アルファ・ブロガーだか何だか知らないが、「だれそれがアホだから世の中うまくいかん」みたいなことを、ニュースのたびに繰り返してるような輩は、本人の「あえて」意識はともかく、社会はものすごく少数の者の利害だけに都合良く回ってるといえば何事か説明したことになるとでも思っている「陰謀論者」(ガキからいい歳こいた者まで、どこにでもいる)とどっこいどっこいである。

     最初は「陰謀論を手洗い・うがいするブックリスト」とでもしようと思ってたが、もっと手前からはじめた方が良いような気がしてきたので、「ニュースが分かる」という平凡なタイトルになってしまった。

    ■ニュースがわかるコトバのジテン


     本屋を見ると、《ニュースが分かる》とタイトルに付いた本がたくさんある。
     よっぽど、今時のニュースはわかりにくい感じがしてくる。
     出典がわからないけれど、マスメディアが発信する情報は、中学2年生に分かるようなレベルであることを目標にしている(してきた?)らしい。いわば《14才のリテラシー》があれば、ニュースは分かるはずなんだが、今時の《14才のリテラシー》はなかなか獲得するのが大変なのかもしれない。マッカーサーは「日本人は12才だ」とのたまったが、リアルな14才とあるべきリテラシーを習得した14才とは、永遠に追いつけぬアキレスとカメなのだろうか。
     次々出てくる時事用語を解説してくれる本は古くからあって、一時増えたが、インターネットが普及するようになって、また減ってしまった。残ったのが最古参の『現代用語の基礎知識』だが、これはいまでも結構役に立つ。子供用というか学習用のが出ていて、いくらかやさしい。
     予備校の先生みたいな人が書いた『経済のニュースがよく分かる』みたいな本があるが(シリーズ化してものすごくたくさん出ている)、行間がものすごく開いていて、最後に見開き2ページに、全体のまとめが載っている。この辺がヘタレな参考書っぽいのだが、情報量としてはものすごく少ない。コストパフォーマンスは大層悪くて、いじわるな心を持たないと、薦められない。ぶっちゃけ、ちびっ子向けの『現代用語の基礎知識 学習版』があれば、このあたりのはみーんな要らないと思う。

    現代用語の基礎知識/学習版〈2009〉現代用語の基礎知識/学習版〈2009〉
    (2008/12)
    現代用語検定協会

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     実はそれより重要なのに見落とされているのが、普通の言葉の知識、スキル。日本語の文章読みのトレーニング
     遠藤 嘉基 渡辺 実『現代文解釈の基礎』は、古(いにしえ)の、大学受験のレベルを無視して、必要な力を得られるものを作りたいように作った参考書のひとつ。知る人ぞ知る、一生ものの読解力がつく本。セットになった演習書(『 現代文解釈の方法』)があるのがキモ。日本語読解力のセルフ・コースワークとして。先にやっとくと、英文読みの力も上がりやすくなる。後からやっても、英文読解力もきっと上がる。

    現代文解釈の基礎現代文解釈の基礎
    (1998/03)
    遠藤 嘉基渡辺 実

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    現代文解釈の方法現代文解釈の方法
    (1998/03)
    遠藤 嘉基渡辺 実

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     次に、常用漢字の範囲なら最強の漢和辞典である(ドラえもんの表紙が悩ましい、小学生から使えるってことでもある)『常用漢字ミラクルマスター辞典』あたりで、漢字の知識をネットワーク化しておくとよい。漢和辞典でスタンダードな部首順などではなく、音符・字源が共通する漢字が隣接する絶妙な配列のおかげでイモヅル式に学べる。複数の熟語(括弧書きで意味記載)を含んだ用例文が理解と記憶に効果的。さらに用例を盛り込んだ藤子プロによるドラえもん4コマ漫画まである)。この方式で、JIS1,2水準ぐらいはやってくれてる辞典があればいいんだが(常用漢字の範囲に限っているせいで、もっと伸びているはずの漢字間ネットワークが分断されているのが玉に傷なのである)。

