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     書物について、人が行うことができるほとんどすべてを為した人の話をしよう。

     彼は、多くの本を書いた。
     共同執筆した。寄稿した。
     アンソロジーを、一冊ものの書物を、それから何巻もある叢書を、編集した。
     書物についての講義を持った。
     書評した。翻訳した。
     索引を作った。
     三つの雑誌を創刊し、編集した。
     さらに自分の手で活字を組み、印刷し、製本した。
     プライベートプレスをつくり、自分が書いたものばかりでなく、世に知られた名著の最も美しい版(エディション)を自分の出版社から出版した。
     もちろん書物を蒐集した。
     彼のコレクションの一部、爆撃や当局による没収などを免れた、いくつかの幸運な部分は、後にそれぞれが世界的に知られるコレクションとなった。
     彼はまた研究施設を備えた図書館を設立した。
     世界中の図書館を行き来し、たとえばジュリアン・ケインの下でビブリオテーク・ナショナル(フランス国立図書館)がまともな図書館に生まれ変わるところや、記念碑的建物の他はまったく貧弱な蔵書しかなかったアメリカ議会図書館が何代も続く勤勉な館長たちのもとで世界最大の図書館となっていくところに、同時代人として立ち会った。
     そればかりか、二つの世界大戦の後に、ヨーロッパの図書館が元の姿を取り戻すように、いや、以前のそれを越えて互いに結びつくように尽力さえした。

     ほとんどすべて、というのは、彼は一度も書物を燃やしたことがなく、また検閲したこともないからだ。
     それ以外の書物についてすることのできるすべてを、彼はやった。

     しかし今日、書物に関わる仕事をする人たちの間では、彼の名前は、短命なプライベート・プレスの主宰者でも、ヴォルテールの世界的コレクターでもなく、ある一そろいの書物の著者として記憶されている。


     様々な観点から書物を列挙し一定の体系に配列した書物を、我々は書誌(Bibliography)と呼ぶ。
     書誌は、書物と書物を、そして書物と人を結びつける書物である。
     彼が著したのは、その書誌と書誌を結びつける書物、書誌の書誌だった。
     
     
     大英博物館図書館は、19世紀に爆発的に増加した蔵書に対して、それらを一つにまとめた図書目録を長い間持たなかった。つまりは機能的な図書館ではなく、単なる書物倉庫に過ぎず、博覧強記の司書たちの助けなしには、膨大な書物の蓄積にアクセスすることは適わなかった。
     そんな伝説的な司書のひとりが長年の念願であった統一図書目録を完成させ、大英博物館図書館は、世界中の書物を蔵し、図書目録の完備した図書館となった。

     
     彼もまた大英博物館図書館で自らを育てた独学の徒だった。
      
     大学はおろか、小学校ですら2学期しか通わなかった。
     家庭に恵まれず、母親の心ない言葉に追い出されながら、りんご1個を昼食のために持って、毎日、大英博物館の円形閲覧室に通った。
     閲覧資格を得るためには、最初は歳を誤魔化さねばならなかったが、そうして手に入れた資格証を彼は生涯肌身離さず持っていた。そして、それを使い倒した。
     こうして、大図書館で独力で自分の力を積み重ねていった。
     
     彼はやがて世界中の図書館を駆けまわることになった(それは彼の仕事には不可欠だった)。
     ビブリオテーク・ナショナル(フランス国立図書館)やアメリカ議会図書館の成長を寿ぎ、ヴァチカン図書館に少なくない親愛と尊敬の念を抱いたけれど、それでも大英博物館図書館がベストであるという信念は揺らがなかった。
     
     
     若き独学者は、書誌をつくるためにアニー・ベサント(神智学協会第二代会長としてクリシュナムルティに英才教育を施した)に、オリバー・ロッジに、そしてジョージ・フレーザーに会い、やがて彼らに傾倒した。
     1924年の彼の処女出版は多産だったベサントの文献目録であり、彼が20歳のとき出版された。
     彼はロッジらの影響から、神智学の他にもパラノーマルな現象に関心を深め、ロッジが会長をつとめたことのある心霊研究協会Society for Psychical Researchの調査員となり、やがて機関紙の編集に加わり、協会図書館のライブラリアンにもなった。
     もっとも心霊研究協会は1884年にブラヴァツキー夫人と神智学協会のトリックを暴いたことでも有名であり、その後も霊媒のトリックを暴くことに熱心だった。1930年にはコナン・ドイルら心霊派は協会の活動が「科学的過ぎる」として反発し大量脱退したが、直接の引金は、Modern Psychic Mysteries, Millesimo Castle, Italy (1929)について、彼が行った批判的批評だった。

     彼の書誌への傾倒は1930年代に入ると一層高まった。
     ほとんど学歴というものと無縁だった彼は、1931年にロンドン・ユニバーシティ・カレッジの図書館学部講師となり、1935年には編者の一人として招かれたオックスフォード書誌学叢書からThe beginnings of systematic bibliographyを出版した。

     同じ頃、彼はオックスフォード大学出版局に、世界中の書誌をまとめた書誌の企画を出している。
     この企画はろくに検討されずに、否定された。
     主な理由は、彼がこの企画を一人で成し遂げようとしていることだった。
     当時の営業部長だったハンフリー・ミルフォードとR・W・チャップマンは、世界中の書物を間接的にまとめあげることになるこの大著には、それにふさわしい多くのマンパワーが必要だろうと考えたのだ。
     そしてそれだけの労力と費用を投じても、このまだ存在しない書物を必要な人たちがいるのかどうか、言い換えれば商業的にペイするのかどうか、彼らには判断がつかなかった。
     
     ひょっとするとミルフォードたちは、彼の力を低く見積もっていたのかもしれない。
     しかし大英博物館図書館で独力で自身をつくりあげたこの男は、全身が書物でできているような人間であり、そして図書館に何がなければならないかについて信じるところがあった。

     付け加えるなら、大英博物館図書館で独学した先輩バーナード・ショーを尊敬し、その出版方法についてもよく知っていた。
     こうして彼は〈ガイオン・ハウス・プレス〉という小さな印刷所兼出版社を立ち上げた。そこで図書館に不可欠だが、出版されない著作を自分の手でつくることにした。
     1940年にドイツの爆撃で破壊されるまでの短い間、マグナ・カルタのもっとも美しいリプリント版(オリジナルとともにアメリカ議会図書館で展示された)や106巻に及ぶ『ヴォルテール書簡集』とともに、書誌の書誌として桁外れに包括的な書物『World Bibliography of Bibliographies(書誌の世界書誌)』は、このプライベート・プレスから出版された。
     今日、この書物は彼の名にちなみ「ベスターマン」と呼ばれている。

     書誌の世界書誌の初版(1939-40年)後、第二版は1947-49年と時間が開いている。これは、第二次大戦後、ベスターマンがユネスコでは国際情報交換局の局長を務め、ヨーロッパの図書館が元の姿を取り戻すように、さらにそれを超えて互いに支えあうネットワークが育つように、国際的な再建プランを立案した。


     彼、セオドア・ベスターマンは、こうした自身の半生を振り返った講演に、ノスタルジックで世紀末的な感じがする言葉で題をつけている。
     
     -------- The Bookman(本の人)と。


     Theodore_Besterman_psychical_researcher.png

    Signature_de_Theodore_Besterman.jpg



    (参考記事)



     

