問:本が読めません。1冊の本を最後まで読めなくて挫折してしまいます。


    答:挫折してもいいです。とにかく読み始めたことが大切です。本当に読めない人は最初からあきらめて本を開きもしません。



    問:挫折した本はあきらめた方がいいですか?


    答:あきらめなくていいです。他の本を読んでから再び読んでみると、案外読めたりするものです。読める本を何冊か読むだけでも随分ちがいます。



    問:どうしたら挫折せずに最後まで読めるようになりますか?


    答:挫折せず読める、読みやすい本を選びましょう。最初は易しく薄い本がよいです。ちなみに、誰かがあなたに勧めてくる本は、あなたの読書レベルより少し上のことが多いです。



    問:どうしておすすめ本はレベルが少し上になるんですか?


    答:あなたに本を薦めてくれるような善意の人は、あなたの読書力を実際よりも高く見積もる傾向があるからです。それから、あまり易しい本を勧めてしまうと「バカにすんな!」と相手の怒りをかうことがあるので、おすすめ本のレベルは上方修正されがちです。
     ちなみに「あなたに本を薦めてくれるような人」の中には、あなた自身も含まれます。つまり〈背伸びした〉本を、自分でも選んでしまうのです。



    問:〈背伸びした〉本を読むのはダメですか?


    答:ダメじゃありません。背伸びした読書は否定されるべきではありません。自分を賢く見せたい知的スノビズム(関西でいうところの「ええかっこしい」)は文化の森の下草です。視野に入ると鬱陶しいですが、無ければ文化の森が枯れてしまいます。
     読めもしないような本を買う人がいなくなれば、書物の世界は今よりずっとさびしいものなるでしょう。
     そして、背伸びした読書をしようとしない人は、結局のところ、どんな読書もしないでしょう。

     
     
    問:どうやって読みやすい本を見つけたらいいですか?


    答:一番簡単なのは、誰かが勧めた(あるいは自分が読みたい)〈少しレベルが上の本〉を持って、図書館のレファレンスカウンターに行き、「これより分かりやすい本はありませんか?」と尋ねることです。
     何冊かそうして質問していると、やさしい本の見つけ方が分かってきます。
     やさしい本を見つけるスキルは、読書生活を続ける上で、一生の財産になります。

     

    問:ほかに読みやすい本を見つける方法はありますか?


    答:まだ読書に慣れていない人たちのために書かれた本があります。子ども向けの本です。図書館なら児童書コーナーで見つけることができるでしょう。



    問:ある本が自分のレベルに合っているかどうか知る方法はありますか?


    答:簡単なやり方に「5本指テスト」というのがあります。もともとは子どもたちが本を選ぶときに使われる方法ですが、日本語の本だけでなく、外国語の本を選ぶときにも役立ちます。


    (1)読もうと思っている本を手に取り、真ん中あたりのページを開く。絵やイラストがないページがいい。
    (2)開いたところを1ページだけ最初から読む。手を握っておくのを忘れずに。
    (3)読んでいる間に知らない単語に出会う度に1本ずつ指を伸ばそう。
    (4)1ページ読み終わらないうちに、指が5本とも開いたら、そのまま手を振ってバイバイしよう。その本は君には難しすぎる。
    (5)指が1本も開かず、1ページを最後まで読み終えたら、握りこぶしをおでこにつけて考えよう。その本は、今の君にはやさしすぎるかもしれない。
    (6)(4)でも(5)でもないなら、それはまさに君のための本だ!

    あなたに最適な本を選ぶ「5本指テスト」と「ゴルディロックス・テスト」 読書猿Classic: between / beyond readers あなたに最適な本を選ぶ「5本指テスト」と「ゴルディロックス・テスト」 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加





    問:やさしい本ばかり読んでいてもダメじゃないですか?


    答:ダメじゃないです。やさしい本を読むことも、読書の経験値を積むことになります。
     それから、やさしい本は、それに満足できない場合も、次の本を読む動機付けを与えてくれます。
     やさしい本をつくるためには、やさしく解き語るだけでなく、やさしく説明できない事項を省くことも必要です。なので、やさしい本には必ず、書いてないことや、「詳しいことは他の本に譲った」というところがあります。
     そのために、やさしい本は、知的好奇心をかきててながら、しかしそれを満足させないことで、次の本へと(ときには本の外へと)誘ってくれます。



    問:本は最後まで読まなきゃいけませんか?


    答:最後まで通して読むのも一つの読み方です。しかし他にも本の読み方はたくさんあります。

     たとえば必要なところだけ拾い読みするのも、一つの読み方です。
     同じ分野の本を続けて読んでいると、どの本にも共通して書いてあることがあるのに気づきます。また同じことが書いてあることに気づくと、読み飛ばすなりして自然とその部分は足早に通り過ぎることになります。ある本にしか書いてないような独自の部分は、20%くらいじゃないでしょうか。もっと少ない5〜10%くらいしか独自の部分がないの本もたくさんあります。拾い読み(それから飛ばし読み)は、思われているよりずっと用いられるべき読書法です。



    問:本を読む時間がありません


    答:時間はあったりなかったりするものではなく、割り当てるものです。

     本を読むことを生業にしている人以外は、〈余り時間〉に読むしかありません。
     こういう場合によく引き合いに出される魏の薫遇の言葉で「書を読むは当に三余を以てすべし。冬は歳の余なり。夜は日の余なり。陰雨は時の余なり」というのがあります。一年の〈余り〉である農事が忙しくない冬、日の〈余り〉である仕事を終えた夜、時の〈余り〉である外の仕事ができない雨のとき、の3つを〈三余〉といって、そうした〈余り時間〉に本を読むべきだというのです。
     ライフスタイルによって様々でしょうが、毎日ある〈余り時間〉を読書の時間に確保することからはじめましょう。
     例えば、行きの通勤/通学、昼食中、帰りの通勤/通学、入浴中を確保すると〈四余〉になります。
     この際、余り時間のそれぞれに分野やテーマを固定して、1冊終わったらまた同じ分野/テーマの本を読み続けることにすると効果が実感しやすいです。たとえば行きの通勤通学中は毎日、他に読みたい本があっても、必ずあるテーマ(たとえば経済学)の本を読むのに予約し確保しておくのです。そしてある経済学書を読み終わったら、行きの通勤通学中にはやはり別の経済学書を読むのを続けます。



    問:難しい本を読むにはどうしたらよいですか?