    常用漢字ミラクルマスター辞典常用漢字ミラクルマスター辞典
    (1998/03)
    加納 喜光

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    ■ニュースが分かるトレーニング

     「ニュースが分かる」というのが、「ニュースに書いてある用語の意味を知り、ニュースの内容を飲み込める」ことをいうなら、多分このリストは、あまり長くならない。先の『現代用語の基礎知識 学習版』だとか、あとは科学分野の用語を補強する意味で、何故だかチャート式の数研出版から出ている『ニュースがわかる生物学』とか、もう少し新しい目の『科学ニュースがみるみるわかる最新ワード800』なんかがあれば、もっとぶっちゃけていえば、googleできる設備と時間があれば、それで十分だ。

     「ニュースが分かる」というのが、「ニュースが書いていること(と書いてないこと)のカラクリを理解する」というなら、もう少し、「仕組み」についての知識とある種のトレーニングが必要かもしれない。

     とりあえず通説を吟味するベーシックな方法を整理した苅谷 剛彦『知的複眼思考法』と、じつに簡単な方法だけで通説(「日本人は○○だ」)をバラバラに粉砕してみせる例題として杉本 良夫, ロス・マオア『日本人論の方程式』のコンボが第一推薦である。
    知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)知的複眼思考法 (講談社プラスアルファ文庫)
    (2002/05)
    苅谷 剛彦

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    日本人論の方程式 (ちくま学芸文庫)日本人論の方程式 (ちくま学芸文庫)
    (1995/01)
    杉本 良夫ロス・マオア

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     統計の嘘を見抜くみたいな本は腐るほどあるが、どこかの大学の学長が書いた、実名入りで社会調査を貶してるその話題性だけで売った本は、その本自体に適用すれば単なるトンデモ本でしかなかったことを身をもって示しているので、そっち系の本はまとめてパスする。

     それよりは、同じ数字をつかって考える/ウソを見抜くというなら、飯田 泰之 『経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える』の方がよい。「王様はハダカだ」と言うだけで終わらないからだ。

    経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える
    (2003/12/11)
    飯田 泰之

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    ■ニュースが分かる経済学

     かつての「現代思想」につまずいた少年たちが、コンプレックス故に数理フレーバーがまぶしてあるとクラクラしてしまったように、今時の心ある理系青年は、経済学フレーバーに弱いんだという(ほんとかよ?)。建築学科の一部にあった哲学コンプレックスよりくだらないが、悪いことに今時の経済学の入門書や教科書は「数式がない」ことをわざわざウリにしたりして、まっとうな理系の人には、回りくどくて余計にわかりずらい。

     少し古いが、矢野誠『ミクロ経済学の基礎』『ミクロ経済学の応用』は、数式でバキバキ展開といったものではないが、なぜこうするのか、という説明が丁寧。市場均衡という概念がどれほど使えるかをこれまた分かりやすく展開している。

    ミクロ経済学の基礎ミクロ経済学の基礎
    (2001/04)
    矢野 誠

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    ミクロ経済学の応用ミクロ経済学の応用
    (2001/09)
    矢野 誠

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     この本だけに限った話ではないが、市場均衡という考え方/ツールを知っておくと、少数で特定の参加者の利害だけが貫徹され、その他大勢の利害はまったく無視される、と考える「陰謀論/陰謀史観」が、悪い意味でナイーブなファンタジーに過ぎないことが、理解しやすい。
     利害関係は存在しないのではない。個々の利害が絡み合い全体として生み出す結果は、陰謀史観が想定するほどにはシンプルでないだけだ。参加者それぞれのインセンティブと、参加者同士の相互作用の縮約的表現である均衡概念の方が、まだ納得できる説明を生み出すことができるという経験をしてみるべきだ。
     たとえば、アカロフという経済学者は、経済合理的に行動する人が心理学でいう認知的不協和の状態にどのように陥ってしまうかを説明するモデルを(部分)市場均衡を使ってつくってる。