    アイデア大全
     アイデア大全

     単行本(ソフトカバー)336ページ
     判型:A5変形
     寸法: 21 x 14.8 x 2.5 cm
     出版社: フォレスト出版

     ISBN-10: 4894517450
     ISBN-13: 978-4894517455
     発売日: 2017/1/21



    (追記)電書出ます。 Kindle版楽天Kobo版、3/9(木)発売。3/7より予約開始です。

    アイデア大全アイデア大全
    読書猿

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    書き下ろしです。

    タイトルどおり、アイデアのつくり方、発想法の本です。
    このトピックに関する限り、知ってることは全部書いたので、ブログでおなじみのトピックも、一度も書いてないことも、すべて盛り込みました。アイデア、発想法関連の集大成になってます。

    無名の新人ですので、情報拡散や感想、書評などでご支援いただけると幸いです。



    読者予定者の方へ

     表紙も背表紙も小口もページもみんな黄色です。

    表紙と小口 mini 大全in本棚mini ページ内mini

     
     リアル書店での捜索にご利用ください。


    この本を読んで欲しい人

     想定読者は、いままでの考え方を変えたい人やアイデアを必要としている人ですが、実は、発想法なんて無縁だとか、アイデアを生むなんて自分には無理だと思っている人にこそ、読んでもらいたいです。
     
     本の中にも書きましたが、創造性についての心理学研究は、次のことを教えています。
    ・「アイデアを生み出すことができるのは、特別な才能を持った人だけであり、自分にはそんなことはできない」と多くの人が信じていること
    ・アイデアなんて考え出せないという人たちを押しとどめている最大のものは、「自分はひどく間違った(受け入れられない化け物のような)考えを生んでしまうのではないか」という恐れであること
    ・しかし実験してみると、彼らのほとんどが何らかのアイデアを生み出すことができ、そのうちには独創的と評価されるものすら少なからず(ある実験では3割も)含まれること

     アイデアを生む方法(発想技法)の多くは、あえて間違えて考える方法であると、言ってもいいかもしれません。
     すべてが成功する訳ではありませんが、あえて間違えるからこそ、今までにない考えを生むことができます。
     そうして生み出されるアイデアのほとんどは、どうしようもないクズですが、それは生み出した人がクズということではありません。
     よいアイデアを出してこれる人は、よいアイデアが出るまで数多くのクズのアイデアを出し続けているのです。

     アイデアに苦手意識がある人を励まし、背中を押せる本になっていればいいな、と思っています。


     あともうひとつ、アイデア本を今までちょっと馬鹿にしていた人にも、読んでもらいたいと思っています。
     考えを吟味しようにも、まず考えを得ないことには(着想なしには)吟味しようがないように、発想法は元々〈考え始める〉ことの技術であり、あらゆる知的営為の原点にあたるものです。
     原点であるからこそ、発想法の影響や発想法に類似するものは、知的営為のあらゆるところに見出すことができます。

     この〈発想法が知的営為の原点〉であり、〈あらゆるところに見出すことができる〉ことこそ、『アイデア大全』の寄って立つところです。
     これを次に説明しましょう。
     


    コンセプト

     実はこのブログにも「アイデア大全」というタイトルの記事があります。

    アイデア大全ー52の発想法/思いつくことに行き詰まった時に開く備忘録 読書猿Classic: between / beyond readers アイデア大全ー52の発想法/思いつくことに行き詰まった時に開く備忘録 読書猿Classic: between / beyond readers

     当初は、これを膨らませたらできるかと思ったのですが、結局、コンセプトから作り直しました。

     一口で言うと、ブログ記事の方は「広げるために薄くなった」のですが、これとは対照的に今回の本は「深くすることで広がった」感じです。

     ブログ記事の方のコンセプトは「およそアイデア本、発想法書の類で扱われるようなものは網羅しよう」というもので、一つひとつの手法の記述量を最小限にして、とりあげる手法の数を増やす方に注力しました。ですが、カバーするのは従来の発想法の範囲にとどまりました。

     対して、今回の本は、その枷を外して「発想法とはなんぞや」から考え直してみました。
     その導きの糸となったのは、〈発想法×人文学〉というコンセプトです。
     
     以下では、このコンセプトを説明することで、今回の本が、他のアイデア本や発想法書とどう違っているかをお話したいと思います。


    発想法と実践知の伝統

     〈発想法×人文学〉というコンセプトを採用した第一の理由は、発想法がもともと人文の知と非常に親しい関係にあったことがあります。
     今日ではほとんど忘れられていますが、このことについては先日少し書いてみました。



     人文の知は、古代から近世にかけて、人と言葉をめぐる実践知である弁論術を依代として発展しました。
     そして発想法は、その弁論術の第一カノンであったインヴェンチオ(invention発明の語源)に端を発します。

     また、哲学に端を発する厳密知に対して、弁論術は実践知を奉ずるもうひとつの知的系譜の源泉でもありました。
     哲学から科学へ、またクリティカル・シンキングなどへつながる厳密知の伝統では、いつもいかなる場合にも正しい(普遍妥当な)知を求め、偏ったり誤ったりしがちな逸脱的思考をチェックし糺す思考ツールを作り上げてきました。
     対して弁論術の流れをくむ実践知では、正しいか間違っているかではなく、好ましいか/効果があるか否かが評価軸となることから(正しいだけで効果のない弁論はよい弁論とは言えません)、偏ったり誤ったりする思考をあえて利用する方法も保存されました。

     そしてアイデアもまた、正しいか間違っているかではなく、好ましいか/効果があるか否かで評価すべきものです。

     発想法を、元々そうであったように、実践知の伝統に結わえ直すことで、発想のツールを集めたこの本は、『哲学の道具箱』や『思考の道具箱―クリティカル・シンキング入門』のような厳密知のツール(正しく考えるためのツール)を集めた書物のカウンターパートとなる書物(好ましい考えを生むツールの書)をめざしました。


    人文知による〈繋がり〉の発掘

     しかし歴史上、発想法と人文の知が接触し交差したのが事実だとしても、現在の我々はその邂逅から遠いところにいます(その邂逅を忘れているほどに)。
     今、再び、発想法と人文の知を出会わせる理由はなんでしょうか?

     この問いの答えが〈発想法×人文学〉というコンセプトを採用した第二の理由です。
     それは、個々の発想法が他の知的営為との間に持っていた〈繋がり〉を発掘することで、本来持っていた可能性を掘り起こすことができるのではないか、と考えたからです。

     このブログで繰り返してきたように、知識はスタンドアローンでは存立できません。
     それと同じように、人間の知的営為もまた、他の営みと切り離すことはできません。

     〈ルーツを遡ってみる〉という人文的なアプローチを個々の発想技法に適用してみることで、異なる発想技法が同じルーツを持つことが発見できました。
     共通のルーツを介して技法同士の〈繋がり〉を発見することは更に、これまで発想法としては紹介されて来なかった思考法や知的営為と発想法との〈繋がり〉に気付くきっかけにもなりました。
     発想法という枠の外にも、よく似た思考法や知的実践を見つけることができました。
     異なる分野に分化する以前にまで遡ることが、分野の垣根を乗り越えることにつながった訳です。
     こうした〈深掘り〉を続けていくことで、他のアイデア本や発想法本が扱っていない発想技法をいくつも採集することもできました。また、技法の間の関係についても突っ込んだ説明をつけることができました。
     各技法の底にある心理プロセスや、技法が生まれてきた歴史的/思想的背景まで踏み込んで解説できたのも、このおかげです。


     抽象的な話が続いたので、〈繋がり〉発掘の具体例を一つ挙げてみます。

     マイケル・マハルコは『アイデア・バイブル(原書名:Thinkertoys)』という本の中でHall of Fame(直訳するなら栄誉殿堂)という発想技法を紹介しています。
     これは、名句辞典をランダムに開いてみつけた名句を発想のタネにする発想手法です。

