英文で論文を書く場合は、例文を借用せよ、と以前書いた。

    卒論に今から使える論文表現例文集(日本語版) 読書猿Classic: between / beyond readers 卒論に今から使える論文表現例文集(日本語版) 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

     論文の内容はオリジナルであるべきだが、論文を論文足らしめる部分=構成や構成を形作る定型パターンは使い回しが効くし、また使いまわすべきだ。オリジナルなのは内容だけでたくさんで、形式は従来のものを踏襲した方がいい。その方が早く正確に読めるから。

     書き言葉は、リアルタイムの呼出しを要しないから(どれだけ時間をかけてもいい)例文の借用はやりやすい。
    リアルタイムで言葉を投げ合うことが必要な会話では、少し状況は異なる。言葉のラリーの最中に、その都度、例文集を検索していては、スムーズなやり取りは望めない。

     しかし、フレーズのストックはそれでも役に立つ。

     というのも、会話の内容はオリジナルでも、会話の枠組みのかなりの部分が定型フレーズで形作られるからだ。
     一説には、会話の3割を定型句が占めるという。

     このブログでも繰り返してきた論点だが、高速かつスムーズに呼び出すことができるまで練り上げられた記憶は、認知資源を節約する。定型フレーズを労なく呼び出すことができれば、その分浮いた思考のパワーを会話のコンテンツ(相手が話す回す内容、自分が話す内容)を取り扱うことに回すことができる。

     以下は、日本と英語圏のそれぞれで編まれた定番のフレーズ・ストック集のリストである。
     とっつきやすさを勘案し、収録数が少ないもの、また容易に取り扱えるものから順に並べた。





    ネイティブなら子どものときに身につける 英会話なるほどフレーズ100―誰もここまで教えてくれなかった使える裏技ネイティブなら子どものときに身につける 英会話なるほどフレーズ100―誰もここまで教えてくれなかった使える裏技
    (2000/04/10)
    スティーブ ソレイシィ、ロビン ソレイシィ 他

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     この書は、いくつかの特徴(チャームポイント)からロングセラーになっている。
     1点目は、基本的に大人言葉を学ぶことになる外国語学習者の弱点、それも劣等感を刺激する「ネイティブなら当たり前」な部分をついているところ。
     2点目は、コミュニケーションの実用性から見た子ども言葉の効率の良さ、つまり、より少なく、またよりやさしい言葉で〈伝えたいことを伝える〉ことができるところ。
     3点目は、そんな子ども言葉から大人言葉へと成長発展していく道筋を、具体的な言葉を例に示しているところ。だから子ども言葉(baby→kid→child→preteen→teenagerの5ステップ)で100フレーズ、プラスそれぞれのgrown-up版とで計200が登場する。
     数が少ないので、整理・分類してある訳ではない。
     
     フレーズ数の少なさと易しさ、「まずはこれだけ」感とお得感の高さから、今回のリストの冒頭に加えた。





    Small Talk: More Jazz ChantsSmall Talk: More Jazz Chants
    (2003/05/29)
    Carolyn Graham

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    Small Talk: More Jazz ChantsSmall Talk: More Jazz Chants
    (1986/07/31)
    Carolyn Graham

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     タイトルにあるように、有名なJazz Chantシリーズの一つ。
     日本人(だけじゃないが)が苦手な英語のストレス(強弱)とリズムを、やや大げさにしつつJAZZの調子にのって練習することによって、英語らしい調子で話せるようにするのがシリーズのコンセプト。

     したがって本の方は書き起こしたスクリプト集に過ぎず、本体はCDなどの音声教材の方。

     コミュニケーションや社会的ポジションにおけるSmalltalk(スモールトーク)の重要さについては、前に書いた。

    あなたの地位と人脈は《スモールトーク》が決めている/ダンバー『ことばの起源』応用篇 読書猿Classic: between / beyond readers あなたの地位と人脈は《スモールトーク》が決めている/ダンバー『ことばの起源』応用篇 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

     これだけで足りるものではないが、逆にここに上がっているフレーズが使えないと、人と人の会話が成立しない。つまり日常会話の雑談Smalltalkを造りあげる最小限の決まり文句を15の状況別にまとめた英会話のミニマム・キット。

     フレーズ単体の紹介ではなく、十行程度の(つまり1曲分)短いやりとりが1曲ごとにまとめられている。






    状況別・場面別 英語にするとこうなる―使える口語表現状況別・場面別 英語にするとこうなる―使える口語表現
    (2000/04)
    小坂 貴志

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     表現を収集/整理しただけでなく、使い方やタイミング、フレーズが持つニュアンスや背景(バックグラウンド)をかなりの分量を割いて解説してあるのが特徴。その意味で、今回のリストにあげた他のフレーズ集(とくに英語圏で編まれたもの)を補完するものとしても使える。
     そのかわりに収録数は少なめ(惜しむべきは索引もない)。なので、この位置に置いた。





    Common American Phrases in Everyday Contexts, 3rd EditionCommon American Phrases in Everyday Contexts, 3rd Edition
    (2011/10/25)
    Richard Spears

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     フレーズ・ストック集を紹介する場合、必ず紹介される超定番書。