    ある理論経済学者のお話の本ある理論経済学者のお話の本
    (1995/03)
    ジョージ・A. アカロフ

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     しかし、ヘーゲルについてブルバキがいみじくも指摘した通り、人は自分にとって、ちょうど都合の良い程度に知識(あるいは知識欲)を欠いているものかもしれない。陰謀史観が均衡概念と相容れないとすれば、彼らが経済学をかじってみることはないのか。それでも、陰謀史観から卒業したり、陰謀論への免疫をつけたりするための手がかりにはなるかもしれない。

     さて、マクロ経済学。
     数式の重さにつぶれる人にも、『教養としての経済学』という《人文書》よりは、二変数のみ微分なしで、ミクロ的基礎から合理期待などの上のトピックをあつかってる世界でも稀有な書、松尾 匡『標準マクロ経済学―ミクロ的基礎・伸縮価格・市場均衡論で学ぶ』が、普通の教科書の裏舞台なども見れて吉。うしろには最低限必要なミクロ経済学の知識をまとめてあるので、時間のない人なら、これ1冊で済ますことも有り(いやなしか)。
     初級が済んだら、上級レベルとのつなぎとして、二神・堀の『マクロ経済学』を薦めたい。日本語で読める中級マクロの本というのは、実はほとんどなくて、選択肢がないのだが(しかも初級マクロと上級マクロの間には広くて深い隔たりが存在してるのだが)、そこらへんをしっかり自覚して書かれている。
    マクロ経済学マクロ経済学
    (2009/04/04)
    二神 孝一堀 敬一

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     著者の一人のページに、「はじがき」「目次」「第1章」の一部が掲載されている。
     以下は、その「はしがき」から。ここばかり一人歩きしても困るけど。

    巷には「誰でもわかる」と銘打つ書物が数多く出版されている。確かに,できるだけ少ないコスト(努力)で手早く多くの知識を得るためにそのような書物は必要かもしれない。しかし,真に学問の内容を理解するためには読み手にも努力が必要である。本書では,初歩的だがある程度の数学的な知識を必要とする個所を意図的に含めている。また,先述のようにかなり高度な内容にも踏み込んで記述を行った。したがって,読者の方にもある程度の努力を惜しまずに読むことをお願いしたい。テレビなどのマスコミに登場するエコノミスト,また大学の教授であっても最新の経済学の知識も持たずに,簡単な入門書の知識ほどの理解で批判的な言辞を振りまく人たちが数多く存在する。彼らのうわべだけの知識の言説に振り回されないために,本書をある程度の努力を払う覚悟で読んでいただければと望んでいる。




    ■ニュースがわかる政治学・社会学


     カラクリ系なリストを続ける。矢野誠『ミクロ経済学の応用』は「法と経済学」の入門になってるけど、有斐閣のNew Liberal Arts Selectionの『政治学』は、分担著者なのに、プリシンパルーエージェント問題という一本の筋を通していて、数理政治学の入門にもなっている。時事ネタ(ファクト)を拾い集めたい訳でなく、世のカラクリを理解したい人にはよい入り口。
    政治学 (New Liberal Arts Selection)政治学 (New Liberal Arts Selection)
    (2003/12)
    久米 郁男古城 佳子

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     同シリーズの社会学も、アップ・トゥ・デイトだが、こういうのを改訂し続けていくようになればいいのにね。さすがに社会学はトピックが広すぎるのか、政治学ほどのまとまりはないが。
    社会学 (New Liberal Arts Selection)社会学 (New Liberal Arts Selection)
    (2007/11/21)
    長谷川 公一浜 日出夫

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     数理社会学シリーズというのもあるが、『 数理社会学入門』と『 社会を“モデル”でみる―数理社会学への招待』以外はトピックが玄人向け。「招待」は手法とトピックのカタログにすぎないと言えばそうだが(トピックごとにたった数ページなので読むのは楽)、取り上げられている範囲はいわゆる社会学の範囲を大きく超えているので、数理的な社会科学の概観を得ることはできそう。ここから手を伸ばしていくと良い。

    社会を“モデル”でみる―数理社会学への招待社会を“モデル”でみる―数理社会学への招待
    (2004/03)
    日本数理社会学会

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    数理社会学入門 (数理社会学シリーズ)数理社会学入門 (数理社会学シリーズ)
    (2005/02)
    数土 直紀今田 高俊

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