     この技法から、以下のような探索していくと、次の図のように他の発想技法や知的営為との〈繋がり〉が発見できます。

    HallOfFameからの展開
    (クリックで拡大)



     まず占いについて少し知っている人なら、マハルコのHall of Fameは古くから行われてきた〈開典占い(bibliomancy)〉にそっくりだと気付きます。

     開典占いから占い一般に話を広げてみると、多くの占いは、発想法では〈ランダム刺激〉と呼ばれる手法と照応することが分かります。

     本来的に、ランダムな現象に神意や未来を読み取る技が占いですが、そこで繰り返し問われている「これは本当は何か?」という問いは、SF作家のフィリップ K. ディックが執拗に問い続けた〈P.K.ディックの質問〉そのものです。

     ランダム刺激は、どんなものであれランダムに選びだした刺激(きっかけ)を用いる発想法ですが、刺激(きっかけ)をあらかじめリストにしておけば、連射的にアイデアを生むことができます。この連射型ランダム刺激は、〈エクスカーション〉という名前がついています。
     これはその名のとおり、元々は散歩に出かけて出会うものからランダムな刺激を得る方法ですが、いまでは動物その他の「◯◯づくし」リストをつくっておいて、リストの項目を片っ端から刺激として使う簡易版がよく使われます。

     次に発想法から科学史に目を転じれば、ランダムな刺激が科学的発見に決定的な役割を果たした事例を数多く発見できます。これは〈セレンディピティ〉という概念で取り上げられています(この幸福な偶然を手法化したものに〈セレンディピティ・カード〉があります)。

     Hall of Fameに戻って、安直なやり方をその趣旨を汲んで本来あるべき形に作り直せば、偉人を想像的に召喚して、自分の代わりに彼ら偉人たちに考えてもらう方法になります(本書には〈ヴァーチャル賢人会議〉として搭載しました)。

     ここで考えた手法は複数の偉人賢者を呼び出すものですが、映画史をかじった人なら知らないものはない〈ルビッチならどうする?〉は、その単独版です。

     さらにヴァーチャルに偉人を呼び出すだめには、彼らの思考法を自家薬籠中の物にしなければなりませんが、これは孟子がいう〈私淑〉です。

     私淑の方法のひとつに、〈抜き書き〉という、古来より弁論家たちが自分の言葉の武器庫を作るのに用いてきた方法があります。これは出来合いの引用句辞典を使うのではなく、自ら(必要なだけ)引用句辞典を編むことです。



     こうした技法の掘り下げと〈繋がり〉探しを通じて、探索は発想法の外へと自然に広がります。
     ある思考法を、発想法とみなしたり、それ以外の知的営為に分類したりするのは、むしろ後付けです。
     頭の使い方としては大して変わらないのであれば、まとめて統一的に扱ったほうが、説明も理解もしやすいと考えました。
     結果として、発想法や創造性開発の分野だけでなく、科学、技術、哲学、弁論術、文学、芸術、映画、心理療法、宗教、呪術、など多くの分野を渉猟し、考えを生み出す方法を採集することになりました。

     最初に言った「深くすることで広がった」とは、こういう意味です。

     〈発想法×人文学〉というコンセプトのおかげで、アイデアのつくり方を扱った本の中では、最も広く深い書物になったと思います。


    自分や世界のあり方を変える知

     最後にもうひとつ、発想法の書物が人文の知と関わるべき理由があります(第三の理由です)。

     一般的には、人文書は、哲学・思想書や歴史書やその他人文学に含まれるのようなジャンルの本を総称した呼び方です。
     けれど、もう少し勢い込んで言うなら(志みたいなものを汲むなら)、哲学書が日常や当たり前を疑うことを見せ、歴史書が我々が忘れた過去を教え我々がどこにいるのか示すように、人文書とは、自分や世界のあり方を振り返り、問い返し、あるべき姿を探すことを促し、支えようとする書物です。
     
     一方、発想法の書物を必要とする人たち、すなわちアイデア(新しい考え)を生むのに〈いつもと違ったやり方〉を必要としている人たちは、今までの考え方やものの見方では解決しない課題や問題に直面していたり、普段思っていることやこれまで考えてきたものとは違う何かをひねり出さなくてはならない状況に置かれています。

     大げさに言えば、この人たちは、(ほんの少しであれ)自分や世界を変えることを求められています。

    ------我々の直面する重要な問題は、その問題を作ったときと同じ考えのレベルで解決することはできない。(アインシュタイン)

    ------大切な概念に疑問をもたれたり捨てられたりする時の科学者の最初の反応は、激しい同様であることが多い。しかし、怒って対立概念を不当に拒否せずにそれを受け入れられれば、この動揺は非常に有益であることがわかる。なぜならば、以前には疑わなかった自分の考え方の多くに欠点があることに気付くからである。これは、自分の仮説を捨てて他人のものを受け入れるという意味ではない。そうではなくて、必要なのは自分の哲学を意識的に批判することであり、これが適切な変化をもたらし、究極的には新しい哲学の絶えざる創造をもたらすのである。(デヴィット・ボーム)


     発想法を扱う書物は、自分や世界のあり方を振り返り、問い返し、あるべき姿を探すことを促し、支えようとする書物(人文書)でもあるべきだと考える理由が、ここにあります。
     
     この試みがうまくいったかどうか読んだ人の判断に委ねるしかありませんが、自称〈自分や世界を変えるための書物〉に搭載された技法は、当然ながら、この書物に対しても用いることができます。
     この本で紹介する発想ツールは、新しい発想ツールを創案するのにも、もちろん使えます。
     著者は、この本を使いながら/使っていくうちに、読者が自分で追加する/作り変えていくことを期待しています。
     そのためにも、技法を考え直すためのヒントと解説、各技法の由来、寄って立つところ、他との知的営為との関係や位置づけ等を盛り込みました。



    全体の構成と内容

     全体の分類は、まず〈課題もテーマも与えられてないゼロの状態で使えるもの〉と〈少なくとも1つ、テーマやアイデアがある状態からそれを増やすもの〉の二つに大きく分け、〈ゼロの状態で使えるもの〉を5つの章に、〈少なくとも1つある状態で使うもの〉に6つの章に分類し、各章には小口のインデクスからアクセスできるようにしました。

     それぞれの分類と、そこに収められた技法は、以下の通りです。


    第I部 0から1へ

     第I部は、〈課題もテーマも与えられてないゼロの状態で使える〉技法を集めました。
     ビジネス向けに開発された発想技法は、「◯◯についてアイデアを出せ」といったシーンを想定しているものが多いのですが、アイデアが必要となるのは、誰かから課題やテーマを与えられる場面だけではありません。
     むしろ何について考えればいいかすら分からない場合や、何を問題として切り取ればいいかを自分で考える必要がある場合、与えられた問題設定ではうまくいかず自分で変更しなければならない状況などで使えるツールをここに分類してあります。

    第I部 0から1へ
    (クリックで拡大)



    第II部 1から複数へ

     第II部には、〈少なくとも1つ、テーマやアイデアがすでにある状態〉で用いる技法を集めました。
     他から「◯◯についてアイデアを出せ」とテーマを与えられた場合や、第I部の技法を使って、自分なりの課題なりテーマを捕まえたり、アイデアの核になりそうなものを得られた後に、さらにそれを展開していく際に役に立つツールたちが並んでいます。アイデアを考える順序からいって第I部に続くものたちなので、その後ろの第II部にまとめました。

