップ
    28297一般言語学講義 *1915フェルディナン・ド・ソシュール
    29293存在と無1943ジャン=ポール・サルトル
    30292名指しと必然性 *1972ソール・A・クリプキ
    31290一般言語学の諸問題1966エミール・バンヴェニスト
    32286推測と反駁1963カール・ポパー
    33280エクリ1966ジャック・ラカン
    34272エクリチュールと差異1967ジャック・デリダ
    35272文法の構造 *1957ノーム・チョムスキー
    36262Closing Statements: Linguistics and Poetics1960ロマン・ヤコブソン
    37255Validity in Interpretation1967エリック・ドナルド・ハーシュ
    38253野生の思考1962クロード・レヴィ=ストロース
    39245エズラ・パウンド長詩集成1925エズラ・パウンド
    40244現実の社会的構成 *1966ピーター・バーガー、トーマス・ルックマン
    41244フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネサンスの民衆文化1965ミハイル・バフチン
    42236現象と知覚1945モーリス・メルロー=ポンティ
    43236行為としての読書1976ヴォルフガング・イーザー
    44235記号論1976ウンベルト・エーコ
    45235ミメーシス1946エーリヒ・アウエルバッハ
    46235客観的知識1972カール・ポパー
    47234芸術と幻影1960エルンスト・ゴンブリッチ
    48228イングランド労働者階級の形成1964エドワード・P. トムスン
    49226認識と関心 *1968ユルゲン・ハーバーマス
    50225科学的発見の論理 *1935カール・ポパー




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