「理科をゼロから学ぶ方法も書いて欲しいです!」というリクエストをいただきました。

自然科学を勉強するのに、いくつかのアプローチが考えられます。
(1)がっつり理論に取り組む
(2)科学の歴史からせめる(自然科学の発展を追い掛ける)
(3)日常の疑問から入って行く

 (1)(2)については、最後に触れることにしましょう。
 
 このアーティクルで提案するのは、(3)日常の疑問から入って行くのアプローチです。理由は「ゼロから学ぶ」というのが条件だからです。

 「少しはかじったが勉強し直したい」というニーズには、(1)や(2)のアプローチも有用でしょう。「がっつり理論から」といっても、易しい目の本からゆっくりはじめてみる手もありますし、(2)も、本好きの人には受け入れやすいアプローチです。

 逆に(3)は意外と難しいです。子供達の素朴な質問が、意外どころか、とことん大人を悩ませることが多いように、日常の疑問はどんな角度で打ち込んで来るかわかりません。疑問を打ち返せてこそ、「日常の疑問から入って」いける訳ですから、ある程度の「打ち返す」ためのツールが必要です。

 実は、そういうツールが、理科をゼロから学ぶための《最終兵器》といってもいいものが、存在します。しかも《理科嫌い》が叫ばれて騒がしい、この国に。いや、むしろ《理科嫌い》の国だからこそ、こうしたものにニーズがあり、相当のリソースをつぎ込んで作っても引き合いがあるのでしょう。

それは、これです。

三訂版 スーパー理科事典 普及版三訂版 スーパー理科事典 普及版
(2006/07/20)
石井忠浩

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 一人で読めて大抵のことは書いてある教科書は、日本ではこんなところに生息していました。
 フルカラー700ページ強、大きさ25.4 x 18.3 x 3 cmの中には、知識や情報や映像だけでなく、何よりも「問い」が満載です。

 たとえば、
「イネ、コムギ、キビは葉や根、花のつくりなどがよく似ていることから同じなかまの植物であると予想できますが、発達した根を食用とするダイコン、ニンジン、ゴボウも同じなかまの植物なのでしょうか?」

 そして実際に、それぞれの根を水栽培して生えてきた葉や花の観察結果が写真と共に示されるわけですが、そこには意外な結論が……と、こういった感じなのです。

 出版社のサイトとくに目次を見てください。

 こういう「問い」を自分で生み出すだけでなく、そこを出発点に何とか「答え」ににじり寄っていくところを見せること、これは多分、個々の《科学知識》より、ずっと重要なものでしょう。

 この本は、中学理科の範囲まで押さえてますが、中学受験に読む子も多いようです。受験抜きでも、もとから知的好奇心のかたまりような年齢の子供達ですから、ハマるとどんどん読んでいきます。つまり小学生から読めて、大人も目からはらはらウロコが足下にたまります。
 値段は少々お高めですが「普及版」なら、クソ下らない新書本の5〜6冊分の費用で手に入ります。

(使い方) 
 きれいな映像をぱらぱら眺めながら、面白そうなところから読んでいく。

 これで、おしまいです。多分、自分で予想していたよりは、どんどん読み進めて行けると思います。




 一冊の本をオススメするだけで、締めてしまってはアーティクルとして成り立たないんじゃないか、という一抹の不安を感じますが、実のところブックリストは短ければ短いほど実用的なはずです。なぜなら読み手の時間は有限で、しかもかなりタイトなはずですから。でなければ、好きなだけ時間をかけて自分で手当り次第に本に当たり、自分にとってのベストを探すのが最善のはずです。

 書き手のひけらかしや読者への「おまえが読んでない本はまだこんなにあるんだあぞお」といった恫喝の分を差っ引くなら、多くの「推薦図書リスト」はずっと短くなるはずです。ましてや上から7冊目まで来て、ようやく「アタリ」に突き当たるようではサギです。

 それでも、これは書き手の不安からですが、数冊を比較のために並べてみます。

 リクエストは「理科をゼロから学ぶ方法も書いて欲しいです!」というものでした。

 これでだいたい探す方向が決まりました。「理科にはじめて触れるか、触れて間もない人たちに向かって書かれた本」です。プラス「はじめて学ぶ子供たちに理科を教える立場の人に向かって書かれた本」も含めました。実は冒頭の『理科スーパー事典』は、この2つの探索線が交差した(どちらの探索もたどり着いた)本でした。


 上から見下ろし目線で探して行くと、ブルーバックスの
発展コラム式 中学理科の教科書 第1分野(物理・化学) (ブルーバックス)発展コラム式 中学理科の教科書 第1分野(物理・化学) (ブルーバックス)
(2008/03)
滝川 洋二

