先日の記事、文学新人賞の偏差値=この賞をとったらどれだけ本を出せるかをランキングしてみた 読書猿Classic: between / beyond readers 文学新人賞の偏差値=この賞をとったらどれだけ本を出せるかをランキングしてみた 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加 を読んで意気消沈した人がいるというので、物書きを励ますために編まれた(と書いてあるので信じるしかない)次の本を紹介しよう。



    まことに残念ですが…―不朽の名作への「不採用通知」160選 (徳間文庫)まことに残念ですが…―不朽の名作への「不採用通知」160選 (徳間文庫)
    アンドレ バーナード,木原 武一,Andr´e Bernard,中原 裕子

    徳間書店
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    まことに残念ですが…―不朽の名作への「不採用通知」160選まことに残念ですが…―不朽の名作への「不採用通知」160選
    アンドレ バーナード,Andre Bernard,中原 裕子

    徳間書店
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     タイトルからも分かるとおり、現在では傑作・名作として知られる作品たちも不採用(ボツ)をくらったことがあり、時にはていねいで慇懃な、時には不躾けで直情的な、不採用の手紙を作家は受け取ったのである※。
     
    たとえばウィリアム・サロイヤンは多産な作家だが、多産ゆえに受け取った不採用通知も多く、積み上げておいたら1mくらいになった。7000通ほどあったらしい。
     ジェイムズ・ジョイスは経済的成功という点から見れば呪われていたとしか言えない作家だが(付け加えると物心両方の援助を惜しまない友人には恵まれていた)、22回ボツをくらった後に『ダブリン市民』がようやく出版されると、とある市民がそのすべてを買占め私的に焚書されてしまった。『ユリシーズ』以降、その作業は一個人の手に余ることとなり、政府当局(直接的には税関)が受け持つこととなった。

     
     この書はそんな作品の不採用通知ばかりを集めた“Rotten Rejections”という本の翻訳。これに序文を寄せているBill Hendersonは名作への酷評ばかりを集めた“Rotten Reviews”という本を書いているが、両方を抱き合わせた次の本が便利である。


    Pushcart's Complete Rotten Reviews & RejectionsPushcart's Complete Rotten Reviews & Rejections
    Bill Henderson,Andre Bernard

    Pushcart Pr
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     さて、160の不採用通知から導き出せる普遍的命題ないし教訓は「編集者には見る目がない」や「傑作は認められない」や「認められないことが、すなわち私の書いたこの作品が傑作であることを証明している」や「抑圧されたサディストが警官となるように、人生に対してわけのわからぬ恐怖心を抱いている者が編集者になるのだ」(シリル・コノリー)等ではない。

     むしろ(ボツにされようと、犯罪者にされようと、アメリカ全土に詩人が溢れようと)「にもかかわらず作家は書き続けた」ということである(サロイヤンは7000の作品を書いたわけではないが少なくとも7000回は宛名を書いたはずである)。
     
     以下では、比較的知られた作家・作品に対して送られた不採用理由のいくつかを紹介する。
     普通、書物のリストを掲げるときには誉め言葉を添えることが多いので、なんだかわくわくした。
     なお、ジョン・マスターズとサラ・ハートについては寡聞にしてよく知らないのだが、断りの言葉が素敵だったので(汎用性にも富むように思われたので)紹介したくなった。
     



    “まことに残念ですが、アメリカの読者は中国のことなど一切興味がありません。”

    大地 (1) (新潮文庫)大地 (1) (新潮文庫)
    パール・バック,新居 格

    新潮社
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    パール・S・バック(1892~1973)。 アメリカの女性作家。生後3ヶ月で両親と共に中国に渡り、英語と中国語の両言語を話すバイリンガルとして育った。高等教育を受けるため一時期帰国、そののち長く中国にとどまり、小説を書き始めた。中国における東西両文明の確執を描く『東の風・西の風』(1930)を処女作に、続く代表作『大地』(1931)はピュリッツァー賞を受け、アメリカ文学史上まれなベストセラーとなり、さらに1938年にはノーベル文学賞を受賞した。




    “アメリカ合衆国では動物の話は売れません。”