     会話に出てくる定型フレーズのなかでも、'Excuse me.', 'Pardon me.'などのように、そのままの形で使えるもの(会話内容に応じて自分で単語を代入したりする必要はないもの)を2000ほど集めたフレーズ・ストック集。
     
     配列は場面別ではなく、キーとなる単語のアルファベット順で、辞書っぽいつくりになっている。
     各フレーズの意味、使われる状況を、簡潔に説明し、別に会話例が示される。

     原書は2011年に第3版が出ているが、実はこの書の第1版には、以下の邦訳(というか対訳版)がある。


    アメリカ人がよく使う米語らしい米語の会話表現辞典1700アメリカ人がよく使う米語らしい米語の会話表現辞典1700
    (1996/11)
    リチャード・スピアーズ

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    Function in EnglishFunction in English
    (1982/07/01)
    J.A. Blundell、etc. 他

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     こちらは'Could you ~?'のように、話す内容/目的・機能に応じて言葉の代入・入れ替えが必要な定型パターンを集めたフレーズ・ストック集。
     タイトルのFunctionはここでは話す目的を意味していて、「同意する」「あやまる」「礼を言う」といった目的別の言い回しについて140種類のFunctionにごとにまとめているのだが、単なる寄せ集めではない。
     それぞれのFunctionごとに、通常・フォーマル・インフォーマルの3ケースでの 使い方を示した 会話の仕方を示している。

     例を示そう。

    FunctionEng1.jpg
    (from Blundell, J., Higgens, J., & Middlemiss, N. M. G. (1982). Function in English. Oxford: University Press. p.110.)


     上記は、66番目の「あることをしようと思ってる」ことをいうFunctionのはじまりの部分である。
     各Functionのタイトルの下には必ずこんなマンガがあって、一目瞭然である。
     
     最初はご存知の ”I'm going to ...”が登場している。後ろの番号は、「...」部分を埋め方のパターンで、末尾にあるパターンリストに説明されている。
     ”I'm going to ...”の後には、シチュエーションが示されて、具体的な場面で言い回しのバリエーションが展開される。

    FunctionEng2.jpg
    (from Blundell, J., Higgens, J., & Middlemiss, N. M. G. (1982). Function in English. Oxford: University Press. p.110.)

     その後には「I」(インフォーマル)と「F」(フォーマル)な言い回しが、新たな場面設定の後に示される。

     この後には、ご丁寧に言い回しを練習するための、別の状況設定や課題が3つくらい、各Functionごとに用意されている。

    同種のものに


    Functions of American English Student's book: Communication Activities for the ClassroomFunctions of American English Student's book: Communication Activities for the Classroom
    (1983/02/28)
    Leo Jones、C. von Baeyer 他

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    がある。






    携帯版 英会話とっさのひとこと辞典携帯版 英会話とっさのひとこと辞典
    (1999/02)
    巽 一朗、巽 スカイ・ヘザー 他

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     こちらも会話フレーズ集の老舗。あちこちの電子辞書でコンテンツの一角を担っているので、お馴染みの方も多いだろう。

     日常生活、オフィス、海外旅行と、さまざまなシーンで頻繁に使われる短いフレーズをできるだけ詰め込んで(8,000フレーズ)、状況別・場面別に整理したもの。
     携帯版は本当にポケットに入るサイズ。索引も英語/日本語の二本立てで割りとよくできている。






    NTC's Dictionary of Everyday American English Expressions (McGraw-Hill ESL References)NTC's Dictionary of Everyday American English Expressions (McGraw-Hill ESL References)
    (1995/01/11)
    Richard Spears、Betty Birner 他

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     「英会話とっさのひとこと辞典」の、英語圏でのカウンタパートはこれ。
     収録フレーズ7000以上。これもこうしたリストには必ず挙げられる超定番。

     場面別に、母国語話者に馴染みの深い言い回しを揃え、比喩表現、イディオムには、すべて意味を明記する。

      トピックも医療、就職、アパート探しから銀行口座開設といった日常生活お役立ち系から、スモールトーク系の会話の切り出し表現や様々な意思表示までカバーし、豊富な感情表現をも収録。 多少くだけた表現から堅い表現、ユーモア交じり、軽い皮肉まで集めるとともにスピーチレベルも明記。
     明快な構成と、よくできたINDEXも役に立つ。





    (おまけ)


    困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話―国際学会や海外ラボでの会話術と苦情、断り、抗議など厄介な対人関係に対処する表現法困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話―国際学会や海外ラボでの会話術と苦情、断り、抗議など厄介な対人関係に対処する表現法
    (2007/04/01)
    Ann M. K¨orner

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     やや特殊な目的だが、科学者として職業を全うしなければならない多くの場面について、照準を合わせたフレーズ・ストック集。
     英語圏の訪問客があなたの研究室を訪れた場合、英語圏の国で開催される学会に出席して,登録受付して研究発表して,それに続く質疑応答を英語で行う場合、そこで容易ならぬ意見の不一致に直面した場合や、明らかに悪意をもって質問された場合、互いに傷を残す言い合い(negative interaction)に陥りそうな場合まで、使えるフレーズが集めてある。

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