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発展コラム式 中学理科の教科書 第2分野(生物・地球・宇宙) (ブルーバックス)発展コラム式 中学理科の教科書 第2分野(生物・地球・宇宙) (ブルーバックス)
(2008/03)
不明

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に行き当たりました。
 内容は、正直、普通の中学理科より高度です。これは中学生が現に教わっている内容ではなく、教わるべき内容になっているからです。

 短いコラムで構成されているのは忙しい大人が、ちょっとした隙間の時間に読むのに適しているかもしれません。各章の最後には「科学英語の部屋」というコーナーまであり、英国中学理科程度のテキストからその章に関する部分の抜粋が付いてます(英語の方がわかりやすかったりするのがご愛嬌です)。

 では、この本でいいじゃないか、という気もしますが、この本はむしろ、科学の各分野を学んだ人たちや、学んでいる人たちにむしろ適している感じを持ちました。つまり、例えば科学が好きになるかもしれない小学生に勧めたい本ではない、ということです。

 もう科学を学ぶ意義を見つけてしまっている人、学ぶ羽目に陥ってしまっている人になら、この内容、この記述でOKでしょう。しかし、と「理科離れ」の国から派遣された者としては、ここで首を縦に振りたくありませんでした。


 逆に下から見上げる目線で追い掛けて行くと、吉本笑子の音読帳シリーズ(正しくは「お母さん、もっとおしえて!シリーズ」というそうです)の、
『親子ではじめる理科まるごと音読帳 1時間目』……生物と地学
『親子ではじめる理科まるごと音読帳 2時間目』……物理と化学
親子ではじめる理科まるごと音読帳 (お母さん、もっとおしえて!シリーズ)親子ではじめる理科まるごと音読帳 (お母さん、もっとおしえて!シリーズ)
(2006/03/01)
吉本笑子

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親子ではじめる理科まるごと音読帳 2時間目 (お母さん、もっとおしえて!シリーズ)親子ではじめる理科まるごと音読帳 2時間目 (お母さん、もっとおしえて!シリーズ)
(2006/10/01)
吉本笑子

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親子ではじめる理科まるごと音読帳3時間目 (お母さん、もっとおしえて!シリーズ)親子ではじめる理科まるごと音読帳3時間目 (お母さん、もっとおしえて!シリーズ)
(2009/09)
吉本 笑子

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に行き着きました。総ルビ付きで、小学生が一人で読むもよし、著者が進めるように親子で読むのもよし、という本です。物語の中に、理科の知識が練り込んであります。
 これは本当にちびっ子と一緒に学ぶにはいいですが、物語という余分な成分が含まれているので、情報量はかなり少ないです。それがきっとはじめてのアタマにはちょうどいい具合なのかもしれませんが、「ゼロ」とは言っても、まるっきり何も知らない訳ではない人の「やりなおし」には、不向きかと考えました。


 タイトルとはあまり関係のない結論。
 今更ですが、《子供の本》は侮れません。人的資源と時間とお金がたっぷり注がれているのです。またユーザーも厳しいです。誤字などあろうものなら、ボコボコにされます。
 侮るべきは「著者が旬なうちに同じテーマで何冊も書かされた」書籍たちの方なのでしょう。

(3)日常の疑問からのアプローチに使えそうな本として(こちらも中学受験の参考書として有名/作ってるのが中学受験専門の塾なのです)他に、
新しい教養のための理科 基礎編 (小学理科か・ん・ぺ・き教科書)新しい教養のための理科 基礎編 (小学理科か・ん・ぺ・き教科書)
(2008/02)
啓明舎

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新しい教養のための理科 応用編〈1〉 (小学理科か・ん・ぺ・き教科書)新しい教養のための理科 応用編〈1〉 (小学理科か・ん・ぺ・き教科書)
(2009/02)
啓明舎

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新しい教養のための理科 応用編〈2〉 (小学理科か・ん・ぺ・き教科書)新しい教養のための理科 応用編〈2〉 (小学理科か・ん・ぺ・き教科書)
(2008/11)
啓明舎

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などもあります。こちらもフルカラーで情報満載です。が、「疑問に駆動される」ともいうべきアプローチの点で「理科スーパー事典」に軍配があがると思います。




さて、後回しにした2つのアプローチについても触れておきましょう。

(2)科学の歴史からせめる(自然科学の発展を追い掛ける)