    動物農場 (角川文庫)動物農場 (角川文庫)
    ジョージ・オーウェル,George Orwell,高畠 文夫

    角川書店
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    ジョージ・オーウェル(1903~1950)。イギリスの作家。スターリン治下のソ連を諷刺した「動物農園」は第二次大戦直後に出版され英米でベストセラーになった。




    “アメリカ人読者の興味をそそるところはどこにもない。これはメキシコ人向けに書かれた本である。”

    孤独の迷宮―メキシコの文化と歴史 (叢書・ウニベルシタス)孤独の迷宮―メキシコの文化と歴史 (叢書・ウニベルシタス)
    オクタビオ・パス,高山 智博,熊谷 明子

    法政大学出版局
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    オクタビオ・パス(1914~1998)。メキシコの詩人・批評家。1946年に外交官になり、ヨーロッパ各国を転々としながら『弓と竪琴』『孤独の迷宮』などを執筆する。ノーベル文学賞(1990)。



    “遺憾ながら、イギリスの児童文学市場にまったくふさわしくないという理由で、この本の出版を見合わせることに全会一致で決定いたしました。”

    白鯨 上 (岩波文庫)白鯨 上 (岩波文庫)
    ハーマン・メルヴィル,八木 敏雄

    岩波書店
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    ハーマン・メルヴィル(1819~1891)。アメリカの小説家。存命中、作品はまともな評価はされず、税関で働き生活を支えた。『白鯨』は、随所に鯨の博物学や捕鯨業の博大な知識を挿入し、作者の捕鯨船員としての経験をもとにした自伝的な要素を含みながら、善と悪、神と人間の対立の壮大なドラマを展開、精神の深淵を映し出したきわめて象徴的な作品である。



    “書き出しの行に“r”が多過ぎる。”

    -----エズラ・パウンド『ある女性の肖像Portrait d'une Femme』

    エズラ・パウンド(1885~1972)。アメリカの詩人・批評家。1908年以来ロンドン、パリ、イタリアで典型的な国籍離脱者として生活しながら、イマジズム運動その他の新詩運動の中心となり、ジョイス、T.S.エリオット、ヘミングウェーらに大きな影響を与えた。




    “なにやら木がいっぱい出てくる話だった。”

    マクリーンの川 (集英社文庫)マクリーンの川 (集英社文庫)
    ノーマン・マクリーン,渡辺 利雄

    集英社
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    ノーマン・マクリーン(1902~1990)。アメリカの作家。シカゴ大学英文学教授を長年勤め定年後の74歳で、若くして死んでしまった弟の想い出をもとに自伝的処女作『マクリーンの川』を執筆。20世紀アメリカ文学の古典と賞賛され、ロングセラーとなった。




    “カレーを食べすぎた元大佐のつづったインドの思い出など、掃いて捨てるほどある。”

    -----ジョン・マスターズ『残忍かつ放蕩(Brutal and Licentious)』

    ジョン・マスターズ(1941〜)。イギリスの小説家。元インド陸軍将校。インド独立後アメリカに渡り、イギリスとインドの関係を扱った時代冒険小説シリーズを発表。




    “詩は間に合っております。ホーボーケンのノートドイチャー・ロイド埠頭に200〜300梱もの詩が保管してあるのです。アメリカには30万人の詩人がいます。”

    -----サラ・ハート『詩 Poem』

    サラ・ハート(1898〜1935)。アメリカの作家。アラバマ州モントゴメリー出身。この詩集は結局出版されなかった模様。




    “ヴァージニアの傭兵がこともあろうに火星に送られるなどという話が、わが社に利益をもたらすとは絶対に考えられません。”

    【新版】火星のプリンセス (創元SF文庫)【新版】火星のプリンセス (創元SF文庫)
    エドガー・ライス・バローズ,厚木 淳

    東京創元社
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    アメリカの作家。『火星のプリンセス』に始まる「火星シリーズ」でスペース・オペラの第一人者となるほか、『猿人ターザン』以下の一連のターザン物でも世界的に人気を集めた。




    “あえて翻訳出版してまで、注目を浴びようと吠えたてる多くの犬の本と競争させるだけの価値はない。”


