少女:先生は、読み終えなくても構わないという話をしてくれたけど、やっぱり一冊の本を最後まで読めないのを何とかしたいとしたら、何か工夫みたいなことはありますか?

    司書:そうですね、誰にも役に立つかどうか分かりませんが、本を読み始めた頃に教わってしばらく使っていたやり方があります。

    少女:ぜひ聞きたいです。

    司書:慣れると次のやり方に進めるように教わったのですが、教えてくれた人はこれらを「読むことの〈手すり〉と〈杖〉」と呼んでいました。



    〈手すり〉ー読んだ分だけ塗りつぶす


    司書:セルフ・モニタリングという言葉をどこかで聞いたことがありませんか?

    少女:確か彼がそんなこと言ってました。自分がやったこととかやった量を記録しておくことでしたっけ?


    (参考記事)
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    司書:ええ。効果はいろいろあるのですが、ひとつは自分がどれだけ進んだか、やり終えたかを見える形にすることで、モチベーションを静かに下支えするのです。一時的なヤル気の爆発ではなく。

    少女:本を読むことだと、読んだページ数を記録したりするんですか?

    司書:いろいろなやり方があるのですが、私が教わったのは、先にマス目を作っておいて、読んだらそれを塗りつぶすやり方です。


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    私の頃は少し大きめの方眼紙を使って作りましたが(いつも持ち歩くためにコクヨの測量野帳を使っていました)、今だと表計算ソフトなども使えると思います。


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    少女:確かにこの方が進んだ気がします。あと、必ずしも前から読まなくても、読んだ部分を塗りつぶせますね。

    司書:今のは章ごとに節の数だけマス目を作ったものですが、最初のころは300ページの本なら全部で300個のマス目を用意してそれを塗りつぶしていました。細かい方が少しでも先に進んだ感じがするような気がしたのです。

    少女:その場合も、各章ごとに何ページあるかに応じてマス目を作るんですか?

    司書:ええ。読む分量ではなく、読書をする習慣をつけるために、とにかく本を開く日を増やしたい場合は、7日×52週分のマス目を作って、毎週本を開いた日の分だけマス目を塗りつぶすこともできます。

    7*52


    少女:記録すると何が変わってくるのですか?

    司書:簡単に言うと、記録した行動が、ゆっくりとですが増えていきます。そして何を記録するかは、何に自分の注意を向けて、どんなことを改善したいかに応じて変えればよいのです。

    少女:じゃあ読むのが速くなりたい人は、読書速度を記録すればいいのかな?

    司書:瞬間の速度はあまり当てになりませんから、読んだ量をマス目で記録するのに慣れてきたら、読み始めと読み終えた時刻を記録するだけでもいいでしょう。そういえば凝り性の友人が、ある本を初見で読んだ時は黒で、二度目に読むときは色を変えてマス目を塗りつぶしていたのを思い出しました。

    少女:一度目の読みと二度目との速度を比べるためですか?

    司書:ざっと概要をつかむための一度目の読みをなるべく速くしたかったそうです。私はそこまではできませんでしたが、繰り返し読む場合に読み方を変えることは彼に教わったように思います。書物のあちこちのつながりを結びつけたり、本から知ったことを手掛りに自分で考えたり、といった読書という果実の一番美味なところを後に取っておくのだと思うと、一度目の読みは否が応でも速くなるものだと彼は言うのですが。




    〈杖〉ーアウトラインを埋める


    少女:今のが読書の「手すり」だとしたら、「杖」というのは何ですか?

    司書:そのうちマス目を塗りつぶさなくても、本を読み通すだけはできるようになりました。つまり「手すり」なしで一冊の本の最初から最後までを歩き通せるようになった訳です。そこまで来て、次に手渡されたのが「杖」の方法でした。これも最初に用意した空欄を埋めていくのですが。


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    少女:えーと、各章のタイトルが離して書いてあって、その間に点が打ってありますね。

    司書:点は、各章に含まれるパラグラフ(段落)の数だけ行をかえて打ってあります。

    少女:つまりパラグラフ(段落)を読むごとに何かで埋めていくんですね?

    司書:ええ。点のうしろには、それぞれのパラグラフ(段落)について、その要約を書いてきます。


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    少女:マス目を塗りつぶすより、自分で言葉を書いていくから、さっきの進化形なのか。だから「手すり」じゃなくて「杖」なんですね。

    司書:あまり頑張ると詳しく書き切ろうとしてしまって大変になりますから、小見出しをつけるくらいの気持ちでやるのがいいようです。最初は大事そうに思えるところに線を引いておいて、後で下線部を参考にしながらキーワードに何か加える程度で小見出しにすると良いと思います。

    少女:それでも、ちょっと大変そう。普通の本には、ここまでしなくてもいい気がします。難しい本を読むためのものですか?

    司書:そうです。何か支えがないとずり落ちてしまいそうな読書の坂道を登るためのものでしょうか。そういう意味では、杖の中でも登山用のピッケルが近いかもしれません。お気づきのように、これはかなり詳しく読むことを要求します。

    少女:精読しなきゃならないものとか、難しすぎて目が滑ってしまう本で試してみます。

    司書:最初はざっと最後まで読んでしまって、各点の後を埋めていくのは2度目以降の読みにやるのがいいでしょう。時間がかかる作業なので、一度で完成させなくても構いません。自分が特に気になる章だけを取り上げてやってみる場合もあります。

    司書:理解の難しいパラグラフ(段落)は、?マークを残して飛ばしてもいいでしょう。他のところを読んだ後なら理解できることがあるからです。この「杖」は、あなたがこの本のどこでどれだけ理解できたかできなかったかを克明に記録する、理解度のセルフ・モニタリングでもあります。時間をおいて読み返すと、自分がどれだけのものを今や理解できるようになったか、事細かに気づくことができるでしょう。自分の成長を詳細に知ることは、どんなことよりも強い読書の動機づけになります。



    (参考記事)




     


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