    第II部 1から複数へ
    (クリックで拡大)



    アイデア年表

     巻末には、『アイデア大全』に登場する発想技法、思考法、発明・発見を、時系列順にまとめた年表をつけました。
     発想法をめぐる人の歴史の流れと広がりを一望できるものであり、発想法が知的鋭意のあらゆる方面に広がっていることが見ていただけると思います。
     本書を一読後、年表を眺めてみるといろんな発見ができることから、巻末に配置しました。



    (備考)発想法シソーラスとしての構成

     アイデアを生むための方法を知ろうとしてこの種の書物を手に取る人は、発想法をいくつか既に知っているかもしれません。
     知ってはいるけれど他の知らない方法がないか探している、今までの方法でない何かが必要だからこの本を読んでみた、そんなユーザーを想定して、この本では収録した技法をシソーラス的に配列してあります。

     シソーラスというのは、ピーター・マーク・ロジェという人が作った一種の類語辞典です。
     それまでの類語辞典と違っていたのは、ロジェはその辞書にのせた言葉を分類して、意味の近い者同士を近くに、遠いもの同士を遠くに位置するように、全体として意味のグラデーションをなすように、配列したことです。
     類語辞典を必要とする人は、たとえば文章を書いていて、自分の知っている言葉では満足できず、その言葉と似ているがもっと違った表現が欲しいと思っています。
     そんな人は、ロジェのシソーラスを開いて、自分が知っている(が満足できない)単語からスタートして、その周囲に自分が希望にあった言葉を探します。近くには意味の近い言葉が並んでるはずですから、近くからはじめて次第に捜索範囲を広げていくことで(意味は段々と遠ざかっていきます)、ピッタリの言葉を探すのです。

     この『アイデア大全』でも技法を分類して、似ている技法はより近くに配置するようにしました。
     この本の中には、他の本に出てこない技法だけでなく、よく知られている技法も載せてあります。
     自分が知っている(使ったことがある)技法はあるけれど、目下の目的には少し違う技法が必要という場合は、ロジェのシソーラスのように、知っている技法の周囲の技法からはじめて、次第に索範囲を広げていくことでピッタリの技法を見つけることができるようになっています。



    技法ごとの構成(フォーマット)

     各技法の紹介は次のような項目で構成されています。

    (ヘッダー部)

    ▼技法名:技法の名前
    ▼キャプション:技法の特徴や意義の一行紹介
    ▼難易度:技法の難易度
    ▼開発者:技法の開発者


    (コンテンツ部)

    ▼参考文献:
     開発者が不明な場合を含めて、すべての技法に一つ以上の参考文献を挙げました。
     巷のアイデア本・発想法本のほとんどに参考文献がついていないのを苦々しく思っていたので、文献注もできるだけつけました。
     より詳しく知りたいと思った場合の手がかりとなり、発想技法以外の知的営為へつながる知の扉(ゲートウェイ)ともなるように仕込んであります。

    ▼用途・用例:
     技法をどのような場面、場合に用いるべきかについてヒントをまとめました。
     ここに示す用途・用例は代表的なものであり、読者(ユーザー)はこれを越えて技法を活用できるだろうと思います。

    ▼レシピ:
     技法の使い方を手順として示す部分です。
     具体的に何をどんな順序で行えばいいかシンプルにまとめてあります。

    ▼サンプル:
     技法の使用例を示すところです。
     ここで示された例は実在するものの他に、反実仮想的なものを含んでいます。
     たとえばダンロップが空気入りタイヤを発明したのは、考案中にたまたまサッカーボールを見かけたからですが、NM法という発想技法を使えば偶然の助けなしに同じ発想に至ることができることと、この技法の例として示しています。
     というのは、技法をつかって実際に生み出された発明や導かれた発見(技法→発明/発見)の他に、発想技法の開発者たちが以前の発明発見に学び、そのプロセスを選択的に抽出することで、その技法を構成していった(発明/発見→技法)事情があるからです。
     歴史解釈に後知恵を持ち込むのはフェアでありませんが、技法の持っている可能性を開示/展開するために、あえてそうした事例を用いました。

    ▼レビュー:
     技法の背景や可能性、他の技法や知識領域とのつながりについての解説を最後につけました。
     この項目は、当該技法と他の思考法や知的営為との関係を示し、思考の道具について自分で考えるためのヒントを提供するものです。
     普通のアイデア本は使用例をあげるところまでなので、この項目が『アイデア大全』の最大の特徴となります。いちばん読書猿らしく暴れている部分でもあります。

     金槌の起源を知らなくても釘は打てるように、純粋に発想の道具を求めるだけなら、この項目は不要かもしれません。
     しかし発想法は思考法の一部であり、よりよく使うには、また、いずれは自分の方法を生み出すためには、道具について知り考えることが、遠回りのようで近道だと思います。


     なにより今回の本は実用書です。
     紹介記事としてはここで一旦終えて、それを使ってどんなことができるかお見せした方がよいかもしれません。
     では、次はユーザーズマニュアルでお会いしましょう。

     


    (付録)目次+登場する人名と事項

     もう少し具体的な内容を知りたいという人のために、キャプションまで含めた目次と、登場する人名と事項の一覧をお見せします。





    (目次)