    人イヌにあう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)人イヌにあう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
    コンラート ローレンツ,Konrad Zacharias Lorenz,小原 秀雄

    早川書房
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    コンラート・ローレンツ(1903~1989)。オーストリアの動物学者。動物行動学を確立により1973年にノーベル生理学医学賞をティンバーゲン、フリッシュと共に受賞。エッセイ集「ソロモンの指輪」「人イヌにあう」は世界的に広く読まれている。




    “このような本に商業的可能性があるとは思えず、したがってご希望にそうことはできません。”

    ピーターの法則 創造的無能のすすめピーターの法則 創造的無能のすすめ
    ローレンス・J・ピーター,レイモンド・ハル,渡辺 伸也

    ダイヤモンド社
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    ローレンス・J・ピーター(1919~1990)。アメリカの教育学者。レイモンド・ハルとの共著『ピーターの法則』で組織のメンバーは能力を超えたレベルまで出世するため、上司は一般的に無能者が占めるという法則を提唱した。




    “じつにお粗末!”

    戦場にかける橋 (ハヤカワ文庫 NV フ 15-1)戦場にかける橋 (ハヤカワ文庫 NV フ 15-1)
    ピエール・ブール,関口 英男

    早川書房
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    ピエール・ブール(1912~1994)。フランスの小説家。第二次大戦中のインドシナで日本軍に捕らわれ、投獄された経験を基に書いた『戦場にかける橋』や『猿の惑星』で知られる。『戦場にかける橋』、『猿の惑星』は共に映画化され、ヒットした。




    “この小説は出版業界を25年退歩させるものです。”

    鹿の園 (新潮文庫)鹿の園 (新潮文庫)
    ノーマン・メイラー,Norman Mailer,山西 英一

    新潮社
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    ノーマン・メイラー(1923~2007)。アメリカの作家。第2次世界大戦中は太平洋で従軍。第1作目の小説「裸者と死者」(1948)はベストセラーとなり、この世代の代表的な小説家としての地位を確立した。




    “支離滅裂で、視点も興味をそそるものではない。”

    若い芸術家の肖像 (岩波文庫)若い芸術家の肖像 (岩波文庫)
    ジョイス,James Joyce,大澤 正佳

    岩波書店
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    ジェイムズ・ジョイス(1882~1941)。アイルランドの作家。初期作品のひとつ『若き芸術家の肖像』では、内的独白の使用や登場人物の外的環境よりも精神的現実への言及の優先といった、後の作品に多く見られる手法の萌芽が見られる。ジョイス自身をモデルとした主人公ディーダラスは、代表作『ユリシーズ』の主人公の一人でもある。




    “この少女は、作品を単なる“好奇心”以上のレベルに高めるための、特別な観察力や感受性に欠けているように思われます。”

    アンネの日記 (文春文庫)アンネの日記 (文春文庫)
    アンネ フランク,Anne Frank,深町 真理子

    文藝春秋
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    アンネ・フランク(1929~1945)。ユダヤ系ドイツ人実業家オットーの次女。アウシュウィッツ強制収容所で15年の生涯を閉じた。ナチス・ドイツ占領下のアムステルダムの隠れ家で綴った日記が発見され父親により刊行され、1952年英語版が刊行されると世界的反響を呼び起こし、各国語に翻訳された。




    “一般読者には面白くなく、科学的知識のある者には物足りない。”

    タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)
    H.G. ウエルズ,橋本 槇矩

    岩波書店
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    H.G.ウェルズ(1866~1946)。イギリスの作家・評論家。時間旅行を行う乗り物を導入した小説『タイム・マシン』で文壇に登場。科学小説の他に文明批評や歴史的著述を著し百科全書的ジャーナリストとして活躍、20世紀初頭の思想界に大きな影響を与えた。




    “連載するには短すぎ、読み切りとしては長すぎる。”

    緋色の研究 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)緋色の研究 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)
    アーサー・コナン・ドイル,日暮 雅通

    光文社
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    アーサー・コナン・ドイル。(1859~1930)。イギリスの小説家。『緋色の研究』は世界で最も知られた私立探偵シャーロック=ホームズが始めて登場した小説である。




