ドイツ古典哲学の本質 (岩波文庫 赤 418-5)ドイツ古典哲学の本質 (岩波文庫 赤 418-5)
    ハイネ,伊東 勉

    岩波書店
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     さて、この本の本当のタイトルはこんなにいかめしくなくて、「ドイツの宗教と哲学の歴史のために」という、何かパンフレットみたいなものなのだけど、元々はドイツ文学を少しばかりかじっていい気になってるフランス人に、「ドイツ哲学」なるしろものを示してみせるために書かれたものだ。

     けれど本当は、詩人兼革命家であったハインリヒ・ハイネというドイツ人は、ことによると日々の労働やその埋め合せのための慰安や革命運動に忙しくて、哲学書なんて読む時間がないのかもしれない友達たちのために、自分の革命運動に忙しい中、これを書いた。


     たとえば何故君が哲学書なんかを読むべきなのか、あれらのこ難しげな書物は、君にとって(そしてまた革命にとって)どれくらいの意味があるのかを、ぼくは語って見せようと思う、とハイネは言っている。

     この本の中には(「ナントカの世界」なんて本と違って)女の子なんて出てこないけど(そして「救い」なんてあるようでないけど)、実はこれが一番わかりやすくて、かつ実用的で、加えてチャーミングな西洋哲学のブックレットなのだ。なんとなれば、ハイネには、誰も読めもしない「テツガクショ」を書くつもりも、書く時間もなかったからだ。

     革命詩人は、ドイツの妖精(コボルト)から語り起こし、ルターの宗教改革が、スピノザの堅い殻にかくされた「おいしい思想」が、それからレッシングが、カントの「三批判」が、「ドイツ国民に告ぐ」というアジテーションをとばしたフィヒテにはじまるドイツ観念論が、いかに思想の天空上の革命であったか、いかにぼくらの頭を押さえつけてきた古い亡霊や迷信や何かを払拭するために、役に立ったのか(そして役に立つのか)を、順番にやさしく述べていく。

     ドイツ哲学の歴史をヘーゲルまで駆け抜けた後、このかわいらしい本は、こんなくだりで終わってる。


     君達はギリシャ神話のオリュンポス山のことはよく知っているだろう。
     あの山で男女の神々が、はだかのままで、神のたべる酒や食物を酔い食らって、たのしんでいるあいだにまじって、こうしたよろこびや楽しみのさなかにいながら、よろいを着て、兜をかぶり、槍を手にした一人の女神を見つけるだろう。

     それこそ知恵の女神だ。





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