    答:難しい本を読むのに1対1が厳しいなら、できるかぎりの援軍を呼びましょう。

     まず、読もうとする難しい本に関連したやさしい本(入門書や解説書など)を、できるだけ多く探しておきましょう。これらは必ず繰り返し役に立ちます。

    よし、もう一度→ムリ目な難解書を読む5つの方法 読書猿Classic: between / beyond readers よし、もう一度→ムリ目な難解書を読む5つの方法 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加


     次に、できれば一緒に読む人を見つけましょう。ちゃんとした誰かを道連れにすると挫折しにくいです。つまり読書会です。一人で考えるより複数人で考えた方が分かる可能性は高まります。また他の人に説明しようとすると、より詳しく深く読むことにもなります。

    難しい本を最後まで読むのに人間が昔からやってきたこと 読書猿Classic: between / beyond readers 難しい本を最後まで読むのに人間が昔からやってきたこと 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加


     さて、難しい本が難しい理由は、大きく分けて4つあります。(1)言葉や概念の意味が分からない、(2)前提や背景が分からない、(3)本の内容に矛盾や不整合がある、(4)本の内容と自分の考えの間に隔たり・不整合がある、の4つです。

    本を読んで分からないのは何故か?読書の4つのつまずきと克服したとき見えるもの 読書猿Classic: between / beyond readers 本を読んで分からないのは何故か?読書の4つのつまずきと克服したとき見えるもの 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

     入門書や解説書は、(1)言葉や概念の意味が分からないや(2)前提や背景が分からないことについて、ヒントや手掛りを提供してくれます。(3)本の内容に矛盾や不整合がある場合も、あらかじめ注意やアドバイスをくれるかもしれません。
     1冊ですべての問題に対処できなくても、他の入門書や解説書が役に立つことがあります。もちろん自分の頭もかなり働かせなくてはならないでしょう。
     これが本を読むということです。

     もうひとつだけ重要なアプローチがあります。やり過ごすことです。
     難しい箇所や理解し難い部分に出くわしたとして、他のどんな本を読んでも誰に聞いても、やっぱり解決しないことがあります。
     そんな場合は、その部分を飛ばして先に進みましょう。飛ばして先に進むことで、後になって解決する、ということも結構あります。
     慣れないうちは生真面目すぎて、分からないから飛ばすというのに抵抗を覚えるものですが、100%理解できる書物なんて誰にとっても存在しません。存在したとしても、それはもう、その人にとって読む価値がない書物です。
     むしろ分からない部分を残したものこそ、あなたにとって大切な書物になる可能性があります。



    問:本の内容と自分の考えの間に隔たり・不整合があるの場合は、どうしたらいいですか?


    答:a.本の方を否定するか、b.自分の考えの方を変えるか、c.そのどちらもやる、つまり自分か本かの二者選択を越えて、書物と自分の再解釈や再構成に取り組むか、いずれかです。3つめのものは、本を読む目的の中で最終的なものです。本と自分の間の埋めがたい不整合を乗り越える中から、読書から得られる最善のものがもたらされます。
     何か読むたびにガラガラと自分が変わってしまっては大変ですが、せっかく本を読んでもまったく何も変わらないというのも勿体無い話です。




    問:周りに本を読む人が居なくて、本を読んでいると馬鹿にされます


    答:逆境ですが塞翁が馬、周りに話すに足りる人が居ないのですから、読書にのめり込むには好都合です。

     「同じ書を読む人は遠くにいる」という言葉があります。
     一冊の本があなたの手元にあるということは、同じ本があなたの知らない人たちのところにも届いているということです。
     どれほど孤独な読書家も、この本を読むのは自分だけではないことを知っています。
     私が読んだものを他の誰かも読むかもしれないからこそ、書物は私だけに働きかけるのではなく、社会的にも力を持ち得えます。一冊の書物が開くこの可能性のひろがりを、ここでは読書圏(Reading Sphere)と呼びましょう
     読書圏は、同じ書物を読む人たちの間に結ばれるかもしれない潜在的な関係性、あるいは関係の可能性です。
     本を読む人ならば、〈世界を変えた書物〉のような例外はあるにせよ、この関係性は多くの場合実現せず、可能性のまま立ち消えることを体験として知っています。
     しかし可能性はゼロではありません。
     だからこそ、「最近ある本を読んだ」と言うかわりに、人は書物の題名や著者名を口にするのです。過去、現在、未来に同じ書物を誰かが読むことを、そしてそんな彼らにいつか出会えるかもしれないと期待して。
     インターネットが日常と化した現在では、同じ書物を読んだ人と出会うことは、以前よりずっと容易になりました。
     私達は、書評であれ感想であれ評論であれ批判であれつぶやきであれ、読んだ人の声を介して、書物に導かれています。存在すら知らなかった書物を教えられることもあれば、忘れるほど昔に読んだことを思い出させることもあります。
     読み終えたら、いいえ、読み始めさえしたら、そのことを言葉にしてみましょう。



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    (今回の参考図書)

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