    “人が筏で漂流するテーマには魅力があるが、全般的に、長く重く単調で退屈な太平洋航海記である。”

    コン・ティキ号探検記 (河出文庫)コン・ティキ号探検記 (河出文庫)
    トール・ヘイエルダール,水口 志計夫

    河出書房新社
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    トール・ヘイエルダール(1914~2002。)ノルウェーの人類学者、海洋生物学者、探検家。ポリネシア人が南アメリカから移住したとする仮説を実証するために古代インカの技法でつくった筏船のコンティキ号でペルーのカヤオ港から南太平洋のツアモツ島まで4,300マイル(8千km弱)の航海を行った。その記録『コンティキ号探検』は世界的ベストセラーとなり,彼の知名度を高めた。




    話の結論がまとまっていないようだ----主人公の出世も人格も、結末を迎えるべき段階に達していない。要するに、物語が完結しているとは思えない。”

    -----F.スコット・フィッツジェラルド『楽園のこちら側』(高村勝治 訳 荒地出版社 , 1957.6)

    F・スコット・フィッツジェラルド (1896~1940)。アメリカの小説家。処女作『楽園のこちら側』は、若い読者層に迎えられベストセラーとなった。フィッツジェラルドはこれにより一躍人気作家となり「アメリカ青年の王者」とまでよばれた。




    “もしこの本に筋や構成というものがあれば、削除や修正を提案できるのだが、あまりにも散漫なために手のつけようがない。却下理由の第一は、著者が語るべきストーリーを持っていないことである。”

    サートリスサートリス
    ウィリアム・フォークナー,林 信行

    白水社
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    ウィリアム・フォークナー(1897~1962)。 アメリカの小説家。フォークナーの作品のほとんどが架空の土地ヨクナパトーファ郡ジェファソンを舞台とし、これら一連の作品は「ヨクナパトーファ・サーガ」と呼ばれるが、『サートリス』はその最初の作品である。




    かようにうっとうしい話は読んだ覚えがない。気取った文体の泥沼をさまよっているだけで、どこへもたどりつかず、これといった物語もなく、倦怠以外のなんの感情もわいてこない。間接的に遠回しな言葉遣いを文学的技巧と取り違える評論家連中なら、これを秀逸な作品と呼ぶかもしれないが、血管に少しでも血の通っている人間なら、あくびをして、投げ出すであろう----万が一これを手にしたとしても。”

    -----ヘンリー・ジェイムズ『檻の中』

    ヘンリー・ジェイムズ作品集 (2)  ポイントンの蒐集品  メイジーの知ったこと  檻の中ヘンリー・ジェイムズ作品集 (2) ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中
    ヘンリー・ジェイムズ

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    ヘンリー・ジェイムズ(1843~1916)。アメリカ生まれイギリスで活躍した作家。英米心理主義小説の先駆者として知られる。ヨーロッパ的な視点とアメリカ人としての視点を持ち合わせ、国際的な観点から優れた英語文学を多く残した19世紀から20世紀の英米文学を代表する小説家である。




    “どちらも読めなかった----私の目がページにとどまって、その意味(このような場合、意味とはいわず、べつの言葉を用いるべきなのか)を理解することを頑として拒否したのだ。……まったくもって理解できず、おかしくもない。わたしが思うに、こうした小説の本当の欠点は(もし真剣に読む気になったとしてだが)ただただその退屈さにある。

    モロイモロイ
    サミュエル ベケット,Samuel Beckett,安堂 信也

    白水社
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    マロウンは死ぬマロウンは死ぬ
    サミュエル ベケット,Samuel Beckett,高橋 康也

    白水社
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    サミュエル・ベケット(1906~1989)。アイルランド生れのフランスの劇作家・小説家。不条理演劇を代表する作家の一人であり、小説においても20世紀の重要作家の一人とされる。戯曲「ゴドーを待ちながら」「しあわせな日々」、長編小説に三部作「モロイ」「マウロンは死ぬ」「名づけえぬもの」など。1969年ノーベル賞文学賞。




    “腐ったニンジンのようなにおいがする。”