    第I部 0から1へ
     第 1 章 自分に尋ねる
      01 バグリスト Bug Listing
       …不愉快は汲めど尽きぬ発想の泉
      02 フォーカシング Focusing
       …言葉にならないものを言語化する汎用技術
      03 TAE のマイセンテンスシート Thinking at the Edge My Sentence Sheet
       …何を書くかを身体に尋ねる
      0 4 エ ジ ソ ン ・ ノ ート Edison's Notes
       …発明王はここまでやる、1300 の発明をもたらした 3500 冊
      05 ノンストップ・ライティング Nonstop Writing
       …反省的思考を置き去りにする
     第2章 偶然を読む
      06ランダム刺激 Random Stimuli
       …偶然をテコに、枠を越える最古の創造性技法
      07 エクスカーション Excursion
       …手軽に大量のアイデアが得られる発想の速射砲
      08 セレンディピティ・カード Serendipity Cards
       …幸運な偶然を収穫する
      09 フィンケの曖昧な図形 Finke's Ambiguous Parts
       …創造性の実験から生まれたビジュアル発想法
     第 3 章 問題を察知する
      10 ケプナー・トリゴーの状況把握 Situation Appraisal
       …直観を思考のリソースにする、懸念の棚卸し法
      11 空 間 と 時 間 の グ リッド Space/Time Grid
       …異なるスケールを探索し、問題とその兆しを察知する
      12 事例-コード・マトリクス Cases/Codes Matrix
       …質的データを深掘りし仮説を見出す
     第 4 章 問題を分析する
      13 P.K. ディックの質問 P.K. Dick's Question
       …常識と日常を叩き割る最凶の問いかけ
      14 なぜなぜ分析 Ohno Method
       …トヨタ生産方式を産んだ「カイゼン」由来の思考ツール
      15 キプリング・メソッド Kipling Method
       …5W1H という万能思考
      16 コンセプト・ファン Concept Fan
       …水平思考の開発者による、思考の固着を剥がすスクレイパー
      17 ケプナー・トリゴーの問題分析 Problem Analysis
       …why(なぜ)を what/when(いつ何が)に変換する
     第 5 章 仮定を疑う
      18 仮定破壊 Assumption Busting
       …発想の前提からやりなおす
      19問題逆転 Problem Reversal
       …発想の狭さを自覚させる簡易ゲージ 
    第II部 1から複数へ
     第 6 章 違う視点で見る
      20ルビッチならどうする? How would Lubitsch have done it ?
       …偉大な先人の思考と人生を我がものにするマジックフレーズ
      21 ディズニーの 3 つの部屋 Disney's Brainstroming
       …夢想家ミッキー・実務家ドレイク・批評家ドナルドダックで夢想を成功に結びつける
      22 ヴァーチャル賢人会議 Hall of Fame
       …発想法の源流にまで遡る、方法としての私淑
      23 オズボーン・チェックリスト Osborn's Chechlist
       …ひらめきを増殖させるアイデア変形の十徳ナイフ
     第 7 章 要素を組み合わせる.
      24 関係アルゴリズム Crovitz's Relational Algorithm
       認知構造の深い部分で働くメタファーの力を賦活し利用する
      25デペイズマン Dépaysement
       …シュルレアリストが駆使した奇想創出法
      26 さくらんぼ分割法 Cherry Split
       …軽便にして増減自在の、新世代型組合せ術(アルス・コンビナトリア)
      27 属性列挙法 Attribute Listing
       …潜在的な記憶宝庫を賦活化し使い倒す
      28形態分析法 Morphological Analysis
       …鬼才天文学者が開発した悉皆的発想法
     第 8 章 矛盾から考える
      29 モールスのライバル学習 Morse learns the enemy
       …あえて避けているところはないか? そこに探しているものはないか?
      30 弁証法的発想法 Dialectical Thinking
       …矛盾は汲めど尽きぬ創造性の源泉
      31 対立解消図(蒸発する雲) Evaporating Cloud
       …組織/社会の問題から個人の悩みまで、対立/ジレンマを解体するスキナーナイフ
     第 9 章 アナロジーで考える
      32 バイオニクス法 Bionics
       …何十億年の自然淘汰が磨いた生物の持つすぐれた「知恵」を我がものにする
      33 ゴードンの4つの類比(アナロジー) Gordon's Analogies
       …問題解決過程の録音と分析から抽出されたシネクティクスの中核技法
      34 等価変換法 Equivalent Transforming Thinking
       …アナロジー発想法の最終到達
      35NM 法 T 型 NM Method T type
       …4 つの質問で自分の中のリソースを違うやり方で読み出す、アジャイルなアナロジー発想 法
      36 源内の呪術的コピーライティング Gennai's Branding
       …世に呪術(まじない)の種は尽きまじ
      37 カイヨワの〈対角線の科学〉 Science Diagonale
       …分野の仕切りを貫通する、最も長い射程を持つアナロジー法
     第 10 章 パラフレーズする
      38 シソーラス・パラフレーズ Thesaurus Paraphrase
       …類語辞典を発想の支援ツールにする
      39 タルムードの弁証法 Dialectcs of the Talmud
       …すべてを失ったユダヤ人が生きのびるために開発したテクスト解釈法
     第 11 章 待ち受ける
      40 赤毛の猟犬 Rolling in the grass of ideas
       …アイデアの原っぱで転げ回る
      41 ポアンカレのインキュベーション Poincare's Incubation
       …すべてはここからはじまった、発想法/創造性研究の源流
      42夢見 Dream works
       …夜の眠りを味方につける
    アイデア史年表.
    索引


    (登場する人名)
    アインシュタイン,アルベルト/赤池学/アダマール,ジャック/アダムス,ジェイムズ/アダムズ,ジョン/アデア ,ジーン/アラゴン,ルイ/アリストテレス/アルテミドロス/アルプ,ジャン/アレクサンドロス/アレン ,マイロン/市川亀久彌/市川金三郎/市川銀三郎/ヴィーコ, ジャンバッティスタ/ウィーナー,ノーバート/ヴィトゲンシュタイン,ルートヴィヒ/ヴェルギリウス/ウォード,トーマス・B. /ウォーレス,グラハム/ウォルポール,ホレス/内田樹/江川玟成/江坂遊/エジソン,トーマス/エルンスト,マックス/エロヒーム/大野耐一/オグデン,チャールズ・ケイ/オスボーン,アレックス・F/ガーフィンケル,ハロルド/カイヨワ,ロジェ/カエサル,ユリウス/カリクレス/ガリレイ, ガリレオ/キケロ,マルクス・トゥリウス/キップリング,ラドヤード/木下謙次郎/キャリア,ウィリス/キリコ,ジョルジョ・デ/ギルフォード,ジェイ・ポール/グーテンベルグ,ヨハネス/クロウ,キャメロン/ケクレ,アウグスト/ケプナー,チャールズ/孔子/ゴードン,ウィリアム J.J./コーネル,アン・ワイザー/ゴールドバーグ,ナタリー/ゴールドラット,エリヤフ/小津安二郎/小林一茶/ゴルギアス/佐藤郁哉/サムエル/サルトル,ジャン=ポール/澤泉重一/シェリー,メアリー/シェリング,トーマス/ジェンドリン,ユージン/周公旦/ショールズ,クリストファー・レイサム/ジョンソン,マーク/シラー,フリードリヒ/白川秀雄/沈括/スウィフト,ジョナサン/スウェーデンボルグ/スタインバーグ,ソール/スチュアート,キルトン/スティール,ジャック・E・/スパランツァーニ,ラザロ/スミス,アダム/スミス,フレッド/セルビー,ディヴィッド/ソクラテス/ソシュール,フェルディナン・ド/ダ・ヴィンチ,レオナルド/高橋浩/田坂広志/田中耕一/ダニエル/ダリ,サルバドール/タルティーニ,ジュゼッペ/チクセントミハイ,ミハイ/チャップリン,チャールズ/チャンピー,ジェイムス/チューリング,アラン/ツァラ,トリスタン/ツビッキー,フリッツ/ディズニー,ウォルト/ディック,フィリップ・K/ディルツ,ロバート/デカルト,ルネ/手塚治虫/デュメジル,ジョルジョ/デュルケム,エミール/デトマー ,H. ウイリアム/得丸さと子/ドムホフ,G.ウィリアム/トリゴー,ベンジャミン /トリュフォー,フランソワ/ドレイク,ルードヴィヒ・フォン/トンプソン,チャールズ/中山正和/ニーチェ,フリードリヒ/ネブカドネザル/スペンサー,パーシー/ハーフェズ/バーン,エリック/パイク,グラハム/ハウ,エリアス/バタイユ,ジョルジョ/パパネック,ヴィクター/ハマー,マイケル/林望/ヒギンズ,ジェイムズ/ピックフォード,メアリー/ビュフォン,ジョルジュ=ルイ・ルクレール/平賀源内/ファインマン,リチャード・P/ファラデー,マイケル/フィヒテ,ヨハン・ゴットリープ/フィンケ,ロナルド/フォイエルバッハ,ルートヴィヒ/フックス,ラザルス/フッサール,エドムント/プラトン/フランケンシュタイン/ブリュル,レヴィ/プルタルコス/ブルトン,アンドレ/ブルネル,マーク・イザムバード/フレイザー,サー・ジェイムズ・ジョージ/フレイザー,ジェームズ/フレミング,サー・アレグザンダー/フロイト,ジグムント/ペイジ,ラリー/ヘーゲル,ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ/ヘップバーン,オードリー/ペトラルカ,フランチェスコ/ベル,グラハム/ヘルムホルツ,ヘルマン・フォン/ヘンドリクス,メアリー/ポアンカレ,ジュール=アンリ/ホークス,ハワード/ホームズ,シャーロック/ホブソン,アラン/ホメロス/ポリア,ジョージ/マートン,ロバート/マカフリー,ロバート/マグリット,ルネ/マクルーハン,マーシャル/マコーマック,サビーヌ/正岡子規/マタイ/松尾芭蕉/マッカートニー,ポール/マッソン,アンドレ/マハルコ,マイケル/マルクス,カール/丸山眞男/三浦公亮/明恵/村瀬孝雄/メンデレーエフ/孟子/モース,マルセル/モールス,サミュエル/モンテーニュ,ミシェル・ド/モンロー,マリリン/ヤーコブソン,ローマン/ヤング,ジェームス・ウェブ/横井軍平/ヨセフ/ラザフォード,アーネスト/ラファイエット,マリー・ジョゼフ/ラマヌジャン,シュリーニヴァーサ/ランゲ,ジェームズ/ランビュール,ジャン=ルイ・ド/李商隠/ルヴェルディ,ピエール/ルビッチ,エルンスト/レイ,マン/レイコフ,ジョージ/レヴィ=ストロース,クロード/レヴィナス,エマニュエル/レモン,ジャック/レントゲン,ヴィルヘルム/ロートレアモン伯爵/ロジェ,ペーター・マーク/ロバート・クロフォード/ワイク,カール・E./ワイルダー,ビリー/渡辺慧