 これは『語学としての数学』でいえば「風景」のアプローチの一種になります。自然科学という広大な沃野を、俯瞰的に一望するのに、その歴史を学ぶのはよいやり方です。
 科学史の本もたくさんありますが、ここでは

歴史研究の中に科学への視点を確立した、バターフィールドのコンパクトな著作と、
近代科学の誕生 上 (講談社学術文庫 288)近代科学の誕生 上 (講談社学術文庫 288)
(1978/01)
ハーバート・バターフィールド

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近代科学の誕生 下    講談社学術文庫 289近代科学の誕生 下  講談社学術文庫 289
(1978/01)
ハーバート・バターフィールド

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図版の多いこれと
図説 科学・技術の歴史―ピラミッドから進化論まで 前約3400年‐1900年頃図説 科学・技術の歴史―ピラミッドから進化論まで 前約3400年‐1900年頃
(2006/02)
平田 寛

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近代以降の社会との関連にも触れたこの教科書を
科学の社会史―ルネサンスから20世紀まで科学の社会史―ルネサンスから20世紀まで
(2001/04)
古川 安

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おすすめします。

化学や生物学の個別の歴史については、
○○学史で○○学を学ぶ』の記事も参照してください。

山本 義隆氏の著作は、物理学の歴史的展開を追いながら、理論まで学べてしまう重厚なものです。腹を据えて読むと滋味あふれる良書となるかも。

熱学思想の史的展開(ちくま学芸文庫)


磁力と重力の発見(みすず書房)


さて最後に(1)がっつり理論に取り組むアプローチを

といっても「中学レベルをマスターし、理論をかじりつきたくなった」というケースを想定してます。なので思いっきり易しい本から始めます。

もし、『理科スーパー事典』をスルーして、こちらのアプローチを選ばれた方は、
フォトサイエンス物理図録 改訂版―視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録 改訂版―視覚でとらえる
(2007/02)
数研出版編集部

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フォトサイエンス化学図録 改訂版―視覚でとらえるフォトサイエンス化学図録 改訂版―視覚でとらえる
(2007/02)
数研出版編集部

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視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録
(2007/02)
数研出版編集部鈴木 孝仁

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という映像のきれいな図録を手に入れましょう。
 現役生にも、図録をサブ参考書に持っておくのは有益です。土壇場で思い出す映像のクオリティが、数点の差に現れたりもするのです。受験生なら気分転換にぱらぱら目を通しておいたり、問題集の1つの章が終わった時に、関係あるところを流して読んだりするとよいです。

 次は、おそらく一番楽な参考書を並べました。予備校講義ものなので語り口も柔らか、内容も最低限に絞り込んであり、苦い思いを避けることができます。教科書の前に読む本、という感じですね。
橋元の物理IBをはじめからていねいに―大学受験物理 (力学編) (東進ブックス―名人の授業)橋元の物理IBをはじめからていねいに―大学受験物理 (力学編) (東進ブックス―名人の授業)
(2000/05)
橋元 淳一郎

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橋元の物理IBをはじめからていねいに―大学受験物理 (熱・波動・電気編) (東進ブックス―名人の授業)

岡野の化学をはじめからていねいに―大学受験化学 (理論化学編) (東進ブックス―気鋭の講師)岡野の化学をはじめからていねいに―大学受験化学 (理論化学編) (東進ブックス―気鋭の講師)
(2005/05)
岡野 雅司

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岡野の化学をはじめからていねいに―大学受験化学 (無機・有機化学編) (東進ブックス―気鋭の講師)岡野の化学をはじめからていねいに―大学受験化学 (無機・有機化学編) (東進ブックス―気鋭の講師)
(2005/03)
岡野 雅司

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新出題傾向対応版 センター試験 生物Iの点数が面白いほどとれる本新出題傾向対応版 センター試験 生物Iの点数が面白いほどとれる本
(2007/06/16)
大堀 求

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このあと、ブルーバックスの「現代人のための高校理科」シリーズ
新しい高校物理の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)新しい高校物理の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)
(2006/02)
山本 明利左巻 健男

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新しい高校化学の教科書 (ブルーバックス)新しい高校化学の教科書 (ブルーバックス)
(2006/01/21)
左巻 健男

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新しい高校生物の教科書 (ブルーバックス)新しい高校生物の教科書 (ブルーバックス)
(2006/01/21)
栃内 新左巻 健男

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新しい高校地学の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)新しい高校地学の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)
(2006/02)
杵島 正洋松本 直記

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を数回読めば、『一人で読めて大抵のことは載っている教科書』に載ってる本(ハリディキャンベルなら、この中継ぎはいらないかも)につないで行けると思います。

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