    ピーターラビットのおはなし (ピーターラビットの絵本 1)ピーターラビットのおはなし (ピーターラビットの絵本 1)
    ビアトリクス・ポター,Beatrix Potter,いしい ももこ

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    ビアトリクス・ポター(1866~1943)。イギリスの絵本作家。ピーターラビットのおはなし』にはじまるピーターラビットシリーズの発行部数は全世界で1億5000万部を超える。




    “貴殿はご自身の小説を、秀逸とはいえ、はなはだ余分な枝葉末節で埋めてしまわれた。”

    ボヴァリー夫人 (新潮文庫)ボヴァリー夫人 (新潮文庫)
    フローベール,生島 遼一

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    ギュスターヴ・フローベール (1821~1880)。フランスの小説家。精緻な客観描写や自由間接話法を多用した細かな心理描写によって描き出した処女作『ボヴァリー婦人』は写実主義文学の礎となり、現代文学への画期となった。




    “ねえ、きみ、わしは首から上が死んじまってるかもしれんが、いくらない知恵を絞ってみても、ある男が眠りにつく前にいかにして寝返りを打ったかを描くのになぜ30頁も必要なのかさっぱりわからんよ。”

    失われた時を求めて〈1〉第一篇「スワン家のほうへ1」 (光文社古典新訳文庫)失われた時を求めて〈1〉第一篇「スワン家のほうへ1」 (光文社古典新訳文庫)
    マルセル プルースト,Marcel Proust,高遠 弘美

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    マルセル・プルースト(1871~1922)。フランスの小説家。30代から死の直前まで大作『失われた時を求めて』を書き続けた。その複雑かつ重層的な叙述と物語構成はその後の文学の流れに決定的な影響を与え、この作品によってプルーストは、ジョイス、カフカとともに20世紀を代表する作家として位置づけられている。




    “書き出しはおもしろかった。これは第二の『ロリータ』だぞ、とわたしはがぜん興味をそそられた。この複雑な文体は、われわれが考えていた以上にナボコフの影響力が大きいことを示しているじゃないか、と。悲しいかな、書き出しは完全に誤解を招くものであり、そのあとに続くのは、ウィットに富む、というよりむしろいかがわしい下品なサイエンス・フィクションだった。”

    やぎ少年ジャイルズ (1)やぎ少年ジャイルズ (1)
    ジョン・バース,渋谷 雄三郎,上村 宗平

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    ジョン・バース(1930~)。アメリカの小説家。入念なパロディー,緻密なプロットなどきわめて意識的な手法を用いる実験的な作品を発表。『やぎ少年ジャイルズ』は、『酔いどれ草の仲買人』とともに代表作の一つ。




    “精神科医に話すべきことがらを(実際そうしているかもしれないが)綿密な小説に仕立てあげたもので、素晴らしく筆の冴えたところも幾らかはあるが、進歩的なフロイト派を自負するわたしでさえ圧倒的な不快感に襲われた。一般読者は吐き気をもよおすに違いない。売れる見込みもなく、高まりつつある名声に計りしれない害を及ぼすだけだろう。 総じて不道徳きわまりない話である。忌まわしき現実と、とんでもない空想が曖昧に交錯する。しばしば狂った神経症的白昼夢となり、とりわけ追跡の部分で、話の筋まで混乱する。結末はぞっとするような自己破壊。わたしがもっとも当惑するのは、作者がこれを発表したがっているという事実である。この本をいま出版するいかなる根拠も思い浮かばない。わたしはこれを千年間、石の下に埋めておくことを勧告する。

    ロリータ (新潮文庫)ロリータ (新潮文庫)
    ウラジーミル ナボコフ,若島 正

    新潮社
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    ウラジーミル・ナボコフ(1899~1977)。ロシア生れのヨーロッパとアメリカで活動した作家。1945年アメリカに帰化。コーネル大学等でロシア文学・ヨーロッパ文学を講ずるかたわら、英語で創作活動を続ける。1955年に小説『ロリータ』の出版により国際的に著名な作家となり、59年スイスのモントルーに移住し、生涯執筆活動に専念した。


     


     
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