    (登場する事柄)
    5W1H/QCサークル/QWERTY配列/X線/アイリッシュ・セッター/「アエネーイス」/青髭八人目の妻/アカデミー賞/アクティブ/悪魔のトリル/アジア/アジャイル/辺縁系/アッラー/「アパートの鍵貸します」/雨雲レーダー/アメリカ/アメリカ映画/アメリカ合衆国の独立/アメリカ企業/アメリカ空軍/アラウーノ/アルカリ乾電池/アルザス/アルス・コンビナトリア/アングロサクソン/アンサンブラージュ/アンチ・テーゼ/暗黙のルール/イージーオープンエンド/イギリス/遺産分割/意思決定/イシュマエルの13規則/イスラエル/イスラム/イスラム教/一コマ漫画/一物一価/イド/否定形/異文化/イリアス/因果関係/インキュベーション/インスパイア/インタラクション/インド/陰陽師/ヴァーチャル/ウアチェト/ウィキペディア/ウェブ/ウェブページ/宇治拾遺物語/内なる編集者/宇宙医学/宇宙空間/宇宙服/宇宙物理学/宇宙旅行/鰻屋/麗しのサブリナ/運送業/映画監督/映画史/映画人/英語圏/エクスカーション/エクセル/絵コンテ/エジプト/画図百鬼夜行/エセー/エドワード/エネルギー変換/円周率/「お熱いのがお好き」/オーク/オークション/オーストラリア/オートマティスム/オーパーツ/オーバーフロー/オーバーロード/オクスフォード/オジブワ族/オスボーン/オズボーン/オスボーン・チェックリスト/オデュッセイア/おとり捜査/オハイオ州/表計算ソフト/オリジネーター/オルソン/オレンジピール/カール/カーン/下位概念/会議室/回帰の誤謬/解釈学/カイゼン/回想録/懐中電灯/海底ケーブル/概念メタファー/科学アカデミー/科学史/科学社会学/学位論文/学習者/霞ヶ関/数論/肩甲骨/活性化/活版印刷/貨物輸送/カラダ/カラムーチョ/ガリヴァー旅行記/カリブー/枯れた技術の水平思考/環境問題/感染呪術/かんばん方式/慣用句/管理者/関連会社/記憶の固執/機械工学/気化熱/記号論/奇祭/疑似科学/技術開発/記述法/擬人化/キットカット/金精神の事/脚本家/旧ソ連/旧約聖書/共同開発/共同体/ギリシア語/ギリシア神話/ギリシャ語/キリスト/キリスト教/記録密度/金枝篇/グーグル/草分け的存在/口伝律法/クライアント/グラハム/クリエイター/クルアーン/クローゼット/グローバル教育/クンダリニー/訓練学校/蛍光灯/芸術家/携帯型ゲーム機/契約書/ゲームウォッチ/ゲーム理論/ケプナー・トリゴー/ゲルマン/ケルン/験担ぎ/原稿用紙/言行録/言語学/言語学者/言語表現/検索エンジン/現実的/原子模型/現象学/原生林/現代社会/現代文明/好奇心/工業国/後継者/高等師範学校/交流分析/ゴールドラット/コガネグモ/古代ギリシア/コダック/国会議事堂/言葉遊び/コピーライティング/ゴミ屋敷/コラージュ/ゴンドラリフト/コンピュータシステム/サーチエンジン/サイクロプス/最適化/サイドメニュー/サイバネティクス/サッカーボール/更級日記/山海経/酸素欠乏症/仕掛け人/仕掛品/自己欺瞞/自己検閲/システム工学/自然現象/自然淘汰/自然発生/思想史家/実験動物/質的/自動書記/シネクドキ/社会学/社会学者/社会構造/社会心理学/社会人類学/社会的/ジャングル・ブック/周礼/周期表/従業員/宗教改革/宗教学/周公解夢全書/修辞技法/修飾語/収束的思考/充電器/呪術師/受信機/受胎告知/シュミット/シュルレアリスト/シュルレアリスム/旬菜膳語 /上位概念/上下関係/条件反射/肖像画/商品化/情報科学/情報工学/ショートショート/ショートメッセージサービス/植物学/書誌学者/食器棚/知りたがり/ジン・テーゼ/審議官/神経系/人工衛星/人工知能/人生ゲーム/神秘主義/新聞記事/新約聖書/信用調査/心理学/心理学者/心理療法/人類学/人類史/神話学/水平思考/推論規則/数学者/スキー場/スクレイパー/スケープゴート/ストレーナー/スペースコロニー/スマホ/住み分け/スラブ/既製品/制御工学/聖句/成功事例/精神科医/精神病院/精神分析/生態系/世界観/責任能力/セレンディップ/セレンディピティ/先行者/戦国時代/潜在的/先住民族/全体最適/洗濯機/専門家/相関関係/総合科学/相互作用/相互乗り入れ/象印マホービン株式会社/送信機/創世記/想像力/想定外/速射砲/ソナー/ソフィスティケイテッド・コメディ/ソリューション/ダークマター/ダートマス会議/第一宣言/対照的/タイピング/タイムライン/タイムラグ/太陽電池/大量消費/大量生産/対話篇/楕円積分/ダダ/ただ乗り/獺祭/ダニエル書/タルムード/タロット/タンナーイーム/ダンロップ/地衣類/チェックリスト/地球市民/地球半径/知識人/地質調査/抽象化/抽象表現主義/中世ヨーロッパ/チューリヒ/超音波/超現実主義/超自我/腸内細菌/ツイート/追跡調査/通信工学/通信手段/ツール/津軽/定価販売/定義集/テイジン/デイトン/データ化/哲学者/鉄鉱石/デペイズマン/デュポン/電解質/天国は待ってくれる/電磁気学/電子顕微鏡/電子工学/電子レンジ/天の岩戸/天文学者/ドイツ/ドイツ語/等価交換/動機づけ/同業他社/同時代/登場人物/トーラー/独自性/特性要因図/特定領域/都市伝説/ドナルドダック/トポス/土用の丑/トヨタ/トヨタ生産方式/ドリームキャッチャー/鳥山石燕/敦煌/トンボ/蜻蛉日記/内燃機関/永田町/ナチス/七年目の浮気/二重構造/日常言語学派/日用品/日記文学/日本企業/日本放送/ニノチカ/日本書紀/ニューエイジ/人間性/人間中心主義/認知バイアス/任天堂/ヌメリ/ネイチャー/ネス/熱伝導/ネットオークション/熱放射/ノーベル化学賞/ノーベル賞受賞者/ノーベル文学賞/乗合馬車/バード/ハーフェズ/ハイアールアジア株式会社/博物誌/パクリ/蓮の葉/バックステップ/パナソニック/ハノーバー/バビロニア/バビロン/パラドクス/パリ/ハリウッド/バリューエンジニアリング/ハロー効果/反響定位/犯罪者/汎用性/東アジア/東ハト/光の帝国/提喩/ビジネス書/ビジネスプロセス・リエンジニアリング/必要条件/否定の否定/批判的思考/批評家/火吹き/微分方程式/美味求真/百頭/百人一首/非ユークリッド幾何学/ファミリーコンピュータ/ファラオ/フィッシュボーン・ダイアグラム/フィルモグラフィー/フェデックス/フォーカシング/フォード/フォルトセンス/不確実性/深さ優先探索/福音書/複数回/複数形/複数人/不確かさ/物理的制約/物理法則/フナクイムシ/部分集合/部分的/フランス/フリーライダー/ブレインストーミング/フレームワーク/文化英雄/文学作品/ヘカトンケイル/ペテン/ペル - ウアチェト/ベルクロ/ベルリン/ペン型/弁論術/暴君ハバネロ/ボーアの原子模型/保型関数/ボストン/ボストン大学/ボタン電池/ホモロジー/ポリネシア/マイクロフトレクタス/マインドマップ/マウイ/マグネトロン/マグライト/マジックテープ/マジックワード/魔術師/末梢神経/マトリクス/マレー半島/マンガン乾電池/ミウラ折り/未開社会/ミシュナー/湖池屋/みにくいアヒルの子の定理/身の回り品/ミロのヴィーナス/民間信仰/民主制/ムーブメント/無生物/無力感/メキシコ/メタファー/メディア論/メトニミー/面ファスナー/モーフォライザー/モグラ叩き/文字起こし/元大統領/ものづくり/問題提起/野生動物/唯物論/有機EL/有機ガラス/優先順位/優美な屍骸/ユカタン半島/ユダヤ教/ユダヤ人/夢占い/夢の中/夢判断/翼果/預言者/ヨハネによる福音書/ラーメン屋/ライティング/落語家/ラショナル/ラビ/ラマシュトゥ/ラミアー/リエンジニアリング/リゾチーム/リチウム電池/律法/リプレイ/竜山文化/類感呪術/類語辞典/類似性/ルーマニア/ルビコン川/礼記/レーザー光/列挙法/レディメイド/レファレンスツール/連鎖反応/ロープウェイ/ローマ/ロマンティック・コメディ/ロンドン/論理学/ワシントンD.C./藁人形


     

     今回のテーマは本を読む前のこと、書籍を手に入れることに関わる話である。

     この記事を見ている人は、書籍を買うのに大きく分けて二つの選択肢を持っている。
     ひとつはネット書店で購入すること、もうひとつは街のリアル書店で購入することである。
     どちらで買っても同じ一冊だが、出版と書店を巡る様々な関係性のために、そのインパクトはネット購入とリアル書店購入で少々違ったものになる。
     以下では、推論を交えて、それら関係性の一端を見てみることにしよう。


    時間がない人のための要約

    ・重版がかかると、作者さんは次回作が出せる

    ・重版には、在庫数が少ないリアル書店での購入が近道



    分散するリアル書店、集中するネット書店

     ここで注目すべきリアル書店とネット書店の違いは、リアル書店が各地に分散しているのに対して、ネット書店が少数に集中していることである。
     ネット書店は全国に70店程あるが上位7店で1/4のシェアを占める。
     リアル書店の数は2015年5月1日時点で全国に13,488 店である。1999年に22,296 店あったところから7千店近く減っているが、それでもこれだけの数ある。
     このため新刊書は、多数のリアル書店に少数ずつ配本され、少数のネット書店にはまとまった数が配本されることになる。


    新刊の大部分はリアル書店へいく

     新刊書の初版の部数は、書籍の種類によって異なるが、『出版指標 年報』の推定発行部数÷新刊点数でざっくり推定してみると

    書籍全体   5千冊強
    文庫     1万2〜3千部
    新書     1万強
    全集など   3千冊強



     ここから導き出されることは、

    ・大抵の新刊書はすべての書店に行き渡らない

    ・リアル書店に届く新刊書は、平均すれば1店あたりせいぜい数冊

    ・1店2冊すると配本されるのは1500〜6000店舗

    ・結局、数千の店舗に配本しようとすると新刊書の大部分はリアル書店に回ることになる

    ということである。

    ※「8000部でも全国の主要書店に十分な数(5冊配本して平積みしてもらう?)の配本はできない」というフォークロアから逆算すると、主要書店とやらは2000店程度ということになる。



    在庫が少ない方がレスポンスがはやい

     話をわかりやすくするために単純化して考えてみよう。
     とある新刊書は、50のリアル店舗に2冊ずつ合計100冊が配本され、また1つのネット書店にも同じく100冊が配本されたとしよう。
     あるリアル書店でその2冊が売れたとすると、その書店は同じ本を発注する。
     ネット書店でもその100冊が売り切れたとすれば、また発注が行われるだろう。
     しかし100冊が売れ切れるのは、ネット書店とはいえ、2冊が完売するよりは時間がかかる。
     リアル書店の売上の方が、出版社への働きかけとしてより速いものになる構造的な理由がここにある。


    売れた1冊は、1冊以上をつれてくる

     さらにリアル書店の販売戦略の基本は「売れている本をもっと売る」であるから、2冊売れると2冊以上を発注するのが普通である。ここでは4〜5冊を発注するとしよう。
     すると、リアル書店で100冊売れると、200〜250冊が発注されることになる
    「売れている本をもっと売る」は当然、目立つところに置かれたり、平積みされたり、といった書店での売り方にも反映する。
     こうしたことから、売れた1冊は1冊以上をつれてくるといえる。
     こうして売れた本はますます売れる。これを書籍販売のマタイ効果※※という。

    分散と集中


    ※ 一方、最初に大量の在庫をもつネット書店では、追加注文は当初在庫の半分程度というフォークロアがある。これは、熱しやすく冷めやすいネットでの評判と、それに対応した一時期に爆発的に売れ、その後少ない数が散発的に長い時間かけて売れていくという、ネット書店での売れ方に関連がありそうである。今の例だと100冊売り切った後50冊程度を新たに発注することとなり、乱暴に言えばネット書店で売れた1冊は1冊未満(今の例だと0.5冊)を連れてくることになる。

    ※※ マタイ効果
    社会学者ロバート・K・マートンが命名した概念。
    マートンは、科学研究において条件に恵まれた研究者は優れた業績を挙げることでさらに条件に恵まれる、という「利益—優位性の累積」のメカニズムを指摘し、新約聖書のなかの文言「おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」(マタイ福音書第13章12節)から借用して、このメカニズムを「マタイ効果」と命名した。



    書籍は重版してはじめて採算が取れる商品

     さて書籍は、商品としてみると、少品種大量生産でも多品種少量生産でもなく、多品種大量見込み生産である。
     売れるかどうかは出版してみないと分からないために、「数打てば当たる」的に多品種にならざるを得ない。

    ※ 実を言うと、委託販売制(新刊委託)がほとんど行われていなかった時代には、初版部数は大手出版社でも数百のオーダーで、売れる実数に見合った数だった。それでも10万部のベストセラーはめずらしくなかった。
     「委託販売制(新刊委託)」とは、取次店が新刊本を出版社から預かり、 書店に委託し販売を依頼するシステム。
     書店では、実質的な仕入れは売上分のみですみ、 6ヶ月以内であれば、売れ残った書籍は無条件で返品できる。 この委託期間内であれば返品OKのため、 書店は新刊本をリスクなしで陳列販売することができる。
     出版社では、書籍を引渡した時点で代金が得られる(所有権が書店に移るため。通常の委託販売とはこの点が異なる)。また、返品に備えて返品調整引当金を必要経費として計上することができる。売れ残った書籍が返品されてくると、出版社は書籍を買い取る形になり、その代金を書店に支払う。つまり売れ残ると、一旦得た代金をその分実質返還しなければならない。
     自転車操業的ではあるが、次々新しい書籍を出版すれば、新たな新刊を委託販売して得た代金を、返本分の返還代金に充てて、出版事業を継続することができなくはない。これが書籍が売れなくなると、ますます出版される書籍(出版点数)が増える理由、当たらなくても、なおさら多品種にならざるを得ない理由である。



     多品種だが少量生産だと、全国の書店に行き渡らない。書籍は書店で手に取ってもらうことが最大のPRになるので、無理をしても大量生産せざるを得ない。
     書籍の価値はその中身である。まだ読んだことのないものだからこそ、読者はそれを読もうとする訳で、その内容をあらかじめ伝え切ることは、商品価値を損なうことにもなる。要は、書物の質・価値は消費してみないと(読んでみないと)分からない。つまり、書籍は書店で手に取ってもらうことが最大のPRになる商品なのである。
     乱暴に言えば、書籍の初版部数は書店に行き渡らせるために無理をした数であり、言い換えれば、書籍は重版してはじめて採算が取れる商品である、といえる。

     これを作者さんの立場から言い直せば、重版されてはじめて次回作が出せる(出版社的/商業的に期待される)ことになる。


    発売日から早く売れるほど重版かかりやすい

     売れた1冊が次の何冊かを呼ぶという話は、具体的には重版がかかるということである。
    初版部数が全国書店に行き渡るために費やされるとすれば、追加注文をまかなうのは重版されたものだからである。
     そして在庫が少ないほどレスポンスがはやいとすれば、発売当初に鍵となるのは、各店数冊しか在庫がないリアル書店の販売実績である。
     逆に発売当初の動きが鈍いと返本される。どの出版社も前述した制度構造上次々に新刊を投入してくるために、また書店のスペースは限られているために、発売当初に売れなかった書籍は速やかに新たに来た新刊書に場所を譲り、退場=返本されることになる。

    リアル書店のPOSデータが重版のトリガーになる

     むけむけな話をすると、リアル書店の販売実績という点で、発売当初という短い時間スパンで鍵となるのは、データ集計が自動化されているが故に速報性と正確性を兼ね備えたPOSデータである。
     


    販売時点情報管理(英語:Point of sale system、略称POS system)

     物品販売の売上実績を単品単位で集計する経営手法またはそれを実現するシステムのことをいう。
     目下の目的には、購入時にレジでバーコードを読み取り、どの商品がいつ売れたかを自動的に集計しデータ化している、ぐらいの認識で事足りるだろう。



     さて大型書店チェーンや出版取次は、以下にまとめたように、自社で集計したPOSデータを提供している。
     例えば〈トリプルウィン〉は出版取次である日販が提供しているもので、搬入部数、市場在庫、実売部数の推移をグラフで表示することが可能であり、地方の書店を含めた出版業界全体の約1/4のマーケット動向を把握できるといわれる。
     また〈パブライン(PubLine)〉は、書店チェーンで最大の売上を誇る紀伊國屋書店全店のPOSレジで管理されている販売情報を、インターネットを通じて公開しているサービスで、紀伊國屋書店が出店している都市部の動向を中心に把握できるとされる。


    本の売上を見るPOSデータを提供している会社一覧

    ・ 紀伊國屋書店の 「 パブライン(PubLine) 」 (書店)
    ・ 日販の 「 トリプルウィン 」 (取次)
    ・ 文教堂の 「 Big NET(ビッグネット) 」 (書店)
    ・ ジュンク堂の 「 POSDATA うれ太 」 (書店)
    ・ 丸善の 「 MCS(Maruzenn Communication Square) 」 (書店)
    ・ NET21の 「 やまびこ通信 」 (協業書店)
    ・ 三菱総研DCSの 「 P-NETサービス 」 (システム会社)
    ※2015年7月でサービスを終了予定
    ・インテージ 「出版POSサービス」 (ネットリサーチ・市場調査会社)
    ・ アマゾン (書店)
    ・三洋堂書店の 「 SPN2 」 (書店)
    ・ストアコンソーシアムジャパンの 「 WEBRAIN 」
    ・明屋書店の 「 OpenNet 」 (書店)
    ・くまざわ書店グループの 「 Kuma book.net 」 (書店)
    ・オリコンの 「 ORICON BiZ online 」 (ヒットチャートをはじめとする音楽情報サービスなどを提供する日本の企業グループの持株会社)

    (出典:「本の売上を見るPOSデータには、どんなものがあるか」)




    ネット書店で品切れ/リアル書店で売れ残り

     昨今のように、有名作者さんがSNSその他で情報発信するようになると、それに反応してネット書店でバカ売れ→品切れが生じる一方、リアル書店には在庫が残っている→返本されたため重版がかからないまま、中古価格が高騰するという、作者/読者/出版社……誰にとっても笑えない需給ギャップが発生することすら生じるようになった。


    (結論)作者さんを応援するにはリアル書店での購入がおすすめ

     総じて言えば、書籍は分散的に販売される商品であり、どこか1箇所(あるいは少数の箇所)で売れるだけでは全体の販売につながりにくいのである。
     
     書籍は、読者(候補者)に手に取ってもらって、目にしてもらってはじめて、はじめて動き出す。
     つくり手の熱が、読者に伝わり、読者から売り手へ、また別の読者へ伝わることで、はじめて命を得るのである。


    本読みはしばしば、自分と書物/著者との関係しか目に入らなくなることがある(その本を自分が手に入れる/自分が読むことだけに関心が集中する)けれど、ある本が「力」を持つには複数の人に読まれなければならない。
    (メルマガ「読書猿」120号)

     「同じ書を読む人は遠くにいる」という言葉があります。
     一冊の本があなたの手元にあるということは、同じ本があなたの知らない人たちのところにも届いているということです。
     どれほど孤独な読書家も、この本を読むのは自分だけではないことを知っています。
     私が読んだものを他の誰かも読むかもしれないからこそ、書物は私だけに働きかけるのではなく、社会的にも力を持ち得えます。一冊の書物が開くこの可能性のひろがりを、ここでは読書圏(Reading Sphere)と呼びましょう
     読書圏は、同じ書物を読む人たちの間に結ばれるかもしれない潜在的な関係性、あるいは関係の可能性です。
    読書の初心者に贈る、読むことの障害を取り除き書物へ誘う14の質問と答え 読書猿Classic: between / beyond readers 読書の初心者に贈る、読むことの障害を取り除き書物へ誘う14の質問と答え 読書猿Classic: between / beyond readers




    (まとめ)

    ・新刊の大部分はリアル書店へいく
    ・売れた1冊は、次の1冊以上をつれてくる
    ・書籍は重版してはじめて採算が取れる商品
    ・発売日から早く売れるほど重版かかりやすい
    ・重版がかかると、作者さんは次回作が出せる
    ・重版には、在庫数が少ないリアル書店での購入が近道


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